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第四章 ハンター
4-15 タレント
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ひとまず自己紹介が済んだゼフは、興味深そうにセインが貼った縛り札を、首を伸ばして見ていた。もちろん何が書いてあるのかわからず、今度はセインが手に持っている祓い札に興味を移した。
「なんて書いてあるんだ? 普通の札じゃないよな……」
手に持っていた札を覗き込んできたが、セインは構わず肩に乗っているコウキに渡した。コウキがくちばしで受け取ると、それはあっという間に端から燃えて無くなってしまう。
もちろん意地悪ではなく、いつもの使用済み札の処理である。
「うお?! すげーな、そのチビ……鳥、にしては丸いが、いや、それになんか燃えてねえか?」
鉱山の中ではあえて幻惑を掛けてないので、コウキの羽はめらめらと燃えている。
「これ、どうなって……あたたっ!?」
近づいても熱くないのが不思議なのか、鼻先を近づけすぎて、怒ったコウキにつつかれている。
なんというか、ゼフという人はすごくにぎやかな性格だった。憎めないというか、妙に人好きのするというか、同じバーティの後衛二人も、ちょっと騒がしいこのおっさんを慕っているように見えた。
「見るなら、こっちをどうぞ」
セインは未使用の札をゼフに渡した。
「なんちゅうかへんな模様だな……確かに正規のものではないが、本物だ」
紙を触って、裏返し、注意深く観察してからセインに返した。
実は、ロルシー家が流通している正規の札には、薄く透かしが入っており、この短冊の製法は門外不出の代物だった。ゼフは目ざとく、この見慣れない札に使われている短冊がそれだと気が付いた。
「どこで手に入れた? 出来たら買える場所を教えてくれ」
「……ハンターならギルドで正規品が買えると思うけど、なぜ?」
「ギルドでは枚数制限があるんだよ。依頼によっては大量に買えるが、それでも一人が買い占めると問題になるからな」
考えてみたら当然である。制作現場を見ているからこそわかる。毎日、数十人で札を書いても数は知れているのだ。
稀に修業のため練習で書いたものが安価で流通するが、これら劣化版は優先して市井に配られるため、正規の良質な札は、ハンターギルド間でも取り合いになることもあるという。
粗悪な札を売る、似非札屋が横行するのはそのためだ。
「なるほど……」
「クエストが手こずるとどうしても札が不足する。パーティの人数が多ければ、それだけ買える札の枚数も増えるんだが、今回はいつものメンバーしか集まらなくてな」
臨時で増員メンバーを募ったようだが、集まらなかったようだ。しかも、今回セインが発見した魔物の出現疑惑で、ますます捜索クエストに二の足を踏むことになるだろう。
セインは一定の理解を示しながらも、小さく首を振った。
「……でも、売るのは難しいと思う。正規の手順を踏んでないものを売るのは、似非札屋と同じだから」
自分で使う分を自作するとこは問題ないが、売るのはたぶんアウトだ。なぜなら、祓い札の売買と流通は帝国の手が入っているからである。
「売る? いや、どこで買ったか……あ、まさか」
「これを作ったのは僕なので」
「マジか!? この短冊を使えるってことは……いや、今はいいか。それより、それはありがたい! じゃあ、一緒にパーティを組んでくれないか」
「……は?」
自らの才能で魔法や剣を揮うのと同じことで、パーティの一員が祓い札を作れるなら、それを活用するのはもちろんセーフということだ。
こういったスカウトは、実は珍しくはない。
実力主義のハイランクパーティでも、聖魔法や術式の穢れ払いが出来る者は、多少足手まといでも、優遇してパーティに取り込みたいタレントの一つなのだから。
「なんて書いてあるんだ? 普通の札じゃないよな……」
手に持っていた札を覗き込んできたが、セインは構わず肩に乗っているコウキに渡した。コウキがくちばしで受け取ると、それはあっという間に端から燃えて無くなってしまう。
もちろん意地悪ではなく、いつもの使用済み札の処理である。
「うお?! すげーな、そのチビ……鳥、にしては丸いが、いや、それになんか燃えてねえか?」
鉱山の中ではあえて幻惑を掛けてないので、コウキの羽はめらめらと燃えている。
「これ、どうなって……あたたっ!?」
近づいても熱くないのが不思議なのか、鼻先を近づけすぎて、怒ったコウキにつつかれている。
なんというか、ゼフという人はすごくにぎやかな性格だった。憎めないというか、妙に人好きのするというか、同じバーティの後衛二人も、ちょっと騒がしいこのおっさんを慕っているように見えた。
「見るなら、こっちをどうぞ」
セインは未使用の札をゼフに渡した。
「なんちゅうかへんな模様だな……確かに正規のものではないが、本物だ」
紙を触って、裏返し、注意深く観察してからセインに返した。
実は、ロルシー家が流通している正規の札には、薄く透かしが入っており、この短冊の製法は門外不出の代物だった。ゼフは目ざとく、この見慣れない札に使われている短冊がそれだと気が付いた。
「どこで手に入れた? 出来たら買える場所を教えてくれ」
「……ハンターならギルドで正規品が買えると思うけど、なぜ?」
「ギルドでは枚数制限があるんだよ。依頼によっては大量に買えるが、それでも一人が買い占めると問題になるからな」
考えてみたら当然である。制作現場を見ているからこそわかる。毎日、数十人で札を書いても数は知れているのだ。
稀に修業のため練習で書いたものが安価で流通するが、これら劣化版は優先して市井に配られるため、正規の良質な札は、ハンターギルド間でも取り合いになることもあるという。
粗悪な札を売る、似非札屋が横行するのはそのためだ。
「なるほど……」
「クエストが手こずるとどうしても札が不足する。パーティの人数が多ければ、それだけ買える札の枚数も増えるんだが、今回はいつものメンバーしか集まらなくてな」
臨時で増員メンバーを募ったようだが、集まらなかったようだ。しかも、今回セインが発見した魔物の出現疑惑で、ますます捜索クエストに二の足を踏むことになるだろう。
セインは一定の理解を示しながらも、小さく首を振った。
「……でも、売るのは難しいと思う。正規の手順を踏んでないものを売るのは、似非札屋と同じだから」
自分で使う分を自作するとこは問題ないが、売るのはたぶんアウトだ。なぜなら、祓い札の売買と流通は帝国の手が入っているからである。
「売る? いや、どこで買ったか……あ、まさか」
「これを作ったのは僕なので」
「マジか!? この短冊を使えるってことは……いや、今はいいか。それより、それはありがたい! じゃあ、一緒にパーティを組んでくれないか」
「……は?」
自らの才能で魔法や剣を揮うのと同じことで、パーティの一員が祓い札を作れるなら、それを活用するのはもちろんセーフということだ。
こういったスカウトは、実は珍しくはない。
実力主義のハイランクパーティでも、聖魔法や術式の穢れ払いが出来る者は、多少足手まといでも、優遇してパーティに取り込みたいタレントの一つなのだから。
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