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第二章 四神
1-19 顛末
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炎がぐるりと囲む中、いきなりどこからともなく現れた水柱が高く渦を巻きながら噴出した。周りで見ていた者が、度肝を抜かれて視線が釘付けとなったのも無理はない。
「な、なんだ。中で何が……」
誰ともなく呟く中、しばらくするとやがて何事もなかったかのように収まり、それに伴い炎の壁も徐々に小さくなっていった。
水と炎の温度差のせいか、視界はもやがかかったように霞んでいた。
視界が戻ってくると、地面には件の獣人が地面に倒れていた。遠目でみてもわかるほど、大きさが縮んでいた。すっかり元の姿に戻ったのだ。
このあたりの記憶はセインにはなかったが、その時はまだ、ちゃんとその場に立っていたらしい。
後のことは、幌馬車の御者をしていた男が責任者となって、事件の後始末をした。護衛の二人にオークの始末を任せ、岩影に避難していたボロ馬車の乗客とも合流した。
セインは目を開けてはいたが、かなり朦朧としていたので、大人たちの手によって奴隷獣人の子供とともに、馬車の中に放り込まれた。
そんなふうに周囲が忙しく動いていた時、獣人の奴隷印と連動しているらしい契約の指輪を、商人の亡骸の指からこっそり抜き取った男がいた。
それに気が付いたのは、商人の遺体を回収しようとしていた護衛の一人だ。
懐にしまったところを確認して、現行犯で確保された。いろいろ言い訳をしたようだが、元の状態に戻った奴隷を惜しんだと思われた。
口頭とはいえ、奴隷の所有権を放棄したことは、証人が大勢いる。
また、それを約束させたセインは、その奴隷が穢れ落ちしそうになったところを救い、またここにいた全員を救ったも同然なのだ。
当然ながら、乗客も御者も証言することに異論はない。
「確か、しばらく行ったところに、無人の狩猟小屋があるはずだ」
ナイフ使いの獣人護衛の言葉に、御者は頷いた。
「狩猟小屋まで移動する。徒歩で半日もかからないから、馬車に荷物だけ乗せて徒歩で進んでほしい」
幌馬車は大きいが全員は乗れないし、商人の亡骸と、セイン、奴隷獣人が寝かされているので乗り込むのは無理だった。多少文句を言う者もいたが、基本的には快く指示に従ってくれた。
狩猟小屋に着くと、そこへ一旦、乗客たちと護衛を一人残して、身軽になった馬車で事件の関係者と怪我人だけを乗せて出発した。
半日ほどかけて鉱山都市マリザンに着くと、御者はすぐに狩猟小屋への救助を依頼し、事の次第を、門番を通して報告していたという。
ここまでが、セインが覚えてない間に起こったことのあらましであった。
ちなみに、セインはすでに身元バレしてたので、すぐさま都市を仕切るロルシー家の屋敷に運ばれた。例の指輪はその際、セインに引き渡されたとのことだ。
ゆらが知っているのはここまでで、その後の処理がどうなったか、奴隷がどうなったかなどは、セインが運ばれてしまったので、当然ながらわからないとのことだった。
「な、なんだ。中で何が……」
誰ともなく呟く中、しばらくするとやがて何事もなかったかのように収まり、それに伴い炎の壁も徐々に小さくなっていった。
水と炎の温度差のせいか、視界はもやがかかったように霞んでいた。
視界が戻ってくると、地面には件の獣人が地面に倒れていた。遠目でみてもわかるほど、大きさが縮んでいた。すっかり元の姿に戻ったのだ。
このあたりの記憶はセインにはなかったが、その時はまだ、ちゃんとその場に立っていたらしい。
後のことは、幌馬車の御者をしていた男が責任者となって、事件の後始末をした。護衛の二人にオークの始末を任せ、岩影に避難していたボロ馬車の乗客とも合流した。
セインは目を開けてはいたが、かなり朦朧としていたので、大人たちの手によって奴隷獣人の子供とともに、馬車の中に放り込まれた。
そんなふうに周囲が忙しく動いていた時、獣人の奴隷印と連動しているらしい契約の指輪を、商人の亡骸の指からこっそり抜き取った男がいた。
それに気が付いたのは、商人の遺体を回収しようとしていた護衛の一人だ。
懐にしまったところを確認して、現行犯で確保された。いろいろ言い訳をしたようだが、元の状態に戻った奴隷を惜しんだと思われた。
口頭とはいえ、奴隷の所有権を放棄したことは、証人が大勢いる。
また、それを約束させたセインは、その奴隷が穢れ落ちしそうになったところを救い、またここにいた全員を救ったも同然なのだ。
当然ながら、乗客も御者も証言することに異論はない。
「確か、しばらく行ったところに、無人の狩猟小屋があるはずだ」
ナイフ使いの獣人護衛の言葉に、御者は頷いた。
「狩猟小屋まで移動する。徒歩で半日もかからないから、馬車に荷物だけ乗せて徒歩で進んでほしい」
幌馬車は大きいが全員は乗れないし、商人の亡骸と、セイン、奴隷獣人が寝かされているので乗り込むのは無理だった。多少文句を言う者もいたが、基本的には快く指示に従ってくれた。
狩猟小屋に着くと、そこへ一旦、乗客たちと護衛を一人残して、身軽になった馬車で事件の関係者と怪我人だけを乗せて出発した。
半日ほどかけて鉱山都市マリザンに着くと、御者はすぐに狩猟小屋への救助を依頼し、事の次第を、門番を通して報告していたという。
ここまでが、セインが覚えてない間に起こったことのあらましであった。
ちなみに、セインはすでに身元バレしてたので、すぐさま都市を仕切るロルシー家の屋敷に運ばれた。例の指輪はその際、セインに引き渡されたとのことだ。
ゆらが知っているのはここまでで、その後の処理がどうなったか、奴隷がどうなったかなどは、セインが運ばれてしまったので、当然ながらわからないとのことだった。
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