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第八章 謎の男たち
第6話 格上
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【襲い掛かる人間兵器】
姉妹もフィンが言っている意味を理解した。自分達では絶対に勝てないのだと。しかし、プリシラは諦めない。彼女は誓ったのだ。必ず帰ると。その瞳に火が灯る。強い意思が宿る。
「……まだだよ。私はっ。私達はまだ死ねないッ」
その瞬間、男がプリシラの目の前にいた。魔法を使う暇などなかった。拳が叩きこまれる瞬間、フィンが何とか割り込んだ。金属音が鳴り響く。
「俺が時間を稼ぐから早く逃げろッ……」
「黙れ傭兵!」
ツィーディアが雷と共に突っ込む。鋭い槍の一突き。敵はそれを軽く避けると同時に拳を腹部に叩きこむ。
「がっ」
彼女に追撃を出そうとした時、ヘシカの炎の球、上からはプリシラが作った大きな岩が彼に襲い掛かる。彼は地面を蹴り上げると土で火の玉を消し飛ばし、岩を拳で砕く。
ヘシカは倒れ込む様に彼が放った土を避ける。しゃがみ込んだ態勢でヘシカが呟く。
「嘘だろ……」
「私たちの渾身の一撃が……ッ」
少しダメージが回復したツィーディアが起き上がりながら雷を纏った槍で薙ぎ払う。だが、彼はそれを腕で受け止める。
「なッ……馬鹿なッ」
「女……この程度の事で何を驚く?」
そう言いながら彼女を思いっきり蹴り飛ばした。転がりながら勢いよく吹き飛ぶ。
追撃をしようとしたが、フィンの鋭い刺突のせいで彼は半身をひねった。しかし、一撃では無く、高速で両手の剣で攻撃を繰り出す。彼はそれを全て回避する。
「フィン。腕は落ちていないようだな」
「ちっ。化け物め!」
ツィーディアがゆっくりと立ち上がり、兵に指示を出す。
「お前たちも攻撃に参加しろ。奴を休ませるな!?」
「馬鹿! やめっ」
それを訊いた兵が恐怖を乗り越えて一斉に接近する。そこに姉妹も小規模の魔法攻撃援護する。彼は魔法の対処をした瞬間に言う。
「小賢しいっ」
「おい! 避けろ!」
フィンが制止させるために叫ぶと、敵が地面を殴る。すると恐ろしい大爆発が起きた。皆が吹き飛ばされる。立ち上がれたのは四人だけだった。近距離でくらったフィン。少しふらついていたがまだ闘志が残っている。
「今ので死んだ方が楽だったのだがな」
「はっ。そこの美女より先に逝くなんて、だせーだろ」
「クククク、変わらんな……」
一番遠く、爆発の被害が少ないツィーディアが接近する。彼はそれをつまらなそうに見ていた。
「滑稽だな……フィン。お前の祈りは届かないようだ」
彼が皮肉を言う。その間に急接近して来た彼女の一突き。しかし、それを指一本で防ぐ。
「そんなっ……あり得ない……ッ」
「女……まだ力の差が分からないか。愚かな」
そして、腹部に拳を叩きこむ。彼女は吐血し、遥か彼方に飛ばされた。
「ぁぐっ……」
【人間兵器】は追撃をしようと近づく。ダメージのせいで今度は誰も助けられない。槍を地面に刺し、それを支えにして何とか立ち上がった。
接近して来た敵に対して、彼女は反撃のために突きを放つ。男はそれを腕で弾くと、槍が宙を舞う。同時に鋭い蹴りが放たれた。
彼女は腕でガードしたが、それごと持っていかれた。腕が折れて苦痛に顔を歪めた。男はさらに髪を掴むと顔面を殴った。
「ぁがっ……ぅぐッ」
「やめろ、ロッサム! 今回の依頼の目的はなんだ! そうじゃないだろ!?」
彼はチラリとフィンを見たが、無視をして瀕死の彼女を見る。鼻から血がぽたぽたと垂れていた。さらに腹部に一発。彼女は再び吐血する。男が髪を離すと、彼女はなすすべも無く地面に転がった。
「目的? 何を勘違いしている。邪魔者は排除する。ただそれだけだよ、フィン」
「……ッ」
そこで爆破による衝撃のダメージが回復したプリシラが無数の礫を放った。彼はそれを全て弾く。プリシラと目が合う。ヘシカが必死に立ち上がりながら言う。
「プリシラッ。逃げろっ……何が何でも生き残るんだろ……」
男が彼女に向かって走り出す。するとそれを見越したかの様に上から岩が降って来た。
「またそれか。芸が無い……」
それを拳で砕く。
「あんまり甘く見ないでよね……」
今度は地面から無数の棘が男を襲う。それを防ごうと体に力を入れる。すると棘の方が全て砕けた。
「うそッ……」
「甘く見るなだとッ。それはこっちの台詞だ。クソガキがっ」
男が高速で接近する。ヘシカが炎の球を彼の進行方向に展開していた。次の瞬間大爆発が起こり、それに巻き込まれた。
「へっ……だから甘く見るなと……!?」
ヘシカは気が付いた。男は上空に跳んでいた。そのままプリシラに襲い掛かる。二人は土と炎の魔法を連射して迎撃するが、それを気にせずに突っ込んでくる。
そして、木を蹴って進路を変える。プリシラはそれを目で追えなかった。男が接近すると腹部を殴る。彼女はそれだけで吐血し、激しく吹き飛ばされた。
「あぐっ……」
視界がぼやける。地面に伏せ、思考が停止する。
「おね……ちゃ……にげ……て……」
「もう喋るな! 今そっちに行くからな!」
立ち上がりたいのに瞼が重く、自然と閉じていく。それに抗う事が出来ない。
「ごめん、お姉ちゃん……もうだめみたい……ごめ……ロウ……」
ヘシカが魔法攻撃でそれを阻もうにも全て弾かれる。男が腕を振ると爆発が起こった。彼女が吹き飛ばされて倒れた。そんな時、フィンが笑う。
「クククク」
「ふん。味方がやられておかしくなったか……?」
「いやーね。面白いなーって」
「……なに?」
その時、フィンが全力で走りだした。
「なるほど、古文書を追って、自分を囮にする気か……相変わらず女に甘いな」
男はそれに簡単に追いつくと、鋭い拳を繰り出す。
「クソ!」
フィンが背後に振り返りながら剣で攻撃するが、男は更に背後に回ると顔面を殴り元の位置に吹き飛ばした。苦肉の策だったが、冷静に対処されたのである。
「無駄だ……分かってるはずだ」
「……」
「昔からの誼みだ。女を無残に殺す前に、お前を殺す。これ以上、悲しむ必要は無くなる」
フィンに止めを刺そうと、ゆっくりと歩いて近づく。ヘシカが炎を作りだしていたが、彼が止める。
「止めろッ……逃げろ……っ」
「フィン、無理だ。どうせ追いつかれる……そうだ。どうせなら、な……私の可愛い妹を傷つけた罰は受けてもらう……」
しかし、敵は炎魔法を構築している彼女を見なかった。
「はは、無視かよ……ッ。敵と認知されてないってか!? くそがぁぁあ!」
「そうだ! だから早く逃げろ……ッ」
「約束、か……ごめんな…………」
ヘシカは誰かに謝った。それを無視してフィンに止めを刺そうと手刀を振り上げた時、【人間兵器】が止まった。彼女もそれに連動するように魔法を止めた。そして、男が声を出した。
「誰だ……?」
問いを投げかけられた男は淡々と答えた。
「通りすがりの屑野郎だよ」
いつの間にか。何処からともなく現れた男は一言。そう言った。
その時、真上から無数の氷が飛んで来た。【人間兵器】は幾つかそれを拳で砕くと跳んで避ける。すると一、二回軽くフェイントを混ぜ、一瞬で謎の男に接近する。しかし、彼は防御をする素振りを見せずに余裕の表情で言った。
「あー。残念」
「魔糸か! 何時の間に!?」
糸が全身に絡みつき、捕縛される。
「これで肉が切れないのか。すげー魔人化だな。お前、大丈夫?」
「余計な……ッ。お世話だ……っ」
その瞬間、捕まった男が大爆発を起こした。男は爆風を受けても体のバランスを崩さずに敵が来るのを待っていた。だが、土煙が消えると男も消えていた。フィンが問いかける。
「あ、あんたらは……」
「お前と、同じかな」
「同業者……か。誰の依頼だ?」
「言っただろ。通りかかっただけだ」
「……」
上から男が降ってきた。そして、音も無く着地した。彼は氷を使った男のようだ。
「どうする?」
「さてな……」
「……は、はぁ? 二人組のッ……まさかっ、お前等はッ」
二人が同時に彼を見た。何かに気が付いたフィンが慌てるように自分の口を塞ぐ。そこで、地に伏したツィーディアが言う。彼女は重症で今にも消えそうな声だった。
「頼む……ハンスを……」
「ハンス?」
フィンがサッと答えた。
「依頼主、護衛対象を追った男だ……だが彼では確実に死ぬ……」
「そうか。さて……誰が依頼主になる?」
意識が途切れそうになりながら訊く。
「……何を……言って……」
ルーベンがフィンの方を見る。
「ん? お前は?」
「俺は傭兵だ」
「なるほど」
「俺が後から報酬を出す……ハンスを助けてくれ」
「分かった」
「後……攫われた考古学者は殺さないでくれ。古文書も大切にな」
「良いだろう」
ルディがフィンに訊いた。
「お前はまだ戦えるか?」
「微妙だな。奴の部下を同時に三人ぐらいならいける。流石に連戦はきつい。だが、少し休めばそこそこ回復はする」
「……それならどっちかが残ってた方が良いな」
「俺が行こう。お前は治療を頼む。死んだら依頼料が無くなる」
「りょーかい」
「俺が確認出来た限りだと、残りの敵の総数は12人だ」
ルディが薄い反応を示した後、高速で男を追う。
【依頼主と古文書】
ハンスは血みどろになっていた。【無情】が止めの一撃を加えようとした時、大声が聞こえた。
「おい! 一旦引くぞ! 古文書と学者だけで良い!」
「ロッサム様? どうされましたか?」
「【早打ち】と【エルガレイオン】だ!」
「なっ! 何故! そんな情報は!? くっ、お前たち、急ぐぞ!」
部下にそう命じると、即逃げる態勢になる。そして速やかにその場を去って行った。一歩遅れてルディが到着するとハンスらしき男を確保して、一旦戻る。
姉妹もフィンが言っている意味を理解した。自分達では絶対に勝てないのだと。しかし、プリシラは諦めない。彼女は誓ったのだ。必ず帰ると。その瞳に火が灯る。強い意思が宿る。
「……まだだよ。私はっ。私達はまだ死ねないッ」
その瞬間、男がプリシラの目の前にいた。魔法を使う暇などなかった。拳が叩きこまれる瞬間、フィンが何とか割り込んだ。金属音が鳴り響く。
「俺が時間を稼ぐから早く逃げろッ……」
「黙れ傭兵!」
ツィーディアが雷と共に突っ込む。鋭い槍の一突き。敵はそれを軽く避けると同時に拳を腹部に叩きこむ。
「がっ」
彼女に追撃を出そうとした時、ヘシカの炎の球、上からはプリシラが作った大きな岩が彼に襲い掛かる。彼は地面を蹴り上げると土で火の玉を消し飛ばし、岩を拳で砕く。
ヘシカは倒れ込む様に彼が放った土を避ける。しゃがみ込んだ態勢でヘシカが呟く。
「嘘だろ……」
「私たちの渾身の一撃が……ッ」
少しダメージが回復したツィーディアが起き上がりながら雷を纏った槍で薙ぎ払う。だが、彼はそれを腕で受け止める。
「なッ……馬鹿なッ」
「女……この程度の事で何を驚く?」
そう言いながら彼女を思いっきり蹴り飛ばした。転がりながら勢いよく吹き飛ぶ。
追撃をしようとしたが、フィンの鋭い刺突のせいで彼は半身をひねった。しかし、一撃では無く、高速で両手の剣で攻撃を繰り出す。彼はそれを全て回避する。
「フィン。腕は落ちていないようだな」
「ちっ。化け物め!」
ツィーディアがゆっくりと立ち上がり、兵に指示を出す。
「お前たちも攻撃に参加しろ。奴を休ませるな!?」
「馬鹿! やめっ」
それを訊いた兵が恐怖を乗り越えて一斉に接近する。そこに姉妹も小規模の魔法攻撃援護する。彼は魔法の対処をした瞬間に言う。
「小賢しいっ」
「おい! 避けろ!」
フィンが制止させるために叫ぶと、敵が地面を殴る。すると恐ろしい大爆発が起きた。皆が吹き飛ばされる。立ち上がれたのは四人だけだった。近距離でくらったフィン。少しふらついていたがまだ闘志が残っている。
「今ので死んだ方が楽だったのだがな」
「はっ。そこの美女より先に逝くなんて、だせーだろ」
「クククク、変わらんな……」
一番遠く、爆発の被害が少ないツィーディアが接近する。彼はそれをつまらなそうに見ていた。
「滑稽だな……フィン。お前の祈りは届かないようだ」
彼が皮肉を言う。その間に急接近して来た彼女の一突き。しかし、それを指一本で防ぐ。
「そんなっ……あり得ない……ッ」
「女……まだ力の差が分からないか。愚かな」
そして、腹部に拳を叩きこむ。彼女は吐血し、遥か彼方に飛ばされた。
「ぁぐっ……」
【人間兵器】は追撃をしようと近づく。ダメージのせいで今度は誰も助けられない。槍を地面に刺し、それを支えにして何とか立ち上がった。
接近して来た敵に対して、彼女は反撃のために突きを放つ。男はそれを腕で弾くと、槍が宙を舞う。同時に鋭い蹴りが放たれた。
彼女は腕でガードしたが、それごと持っていかれた。腕が折れて苦痛に顔を歪めた。男はさらに髪を掴むと顔面を殴った。
「ぁがっ……ぅぐッ」
「やめろ、ロッサム! 今回の依頼の目的はなんだ! そうじゃないだろ!?」
彼はチラリとフィンを見たが、無視をして瀕死の彼女を見る。鼻から血がぽたぽたと垂れていた。さらに腹部に一発。彼女は再び吐血する。男が髪を離すと、彼女はなすすべも無く地面に転がった。
「目的? 何を勘違いしている。邪魔者は排除する。ただそれだけだよ、フィン」
「……ッ」
そこで爆破による衝撃のダメージが回復したプリシラが無数の礫を放った。彼はそれを全て弾く。プリシラと目が合う。ヘシカが必死に立ち上がりながら言う。
「プリシラッ。逃げろっ……何が何でも生き残るんだろ……」
男が彼女に向かって走り出す。するとそれを見越したかの様に上から岩が降って来た。
「またそれか。芸が無い……」
それを拳で砕く。
「あんまり甘く見ないでよね……」
今度は地面から無数の棘が男を襲う。それを防ごうと体に力を入れる。すると棘の方が全て砕けた。
「うそッ……」
「甘く見るなだとッ。それはこっちの台詞だ。クソガキがっ」
男が高速で接近する。ヘシカが炎の球を彼の進行方向に展開していた。次の瞬間大爆発が起こり、それに巻き込まれた。
「へっ……だから甘く見るなと……!?」
ヘシカは気が付いた。男は上空に跳んでいた。そのままプリシラに襲い掛かる。二人は土と炎の魔法を連射して迎撃するが、それを気にせずに突っ込んでくる。
そして、木を蹴って進路を変える。プリシラはそれを目で追えなかった。男が接近すると腹部を殴る。彼女はそれだけで吐血し、激しく吹き飛ばされた。
「あぐっ……」
視界がぼやける。地面に伏せ、思考が停止する。
「おね……ちゃ……にげ……て……」
「もう喋るな! 今そっちに行くからな!」
立ち上がりたいのに瞼が重く、自然と閉じていく。それに抗う事が出来ない。
「ごめん、お姉ちゃん……もうだめみたい……ごめ……ロウ……」
ヘシカが魔法攻撃でそれを阻もうにも全て弾かれる。男が腕を振ると爆発が起こった。彼女が吹き飛ばされて倒れた。そんな時、フィンが笑う。
「クククク」
「ふん。味方がやられておかしくなったか……?」
「いやーね。面白いなーって」
「……なに?」
その時、フィンが全力で走りだした。
「なるほど、古文書を追って、自分を囮にする気か……相変わらず女に甘いな」
男はそれに簡単に追いつくと、鋭い拳を繰り出す。
「クソ!」
フィンが背後に振り返りながら剣で攻撃するが、男は更に背後に回ると顔面を殴り元の位置に吹き飛ばした。苦肉の策だったが、冷静に対処されたのである。
「無駄だ……分かってるはずだ」
「……」
「昔からの誼みだ。女を無残に殺す前に、お前を殺す。これ以上、悲しむ必要は無くなる」
フィンに止めを刺そうと、ゆっくりと歩いて近づく。ヘシカが炎を作りだしていたが、彼が止める。
「止めろッ……逃げろ……っ」
「フィン、無理だ。どうせ追いつかれる……そうだ。どうせなら、な……私の可愛い妹を傷つけた罰は受けてもらう……」
しかし、敵は炎魔法を構築している彼女を見なかった。
「はは、無視かよ……ッ。敵と認知されてないってか!? くそがぁぁあ!」
「そうだ! だから早く逃げろ……ッ」
「約束、か……ごめんな…………」
ヘシカは誰かに謝った。それを無視してフィンに止めを刺そうと手刀を振り上げた時、【人間兵器】が止まった。彼女もそれに連動するように魔法を止めた。そして、男が声を出した。
「誰だ……?」
問いを投げかけられた男は淡々と答えた。
「通りすがりの屑野郎だよ」
いつの間にか。何処からともなく現れた男は一言。そう言った。
その時、真上から無数の氷が飛んで来た。【人間兵器】は幾つかそれを拳で砕くと跳んで避ける。すると一、二回軽くフェイントを混ぜ、一瞬で謎の男に接近する。しかし、彼は防御をする素振りを見せずに余裕の表情で言った。
「あー。残念」
「魔糸か! 何時の間に!?」
糸が全身に絡みつき、捕縛される。
「これで肉が切れないのか。すげー魔人化だな。お前、大丈夫?」
「余計な……ッ。お世話だ……っ」
その瞬間、捕まった男が大爆発を起こした。男は爆風を受けても体のバランスを崩さずに敵が来るのを待っていた。だが、土煙が消えると男も消えていた。フィンが問いかける。
「あ、あんたらは……」
「お前と、同じかな」
「同業者……か。誰の依頼だ?」
「言っただろ。通りかかっただけだ」
「……」
上から男が降ってきた。そして、音も無く着地した。彼は氷を使った男のようだ。
「どうする?」
「さてな……」
「……は、はぁ? 二人組のッ……まさかっ、お前等はッ」
二人が同時に彼を見た。何かに気が付いたフィンが慌てるように自分の口を塞ぐ。そこで、地に伏したツィーディアが言う。彼女は重症で今にも消えそうな声だった。
「頼む……ハンスを……」
「ハンス?」
フィンがサッと答えた。
「依頼主、護衛対象を追った男だ……だが彼では確実に死ぬ……」
「そうか。さて……誰が依頼主になる?」
意識が途切れそうになりながら訊く。
「……何を……言って……」
ルーベンがフィンの方を見る。
「ん? お前は?」
「俺は傭兵だ」
「なるほど」
「俺が後から報酬を出す……ハンスを助けてくれ」
「分かった」
「後……攫われた考古学者は殺さないでくれ。古文書も大切にな」
「良いだろう」
ルディがフィンに訊いた。
「お前はまだ戦えるか?」
「微妙だな。奴の部下を同時に三人ぐらいならいける。流石に連戦はきつい。だが、少し休めばそこそこ回復はする」
「……それならどっちかが残ってた方が良いな」
「俺が行こう。お前は治療を頼む。死んだら依頼料が無くなる」
「りょーかい」
「俺が確認出来た限りだと、残りの敵の総数は12人だ」
ルディが薄い反応を示した後、高速で男を追う。
【依頼主と古文書】
ハンスは血みどろになっていた。【無情】が止めの一撃を加えようとした時、大声が聞こえた。
「おい! 一旦引くぞ! 古文書と学者だけで良い!」
「ロッサム様? どうされましたか?」
「【早打ち】と【エルガレイオン】だ!」
「なっ! 何故! そんな情報は!? くっ、お前たち、急ぐぞ!」
部下にそう命じると、即逃げる態勢になる。そして速やかにその場を去って行った。一歩遅れてルディが到着するとハンスらしき男を確保して、一旦戻る。
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