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第七章 醜いお姫様
第7話 呪いの解き方
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【フェアファクス領・フェアファクス公爵家の屋敷】
ティナはカーテンの隙間でジッと身を潜めていた。よく分からないが、警備が突然薄くなったので、一か八か突入したのだ。意外に肝が据わっている。これが元からなのかこの一か月で成長したのか、それは分からない。
彼女が隠れているはチェルシーの部屋。彼女が来るのをずっと待っていた。そして、その扉が開いた。
(チェルシー嬢……ッ)
そっとルーベンから借りた防音の魔具を起動させた。そして、姿を見せた。彼女は突然現れたティナに驚いて後ずさりをした。しかし、意識を強く持って、立て直した。チラッとティナの片手を見ると魔具を持っていたのである程度は察した。
「あら……ごきげんよう……ティナ王女殿下」
「……」
「突然の訪問とは、いかがなさいましたか?」
「貴方の中では私は化け蜘蛛に食べられて死んだのでは?」
「こんな所でその様な茶番は必要ないでしょう……良くぞご無事で戻られました」
「ッ……」
「ご要件は分かっております。解呪の方法でしょう?」
「……教えてください」
「良いでしょう」
「本当ですか!?」
「そんなに驚かなくてもいいではないですか。ここまで生きていてくれたご褒美ですよ」
「なっ……よくもそのような事を言えましたねッ」
「良いのですか? 明かりがずっと灯っていると、誰かが心配して来るかもしれませんよ」
「くっ……お、教えてください」
「愛のある性行為ですよ」
「ッ……え……?」
「だから情交ですよ。目合い、性交。何て言えば分かります?」
チェルシーが指で輪を作り、そこに一指し指を出し入れする。余りの不意打ちにティナは顔を真っ赤にしてたじろいでしまう。
「な、な、なっ……そ、そんなこと!」
「お分かりになられたのですね。お姫様とあろう者がはしたない……ッ」
「ち、違いますっ! そんな事っ」
「何故……こんな解呪条件にしたか分かりますか?」
「……な、何故、ですか……?」
チェルシーが歪んだ笑みになった。
「心身ともに壊したかったの」
「……え……?」
「分からないなら良いわ……いずれ夢から目を覚ます」
「ッ……さ、最後に教えてください……私が貴方に何かしましたかっ? ずっと考えてましたが、心当たりが無くて……傷つけたのなら謝ります……」
「? いいえ、特に何も」
「……な、何も……? それなら何故……どうしてっ」
「まあ、傷つけた、なら正しいですよ。理由は簡単です。貴方が私よりも幸福そうだったから……」
「……あ、貴方も公爵家で、ご両親に愛されて育ったはずです!」
「そうよ……だから、私以上の幸福は許さない……そう、面白くなかったの、貴方の笑顔が……だから今の顔は大好きよ」
「……ッ……そんな……そんな事がッ」
そこでチェルシーが机を思いっきり蹴とばして、ティナにぶつける。彼女はそれに当たって転んでしまった。そして、ドアから出て叫んだ。
「化け蜘蛛よぉぉぉおお! 化け蜘蛛が出たわぁぁああ!」
それを聞いて次々と兵が集まって来た。ティナは魔具を口に入れると蜘蛛に変化して窓から外に逃げ出す。しかし、兵の動きは早く、矢や魔法の雨が降り注ぐ。
(まだっ! まだ死ねません! やっと分かったのですっ。真実がッ)
傷を負いながらも必死に走って逃げていると、物陰に見知った男が現れた。
「こっちだ……」
「ルーベンさん! 何故ここにっ?」
「話は後だ」
彼女は慣れた動きで鞄に入ると、彼が高速で走り去った。そして、宿屋に辿り着く。ルディが遅れて入って来た。
「どうだった?」
「呪いの解き方が分かりました!」
「何だったんだ?」
「ッ……!? あ、愛です! そうです……純愛ですよ! 私なら行けそうです!」
「エドガー王子殿下の事か?」
「は、はい……あの時は彼も混乱していました。冷静になって話し合えば大丈夫です。私達の愛は一度すれ違っただけで冷めるモノではありません」
「俺達は彼の情報を集めた……聞くか?」
「いいえ、自分の耳で確かめたいです」
「そうか……俺達の手は借りずに済みそうか?」
「ええ……ようやく報われた気がします。今まで本当にありがとうございました」
「それは良かった」
「当事者での解決が一番だからな」
ルーベンが微笑んだ。そこに邪気は無い。一瞬だけ悲しそうにも見えた。
「人の心は本当に分からない」
「ああ……そうだな」
ティアが突然ある事を思い出した。そして、柔らかく笑みをこぼした。
「ぁ……」
「どうした?」
「いえ……その……エドガーに以前、幸福とは何でしょうか? そう尋ねたのを思い出しまして」
二人は一瞬でその答えに辿り着く。
「分かった性交だろ」「酒だな」
「「あ、釣りか」」
「ち、違いますよ! 絶対に違います!」
「え? じゃあ何だと?」
「その様な欲望的なのでは無くてですね。もっとこう……愛する者同士がお互いを想い合う心……人と人と日々の繋がり……ご両親やご友人の愛情。人はそこに幸福を感じるのです」
「……なるほどな」
「ほう、お前にそれが分かるのか?」
「いや、とりあえず今度試しに、口説くのに使ってみようかと」
「お前は等級を上げた方が早い」
「お、驚きました」
「何が?」「何がだ?」
「いえ、心に全然響いて無くて、驚きました……ぅぅ……悲しいです……」
「否定はしてないだろ」
「そうですけど」
「そうだ。エドガーは王宮に出入りしているらしいぞ」
「えっ! 本当ですか!?」
彼女は慌てて蜘蛛に変身し、走ろうとしたが、一度振り返るとぴょんぴょんと跳んでお礼を言い、急いで走り去った。ルディが訊いた。
「何故使わない?」
「それは最終手段。呪術は厄介だ。保証は無い」
「なるほど……」
「というより、エドガーと少し遊ぼうかと」
「だろうな……」
二人はゆっくりと立ち上がった。そして、部屋から外に向かって歩き出す。
ティナはカーテンの隙間でジッと身を潜めていた。よく分からないが、警備が突然薄くなったので、一か八か突入したのだ。意外に肝が据わっている。これが元からなのかこの一か月で成長したのか、それは分からない。
彼女が隠れているはチェルシーの部屋。彼女が来るのをずっと待っていた。そして、その扉が開いた。
(チェルシー嬢……ッ)
そっとルーベンから借りた防音の魔具を起動させた。そして、姿を見せた。彼女は突然現れたティナに驚いて後ずさりをした。しかし、意識を強く持って、立て直した。チラッとティナの片手を見ると魔具を持っていたのである程度は察した。
「あら……ごきげんよう……ティナ王女殿下」
「……」
「突然の訪問とは、いかがなさいましたか?」
「貴方の中では私は化け蜘蛛に食べられて死んだのでは?」
「こんな所でその様な茶番は必要ないでしょう……良くぞご無事で戻られました」
「ッ……」
「ご要件は分かっております。解呪の方法でしょう?」
「……教えてください」
「良いでしょう」
「本当ですか!?」
「そんなに驚かなくてもいいではないですか。ここまで生きていてくれたご褒美ですよ」
「なっ……よくもそのような事を言えましたねッ」
「良いのですか? 明かりがずっと灯っていると、誰かが心配して来るかもしれませんよ」
「くっ……お、教えてください」
「愛のある性行為ですよ」
「ッ……え……?」
「だから情交ですよ。目合い、性交。何て言えば分かります?」
チェルシーが指で輪を作り、そこに一指し指を出し入れする。余りの不意打ちにティナは顔を真っ赤にしてたじろいでしまう。
「な、な、なっ……そ、そんなこと!」
「お分かりになられたのですね。お姫様とあろう者がはしたない……ッ」
「ち、違いますっ! そんな事っ」
「何故……こんな解呪条件にしたか分かりますか?」
「……な、何故、ですか……?」
チェルシーが歪んだ笑みになった。
「心身ともに壊したかったの」
「……え……?」
「分からないなら良いわ……いずれ夢から目を覚ます」
「ッ……さ、最後に教えてください……私が貴方に何かしましたかっ? ずっと考えてましたが、心当たりが無くて……傷つけたのなら謝ります……」
「? いいえ、特に何も」
「……な、何も……? それなら何故……どうしてっ」
「まあ、傷つけた、なら正しいですよ。理由は簡単です。貴方が私よりも幸福そうだったから……」
「……あ、貴方も公爵家で、ご両親に愛されて育ったはずです!」
「そうよ……だから、私以上の幸福は許さない……そう、面白くなかったの、貴方の笑顔が……だから今の顔は大好きよ」
「……ッ……そんな……そんな事がッ」
そこでチェルシーが机を思いっきり蹴とばして、ティナにぶつける。彼女はそれに当たって転んでしまった。そして、ドアから出て叫んだ。
「化け蜘蛛よぉぉぉおお! 化け蜘蛛が出たわぁぁああ!」
それを聞いて次々と兵が集まって来た。ティナは魔具を口に入れると蜘蛛に変化して窓から外に逃げ出す。しかし、兵の動きは早く、矢や魔法の雨が降り注ぐ。
(まだっ! まだ死ねません! やっと分かったのですっ。真実がッ)
傷を負いながらも必死に走って逃げていると、物陰に見知った男が現れた。
「こっちだ……」
「ルーベンさん! 何故ここにっ?」
「話は後だ」
彼女は慣れた動きで鞄に入ると、彼が高速で走り去った。そして、宿屋に辿り着く。ルディが遅れて入って来た。
「どうだった?」
「呪いの解き方が分かりました!」
「何だったんだ?」
「ッ……!? あ、愛です! そうです……純愛ですよ! 私なら行けそうです!」
「エドガー王子殿下の事か?」
「は、はい……あの時は彼も混乱していました。冷静になって話し合えば大丈夫です。私達の愛は一度すれ違っただけで冷めるモノではありません」
「俺達は彼の情報を集めた……聞くか?」
「いいえ、自分の耳で確かめたいです」
「そうか……俺達の手は借りずに済みそうか?」
「ええ……ようやく報われた気がします。今まで本当にありがとうございました」
「それは良かった」
「当事者での解決が一番だからな」
ルーベンが微笑んだ。そこに邪気は無い。一瞬だけ悲しそうにも見えた。
「人の心は本当に分からない」
「ああ……そうだな」
ティアが突然ある事を思い出した。そして、柔らかく笑みをこぼした。
「ぁ……」
「どうした?」
「いえ……その……エドガーに以前、幸福とは何でしょうか? そう尋ねたのを思い出しまして」
二人は一瞬でその答えに辿り着く。
「分かった性交だろ」「酒だな」
「「あ、釣りか」」
「ち、違いますよ! 絶対に違います!」
「え? じゃあ何だと?」
「その様な欲望的なのでは無くてですね。もっとこう……愛する者同士がお互いを想い合う心……人と人と日々の繋がり……ご両親やご友人の愛情。人はそこに幸福を感じるのです」
「……なるほどな」
「ほう、お前にそれが分かるのか?」
「いや、とりあえず今度試しに、口説くのに使ってみようかと」
「お前は等級を上げた方が早い」
「お、驚きました」
「何が?」「何がだ?」
「いえ、心に全然響いて無くて、驚きました……ぅぅ……悲しいです……」
「否定はしてないだろ」
「そうですけど」
「そうだ。エドガーは王宮に出入りしているらしいぞ」
「えっ! 本当ですか!?」
彼女は慌てて蜘蛛に変身し、走ろうとしたが、一度振り返るとぴょんぴょんと跳んでお礼を言い、急いで走り去った。ルディが訊いた。
「何故使わない?」
「それは最終手段。呪術は厄介だ。保証は無い」
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