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第八章 謎の男たち
第11話 別れ
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入口付近に戻るとルディたちもいた。先に返って来た様だ。ヘシカがプリシラの兎を見て笑う。
「おいおい、プリシラぁ! 弱そうな使い魔を選んだな」
「この子は凄く勇敢なの!」
「これ見ろよ」
小さな狼の魔物が彼女の足の陰からピョコっと顔を出した。
「そっちも小さいじゃないっ」
「と、思うだろ?」
すると三メートルほどの巨大な狼に変化した。どうやらそういう魔法の様だ。
「!?」
「どうだ、プリシラ?」
「き、君も大きくなれるでしょ?」
兎はプリシラの肩からルーベンに乗り移り、否定する様子を見せる。
「ははは、無理だってよ! 私の使い魔の勝だな!」
「くっ! こうなったら特訓だね!」
「あんまり無茶するなよ。それぞれの使い魔に得手不得手があるんだよ」
ルーベンが撫でると、嬉しそうに体をくっ付けて来る使い魔。それを見て納得する。
「……そっか。ごめんね」
そう言うと兎は彼女の肩に戻った。そして、兎を撫でる。
「さて、俺たちはここまでだ」
「え? もう行くのか?」
「そうだ。一緒に旅しようよ! きっと楽しいよ」
「それも悪く無い、が。俺たちは忙しい」
「また何処かでな」
それだけ言うと彼等は振り返らずに出口から去って行った。
「不思議な奴等だったな」
「うん……でも何処か……」
「ん?」
「あー、なんというか……懐かしい? って思って」
「懐かしい?」
「んー、落ち着く? 自分でも分かんないんだけどね」
「ふっ、まあいい。こいつらを入れる鞄でも買いに行くか」
「あ、さんせー」
姉妹も出口から外に出て何時もの。いや、新しい相棒との旅が始まるのであった。
【暗い部屋】
暗い部屋に蝋燭が一本。書物が散乱している部屋があった。そこには硝子性の入れ物が二つある。一つは幼女が入っていた。彼女は鎖でつながれている。
もう一つは欠けた男の肉体がある。その肉体はアダンのモノであった。
(【早打ち】のあの時の返答。依頼で雑魚共を守っていた。しっかりと依頼要求は守るタイプの様だ。だが、次に戦う時に同じ戦法をしても効果が薄そうだ。俺の手を打ちはばれているからな。もっと別の戦い方を考えなければ)
「クククク、俺は【不死】。何度でも挑んでやるさ。待ってろよ……今度は必ず……ハーッハッハッハ!」
【帰還】
都市から出て少し歩く。外界に出ようとした時、男が話しかけて来た。
「よっ」
「フィンか」
「いやー、噂って言うのは当てにならねーのな」
「……」
「あらゆる闇が恐れる奴等が……まさか、あんな小娘を助けるなんてな」
「ネタにするのか?」
「しない。クク、したら殺されるだろ」
「はは、殺さねーよ」
「……安心したよ」
かまをかけて見るが、表情や動作に何の変化も無い。折角の機会なのでもっと深く訊いてみようと思ったが、冷静になって止めた。引き際の重要だ。
「まあ……それをしたら危険に晒されるのはあの姉妹だ。美女が死ぬのは俺の望む所じゃない」
「で、何の用だ?」
「用ってほどじゃ無い。ただの別れの挨拶だ」
「ほんと、この世界に似合わねーやつ」
「るっせー。ん、まあ。それじゃあな。ルーベン、ルディ……」
「ああ……」
「生きてたら、どこかでな」
フィンはそれを聞いて少し笑うと、何処かに去って行く。そして、残った二人も山の中へと消えて行った。
☆☆☆☆☆☆☆
お読みいただきありがとうございました。
「かご喰らいの龍~」はきりが良いので、一旦ここで完結とさせていただきます。
「おいおい、プリシラぁ! 弱そうな使い魔を選んだな」
「この子は凄く勇敢なの!」
「これ見ろよ」
小さな狼の魔物が彼女の足の陰からピョコっと顔を出した。
「そっちも小さいじゃないっ」
「と、思うだろ?」
すると三メートルほどの巨大な狼に変化した。どうやらそういう魔法の様だ。
「!?」
「どうだ、プリシラ?」
「き、君も大きくなれるでしょ?」
兎はプリシラの肩からルーベンに乗り移り、否定する様子を見せる。
「ははは、無理だってよ! 私の使い魔の勝だな!」
「くっ! こうなったら特訓だね!」
「あんまり無茶するなよ。それぞれの使い魔に得手不得手があるんだよ」
ルーベンが撫でると、嬉しそうに体をくっ付けて来る使い魔。それを見て納得する。
「……そっか。ごめんね」
そう言うと兎は彼女の肩に戻った。そして、兎を撫でる。
「さて、俺たちはここまでだ」
「え? もう行くのか?」
「そうだ。一緒に旅しようよ! きっと楽しいよ」
「それも悪く無い、が。俺たちは忙しい」
「また何処かでな」
それだけ言うと彼等は振り返らずに出口から去って行った。
「不思議な奴等だったな」
「うん……でも何処か……」
「ん?」
「あー、なんというか……懐かしい? って思って」
「懐かしい?」
「んー、落ち着く? 自分でも分かんないんだけどね」
「ふっ、まあいい。こいつらを入れる鞄でも買いに行くか」
「あ、さんせー」
姉妹も出口から外に出て何時もの。いや、新しい相棒との旅が始まるのであった。
【暗い部屋】
暗い部屋に蝋燭が一本。書物が散乱している部屋があった。そこには硝子性の入れ物が二つある。一つは幼女が入っていた。彼女は鎖でつながれている。
もう一つは欠けた男の肉体がある。その肉体はアダンのモノであった。
(【早打ち】のあの時の返答。依頼で雑魚共を守っていた。しっかりと依頼要求は守るタイプの様だ。だが、次に戦う時に同じ戦法をしても効果が薄そうだ。俺の手を打ちはばれているからな。もっと別の戦い方を考えなければ)
「クククク、俺は【不死】。何度でも挑んでやるさ。待ってろよ……今度は必ず……ハーッハッハッハ!」
【帰還】
都市から出て少し歩く。外界に出ようとした時、男が話しかけて来た。
「よっ」
「フィンか」
「いやー、噂って言うのは当てにならねーのな」
「……」
「あらゆる闇が恐れる奴等が……まさか、あんな小娘を助けるなんてな」
「ネタにするのか?」
「しない。クク、したら殺されるだろ」
「はは、殺さねーよ」
「……安心したよ」
かまをかけて見るが、表情や動作に何の変化も無い。折角の機会なのでもっと深く訊いてみようと思ったが、冷静になって止めた。引き際の重要だ。
「まあ……それをしたら危険に晒されるのはあの姉妹だ。美女が死ぬのは俺の望む所じゃない」
「で、何の用だ?」
「用ってほどじゃ無い。ただの別れの挨拶だ」
「ほんと、この世界に似合わねーやつ」
「るっせー。ん、まあ。それじゃあな。ルーベン、ルディ……」
「ああ……」
「生きてたら、どこかでな」
フィンはそれを聞いて少し笑うと、何処かに去って行く。そして、残った二人も山の中へと消えて行った。
☆☆☆☆☆☆☆
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「かご喰らいの龍~」はきりが良いので、一旦ここで完結とさせていただきます。
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