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第六章 受付嬢ナディアの災難
第3話 黒い獣
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キャラ紹介
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1、ルース:鎧を身に着けている。光属性の魔剣(魔導剣)を持つ。
2、戦斧の男。高価なフルプレートメイルに身を包み、地属性の魔戦斧を持つ。
3、女魔導師。魔法の媒体は魔導書。炎魔法が得意。
4、軽装女戦士。斧槍を持ち。素早く動ける。
5、格闘家の男。素手で敵を倒す。
6、回復魔導師の女。魔法媒体は指揮棒の様な杖。傷の治療。体力回復、身体強化などの支援を行う。
1,ワイアット。軽装に双剣を持つ速度に特化した剣士。
2,男魔導師。何故かトンファーを両手に持っている魔導師。その武器が魔法媒体である。風魔法が得意。
3,弓の女。軽装で魔弓を持つ。放った矢を操り敵を狙う。
4,短剣二刀流の男。ワイアットに憧れている。双剣よりも短い剣で戦う。
5,両手剣の男。大きな剣を持って敵を砕く。
6,槍の女。軽装で魔槍を持って戦う。身体能力の強化の魔法で自身を強化している。
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【目的地まで半分を切った頃】
一度野営を終えた後、さらに進むルース一行は順調に魔物を倒していた。商人も緊張は無くなりニコニコとしていた。
「ふぅー。本当に助かりました。何とお礼を言ってよいのやら」
それを聞いてルースが困った顔で言う。
「まだまだ、距離はあります。油断せずに行きましょう」
「はっはっはっはっは! その通りですな!」
彼等がかなり広くなっている平底谷に差し掛かった時、遠くで獣の遠吠えが聞こえた。ワイアットが険しい表情で言う。
「魔狼か?」
ルースが皆に下りて、戦闘態勢に入るように促す。皆が戦闘態勢になり周りを見ていると何も無い。そこで魔弓の女が言う。
「斥候に行かせた方が良いんじゃない? ていうか私行けるよ?」
「……もう少し待ってくれ。嫌な予感がする」
「嫌な予感って?」
「分からない。だけど体が震えている……」
「ん? ルースが? 今までそんなことあったっけ? そもそも勘の鋭い体質じゃないでしょ」
そこで急に辺りの魔物が騒ぎ出す。その鳴き声は遠くへと去って行く。
「おい……何か……来るぞっ」
そこに現れたのは大きな黒い獣。八メートルはあるだろう巨大な魔物。狼に近い形をしているが、まるで影のように輪郭が不安定だ。遠くからゆっくりと近づいて来た。
この時点で普通の魔物の動きとは明らかに違う。捕食が目的では無い。狩りをする様子が感じられないのであった。
「ひぃぃ! 助けてくれぇぃ!」
怯えながら商人は馬車に隠れた。
「なに……あれ……?」
「分からない……」
「影……の魔物っ……まさか」
「知っているのかっ?」
「小さい頃。おとぎ話で聞いた事がある……その魔物はこう呼ばれていた。『偽りの絶望』……と」
「……な、何を言ってるの。そんなのっ」
近づいて来た魔物は大きく威嚇するようにまたしても遠吠えする。それだけで体中が震えだす。ルースが叫び、ワイアットが指示を出した。
「か、構えろっ! 皆、気圧されるなッ」
「おい! 牽制して様子をみろっ」
「やってみる!」
二人の魔導師と弓使いが遠距離からの攻撃を放つ。風の塊に矢、それに炎が渦を巻きながら魔物に襲い掛かる。だが、魔物の背中から黒いナニかが伸びて、遠距離攻撃を全て薙ぎ払う。
「変幻自在なのか!?」
「ルース! てめーは分析してろ! 俺が攻めるッ」
ワイアットがそう叫んだと同時に魔物に襲い掛かる。三回ほど素早く切るがダメージがまるで無い。そして、魔物が凄まじい速度の前足で攻撃して来る。鋭い爪がワイアットの服と皮一枚を切った。
「くっ」
続けて口を大きく開けて鋭い牙で襲い掛かる。ワイアットは顔を歪めた。間に合わない。ルースが叫ぶ。
「ワイアットぉぉぉおお!」
そこで、短剣二刀流の男と斧槍の女が左右に別れて魔物の首を狙う。魔物はそれを相手にしなかった。首から棘の様なモノが伸び、逆に彼等を襲った。
魔物が彼の体を嚙みちぎらんとした時、戦斧の男が足元を狙い、両手剣の男が魔物の頬を思いっきり切りつけた。魔物は大きく怯んだ。そして、間一髪でワイアットは助かった様だ。
短剣二刀流の男と斧槍の女も、首からの伸びた棘を数カ所受けてしまったが、かすり傷で済んだ。魔物が怯んでいる内に、一旦皆が離れて呼吸を整える。
「助かったぜお前等……」
ワイアットが素直に礼を言うと、皆は彼の方を見ずに微笑みで返した。上手く声も出せない。目の前のソレから意識をそらすのが恐ろしいかったからだ。
後ろで指揮棒を振っている女性が光の球を飛ばすと、それに触れた者達の傷が癒えて行く。ルースが彼女に言う。
「攻撃をして欲しい」
「わ、私がですか!?」
「ああ……あれは硬すぎる。ワイアットの攻撃でも厳しい。だが奴は影のようだと言った。ならばここは……」
「分かりました。少し時間をください」
「皆、深追いはするな。時間を稼いでくれ」
ルースが指示を出す。素早い者たち、ワイアットと短剣二刀流を主軸に援護する。男魔導師の風と矢を使って棘攻撃を先に誘発させる。どうやら一度に出せる棘の数には限界がありそうだと推測したからだ。
誘発した棘は上手く避けてもらうのだが、女魔導師の炎の剣で何本か削る事で、避け易くする。それでも避けられない時には、戦斧と両手剣の男達に待機をさせている。槍と斧槍の女性と素手の男がさらにカバー。もしくは交代して休ませる。
こうして彼等が魔物からの攻撃に耐えていると、後ろに強く光り輝く女性がいた。完成したようだ。ルースが合図をすると、数本の光の剣が空中に出現し、それを高速で放った。
余りの速度に魔物はそれを棘で防げない。直撃した瞬間に魔物は大きく悲鳴を上げた。
それを見た彼等はその好機を逃さず一斉に自分が持ちうる最高の高火力で攻撃した。ルースの剣が強く輝き魔物に大ダメージを与える。やはり彼の思惑通り、光の属性に弱いらしい。
「やったか!?」
その時、苦しむ魔物に異変が現れる。地面に黒い何かが広がって行く。
「な、何だこれは」
その黒い沼のようなモノから上に向かって鋭い棘が勢いよく無数に現れた。回避態勢を取る。しかし、斧槍の女はそれに反応出来ない。彼女が死を悟った瞬間、誰かに押された。素手の男だ。
「な、んで……っ」
斧槍の女をかばった男は、無数の棘にすら抜かれて口から血を流して絶命した。彼女は叫ぶ。しかし、その叫びは誰にも届かない。その時、彼等は見失った魔物を探してした。
どうやってかその魔物が突然消えた。そして、いつの間にか光を放った女性の背後にいた。皆が一斉に彼女の方を向いて叫んだ。
「避けろぉぉぉおお!」
彼女は腹部を食い千切られた。彼女のおぞましい悲鳴と共に、口から大量の血が滴り落ちる。腹部からは臓器がはみ出していた。
「ぃ、だい……いだいよぉ……誰がぁ……」
さらに魔物から大量の小さな頭が現れむしゃむしゃと彼女を食べ始めた。彼女から液体が染み出す。
「やめでぇ……ぃだい……ぐるじぃ……だずげ……っ」
彼女はずっと首を上げて、彼等を見て囁いていたが、やがて真上を向いて白目になった。彼等は数秒固まった。そこでルースが大声で叫んだ。
「やめろぉぉおおぉぉおお!」
獣も大きく声を上げて彼等を威嚇する。ルースがそこで突っ込もうとするが戦斧の男が掴んで止める。ワイアットが商人に叫んだ。
「おっさん! 早く逃げろ! 俺たちが殿をする!」
その声を聞いて商人が混乱しながらも馬車を走らせた。暴れるルースにワイアットが叫ぶ。
「ルース! 大人しくしろッ。全滅するぞッ」
「……くっ。くそぉ! くそぉぉぉおおお! ……すまない……すまないっ……ッ」
いつの間にか、死んだ素手の男が魔物の付近に移動していた。魔物が何だかの方法で運んだようだ。先に食べていた女性を中途半端に残して、彼も同じく食い千切る。それを見ながら短剣二刀流の男が問う。
「ワイアット……作戦はあるのか?」
「正直ない……」
「……」
「兎に角だ。おっさんを逃がしたら俺達も逃げるぞ」
「ああ……」
二刀流の男にワイアットが言う。
「お前は先におっさんを追ってくれ」
「はぁ? 何をっ」
「俺とルースを除けばお前が一番速い。誰がおっさんを守るんだ……行けっ」
「……くっ、分かった……」
男が静かに馬車の方に向かう。残ったルース達は死んだ者達に謝りながらそれを見つめていた。下手に動けば彼に目標が移ってしまうからだ。そして、馬車との距離が空くと、彼等は動き出す。
一応皆で静かに逃げようとするが、魔物は食べるのを止めて立ち上がる。
「駄目か……」
「行くぞ」
「ああ……」
「生き延びるぞッ」
「当たり前だッ」
ルースとワイアットを先頭に、彼等は魔物の方へと走り出す。
キャラ紹介
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1、ルース:鎧を身に着けている。光属性の魔剣(魔導剣)を持つ。
2、戦斧の男。高価なフルプレートメイルに身を包み、地属性の魔戦斧を持つ。
3、女魔導師。魔法の媒体は魔導書。炎魔法が得意。
4、軽装女戦士。斧槍を持ち。素早く動ける。
5、格闘家の男。素手で敵を倒す。
6、回復魔導師の女。魔法媒体は指揮棒の様な杖。傷の治療。体力回復、身体強化などの支援を行う。
1,ワイアット。軽装に双剣を持つ速度に特化した剣士。
2,男魔導師。何故かトンファーを両手に持っている魔導師。その武器が魔法媒体である。風魔法が得意。
3,弓の女。軽装で魔弓を持つ。放った矢を操り敵を狙う。
4,短剣二刀流の男。ワイアットに憧れている。双剣よりも短い剣で戦う。
5,両手剣の男。大きな剣を持って敵を砕く。
6,槍の女。軽装で魔槍を持って戦う。身体能力の強化の魔法で自身を強化している。
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【目的地まで半分を切った頃】
一度野営を終えた後、さらに進むルース一行は順調に魔物を倒していた。商人も緊張は無くなりニコニコとしていた。
「ふぅー。本当に助かりました。何とお礼を言ってよいのやら」
それを聞いてルースが困った顔で言う。
「まだまだ、距離はあります。油断せずに行きましょう」
「はっはっはっはっは! その通りですな!」
彼等がかなり広くなっている平底谷に差し掛かった時、遠くで獣の遠吠えが聞こえた。ワイアットが険しい表情で言う。
「魔狼か?」
ルースが皆に下りて、戦闘態勢に入るように促す。皆が戦闘態勢になり周りを見ていると何も無い。そこで魔弓の女が言う。
「斥候に行かせた方が良いんじゃない? ていうか私行けるよ?」
「……もう少し待ってくれ。嫌な予感がする」
「嫌な予感って?」
「分からない。だけど体が震えている……」
「ん? ルースが? 今までそんなことあったっけ? そもそも勘の鋭い体質じゃないでしょ」
そこで急に辺りの魔物が騒ぎ出す。その鳴き声は遠くへと去って行く。
「おい……何か……来るぞっ」
そこに現れたのは大きな黒い獣。八メートルはあるだろう巨大な魔物。狼に近い形をしているが、まるで影のように輪郭が不安定だ。遠くからゆっくりと近づいて来た。
この時点で普通の魔物の動きとは明らかに違う。捕食が目的では無い。狩りをする様子が感じられないのであった。
「ひぃぃ! 助けてくれぇぃ!」
怯えながら商人は馬車に隠れた。
「なに……あれ……?」
「分からない……」
「影……の魔物っ……まさか」
「知っているのかっ?」
「小さい頃。おとぎ話で聞いた事がある……その魔物はこう呼ばれていた。『偽りの絶望』……と」
「……な、何を言ってるの。そんなのっ」
近づいて来た魔物は大きく威嚇するようにまたしても遠吠えする。それだけで体中が震えだす。ルースが叫び、ワイアットが指示を出した。
「か、構えろっ! 皆、気圧されるなッ」
「おい! 牽制して様子をみろっ」
「やってみる!」
二人の魔導師と弓使いが遠距離からの攻撃を放つ。風の塊に矢、それに炎が渦を巻きながら魔物に襲い掛かる。だが、魔物の背中から黒いナニかが伸びて、遠距離攻撃を全て薙ぎ払う。
「変幻自在なのか!?」
「ルース! てめーは分析してろ! 俺が攻めるッ」
ワイアットがそう叫んだと同時に魔物に襲い掛かる。三回ほど素早く切るがダメージがまるで無い。そして、魔物が凄まじい速度の前足で攻撃して来る。鋭い爪がワイアットの服と皮一枚を切った。
「くっ」
続けて口を大きく開けて鋭い牙で襲い掛かる。ワイアットは顔を歪めた。間に合わない。ルースが叫ぶ。
「ワイアットぉぉぉおお!」
そこで、短剣二刀流の男と斧槍の女が左右に別れて魔物の首を狙う。魔物はそれを相手にしなかった。首から棘の様なモノが伸び、逆に彼等を襲った。
魔物が彼の体を嚙みちぎらんとした時、戦斧の男が足元を狙い、両手剣の男が魔物の頬を思いっきり切りつけた。魔物は大きく怯んだ。そして、間一髪でワイアットは助かった様だ。
短剣二刀流の男と斧槍の女も、首からの伸びた棘を数カ所受けてしまったが、かすり傷で済んだ。魔物が怯んでいる内に、一旦皆が離れて呼吸を整える。
「助かったぜお前等……」
ワイアットが素直に礼を言うと、皆は彼の方を見ずに微笑みで返した。上手く声も出せない。目の前のソレから意識をそらすのが恐ろしいかったからだ。
後ろで指揮棒を振っている女性が光の球を飛ばすと、それに触れた者達の傷が癒えて行く。ルースが彼女に言う。
「攻撃をして欲しい」
「わ、私がですか!?」
「ああ……あれは硬すぎる。ワイアットの攻撃でも厳しい。だが奴は影のようだと言った。ならばここは……」
「分かりました。少し時間をください」
「皆、深追いはするな。時間を稼いでくれ」
ルースが指示を出す。素早い者たち、ワイアットと短剣二刀流を主軸に援護する。男魔導師の風と矢を使って棘攻撃を先に誘発させる。どうやら一度に出せる棘の数には限界がありそうだと推測したからだ。
誘発した棘は上手く避けてもらうのだが、女魔導師の炎の剣で何本か削る事で、避け易くする。それでも避けられない時には、戦斧と両手剣の男達に待機をさせている。槍と斧槍の女性と素手の男がさらにカバー。もしくは交代して休ませる。
こうして彼等が魔物からの攻撃に耐えていると、後ろに強く光り輝く女性がいた。完成したようだ。ルースが合図をすると、数本の光の剣が空中に出現し、それを高速で放った。
余りの速度に魔物はそれを棘で防げない。直撃した瞬間に魔物は大きく悲鳴を上げた。
それを見た彼等はその好機を逃さず一斉に自分が持ちうる最高の高火力で攻撃した。ルースの剣が強く輝き魔物に大ダメージを与える。やはり彼の思惑通り、光の属性に弱いらしい。
「やったか!?」
その時、苦しむ魔物に異変が現れる。地面に黒い何かが広がって行く。
「な、何だこれは」
その黒い沼のようなモノから上に向かって鋭い棘が勢いよく無数に現れた。回避態勢を取る。しかし、斧槍の女はそれに反応出来ない。彼女が死を悟った瞬間、誰かに押された。素手の男だ。
「な、んで……っ」
斧槍の女をかばった男は、無数の棘にすら抜かれて口から血を流して絶命した。彼女は叫ぶ。しかし、その叫びは誰にも届かない。その時、彼等は見失った魔物を探してした。
どうやってかその魔物が突然消えた。そして、いつの間にか光を放った女性の背後にいた。皆が一斉に彼女の方を向いて叫んだ。
「避けろぉぉぉおお!」
彼女は腹部を食い千切られた。彼女のおぞましい悲鳴と共に、口から大量の血が滴り落ちる。腹部からは臓器がはみ出していた。
「ぃ、だい……いだいよぉ……誰がぁ……」
さらに魔物から大量の小さな頭が現れむしゃむしゃと彼女を食べ始めた。彼女から液体が染み出す。
「やめでぇ……ぃだい……ぐるじぃ……だずげ……っ」
彼女はずっと首を上げて、彼等を見て囁いていたが、やがて真上を向いて白目になった。彼等は数秒固まった。そこでルースが大声で叫んだ。
「やめろぉぉおおぉぉおお!」
獣も大きく声を上げて彼等を威嚇する。ルースがそこで突っ込もうとするが戦斧の男が掴んで止める。ワイアットが商人に叫んだ。
「おっさん! 早く逃げろ! 俺たちが殿をする!」
その声を聞いて商人が混乱しながらも馬車を走らせた。暴れるルースにワイアットが叫ぶ。
「ルース! 大人しくしろッ。全滅するぞッ」
「……くっ。くそぉ! くそぉぉぉおおお! ……すまない……すまないっ……ッ」
いつの間にか、死んだ素手の男が魔物の付近に移動していた。魔物が何だかの方法で運んだようだ。先に食べていた女性を中途半端に残して、彼も同じく食い千切る。それを見ながら短剣二刀流の男が問う。
「ワイアット……作戦はあるのか?」
「正直ない……」
「……」
「兎に角だ。おっさんを逃がしたら俺達も逃げるぞ」
「ああ……」
二刀流の男にワイアットが言う。
「お前は先におっさんを追ってくれ」
「はぁ? 何をっ」
「俺とルースを除けばお前が一番速い。誰がおっさんを守るんだ……行けっ」
「……くっ、分かった……」
男が静かに馬車の方に向かう。残ったルース達は死んだ者達に謝りながらそれを見つめていた。下手に動けば彼に目標が移ってしまうからだ。そして、馬車との距離が空くと、彼等は動き出す。
一応皆で静かに逃げようとするが、魔物は食べるのを止めて立ち上がる。
「駄目か……」
「行くぞ」
「ああ……」
「生き延びるぞッ」
「当たり前だッ」
ルースとワイアットを先頭に、彼等は魔物の方へと走り出す。
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