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第五章 怪物
第8話 釣れた
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ルーベン達は依頼主に結果報告し、一旦は依頼は完了となった。あれから殺人は起こっていない。まだ数日なので、確定では無いが概ね解決の方向に倒れている。
現在、二人は滞在していた街から出て、西側に来ていた。当初の目的であった湖ではなく、流れの早い川を見ていた。珍しい魚が釣れるかもとルディが腰を下ろしたのだ。しばらく釣りをしているとルーベンが少し退屈そうにいう。
「おい、こんな所に魚がいるとは思えないぞ」
「お前は魚の一体何を知っているんだ。水の中は未知で溢れている。巨大な魚がいるかもしれないだろ」
「……そうかぁ?」
その時、ルーベンの竿が大きくしなった。
「うぉっ! まさか! でかいぞ!」
「ほら見た事かっ」
ルディが嬉しそうに手作り感のある網を構える。そして、ルーベンがそれを一本釣りのように思いっきり引き上げると子供が引っかかっていた。地面に落ちる寸前に網で受け止めて優しく下ろした。
「?」「?」
「……亜人? 水に強い系か?」
「いや……人族に見える。水には弱そうだ」
ルーベンが子供の気道を確保して、心臓マッサージと人工呼吸をすると息を吹き返した。遠くから複数人の声が聞こえた。
「おい! いたか?」
「駄目だ、いねぇっ!」
「もっと下流に行ったか?」
「おい、急ぐぞ」
その声が聞こえたからなのか。子供はパチリと目を開けた。少しの間むせていたが、息を整える。
「ここはっ……あ、あんたらは……」
「向こうから来る奴等とは知り合いか?」
「なっ。く、くそぉっ。離せよッ!」
子供は多少ふらつきながら立ち上がると、不自然な小走りで森の中へと去って行った。まだ回復しきれていないのだろう。だが、それでいてあれ程動くとは、凄まじい生命力だ。
それは街の方面であった。濡れた地面をルディが風魔法の応用、温風を作り乾かしていた。
「気を取り直して湖にでも行くか」
「そうだな」
しかし、遠くから来た男達がこちらに気が付き、速度を上げて近づいて来た。
「おい。この辺りでガキを見なかったかッ」
「見てない」
「おいっ、本当かッ?」
「本当だ。それよりもここで魚は釣れるか?」
「釣れる訳ねーだろ……俺達も地元じゃないが、こんなやばい川。見れば分かるだろ」
「……」
「にしてもっ、本当にガキを見てないんだなッ?」
「お前達みたいな怖い奴等に嘘を吐いてどうする? 後からどんな目に合わされるか」
「……それもそうだな。おい、もしクソガキを見つけたらすぐに教えろっ」
「任せろ」
そう言い残すと男達は連絡先を教えないまま下流へと走って行った。
「何だぁ、あのおっちょこちょいのおっさん達は?」
「さあな。だが、あの時の男達とは違うみたいだな」
「みたいだな。あんな子供にどれだけの人数を……と言いたいが」
「あいつはそこそこ強い。多少は理解出来る」
この前街で会った際に二人が出会った子供だ。そしてその子は、ルーベンが去り際に、何の脈絡もなしに投げた銅貨を難なく掴んだのだ。しかも彼はかなりの速度で、それを投げていた。
彼等は適当に会話をしながら目的地に向かう。湖に着くと早速釣りを始めた。すると釣れるは釣れるはで、彼等はご機嫌になっていた。日が落ちた頃に彼等は釣った魚を焼いていた。
「旨いな」
「当たり前だ。新鮮だからな」
ルーベンが美味しそうに食べているとふと思い出した。
「そういえばあの子供、街方面に行ったよな」
「本人は意識してなさそうだが、それでも良いんじゃないか。一度街から出てこそっと戻る」
「いや、あいつが実は金持ちとかで、攫われるなら、それで終わりなんだが。もしも、あの街で殺されたら……」
「……無関係の者から見れば殺人事件が終わって無い事になる、か。それは面倒だな」
「戻るか……」
「そうだな。だが、俺達はずっと動きっぱなしだ。20分だけ仮眠をとるぞ」
「りょーかい」
彼等はは二人同時に寝始めた。見張りなどは無い。二人の意識が無くなり、夢の中へと落ちていく。
それは短い時間だった。彼等を起こしたのは魔物だった。ガルルと唸り声をだしていた。彼等は攻撃をされる前に目を覚ますと同時に行動を開始する。魔糸に絡まって暴れる大型の魔物を氷の魔法で牽制、剣で魔物の首を間入れずに切り落とした。
「丁度頃合いだな」
「空気の読める魔物だ」
魔物の腕を切り落とすと湖に投げる。すると肉食系の魚がパシャパシャと音を鳴らして、それを食べ始める。それを確認した二人は湖に魔物を放り投げた。
「美味しそうだが、仕方ない」
仮眠をとった後、森を駆け抜けて一気に街に戻る二人。その頃には日が昇り、すっかり昼になろうとしていた。
現在、二人は滞在していた街から出て、西側に来ていた。当初の目的であった湖ではなく、流れの早い川を見ていた。珍しい魚が釣れるかもとルディが腰を下ろしたのだ。しばらく釣りをしているとルーベンが少し退屈そうにいう。
「おい、こんな所に魚がいるとは思えないぞ」
「お前は魚の一体何を知っているんだ。水の中は未知で溢れている。巨大な魚がいるかもしれないだろ」
「……そうかぁ?」
その時、ルーベンの竿が大きくしなった。
「うぉっ! まさか! でかいぞ!」
「ほら見た事かっ」
ルディが嬉しそうに手作り感のある網を構える。そして、ルーベンがそれを一本釣りのように思いっきり引き上げると子供が引っかかっていた。地面に落ちる寸前に網で受け止めて優しく下ろした。
「?」「?」
「……亜人? 水に強い系か?」
「いや……人族に見える。水には弱そうだ」
ルーベンが子供の気道を確保して、心臓マッサージと人工呼吸をすると息を吹き返した。遠くから複数人の声が聞こえた。
「おい! いたか?」
「駄目だ、いねぇっ!」
「もっと下流に行ったか?」
「おい、急ぐぞ」
その声が聞こえたからなのか。子供はパチリと目を開けた。少しの間むせていたが、息を整える。
「ここはっ……あ、あんたらは……」
「向こうから来る奴等とは知り合いか?」
「なっ。く、くそぉっ。離せよッ!」
子供は多少ふらつきながら立ち上がると、不自然な小走りで森の中へと去って行った。まだ回復しきれていないのだろう。だが、それでいてあれ程動くとは、凄まじい生命力だ。
それは街の方面であった。濡れた地面をルディが風魔法の応用、温風を作り乾かしていた。
「気を取り直して湖にでも行くか」
「そうだな」
しかし、遠くから来た男達がこちらに気が付き、速度を上げて近づいて来た。
「おい。この辺りでガキを見なかったかッ」
「見てない」
「おいっ、本当かッ?」
「本当だ。それよりもここで魚は釣れるか?」
「釣れる訳ねーだろ……俺達も地元じゃないが、こんなやばい川。見れば分かるだろ」
「……」
「にしてもっ、本当にガキを見てないんだなッ?」
「お前達みたいな怖い奴等に嘘を吐いてどうする? 後からどんな目に合わされるか」
「……それもそうだな。おい、もしクソガキを見つけたらすぐに教えろっ」
「任せろ」
そう言い残すと男達は連絡先を教えないまま下流へと走って行った。
「何だぁ、あのおっちょこちょいのおっさん達は?」
「さあな。だが、あの時の男達とは違うみたいだな」
「みたいだな。あんな子供にどれだけの人数を……と言いたいが」
「あいつはそこそこ強い。多少は理解出来る」
この前街で会った際に二人が出会った子供だ。そしてその子は、ルーベンが去り際に、何の脈絡もなしに投げた銅貨を難なく掴んだのだ。しかも彼はかなりの速度で、それを投げていた。
彼等は適当に会話をしながら目的地に向かう。湖に着くと早速釣りを始めた。すると釣れるは釣れるはで、彼等はご機嫌になっていた。日が落ちた頃に彼等は釣った魚を焼いていた。
「旨いな」
「当たり前だ。新鮮だからな」
ルーベンが美味しそうに食べているとふと思い出した。
「そういえばあの子供、街方面に行ったよな」
「本人は意識してなさそうだが、それでも良いんじゃないか。一度街から出てこそっと戻る」
「いや、あいつが実は金持ちとかで、攫われるなら、それで終わりなんだが。もしも、あの街で殺されたら……」
「……無関係の者から見れば殺人事件が終わって無い事になる、か。それは面倒だな」
「戻るか……」
「そうだな。だが、俺達はずっと動きっぱなしだ。20分だけ仮眠をとるぞ」
「りょーかい」
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それは短い時間だった。彼等を起こしたのは魔物だった。ガルルと唸り声をだしていた。彼等は攻撃をされる前に目を覚ますと同時に行動を開始する。魔糸に絡まって暴れる大型の魔物を氷の魔法で牽制、剣で魔物の首を間入れずに切り落とした。
「丁度頃合いだな」
「空気の読める魔物だ」
魔物の腕を切り落とすと湖に投げる。すると肉食系の魚がパシャパシャと音を鳴らして、それを食べ始める。それを確認した二人は湖に魔物を放り投げた。
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