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第四章 忍び寄る影。実は忍んでない
第2話 成長と変化
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プリシラは自分でも驚いていた。まさか自分とクロウで依頼をする事になるとは。今更ながら何でこんな事をしてるのかが分からなかった。
ルーベンは大きな鞄を持っていた。中には魔素を回復させる魔具が沢山入っていた。他にも色々と使える物を鞄に詰め込んでいるようだ。
「何でそんなに魔具を持ってるのよ? 白等級の稼ぎじゃ無理だよね」
「女性からよくもらえる」
「えー、幻覚? 嘘つきなよ……そんな子いないでしょ~」
「いるんだなーこれが」
「ふ~ん……」
ルーベンが良く変身している男、デーヴィッドの金のばらまき方は異常だ。彼をキープにするべく女性達は定期的にプレゼントで彼を喜ばせるのだ。だから彼は嘘は言っていない。
今回の依頼は薬用のハーブを取って来るモノだ。それは山の奥にしか無い。魔物もかなりの強さを持つ。そこそこの距離なので馬に乗って目的地に向かうと、数時間ほどで到着する。
プリシラは目的地を目の前に、未だに何故ここに来る事を選んだのかが不明だった。自分の心が分からない。しかし、来たからにはやり遂げなければならないのがギルドの依頼だ。
プリシラは緊張していた。今日はお姉ちゃんと一緒ではない。何よりも足手纏いが居る。
彼女は足が前に出なかった。一歩踏み出すのを恐れていた。それをルーベンは後ろでジっと待っていた。深呼吸をした後、プリシラが声を張り上げた。
「……それじゃあ行くよっ」
しかし、それは無意識に自分に放ったものかもしれない。その山に踏み込むが彼女はいつも通りではない。魔物を煽ってる暇など無かった。自分だけならまだしも、ルーベンにも容赦なく魔物が襲い掛かる。それを地魔法の石の礫を使って排除する。冷静に先を読みながら。慎重に、そして時に大胆に。
魔物数が多い時には早めに強めの魔法を使う。地面から棘が現れルーベンに襲い掛かる魔物を倒す。全部倒せなくてもそれが壁代わりになり、彼への攻撃を阻んだ。そんなに進んでないはずなのにプリシラは汗だくになっていた。
「クロウっ。魔素がやばい。魔具を頂戴ッ……」
「はい」
「き、君は気楽だね……私が死んだらどうするの?」
「その時は終わりだ。一緒に死ぬだけだろ」
「えっ……ほ、本当に言ってる?」
「なわけねーだろ」
「……生き残れる方法があるの?」
「プリシラを信じてるんだよ。それ以外に生き残る方法は無い」
「……アハハ♪ 凄ーい。思った以上に狂ってるね。君……」
そこからも彼女はギリギリの戦いをしながらも進む。目的のモノがある付近に到達した時、予想外の数の魔物に囲まれてしまう。彼女はその状況を打破するべく早めに大きな魔法を使う。
地面から土の板が四枚出て来てルーベンを取り囲って守る。さらに土の板が地面から盛り上がって自分を持ち上げる。一旦高い位置に逃げたのだ。
ルーベンの安全を確保しながらも、さらに自分の身も守って反撃が出来る。だが、多少の時間稼ぎは出来るだろうが、魔物はそれにすぐに対応して来るだろう。
その前に礫で数を減らす。数体の魔物がその板に上って来た。上がって来た瞬間を狙って魔物を撃ち抜く。何とか全て排除するも彼女は疲れ切っていた。
「はぁはぁはぁ……」
「もう少しで着く。頑張れ」
「……」
何も言う気力もないのか、無言でルーベンを見るだけだった。しかし、その目には彼を守ると追い意志が感じられる。あの時の借りを返そうとしているのだろうか。
「そこは崖になってる。魔物が来るのが難しい地形がある」
「……詳しいね……」
彼女は何とか声を絞り出した。
「ギルドの奴等から聞いた」
「そう……」
その後も何体か魔物を倒しつつ進むと、多少危険だったが、崖の傍、というよりも崖の中間の出っ張りがあり、そこに休める所があった。
汗だくのプリシラはようやく座れるのだと、苦しそうだが、笑顔を見せた。彼女は座るどころか狭い場所に寝転んだ。
「はぁ~、死ぬかと思った~……ッ」
「そうだな」
「他人事みたいにゆーなぁー」
彼女は嬉しそうに言う。ルーベンが魔素を回復させる魔具を持ち、プリシラに使用する。もう片方の手で水を渡す。彼女は少し起き上がって、それをゴクゴクとそれを勢いよく飲み干す。
彼女はまるで子供のように世話をされている気分になるが、特に抵抗はしなかった。
「ぷはぁ。生き返るぅー」
一旦落ち着いたその時、プリシラはそこから絶景を見た。頭の中に最高の風景が染み込んで行く。彼女は深呼吸をしながら、少し強めの風を楽しんでいた。
「気分転換になったか?」
「アハハ♪ なったかも。次から次へと魔物が来て何も考えられないやっ」
彼女はそう言いながら、今度は楽しそうに再び寝そべった。そして、目を閉じた。
「ねぇ……」
「ん?」
「お姉ちゃんは何時もこんな感じだったのかな?」
「そうかもな……」
「強くなるはずだよぉ……届かないはずだよぉ」
「……いや、強さは関係ない……だた一緒に居たかったんじゃないか?」
「……一緒に?」
「ヘシカはプリシラのために強くなった。だから、どれほど差が付こうとも隣を歩けなくなる何て事はないんだよ」
それを聞いた彼女は目を閉じたまま満面の笑みになると呟いた。
「……そっかぁ~……そうなら……嬉しいなぁ……」
そして、疲れ切ったプリシラは笑顔のまま眠ってしまった。ルーベンは魔糸と障壁の魔具で風避けを作る。彼女が落ちないようも固定する。そして、布をかけると簡易な食べ物を作る。最低限の栄養を確保するためだ。
夕日が見える頃、彼女は目を覚まして、起き上がると嬉しそうにルーベンの顔を見た後、ご飯をモグモグと食べ始めた。
「君は戦闘以外だと本当に凄いね」
「生き残るための知恵だよ」
「今度の遠征の時に連れて行ってあげようか?」
「断る。俺が居なくなったら、誰が草むしりをするんだよ」
「え~、要らないと思うなぁ」
「ナディアさんに会えなくなるだろう」
「……ふーん。ナ、ナディアちゃんは君の事、何とも思ってないと思うけどなー」
そこで、プリシラが目をパチパチとしていた。瞼が重い。それどころか体も重いと感じた。
「あれ? 休んだはずなのに……」
「もう一休みしとけ。思ったよりも消費が激しかったようだな。体力と魔素はしっかり回復しとけよ。プリシラだけが頼りだからな」
「その割にはプレッシャーをかけてくるよね」
「お姉ちゃんはこういう時にはどうしてた?」
「アハハ♪ やっぱりプレッシャーを与えてくるねー。あ、見張りはどうするの?」
「俺がやる」
「私が回復したら帰るの?」
「それはそうだが、最速は日が昇ってからだな。夜は危険だ」
「はぁ? それをしたら朝まで君が見張りになるよ?」
「それが最善だろ。ここではプリシラが大切だからな」
「ふ、ふーん。そ、それを言うなら体をほぐしてもらっても良いかな?」
「しても良いが。お前、瞬殺で寝るぞ?」
「はっ? そんなはずないじゃない」
「日頃から練習してるからな」
「また嘘をつくー。じゃあやって見てよ。一時間耐えたら、今度私の命令を一つ聞いてもらうね」
「別に良いよ」
「へ~、言ったね~♪ その自信が何時まで持つか見ものだね♡」
障壁の板の上に布を引くとプリシラはうつ伏せになる。ルーベンが背中付近からマッサージをし始める。するとプリシラがとろけた表情をしながら、よだれを垂らし、即寝むりにつくのであった。
「疲れすぎだろ。もう少し耐えろよ……」
ルーベンは体全体をほぐした後に、見張りに戻るのであった。日が昇ってしばらくするとプリシラが目を覚まして、気持ちよさそうに体をウーンと言いながら伸ばした。
「あれ? もしかして寝てた?」
「それはもうぐっすりと」
プリシラは冗談を言おうと思ったが、一日中真面目に見張りをしていただろうと信じ、遠回しにお礼を言った。
「あ、体が軽いかもぉ。良かった~。これなら大丈夫そう!」
「それは良かった。じゃあ目的のハーブ採取して下山するぞ」
「君は……大丈夫?」
「朝帰りは慣れてるよ」
「……」
ルーベンはそう言いながら立ち上がる。地魔法でその崖から脱出すると森の方面に入って行く。採取が終わり彼等は下山する。魔物を倒しながら進んでいた時、プリシラが違和感を覚える。
「なんか、魔物が少ない……」
「嫌な感じがするな」
さらに警戒しながら歩いていると、少ないどころか、まったく魔物の気配が消えたのである。
「近くに何かいるかも……」
「見えるのか?」
「見つけてはないけど……多分、もう狙われてると思う……」
その時、狼の遠吠えが聞こえた。そして、何時の間にか狼の魔物の群れに囲まれていた。プリシラが冷や汗をかいた。数が多かったからだ。正確な数を数えながらもリーダーを探す。
そして、それは現れた。巨大な狼が少し高い地形に居たのだ。白銀の毛に翠の瞳、獰猛にこちらを睨んでいる。鋭い牙が顔を覗かせていた。それを見たプリシラが思わずそれの名を叫んだ。
「魔狼ノティロリュコス……ッ」
「勝てるか?」
「……お姉ちゃんがいたなら」
彼女のそれは本心であった。一人ではおそらく勝てないだろうと予測する。それは本来赤等級で想定された魔物ではない。ここはその魔狼の生息地ではないのだ。安全に倒すなら銀等級以上は必要だ。
この魔物は普通では無い。何故なら魔法が使える。
魔狼の指示だろうか、それの仲間が二体襲い掛かって来た。プリシラが礫でそれを狙うと当たった。しかし、それは致命傷にはなっていなかった。狼は一旦離れるが、まだまだ戦えるといった様子でこちらを威嚇してくる。
彼女はその一連の動きで判断した。それは未来のヴィジョンを容易に想像させた。地属性魔法で壁を作りルーベンを保護しようと最高の完成度の魔法を放とうとする。だが、そこでルーベン言った。
「俺の周りに、壁を作るなよ」
「ッ……はぁ?」
「それをしたらお前は死ぬ……俺を助けた隙を狙って魔狼が攻撃するからだ。その対応が間に合わないのは、自分が一番分かっているんだろう?」
プリシラは魔狼をじっと睨んでいる。魔狼もじっと見ていた。何を考えているかは分からない。何故か襲って来ない事を気にしつつも、プリシラはルーベンの問いを拒否する。
「はぁ……はっ……何言ってんの? その命令は聞けない。この状況で君に選択権は無いのっ……」
「お前が死ねばどちらにしろ。俺も死ぬ……それは無意味だ」
プリシラが歯を噛みしめた。彼女とてそれは分かっている。だが、最善の行動をしたくはなかった。
「見捨てて……一人逃げろと? それとも君を囮に魔物を殺せって事かなぁ……中々残酷な事を言うんだね……君は……」
「普通の魔法構築ではそうだ。だが、二重詠唱……心の奥底ではそれを考えているんだろ」
二重詠唱とは異なる魔法を二つ同時に展開させる事だ。ルディはもちろんだが、ヘシカも使うことが可能だ。
だが、プリシラには出来ない。必ず少しずらして魔法の構築を完成させている。
少し特殊だが数枚の壁を張る魔法は単体である。そういう構築を魔導師の偉人が創った。その代わりに難易度は跳ね上がり、失敗すると体に負荷がかかり体を負傷する事もある。
ヘシカはその隙を無くすために、何時もプリシラ魔法の合間に自分の魔法を差し込んでフォローをしている。
二重詠唱はプリシラに限らず出来ない者は多い。多くの者はそれを諦めて、単体の構築速度の上昇や魔力を上げて威力を補う事に力を入れる。それ以外にも道具や武器を使用するなどの工夫をし始める。
「……無理だよ……その賭けに勝ったとしても……それでも君を守れる気がしないっ……」
「ならば今ここで。力の無さを悔いているがいいさ」
「い、嫌なのっ……折角ッ……」
「俺に壁は要らない。全てを攻撃に回せばいい。お前も覚悟を決めろ」
「……ッ。だからそんな事をしたらっ!?」
「白等級とは言え、俺もギルドの一員だ。死ぬ覚悟くらいはしてる……失敗しても恨みはしない。それに……それこそが今、俺達が生き残るための最善の方法だろ?」
「……」
「何より……プリシラを信じてる」
「お姉ちゃんの妹だから?」
「プリシラだからだ。姉ちゃんを越えてみろ。お前は生意気なくらいが丁度良い」
「アハハ……やっぱりむかつくよね、君はっ……」
プリシラは下を向いていた。だが、絶望しているのでは無い。彼女はこのまま恐怖に負けるのかと思われた。
しかし、いつの間にか彼女の口角は吊り上がっていた。そう、彼女は笑っていたのだ。
それを確認したルーベンが静かに目を閉じると、魔狼が指示を出した。チャンスとばかりに全力で動き出す。
仲間の狼が襲い掛かかる、同時に魔狼が魔法を構築してルーベンを狙った。ルーベンは動かない。目を瞑ってプリシラに全てをゆだねた。
彼女はそれに応えるように二重詠唱を発動させて見せた。同時に異なる魔法が放たれる。だが、それは滑らかでは無く、未完成の代償に体の内部が傷つき、彼女の口から血が滴たる。
しかし、なんとか発動した魔法は地面から幾つもの棘が複数出現すると狼をくし刺しにした。それどころかそれを避けた狼に礫を飛ばして確実に仕留める。
さらに魔狼がルーベンに放った風の魔法さえも、土の棘を上手く利用して防いで見せた。それに怒りを覚えた魔狼が接近しながら魔法構築を始めた。臨機応変に対応するつもりだろう。
またしてもプリシラの口からさらに血が滴たる。再び二重詠唱を始めたのだ。さっきよりも体調は悪くなり、さらに接近戦をする狼に焦ったためか、先ほどよりも構築雑だった。何にも触れていないはずの腕に無数の切傷が出来た。
彼女は無理をした。そうでないと魔狼を倒せないからだ。痛みに耐えながらも彼女は笑みを絶やさなかった。傷つきながらも、魔狼に見下しながら言い放つ。
「君達じゃ、私には絶対に勝てないよぉ。だって今の私はぁ……♪」
その時、彼女は目を瞑っているルーベンを横目で見ながら言葉を止めた。
同時に先ほどよりも大量で大きな棘が地面から勢いよく出現した。魔狼は風の魔法を放とうとするが、それよりも早く大量の岩が周りに出現して、魔狼が岩の中に閉じ込められた。
最後に彼女は大きな一つの礫を準備した。体内からありったけの魔素を取り出し、練り上げる。それを最大魔力で硬める。魔狼が風の魔法で岩を崩した瞬間に、それを猛スピードで解き放つ。そして、勝ち誇った顔で言うのだ。
「最強だもん♡」
魔物はそれを避ける事が出来ずに大きな岩につぶされてしまい絶命した。魔物がほんの数体残っていたが、プリシラが睨み付けると逃げ去って行った。
それを見た彼女は肩で息をし始める。安心すると一気に痛みと疲れが押し寄せた。体内魔素の減少による眩暈や吐き気も同時に押し寄せる。
彼女が倒れるとルーベンがそれを支える。彼女を持ちあげて多少スペースがある場所に移動するとゆっくりと横に寝かせた。魔素の回復と傷の手当だ。
「……」
彼はせっせと作業をするように動く。手際が良かった。
「……あのさぁ」
彼はせっせと動いていた。手際がとても良い。
「何か言う事があるんじゃないかな?」
「まだまだ安心は出来ない。帰るまでが依頼だ」
「むー。やっぱりむかつくぅ」
「ヘシカにも負けない、力強い魔法だった」
彼は時間差で褒めたのであった。彼女は素直に言われたそれに照れながら言った。
「……アハハ♪ 嘘つきー。目を瞑ってたじゃん」
「終わりだ。少し休んだら帰るぞ」
ルーベンが最後の仕上げとばかりに強めに包帯を巻いた。
「ィッタぁ! 痛いんだけど! もっと優しくしてよっ」
少し不満そうにしていたが、彼女は抵抗せずに黙って横になっていた。軽く呼吸をすると、すぐに柔らかい表情になる。そして、彼女はもう少しだけ、この居心地の良い空間を楽しむ事にした……。
その後、無事にギルドに帰還した彼等。ギルド前には怒ったヘシカが仁王立ちをしていた。どうやら話をナディアから聞いたようだ。
怒っているヘシカの元に、プリシラが無垢な笑顔を見せて近づいて行く。すると限界が来たのかヘシカの胸に寄っかかりながら意識を失った。
「おい、これはどういう事だ?」
「金欠でな。俺がプリシラに無理を言って誘った」
「てめぇー。自分が何をしたか分かってんのかッ」
「金稼ぎだ。それよりも俺は報告に行く」
ヘシカの周辺に炎の球が出現する。
「それよりも妹の心配をした方が良いんじゃないか?」
「言われなくてもしているっ。覚えてろよクロウ……」
そう言ってヘシカは妹を背負うと去って行った。ルーベンは報告をする。報酬をもらうと去って行った……。
ルーベンは大きな鞄を持っていた。中には魔素を回復させる魔具が沢山入っていた。他にも色々と使える物を鞄に詰め込んでいるようだ。
「何でそんなに魔具を持ってるのよ? 白等級の稼ぎじゃ無理だよね」
「女性からよくもらえる」
「えー、幻覚? 嘘つきなよ……そんな子いないでしょ~」
「いるんだなーこれが」
「ふ~ん……」
ルーベンが良く変身している男、デーヴィッドの金のばらまき方は異常だ。彼をキープにするべく女性達は定期的にプレゼントで彼を喜ばせるのだ。だから彼は嘘は言っていない。
今回の依頼は薬用のハーブを取って来るモノだ。それは山の奥にしか無い。魔物もかなりの強さを持つ。そこそこの距離なので馬に乗って目的地に向かうと、数時間ほどで到着する。
プリシラは目的地を目の前に、未だに何故ここに来る事を選んだのかが不明だった。自分の心が分からない。しかし、来たからにはやり遂げなければならないのがギルドの依頼だ。
プリシラは緊張していた。今日はお姉ちゃんと一緒ではない。何よりも足手纏いが居る。
彼女は足が前に出なかった。一歩踏み出すのを恐れていた。それをルーベンは後ろでジっと待っていた。深呼吸をした後、プリシラが声を張り上げた。
「……それじゃあ行くよっ」
しかし、それは無意識に自分に放ったものかもしれない。その山に踏み込むが彼女はいつも通りではない。魔物を煽ってる暇など無かった。自分だけならまだしも、ルーベンにも容赦なく魔物が襲い掛かる。それを地魔法の石の礫を使って排除する。冷静に先を読みながら。慎重に、そして時に大胆に。
魔物数が多い時には早めに強めの魔法を使う。地面から棘が現れルーベンに襲い掛かる魔物を倒す。全部倒せなくてもそれが壁代わりになり、彼への攻撃を阻んだ。そんなに進んでないはずなのにプリシラは汗だくになっていた。
「クロウっ。魔素がやばい。魔具を頂戴ッ……」
「はい」
「き、君は気楽だね……私が死んだらどうするの?」
「その時は終わりだ。一緒に死ぬだけだろ」
「えっ……ほ、本当に言ってる?」
「なわけねーだろ」
「……生き残れる方法があるの?」
「プリシラを信じてるんだよ。それ以外に生き残る方法は無い」
「……アハハ♪ 凄ーい。思った以上に狂ってるね。君……」
そこからも彼女はギリギリの戦いをしながらも進む。目的のモノがある付近に到達した時、予想外の数の魔物に囲まれてしまう。彼女はその状況を打破するべく早めに大きな魔法を使う。
地面から土の板が四枚出て来てルーベンを取り囲って守る。さらに土の板が地面から盛り上がって自分を持ち上げる。一旦高い位置に逃げたのだ。
ルーベンの安全を確保しながらも、さらに自分の身も守って反撃が出来る。だが、多少の時間稼ぎは出来るだろうが、魔物はそれにすぐに対応して来るだろう。
その前に礫で数を減らす。数体の魔物がその板に上って来た。上がって来た瞬間を狙って魔物を撃ち抜く。何とか全て排除するも彼女は疲れ切っていた。
「はぁはぁはぁ……」
「もう少しで着く。頑張れ」
「……」
何も言う気力もないのか、無言でルーベンを見るだけだった。しかし、その目には彼を守ると追い意志が感じられる。あの時の借りを返そうとしているのだろうか。
「そこは崖になってる。魔物が来るのが難しい地形がある」
「……詳しいね……」
彼女は何とか声を絞り出した。
「ギルドの奴等から聞いた」
「そう……」
その後も何体か魔物を倒しつつ進むと、多少危険だったが、崖の傍、というよりも崖の中間の出っ張りがあり、そこに休める所があった。
汗だくのプリシラはようやく座れるのだと、苦しそうだが、笑顔を見せた。彼女は座るどころか狭い場所に寝転んだ。
「はぁ~、死ぬかと思った~……ッ」
「そうだな」
「他人事みたいにゆーなぁー」
彼女は嬉しそうに言う。ルーベンが魔素を回復させる魔具を持ち、プリシラに使用する。もう片方の手で水を渡す。彼女は少し起き上がって、それをゴクゴクとそれを勢いよく飲み干す。
彼女はまるで子供のように世話をされている気分になるが、特に抵抗はしなかった。
「ぷはぁ。生き返るぅー」
一旦落ち着いたその時、プリシラはそこから絶景を見た。頭の中に最高の風景が染み込んで行く。彼女は深呼吸をしながら、少し強めの風を楽しんでいた。
「気分転換になったか?」
「アハハ♪ なったかも。次から次へと魔物が来て何も考えられないやっ」
彼女はそう言いながら、今度は楽しそうに再び寝そべった。そして、目を閉じた。
「ねぇ……」
「ん?」
「お姉ちゃんは何時もこんな感じだったのかな?」
「そうかもな……」
「強くなるはずだよぉ……届かないはずだよぉ」
「……いや、強さは関係ない……だた一緒に居たかったんじゃないか?」
「……一緒に?」
「ヘシカはプリシラのために強くなった。だから、どれほど差が付こうとも隣を歩けなくなる何て事はないんだよ」
それを聞いた彼女は目を閉じたまま満面の笑みになると呟いた。
「……そっかぁ~……そうなら……嬉しいなぁ……」
そして、疲れ切ったプリシラは笑顔のまま眠ってしまった。ルーベンは魔糸と障壁の魔具で風避けを作る。彼女が落ちないようも固定する。そして、布をかけると簡易な食べ物を作る。最低限の栄養を確保するためだ。
夕日が見える頃、彼女は目を覚まして、起き上がると嬉しそうにルーベンの顔を見た後、ご飯をモグモグと食べ始めた。
「君は戦闘以外だと本当に凄いね」
「生き残るための知恵だよ」
「今度の遠征の時に連れて行ってあげようか?」
「断る。俺が居なくなったら、誰が草むしりをするんだよ」
「え~、要らないと思うなぁ」
「ナディアさんに会えなくなるだろう」
「……ふーん。ナ、ナディアちゃんは君の事、何とも思ってないと思うけどなー」
そこで、プリシラが目をパチパチとしていた。瞼が重い。それどころか体も重いと感じた。
「あれ? 休んだはずなのに……」
「もう一休みしとけ。思ったよりも消費が激しかったようだな。体力と魔素はしっかり回復しとけよ。プリシラだけが頼りだからな」
「その割にはプレッシャーをかけてくるよね」
「お姉ちゃんはこういう時にはどうしてた?」
「アハハ♪ やっぱりプレッシャーを与えてくるねー。あ、見張りはどうするの?」
「俺がやる」
「私が回復したら帰るの?」
「それはそうだが、最速は日が昇ってからだな。夜は危険だ」
「はぁ? それをしたら朝まで君が見張りになるよ?」
「それが最善だろ。ここではプリシラが大切だからな」
「ふ、ふーん。そ、それを言うなら体をほぐしてもらっても良いかな?」
「しても良いが。お前、瞬殺で寝るぞ?」
「はっ? そんなはずないじゃない」
「日頃から練習してるからな」
「また嘘をつくー。じゃあやって見てよ。一時間耐えたら、今度私の命令を一つ聞いてもらうね」
「別に良いよ」
「へ~、言ったね~♪ その自信が何時まで持つか見ものだね♡」
障壁の板の上に布を引くとプリシラはうつ伏せになる。ルーベンが背中付近からマッサージをし始める。するとプリシラがとろけた表情をしながら、よだれを垂らし、即寝むりにつくのであった。
「疲れすぎだろ。もう少し耐えろよ……」
ルーベンは体全体をほぐした後に、見張りに戻るのであった。日が昇ってしばらくするとプリシラが目を覚まして、気持ちよさそうに体をウーンと言いながら伸ばした。
「あれ? もしかして寝てた?」
「それはもうぐっすりと」
プリシラは冗談を言おうと思ったが、一日中真面目に見張りをしていただろうと信じ、遠回しにお礼を言った。
「あ、体が軽いかもぉ。良かった~。これなら大丈夫そう!」
「それは良かった。じゃあ目的のハーブ採取して下山するぞ」
「君は……大丈夫?」
「朝帰りは慣れてるよ」
「……」
ルーベンはそう言いながら立ち上がる。地魔法でその崖から脱出すると森の方面に入って行く。採取が終わり彼等は下山する。魔物を倒しながら進んでいた時、プリシラが違和感を覚える。
「なんか、魔物が少ない……」
「嫌な感じがするな」
さらに警戒しながら歩いていると、少ないどころか、まったく魔物の気配が消えたのである。
「近くに何かいるかも……」
「見えるのか?」
「見つけてはないけど……多分、もう狙われてると思う……」
その時、狼の遠吠えが聞こえた。そして、何時の間にか狼の魔物の群れに囲まれていた。プリシラが冷や汗をかいた。数が多かったからだ。正確な数を数えながらもリーダーを探す。
そして、それは現れた。巨大な狼が少し高い地形に居たのだ。白銀の毛に翠の瞳、獰猛にこちらを睨んでいる。鋭い牙が顔を覗かせていた。それを見たプリシラが思わずそれの名を叫んだ。
「魔狼ノティロリュコス……ッ」
「勝てるか?」
「……お姉ちゃんがいたなら」
彼女のそれは本心であった。一人ではおそらく勝てないだろうと予測する。それは本来赤等級で想定された魔物ではない。ここはその魔狼の生息地ではないのだ。安全に倒すなら銀等級以上は必要だ。
この魔物は普通では無い。何故なら魔法が使える。
魔狼の指示だろうか、それの仲間が二体襲い掛かって来た。プリシラが礫でそれを狙うと当たった。しかし、それは致命傷にはなっていなかった。狼は一旦離れるが、まだまだ戦えるといった様子でこちらを威嚇してくる。
彼女はその一連の動きで判断した。それは未来のヴィジョンを容易に想像させた。地属性魔法で壁を作りルーベンを保護しようと最高の完成度の魔法を放とうとする。だが、そこでルーベン言った。
「俺の周りに、壁を作るなよ」
「ッ……はぁ?」
「それをしたらお前は死ぬ……俺を助けた隙を狙って魔狼が攻撃するからだ。その対応が間に合わないのは、自分が一番分かっているんだろう?」
プリシラは魔狼をじっと睨んでいる。魔狼もじっと見ていた。何を考えているかは分からない。何故か襲って来ない事を気にしつつも、プリシラはルーベンの問いを拒否する。
「はぁ……はっ……何言ってんの? その命令は聞けない。この状況で君に選択権は無いのっ……」
「お前が死ねばどちらにしろ。俺も死ぬ……それは無意味だ」
プリシラが歯を噛みしめた。彼女とてそれは分かっている。だが、最善の行動をしたくはなかった。
「見捨てて……一人逃げろと? それとも君を囮に魔物を殺せって事かなぁ……中々残酷な事を言うんだね……君は……」
「普通の魔法構築ではそうだ。だが、二重詠唱……心の奥底ではそれを考えているんだろ」
二重詠唱とは異なる魔法を二つ同時に展開させる事だ。ルディはもちろんだが、ヘシカも使うことが可能だ。
だが、プリシラには出来ない。必ず少しずらして魔法の構築を完成させている。
少し特殊だが数枚の壁を張る魔法は単体である。そういう構築を魔導師の偉人が創った。その代わりに難易度は跳ね上がり、失敗すると体に負荷がかかり体を負傷する事もある。
ヘシカはその隙を無くすために、何時もプリシラ魔法の合間に自分の魔法を差し込んでフォローをしている。
二重詠唱はプリシラに限らず出来ない者は多い。多くの者はそれを諦めて、単体の構築速度の上昇や魔力を上げて威力を補う事に力を入れる。それ以外にも道具や武器を使用するなどの工夫をし始める。
「……無理だよ……その賭けに勝ったとしても……それでも君を守れる気がしないっ……」
「ならば今ここで。力の無さを悔いているがいいさ」
「い、嫌なのっ……折角ッ……」
「俺に壁は要らない。全てを攻撃に回せばいい。お前も覚悟を決めろ」
「……ッ。だからそんな事をしたらっ!?」
「白等級とは言え、俺もギルドの一員だ。死ぬ覚悟くらいはしてる……失敗しても恨みはしない。それに……それこそが今、俺達が生き残るための最善の方法だろ?」
「……」
「何より……プリシラを信じてる」
「お姉ちゃんの妹だから?」
「プリシラだからだ。姉ちゃんを越えてみろ。お前は生意気なくらいが丁度良い」
「アハハ……やっぱりむかつくよね、君はっ……」
プリシラは下を向いていた。だが、絶望しているのでは無い。彼女はこのまま恐怖に負けるのかと思われた。
しかし、いつの間にか彼女の口角は吊り上がっていた。そう、彼女は笑っていたのだ。
それを確認したルーベンが静かに目を閉じると、魔狼が指示を出した。チャンスとばかりに全力で動き出す。
仲間の狼が襲い掛かかる、同時に魔狼が魔法を構築してルーベンを狙った。ルーベンは動かない。目を瞑ってプリシラに全てをゆだねた。
彼女はそれに応えるように二重詠唱を発動させて見せた。同時に異なる魔法が放たれる。だが、それは滑らかでは無く、未完成の代償に体の内部が傷つき、彼女の口から血が滴たる。
しかし、なんとか発動した魔法は地面から幾つもの棘が複数出現すると狼をくし刺しにした。それどころかそれを避けた狼に礫を飛ばして確実に仕留める。
さらに魔狼がルーベンに放った風の魔法さえも、土の棘を上手く利用して防いで見せた。それに怒りを覚えた魔狼が接近しながら魔法構築を始めた。臨機応変に対応するつもりだろう。
またしてもプリシラの口からさらに血が滴たる。再び二重詠唱を始めたのだ。さっきよりも体調は悪くなり、さらに接近戦をする狼に焦ったためか、先ほどよりも構築雑だった。何にも触れていないはずの腕に無数の切傷が出来た。
彼女は無理をした。そうでないと魔狼を倒せないからだ。痛みに耐えながらも彼女は笑みを絶やさなかった。傷つきながらも、魔狼に見下しながら言い放つ。
「君達じゃ、私には絶対に勝てないよぉ。だって今の私はぁ……♪」
その時、彼女は目を瞑っているルーベンを横目で見ながら言葉を止めた。
同時に先ほどよりも大量で大きな棘が地面から勢いよく出現した。魔狼は風の魔法を放とうとするが、それよりも早く大量の岩が周りに出現して、魔狼が岩の中に閉じ込められた。
最後に彼女は大きな一つの礫を準備した。体内からありったけの魔素を取り出し、練り上げる。それを最大魔力で硬める。魔狼が風の魔法で岩を崩した瞬間に、それを猛スピードで解き放つ。そして、勝ち誇った顔で言うのだ。
「最強だもん♡」
魔物はそれを避ける事が出来ずに大きな岩につぶされてしまい絶命した。魔物がほんの数体残っていたが、プリシラが睨み付けると逃げ去って行った。
それを見た彼女は肩で息をし始める。安心すると一気に痛みと疲れが押し寄せた。体内魔素の減少による眩暈や吐き気も同時に押し寄せる。
彼女が倒れるとルーベンがそれを支える。彼女を持ちあげて多少スペースがある場所に移動するとゆっくりと横に寝かせた。魔素の回復と傷の手当だ。
「……」
彼はせっせと作業をするように動く。手際が良かった。
「……あのさぁ」
彼はせっせと動いていた。手際がとても良い。
「何か言う事があるんじゃないかな?」
「まだまだ安心は出来ない。帰るまでが依頼だ」
「むー。やっぱりむかつくぅ」
「ヘシカにも負けない、力強い魔法だった」
彼は時間差で褒めたのであった。彼女は素直に言われたそれに照れながら言った。
「……アハハ♪ 嘘つきー。目を瞑ってたじゃん」
「終わりだ。少し休んだら帰るぞ」
ルーベンが最後の仕上げとばかりに強めに包帯を巻いた。
「ィッタぁ! 痛いんだけど! もっと優しくしてよっ」
少し不満そうにしていたが、彼女は抵抗せずに黙って横になっていた。軽く呼吸をすると、すぐに柔らかい表情になる。そして、彼女はもう少しだけ、この居心地の良い空間を楽しむ事にした……。
その後、無事にギルドに帰還した彼等。ギルド前には怒ったヘシカが仁王立ちをしていた。どうやら話をナディアから聞いたようだ。
怒っているヘシカの元に、プリシラが無垢な笑顔を見せて近づいて行く。すると限界が来たのかヘシカの胸に寄っかかりながら意識を失った。
「おい、これはどういう事だ?」
「金欠でな。俺がプリシラに無理を言って誘った」
「てめぇー。自分が何をしたか分かってんのかッ」
「金稼ぎだ。それよりも俺は報告に行く」
ヘシカの周辺に炎の球が出現する。
「それよりも妹の心配をした方が良いんじゃないか?」
「言われなくてもしているっ。覚えてろよクロウ……」
そう言ってヘシカは妹を背負うと去って行った。ルーベンは報告をする。報酬をもらうと去って行った……。
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