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第二章 オルビス大陸
第8話 小さな悪魔②
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【ロスリン伯爵領:ティリンタ城】
マリエルは就寝するために自分の部屋に入ろうとしていた。あの一見以来相変わらず扉の前には護衛が置かれていた。移動中も付き添う様に護衛がいた。今回の件が片付くまでの厳重の監視だ。
「お疲れ様です」
「これはマリエル様、常に我々が居ますので安心してお休みください」
「ありがとうございます」
扉に入る。彼女はすぐに警戒態勢に入る。暗い部屋の奥から物音が聞こえたからだ。そして。彼女は叫んだ。
「そこにいるのは誰ですか!?」
魔具で明かりをつける前に彼女は暗闇に目が慣れて来た。丁度月の光もあり部屋が見えるようになった。そんな時、それが見えた。ルーベンが少し離れた所で腕立て伏せをしていた。
「きゃああああああああ!!!」
「あ、こんばんは!」
「くせ者!? 誰かっ!」
「無駄ですよ、お嬢様……防音の魔具。中の音は外には届きません。逆に外の音は丸聞こえですが……」
「なっ……そ、それは高価な方の魔具をお持ちの様で……」
彼女は部屋の明かりをつけるのも忘れて、扉を開けようとドアノブに手をかける。
「ちょ! っとお待ちください……私がその気になれば、ここからでも貴方を殺す事が可能ですっ」
それを聞いて彼女が止まった。
「……」
すると彼女はドアノブから手を離さずに問いかける。
「それが嘘でも本当でも……殺害や捕獲が目的ならば、扉からそんなに離れて……運動はしませんね。話し合いがしたいという事ですか?」
「ええ……しかし、その前に少し遊びませんか?」
「……貴方は、何者ですか?」
「私は悪魔で~す」
「……」
彼女はドアノブに少し力を入れる。しかし、ルーベンは落ち着いた声で続ける。
「マリエル嬢……貴方はきっと、この悪魔の囁きに耳を傾けたくなる」
「……」
「この遊びに勝利すれば、貴方の一番欲しいモノを授けましょう。モノでなく、願いでも構いませんが」
「一番……ですか。貴方にそれは出来ません。不可能です」
「そうですね。今お考えのそれは自分で手に入れるモノですから……私には頼らないという所でしょうか」
「……それでは、さようなら」
「ならば、こちらが提示します」
「……それでは何を頂けるので?」
「貴方に力を与えましょう」
「力……?」
「この小さく、暗い箱から飛び出す力です」
「何を言って……貴方は一体何がしたいのですか?」
「私が貴方の心を当てて差し上げましょう。それが当たったのなら一歩前に進んでください。間違っていたら扉の方に一歩後退する」
「……ここはもう扉ですが?」
「その場合はそこを開けて逃げ出してください。そうすれば貴方の勝ちだ。逆に貴方が四歩前に進めば、私の勝ち」
「……私が負けたらどうなるのですか?」
「お母様の脱ぎたての下着を」
彼女がドアノブに結構な力を加えた。
「あ、ちょとまって冗談ですっ! ……ここは悪魔らしく魂をもらいましょうか」
「……」
彼女がふとバルコニーの方を見ると窓が開いているのに気が付く。しかし、外は騒がしく無い。とても静かだ。こんな異様な事が起きているのに、まるで何事もないかのようだ。直観だが、彼はその位置から本当に自分を殺せるのだろうと考える。
「……良いでしょう」
「……それでは始めます。マリエル嬢、貴方は幽霊……そう、怪奇現象に興味がある」
「……」
彼女は一歩前に進んだ。彼女はその遊びに興じたのだ。
「お~当たってしまいましたねー。では次……貴方は、なに人の部屋で腕立て伏せとかしてんだっ……汗臭くなるからやめろっ、と思っている」
彼女はもう一歩前に進んだ。
「今度は進むの早いね……えー次は。貴方は目の前のイカレた男からどう逃げるのか。今もその事で思考を張らせている」
「……」
彼女はもう一歩前に出た。
「おやおや、もうリーチですね!」
「当たり前に考えるような事はずるくないでしょうか? 悪魔さん……」
「なるほど、それでは少々変更しましょう……とっておきのをいきますよっ……」
「……どうぞ」
「貴方は私の事が好きになり始めている」
彼女は迷わずに速攻で一歩後退する。
「……これらが照れ隠しという」
「続けてどうぞ……」
「……私は近年稀に見る美男子である」
彼女は速攻で一歩後退した。
「え、嘘だろっ……?」
彼女は一歩後退した。
「本当の事です……おや、もう後が無いですね?」
「ぐぬぬ……今のは問いかけじゃないんだけどー」
「あら? 申し訳ございません。私にはそう聞こえてしまいました……ふふ。もし、よろしければ今のを無効にしても良いですよ」
「そう言われると、訂正出来ないのが悪魔です」
「まあ……! 律義な悪魔さん。次が最後の質問にならないと良いですね」
「それではいきます……」
マリエルはすでに場に慣れ始め余裕の表情で彼を見ていた。そしてルーベンが自信たっぷりの表情で言う。
「本当のところは今から9年後、結婚指輪を持って目の前に現れて欲しい……」
彼女はそれを聞いてドアノブに力を込めた。
「……さようならです。悪魔さん」
「私では無い、愛しのジェイデン卿に……」
それを聞いた途端に彼女はドアノブから手を離す。そして、彼女は四歩だけ歩き真剣な表情でまくし立てる。
「どういう事ですか!? 貴方はジェイデン様を知っている!? もしかして彼に何かあったのですか!?」
「ルール違反ですかねー。何事も最後まで冷静に対処しなければなりません」
「ッ……」
するとルーベンは隠していた紐を思いっきり引く。意識の無い男がそれに引っ張られて現れた。
「え……その方は……グッドマンっ……!? 何故……」
「彼の本当の名はウィルヘルム……指名手配犯です」
「!? 嘘です! 彼は15年前に消息不明にっ」
「生まれる前の出来事をよくご存知で……声と顔は高度な整形魔法で変えています。趣味ではありませんが、少々手荒な事をして聞き出しました……近隣の森で暴れていた者達も含めてね」
「あの時の爆発……そういう事ですか……しかし何故、勝負に敗北した私にそれを話したのですか?」
「悪魔を倒す方法など古来より決まっております」
「倒す方法?」
「愛ですよ……貴方は光を捨ててまで、こちらに近づいて来た。そう、死をも忘れて。これには私も敵いません」
「……む」
彼女はその指摘に赤面した後に少し頬を膨らませて怒った表情になる。この男にからかわれた事に気が付いたのだ。だから仕返しを考える。
「それなら私は貴方に勝ちました。力が欲しいとは貴方の妄想です。私の願いはまだ口にしていませんっ」
「貴方は今、ジェイデン卿に酷い事をしたガリウスを殺して欲しいと考えてますね? しかし、それでは貴方の望みが成就出来ない」
「……」
「不可解な死の連鎖。それは人を疑心暗鬼にする。彼の信用はがた落ち……果たして優秀な父、優秀な家臣たちを失った子供があの領地を守れるのだろうか」
「……」
「だから貴方は、殺害とは別の望みを言うのです」
「「どうかジェイデン様を偉大な領主にしてください」」 「……と」
「こうして貴方は悪魔の囁きに耳を傾ける……」
「……私に何をさせたいのですか?」
ルーベンは数枚の紙を渡した。それはびっしりと文字が書かれていた。
「これは……」
「我々が集めた今回の件に関する全ての情報です……三枚目に書いてある場所には今回の企ての証拠があるはずです」
「……多い……これ等を確かめる時間が無いのですね」
「ええ……人数と力が必要です……」
「……貴方はどうするのですか?」
「明後日、私達はガリウスに捕らわれているジェイデン卿を助けます。どうやらガリウスはウォルデン家に伝わる古代兵器を使って王都への侵略を企てているらしいので……」
ルーベンは悪い笑みを浮かべた。それを聞いたマリエルも口元を緩める。
「ええ……それが真実なら、それを討つための英雄が必要ですね……」
「彼等に勝てますか?」
「私は伯爵の娘。諸侯を動かせるネタは幾つか持っていますよ。お父様を脅すネタもしっかりと……」
「それは恐ろしい……しかし……だからこそ貴方と話をしたかった……それでは……」
「え?」
マリエルは驚愕した。ルーベンがいつの間にかバルコニーの手すりに移動して、そこに腰かけていたからだ。彼女は冷や汗をかいていた。
「そうそう。グッドマンをお喋りにするには、そこにある魔具に入っている瞳を潰そうとしてください」
「……悪趣味ですね」
「故に御しやすい。ある意味では尊敬出来ます」
「……なるほど」
「それでは互いの利益のために……」
「最後にもう一つ教えてください」
「何ですか?」
「本当のところ、貴方は何者ですか?」
「……そうですね。こういうのはどうでしょう? かごを喰らう悪魔」
「……籠を喰らう? それは可笑しな話です。悪魔はかごを壊しはしません。甘い誘惑でがんじがらめにした後に、そこに閉じ込めて。ずっとほほ笑むのが悪魔ですから……」
「なるほど……これは暴かれてしまう前に逃げるのが得策ですね」
ルーベンはそのまま落下していった。彼女はバルコニーに出る事は無い。そして、今の彼女の瞳には力強さがあった。
「お父様……今度は勝たせてもらいますよ……ジェイデン様のためならば、私はそれを受け入れましょう」
彼女は小さな部屋から容易に出て行く。そして護衛に言った。
「お父様とお話がしたいので、その事を伝えて来てもらってもよろしいでしょうか?」
「しょ、承知いたしました」
護衛は彼女の変りよう。自信に満ちた声に一瞬戸惑ったが、それを言葉にはせずに彼女の命令に従うのであった……。
マリエルは就寝するために自分の部屋に入ろうとしていた。あの一見以来相変わらず扉の前には護衛が置かれていた。移動中も付き添う様に護衛がいた。今回の件が片付くまでの厳重の監視だ。
「お疲れ様です」
「これはマリエル様、常に我々が居ますので安心してお休みください」
「ありがとうございます」
扉に入る。彼女はすぐに警戒態勢に入る。暗い部屋の奥から物音が聞こえたからだ。そして。彼女は叫んだ。
「そこにいるのは誰ですか!?」
魔具で明かりをつける前に彼女は暗闇に目が慣れて来た。丁度月の光もあり部屋が見えるようになった。そんな時、それが見えた。ルーベンが少し離れた所で腕立て伏せをしていた。
「きゃああああああああ!!!」
「あ、こんばんは!」
「くせ者!? 誰かっ!」
「無駄ですよ、お嬢様……防音の魔具。中の音は外には届きません。逆に外の音は丸聞こえですが……」
「なっ……そ、それは高価な方の魔具をお持ちの様で……」
彼女は部屋の明かりをつけるのも忘れて、扉を開けようとドアノブに手をかける。
「ちょ! っとお待ちください……私がその気になれば、ここからでも貴方を殺す事が可能ですっ」
それを聞いて彼女が止まった。
「……」
すると彼女はドアノブから手を離さずに問いかける。
「それが嘘でも本当でも……殺害や捕獲が目的ならば、扉からそんなに離れて……運動はしませんね。話し合いがしたいという事ですか?」
「ええ……しかし、その前に少し遊びませんか?」
「……貴方は、何者ですか?」
「私は悪魔で~す」
「……」
彼女はドアノブに少し力を入れる。しかし、ルーベンは落ち着いた声で続ける。
「マリエル嬢……貴方はきっと、この悪魔の囁きに耳を傾けたくなる」
「……」
「この遊びに勝利すれば、貴方の一番欲しいモノを授けましょう。モノでなく、願いでも構いませんが」
「一番……ですか。貴方にそれは出来ません。不可能です」
「そうですね。今お考えのそれは自分で手に入れるモノですから……私には頼らないという所でしょうか」
「……それでは、さようなら」
「ならば、こちらが提示します」
「……それでは何を頂けるので?」
「貴方に力を与えましょう」
「力……?」
「この小さく、暗い箱から飛び出す力です」
「何を言って……貴方は一体何がしたいのですか?」
「私が貴方の心を当てて差し上げましょう。それが当たったのなら一歩前に進んでください。間違っていたら扉の方に一歩後退する」
「……ここはもう扉ですが?」
「その場合はそこを開けて逃げ出してください。そうすれば貴方の勝ちだ。逆に貴方が四歩前に進めば、私の勝ち」
「……私が負けたらどうなるのですか?」
「お母様の脱ぎたての下着を」
彼女がドアノブに結構な力を加えた。
「あ、ちょとまって冗談ですっ! ……ここは悪魔らしく魂をもらいましょうか」
「……」
彼女がふとバルコニーの方を見ると窓が開いているのに気が付く。しかし、外は騒がしく無い。とても静かだ。こんな異様な事が起きているのに、まるで何事もないかのようだ。直観だが、彼はその位置から本当に自分を殺せるのだろうと考える。
「……良いでしょう」
「……それでは始めます。マリエル嬢、貴方は幽霊……そう、怪奇現象に興味がある」
「……」
彼女は一歩前に進んだ。彼女はその遊びに興じたのだ。
「お~当たってしまいましたねー。では次……貴方は、なに人の部屋で腕立て伏せとかしてんだっ……汗臭くなるからやめろっ、と思っている」
彼女はもう一歩前に進んだ。
「今度は進むの早いね……えー次は。貴方は目の前のイカレた男からどう逃げるのか。今もその事で思考を張らせている」
「……」
彼女はもう一歩前に出た。
「おやおや、もうリーチですね!」
「当たり前に考えるような事はずるくないでしょうか? 悪魔さん……」
「なるほど、それでは少々変更しましょう……とっておきのをいきますよっ……」
「……どうぞ」
「貴方は私の事が好きになり始めている」
彼女は迷わずに速攻で一歩後退する。
「……これらが照れ隠しという」
「続けてどうぞ……」
「……私は近年稀に見る美男子である」
彼女は速攻で一歩後退した。
「え、嘘だろっ……?」
彼女は一歩後退した。
「本当の事です……おや、もう後が無いですね?」
「ぐぬぬ……今のは問いかけじゃないんだけどー」
「あら? 申し訳ございません。私にはそう聞こえてしまいました……ふふ。もし、よろしければ今のを無効にしても良いですよ」
「そう言われると、訂正出来ないのが悪魔です」
「まあ……! 律義な悪魔さん。次が最後の質問にならないと良いですね」
「それではいきます……」
マリエルはすでに場に慣れ始め余裕の表情で彼を見ていた。そしてルーベンが自信たっぷりの表情で言う。
「本当のところは今から9年後、結婚指輪を持って目の前に現れて欲しい……」
彼女はそれを聞いてドアノブに力を込めた。
「……さようならです。悪魔さん」
「私では無い、愛しのジェイデン卿に……」
それを聞いた途端に彼女はドアノブから手を離す。そして、彼女は四歩だけ歩き真剣な表情でまくし立てる。
「どういう事ですか!? 貴方はジェイデン様を知っている!? もしかして彼に何かあったのですか!?」
「ルール違反ですかねー。何事も最後まで冷静に対処しなければなりません」
「ッ……」
するとルーベンは隠していた紐を思いっきり引く。意識の無い男がそれに引っ張られて現れた。
「え……その方は……グッドマンっ……!? 何故……」
「彼の本当の名はウィルヘルム……指名手配犯です」
「!? 嘘です! 彼は15年前に消息不明にっ」
「生まれる前の出来事をよくご存知で……声と顔は高度な整形魔法で変えています。趣味ではありませんが、少々手荒な事をして聞き出しました……近隣の森で暴れていた者達も含めてね」
「あの時の爆発……そういう事ですか……しかし何故、勝負に敗北した私にそれを話したのですか?」
「悪魔を倒す方法など古来より決まっております」
「倒す方法?」
「愛ですよ……貴方は光を捨ててまで、こちらに近づいて来た。そう、死をも忘れて。これには私も敵いません」
「……む」
彼女はその指摘に赤面した後に少し頬を膨らませて怒った表情になる。この男にからかわれた事に気が付いたのだ。だから仕返しを考える。
「それなら私は貴方に勝ちました。力が欲しいとは貴方の妄想です。私の願いはまだ口にしていませんっ」
「貴方は今、ジェイデン卿に酷い事をしたガリウスを殺して欲しいと考えてますね? しかし、それでは貴方の望みが成就出来ない」
「……」
「不可解な死の連鎖。それは人を疑心暗鬼にする。彼の信用はがた落ち……果たして優秀な父、優秀な家臣たちを失った子供があの領地を守れるのだろうか」
「……」
「だから貴方は、殺害とは別の望みを言うのです」
「「どうかジェイデン様を偉大な領主にしてください」」 「……と」
「こうして貴方は悪魔の囁きに耳を傾ける……」
「……私に何をさせたいのですか?」
ルーベンは数枚の紙を渡した。それはびっしりと文字が書かれていた。
「これは……」
「我々が集めた今回の件に関する全ての情報です……三枚目に書いてある場所には今回の企ての証拠があるはずです」
「……多い……これ等を確かめる時間が無いのですね」
「ええ……人数と力が必要です……」
「……貴方はどうするのですか?」
「明後日、私達はガリウスに捕らわれているジェイデン卿を助けます。どうやらガリウスはウォルデン家に伝わる古代兵器を使って王都への侵略を企てているらしいので……」
ルーベンは悪い笑みを浮かべた。それを聞いたマリエルも口元を緩める。
「ええ……それが真実なら、それを討つための英雄が必要ですね……」
「彼等に勝てますか?」
「私は伯爵の娘。諸侯を動かせるネタは幾つか持っていますよ。お父様を脅すネタもしっかりと……」
「それは恐ろしい……しかし……だからこそ貴方と話をしたかった……それでは……」
「え?」
マリエルは驚愕した。ルーベンがいつの間にかバルコニーの手すりに移動して、そこに腰かけていたからだ。彼女は冷や汗をかいていた。
「そうそう。グッドマンをお喋りにするには、そこにある魔具に入っている瞳を潰そうとしてください」
「……悪趣味ですね」
「故に御しやすい。ある意味では尊敬出来ます」
「……なるほど」
「それでは互いの利益のために……」
「最後にもう一つ教えてください」
「何ですか?」
「本当のところ、貴方は何者ですか?」
「……そうですね。こういうのはどうでしょう? かごを喰らう悪魔」
「……籠を喰らう? それは可笑しな話です。悪魔はかごを壊しはしません。甘い誘惑でがんじがらめにした後に、そこに閉じ込めて。ずっとほほ笑むのが悪魔ですから……」
「なるほど……これは暴かれてしまう前に逃げるのが得策ですね」
ルーベンはそのまま落下していった。彼女はバルコニーに出る事は無い。そして、今の彼女の瞳には力強さがあった。
「お父様……今度は勝たせてもらいますよ……ジェイデン様のためならば、私はそれを受け入れましょう」
彼女は小さな部屋から容易に出て行く。そして護衛に言った。
「お父様とお話がしたいので、その事を伝えて来てもらってもよろしいでしょうか?」
「しょ、承知いたしました」
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