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3話 絶望
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後一か月でオリハルコン等級になる事で皆のテンションは高かった。
依頼をバンバン受ける。
巨大な狼の魔物を複数倒した後、一息を付いた。
もう夕暮れ時だ。
何時もと違ったのは、
ヴァイオレットが荷物を持ってくれた。
機嫌が良い様だ。
やっぱり根は皆優しい。
頑張ってる皆に回復薬を渡そうとした。
そこでソロモンは言う。
「お前は弱いからここに置いて行く」
「え?」
「聞こえなかったのか?」
頭が真っ白になった。
少し間を置いて、その言葉をようやく理解した。
「ま、まだチャンスをくれるって!
それにこんな時期にパーティーから抜けたら等級に影響するかもしれない!
シビル! ノーマ! ヴァイオレット! 何か言ってよ」
「え? 特に何も無いです。
ソロモンに賛成ですけど。正直、指示もウザかったですし」
「弱っちぃ貴方を一人切ったくらいで影響が? 笑わせないで」
「私たちが何時かこうするって、
思わなかったのか? 本当に救えない馬鹿だよ……お前は……」
「せめてもの優しさだ。
そこまで弱いと生きてるのも辛いだろ? この世界から永久的に追放してやるんだよ」
「そんな……でも、ここで置いて行くなんて……なんの意味が!」
ソロモンたちは怪しく笑っていた。
「意味……ねぇ……」
「まさか貴方、自分が好かれていると思ってたんですか?」
「強いて言うなら、貴方が死ぬことに意味のあるから」
ソロモンたちは私に背を向けて、歩き出す。
それを追いかけるために走ろうとした時、
奇妙な連中が出て来た。
何も言わずに、突然剣を振って来た。
転びながらもそれを避ける。
「盗賊っ? ソロモン気を付けて!」
私は唖然とした。
彼等は誰一人としてその言葉に反応しなかったからだ。
盗賊も彼等の方を見向きもしない。
「な、んで……」
「おいおい、まだこの状況が分からないのか、この女は。
途方もない馬鹿だな」
「ま、まさか……ソロモン貴方!?」
ソロモンはそこで振り向いた。
皆、悪魔の様に、邪悪に歪んだ顔で笑っていた。
「嗚呼……良い表情だ。傑作だよお前ッ」
「アハハハ! 見てぇあの顔ぉ! やっと見れたわねー。無様な顔。あ~長かったわ~」
「さようならです。ええっと……名前、何でしたっけ?」
「知らない。さっ、とっとと帰って報告しようぜ。
盗賊に襲われて、行方不明者ありってね」
ソロモンは盗賊を雇い、私を殺そうとしている。何故。
私を辞めさせれば良いだけの話じゃない。
けれど、考えている時間は無い。
今はこいつ等から逃げないと。
剣を構える。盗賊が剣を振ると剣が弾かれた。
強い。何振り構っていられない。
背を向けて全力で逃げる。
「はっはっは! 話し通り弱ぇ!」
「何しても良いんだったか?」
「そうだ。盗賊らしくな」
「装備は売ると足が付く可能性がある……盗賊らしく奪っておくとしようか」
彼等は皆、ソロモンたちが使わない、武器を持っていた。
死体は恐らく時間をずらして殺して、発見させるつもりだろう。
全力で走るもすぐに追いつかれた。
剣で腕を刺された。その後組み敷かれる。
「離して!」
「おら! もっと抵抗してみろよっ。はっはっは!」
軽装装備を脱がされ、服を破かれた。
「止めて!」
私は思いっきり腕に噛みついて、怯んだところに金的を入れた。
その隙に起き上がって逃げる。
盗賊は怒りの形相で叫んでいた。
「許さねぇ……死んだ方がマシってくらいに痛め付けてやる!」
そこから彼等は攻撃方法が変わった。
殴ったり蹴ってはわざと逃がして、それを追う。
それを繰り返して来た。
小さなナイフを投げたりして背中や腕を狙う。
回復薬はこけた拍子に落としたし、残りは鞄の中、
痛みに耐えながらも必死で逃げる。
回復魔法は使えない。使わない。
逃げる事に魔闘気を集中しているからだ。
それに私では回復量も少ない。
とにかく体がボロボロになっても走り続けた。
しかし、私は急に止まった。崖だ。
「もう逃げられないぞ」
「最後に教えて……どうして、私を狙うの?」
「儲かるからじゃないか?」
「……私は死ぬのね。助かる方法は無い」
「そうだ」
「なら……せめてもの抵抗をさせてもらうわ。
ソロモンから依頼を受けたなら、死亡確認したいでしょう?
魔物に食べられてない遺体が必要なんじゃないの?」
「……まさか! 早くそいつを捕まえろ!」
同時に崖の下に飛び込んだ。
木々が生い茂る。魔素と魔力を振り絞る。
今までで一番集中する。
魔闘気を使い枝を掴む。
それは折れたが、衝撃波多少分散される。
さらに他の枝の上に落下し、それをクッションとした。
どのくらい経ったか。私は目を覚ました。
体が動かない。でも、生きている様だ。
残り少ない魔素を回復魔法、《ヒール》に当てる。
足と腰だ。最低限動ける様に。
その二点を重点的に治療する。
魔物に遭遇しない様に、辺りを良く見渡す。
獣道は無いか。足跡や糞が落ちて無いか。
木や植物に形跡が残って無いか。
剣術だけじゃ無く、
色々な事を学んで良かったとこの時初めて思った。
(生き残る……絶対に……私……死にたくないッ!?)
依頼をバンバン受ける。
巨大な狼の魔物を複数倒した後、一息を付いた。
もう夕暮れ時だ。
何時もと違ったのは、
ヴァイオレットが荷物を持ってくれた。
機嫌が良い様だ。
やっぱり根は皆優しい。
頑張ってる皆に回復薬を渡そうとした。
そこでソロモンは言う。
「お前は弱いからここに置いて行く」
「え?」
「聞こえなかったのか?」
頭が真っ白になった。
少し間を置いて、その言葉をようやく理解した。
「ま、まだチャンスをくれるって!
それにこんな時期にパーティーから抜けたら等級に影響するかもしれない!
シビル! ノーマ! ヴァイオレット! 何か言ってよ」
「え? 特に何も無いです。
ソロモンに賛成ですけど。正直、指示もウザかったですし」
「弱っちぃ貴方を一人切ったくらいで影響が? 笑わせないで」
「私たちが何時かこうするって、
思わなかったのか? 本当に救えない馬鹿だよ……お前は……」
「せめてもの優しさだ。
そこまで弱いと生きてるのも辛いだろ? この世界から永久的に追放してやるんだよ」
「そんな……でも、ここで置いて行くなんて……なんの意味が!」
ソロモンたちは怪しく笑っていた。
「意味……ねぇ……」
「まさか貴方、自分が好かれていると思ってたんですか?」
「強いて言うなら、貴方が死ぬことに意味のあるから」
ソロモンたちは私に背を向けて、歩き出す。
それを追いかけるために走ろうとした時、
奇妙な連中が出て来た。
何も言わずに、突然剣を振って来た。
転びながらもそれを避ける。
「盗賊っ? ソロモン気を付けて!」
私は唖然とした。
彼等は誰一人としてその言葉に反応しなかったからだ。
盗賊も彼等の方を見向きもしない。
「な、んで……」
「おいおい、まだこの状況が分からないのか、この女は。
途方もない馬鹿だな」
「ま、まさか……ソロモン貴方!?」
ソロモンはそこで振り向いた。
皆、悪魔の様に、邪悪に歪んだ顔で笑っていた。
「嗚呼……良い表情だ。傑作だよお前ッ」
「アハハハ! 見てぇあの顔ぉ! やっと見れたわねー。無様な顔。あ~長かったわ~」
「さようならです。ええっと……名前、何でしたっけ?」
「知らない。さっ、とっとと帰って報告しようぜ。
盗賊に襲われて、行方不明者ありってね」
ソロモンは盗賊を雇い、私を殺そうとしている。何故。
私を辞めさせれば良いだけの話じゃない。
けれど、考えている時間は無い。
今はこいつ等から逃げないと。
剣を構える。盗賊が剣を振ると剣が弾かれた。
強い。何振り構っていられない。
背を向けて全力で逃げる。
「はっはっは! 話し通り弱ぇ!」
「何しても良いんだったか?」
「そうだ。盗賊らしくな」
「装備は売ると足が付く可能性がある……盗賊らしく奪っておくとしようか」
彼等は皆、ソロモンたちが使わない、武器を持っていた。
死体は恐らく時間をずらして殺して、発見させるつもりだろう。
全力で走るもすぐに追いつかれた。
剣で腕を刺された。その後組み敷かれる。
「離して!」
「おら! もっと抵抗してみろよっ。はっはっは!」
軽装装備を脱がされ、服を破かれた。
「止めて!」
私は思いっきり腕に噛みついて、怯んだところに金的を入れた。
その隙に起き上がって逃げる。
盗賊は怒りの形相で叫んでいた。
「許さねぇ……死んだ方がマシってくらいに痛め付けてやる!」
そこから彼等は攻撃方法が変わった。
殴ったり蹴ってはわざと逃がして、それを追う。
それを繰り返して来た。
小さなナイフを投げたりして背中や腕を狙う。
回復薬はこけた拍子に落としたし、残りは鞄の中、
痛みに耐えながらも必死で逃げる。
回復魔法は使えない。使わない。
逃げる事に魔闘気を集中しているからだ。
それに私では回復量も少ない。
とにかく体がボロボロになっても走り続けた。
しかし、私は急に止まった。崖だ。
「もう逃げられないぞ」
「最後に教えて……どうして、私を狙うの?」
「儲かるからじゃないか?」
「……私は死ぬのね。助かる方法は無い」
「そうだ」
「なら……せめてもの抵抗をさせてもらうわ。
ソロモンから依頼を受けたなら、死亡確認したいでしょう?
魔物に食べられてない遺体が必要なんじゃないの?」
「……まさか! 早くそいつを捕まえろ!」
同時に崖の下に飛び込んだ。
木々が生い茂る。魔素と魔力を振り絞る。
今までで一番集中する。
魔闘気を使い枝を掴む。
それは折れたが、衝撃波多少分散される。
さらに他の枝の上に落下し、それをクッションとした。
どのくらい経ったか。私は目を覚ました。
体が動かない。でも、生きている様だ。
残り少ない魔素を回復魔法、《ヒール》に当てる。
足と腰だ。最低限動ける様に。
その二点を重点的に治療する。
魔物に遭遇しない様に、辺りを良く見渡す。
獣道は無いか。足跡や糞が落ちて無いか。
木や植物に形跡が残って無いか。
剣術だけじゃ無く、
色々な事を学んで良かったとこの時初めて思った。
(生き残る……絶対に……私……死にたくないッ!?)
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