46 / 48
侵入者
46
しおりを挟む
ノラは苦い顔をしていた。万全でないとはいえ、二人で戦っているはずなのに一撃も当たらない。それどころか、敵の攻撃には当たってしまう。爪の斬撃。流石に相手も深くは切り込めないようだ。だが、確実に。ゆっくりとこちらが不利になっていくのを感じる。
何度も攻防を繰り返したある時、副会長の動きが止まった。ダメージの蓄積や疲労。限界だった。そして、ノラも動きが止まった。フォローが間に合わない事を悟る。彼女もまた限界だった。その男は度重なる攻防を耐え、それをずっと待っていた。
「良い声で哭けぇ、女ぁ!」
リルは最小の魔力で魔物を次々と屠っていく。フーが必要な情報を共有をして、さらに命中の補正をしているからだ。
『リル……魔力を借りる。結構持ってくぞ』
(『うん? わかった』)
遮蔽物で見えない場所での戦闘。フーはリルの死角で戦うノラたちをしっかりと捉えていた。
女を切り刻んだはずの爪の男は困惑していた。その切ったはずの女に手ごたえが無かったからだ。何故か空振りをしていた。誰も居ない所にポツンと一人で立っていた。
「はぁ……?」
思わず間抜けな声を出してしまう。本当に何もない虚空に向かってその鋭い爪を振っていた。力を振り絞ったノラがその一瞬の隙を付いて、男の背中を切った。
「がぁあああ!!!」
男が初めて深い傷を負う。追撃は叶わず、すぐに跳んで距離を取った。
「何が……ッ。起きやがったぁ……」
副会長もノラも顔を見合わせるだけで何も言わない。この状況を誰一人も理解出来ていなかった。苦痛にもがく男だけが現実を直視する。傷をつけられた憎悪。男はただただ喚き散らす。
「殺す!! 絶対に殺してやるぞぉ!!」
しかし、爪の男は何かに気が付き、急に静かになった。不思議な現象が起きる。目の前の男が背景と同化する様に消えていく。ノラと副会長は魔法で攻撃するが、ダメージは無い。
「……お前等の顔は覚えたぞッ……次に会う時は殺す……!!」
生徒会長と戦っていた女もまたどこかへと消えていった。
少し前に遡る。マグナたちと黒髪の少女が対峙していた。主に青年と飛竜対マグナ、ラルクロが戦っていた。少女は最初と変らずケタケタと笑っていた。
「じゃあ。少しだけ難易度を上げるわね」
「……黒い霧……?」
「マグナ、気を付けてください」
「分かってる……ッ」
少女を中心に黒い霧が発生していた。触れると吐き気を催す程の瘴気を帯びていた。その時、知らない男の声が聞こえた。低い声であった。
「何をやっている?」
「もう見つかっちゃった。は~、空気を読んで欲しいわね~」
巨大な剣を持った男が少女に話しかけた。マグナたちの内心は最悪だった。しかし、それを顔には出さない。
「お前のお守りをしているわけでない」
少女は大剣を持つ男から目線を外し、マグナたちの方を見る。
「また遊びましょーねー」
屋上にいた3人の侵入者、及び地上で暴れていた15人は戦線を離脱する。死んだ者たちは地面へと吸い込まれた。目的が不明な彼等は魔物だけを残し、消え去った。
「本当に何しに来やがったんだ……」
「分かりません。今はただ無事だった事を喜びましょう」
その後、残りの魔物を掃討し、この事件は幕を閉じた。
何度も攻防を繰り返したある時、副会長の動きが止まった。ダメージの蓄積や疲労。限界だった。そして、ノラも動きが止まった。フォローが間に合わない事を悟る。彼女もまた限界だった。その男は度重なる攻防を耐え、それをずっと待っていた。
「良い声で哭けぇ、女ぁ!」
リルは最小の魔力で魔物を次々と屠っていく。フーが必要な情報を共有をして、さらに命中の補正をしているからだ。
『リル……魔力を借りる。結構持ってくぞ』
(『うん? わかった』)
遮蔽物で見えない場所での戦闘。フーはリルの死角で戦うノラたちをしっかりと捉えていた。
女を切り刻んだはずの爪の男は困惑していた。その切ったはずの女に手ごたえが無かったからだ。何故か空振りをしていた。誰も居ない所にポツンと一人で立っていた。
「はぁ……?」
思わず間抜けな声を出してしまう。本当に何もない虚空に向かってその鋭い爪を振っていた。力を振り絞ったノラがその一瞬の隙を付いて、男の背中を切った。
「がぁあああ!!!」
男が初めて深い傷を負う。追撃は叶わず、すぐに跳んで距離を取った。
「何が……ッ。起きやがったぁ……」
副会長もノラも顔を見合わせるだけで何も言わない。この状況を誰一人も理解出来ていなかった。苦痛にもがく男だけが現実を直視する。傷をつけられた憎悪。男はただただ喚き散らす。
「殺す!! 絶対に殺してやるぞぉ!!」
しかし、爪の男は何かに気が付き、急に静かになった。不思議な現象が起きる。目の前の男が背景と同化する様に消えていく。ノラと副会長は魔法で攻撃するが、ダメージは無い。
「……お前等の顔は覚えたぞッ……次に会う時は殺す……!!」
生徒会長と戦っていた女もまたどこかへと消えていった。
少し前に遡る。マグナたちと黒髪の少女が対峙していた。主に青年と飛竜対マグナ、ラルクロが戦っていた。少女は最初と変らずケタケタと笑っていた。
「じゃあ。少しだけ難易度を上げるわね」
「……黒い霧……?」
「マグナ、気を付けてください」
「分かってる……ッ」
少女を中心に黒い霧が発生していた。触れると吐き気を催す程の瘴気を帯びていた。その時、知らない男の声が聞こえた。低い声であった。
「何をやっている?」
「もう見つかっちゃった。は~、空気を読んで欲しいわね~」
巨大な剣を持った男が少女に話しかけた。マグナたちの内心は最悪だった。しかし、それを顔には出さない。
「お前のお守りをしているわけでない」
少女は大剣を持つ男から目線を外し、マグナたちの方を見る。
「また遊びましょーねー」
屋上にいた3人の侵入者、及び地上で暴れていた15人は戦線を離脱する。死んだ者たちは地面へと吸い込まれた。目的が不明な彼等は魔物だけを残し、消え去った。
「本当に何しに来やがったんだ……」
「分かりません。今はただ無事だった事を喜びましょう」
その後、残りの魔物を掃討し、この事件は幕を閉じた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる