ワイズマンと賢者のいし

刀根光太郎

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個人戦

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 最小の水魔法で消そうとする。しかし、炎は小賢しく逃げ回る。ノラはもう一つの罠に気が付いた。

「空気を燃やし尽くす気ね」

 これ以上、リルの思い通りに動くわけにはいかない。槍を鉱の魔法で覆う。最大の強の魔法で身体を強化し、力押しでここから出る。

 鉱の高度を保つため、槍を庇う。火魔法を無視し、ダメージを負いながらも集中する。そして、最速最大の力で地の魔法を貫く。


 光が見えた瞬間、ノラは苦い表情を見せた。小さな魔導具が二つ。一つは割れ、風の魔法が自分を押し戻す。もう一つも割れるが、魔法では無かった。中身は無い。いや、それには魔力が入っていた。

 体が危険信号を発していた。全力で魔法防壁を張る。次の瞬間、大爆発を起こした。教師が立ち上がり、深刻な表情をしていた。



(リルは密閉を作った。しばらくしてそこに、新鮮な空気と魔力を与える。それにより消えかけた火種が着火源となり、魔力が爆燃する現象を起こした)


 粉塵が舞う中、徐々に視界が戻っていく。リルは静かに魔道具を取り出した。ノラは水の膜の中にいた。肩で呼吸をし、体中が傷だらけだった。安心した教師たちは、何時でも試合を止めれる様に救護班の準備を始める。


「容赦がないのね……私じゃ無かったら死んでた」

「へへ、ちょっとズルしちゃった」

 リルはフーにそっと触れた。彼女には手加減する余裕は無かった。しかし、死なないと思ったので、全力でそれを放った。

 もしノラが防ぎきれないと分かった時点で、きっと何か強力な力に守られるだろうと、確信していたからだ。


(それにしても、よくあれを一人で防ぎきったものだ)

 ノラはその言葉に疑問を抱く。


「ズル? あの時、竜の一撃を防いだ時のように?」

「え!! あ……アハハハ……ハ……なにがァっ!!」

「……聞かなかった事にしてあげる」


(機密情報はまだ教えない方がいいな……)


 ノラは指を動かす。僅かに前に進む。体の調子を確かめていた。

 このまま長引くのは不味いと判断し、早期決着を考え始める。水の魔法は対策されている。しかし、それを使わないのは相手の思うつぼ。消耗品の魔道具なら……。

 ノラは魔力を素早く溜める。強、雷、水の魔法に絞った。彼女は雷の槍と共に加速する。水魔法の陰に隠れ、ノラが高速で飛び込んでくる。地の魔道具で水を防ぐ。同時に炎の槍で彼女を迎え撃つ。

 ノラは全てを防ぐ事を諦めていた。ダメージを受けながらもお構いなしに、突き進んでくる。何が何でも接近戦に持ち込むという、強い意思を感じる。

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