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58.教える者、教えられる者
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リッス、ロスト、クローディとグリムは対峙していた。リッスが植物派生の魔法を使い、素早く蔦を伸ばす。グリムはそれを大鎌で全て切断する。
側面から剣のロストと拳のクローディが飛び掛かる。そこに気を取られた瞬間、蔦が脚に絡みつく。甘美なる誘惑で大鎌に闇を纏わせ、それを切断。それを放置すると魔素が減って行くので、魔法回収で魔法を消す。
変化する盾でクローディの拳を受け止めた。ロストの素早い連撃を大鎌で防ぎ、時には避ける。特に反撃はしていないので、クローディは元気に拳を振るう。そちらは盾を使って受け続ける。二人の攻撃とさらに蔦が襲い掛かる。しかし、彼の影がそれを許さない。
彼等は訓練中である。ロストとグリムは本気を出すと殺傷力があるので、どちらかというとリッスとクローディの訓練になる。
何時の間にか、辺りに黒いモヤがかかり始めた。グリムの闇の霧だ。視界が悪くなり、見失ったのでロストが距離を取る。クローディとの接触も恐れた。一方、彼女はお構いなしに拳を振り続ける。蔦も闇雲に伸ばして来た。
何時もより濃い霧で包み込む。グリム自身、周りが見えなくなるが、感知魔法で三人の居場所と蔦の位置を確認する。闇の霧が不自然に晴れた部分が存在していた。感知魔法に含まれる光属性が原因だ。
いつの間にかリッスの背後にいたグリムが、大鎌を喉に突き立てていた。
「ぅぅ……降参です」
グリムが高く跳ぶ。クローディがそれを警戒していると、恵みの雫で水滴を飛ばした。彼女は思わず目を閉じる。彼女を倒す好機。しかし、ロストが跳躍し剣を振るう。
それを受け止めると、お互いに弾いてそのまま地上に降りた。眼が復活したので接近して来た。
「この程度の攻撃!」
さらにそよ風で眼を狙い乾燥させる。
「ぎゃああああ!」
「《喪失の鎌炎》……ツヴァイ」
「ロスト!」
大鎌に炎が纏わりつく。名前に一瞬気を取れたが、警戒して離れようとする。そこで気が付いた。足に凍って動けない。グリムは接近すると炎を纏った大鎌を振るう。それを剣で防ぐが、態勢が悪い。力を上手く入れれずに剣が弾かれてしまう。
「ぁっ! くぅ……ここまでじゃな」
「ははははは! 油断したな!」
またしても回復したクローディが飛び込んで来た。雷の欠片を周りに展開すると、そのまま突っ込んで来た彼女はそれに触れ、体が痺れる。
「あぎゃわわわわ!」
パタリと倒れたがタフさは中々あるようで、すぐに起き上る。
「いや、クローディ。終わりだ。視界奪われたら不味いって。竜の眼が台無しだろ? 避けてくれると助かる」
「え!! 私まだやられてないよ!」
「……死ぬまで続けそうじゃ」
「ここまで訓練が下手なのも珍しいですね」
遠くでミリウとアノが戦っていた。一時戦闘訓練を止めて、頷く。
リーパーは日向ぼっこをしながら寝ている。サリナは適当に置いた丸太の上に、十字になるような形で仰向けに寝る。そして、風で体を持ち上げる。そう、彼女は風のベッドを作っていた。リッスの背中に乗る想定だろうか?
一見は楽をしたいのに非常にきついという、ただ本末転倒に思える。だが、魔力を鍛え、魔素を増やしていると言い換えると、決して無駄ではないとグリムは考える。普段はぼんやりとしているが、サリナは頭が良い。二手、三手先を見据えた行動している。
「んー。本末転倒ー。やめよー」
「……」
(見据えた行動をしていることが多い)
サリナは転がると地面に落ち、そのまま眠りについた。魔力と魔素は関係なかったようだ。隣でクローディが言う。
「取りあえず、後ろ取ったから私の勝ちで良い?」
「駄目」
クローディは、サリナやリーパーみたいに基本敵と戦わないか、見つからない様に立ち回る術を学んで欲しい。
それを言うと喧嘩というか、一方的にサリナに絡むので言わない。多分勇敢な私と、臆病なサリナ的な展開から始まる。そんな彼女だが、知識を活かした分析力は高いのが良い所だ。おかげでロスト暴走の封印魔法が完成出来そうだ。
それとサリナが背中を痛めた時はかなり動揺を見せていたので、嫌いとかではなく、ライバル意識だと思われる。
「そういえば、リーパーとは戦闘訓練しないのか」
「あんな弱そうな竜に負けると悔しいからやらない」
「そこは気にするんだ。ていうか竜判定で良いんだ」
「えー? どう見ても竜じゃん」
リーパーを見たが小さな翼がある頭でっかちの蜥蜴だ。
「仮に翼が無かったら?」
「んー。竜だね」
「竜なんだ」
(だがまあ、俺の見立ては正しかったと証明されたな)
「あ、そうだ。良いこと思いついた。訓練をさ、もっと本格的にしようよ!」
「……というと?」
「食事の時や寝ている時にも私が攻撃するの! それで一撃を与えたら私の勝ち!」
「それ、俺の強化訓練になってる」
「あれ? そうかな?」
こうして、グリム一行は二ヶ月後に向けて訓練をするのであった。
☆☆☆☆☆
何時もお読みいただきありがとうございます。
59話以降、本作は投稿ペースを週一に変更します。時間は引き続き、20:10となります。
終盤が近づき、ストーリーの構成を考えている時間が足りないのが理由です。
☆☆☆☆☆
側面から剣のロストと拳のクローディが飛び掛かる。そこに気を取られた瞬間、蔦が脚に絡みつく。甘美なる誘惑で大鎌に闇を纏わせ、それを切断。それを放置すると魔素が減って行くので、魔法回収で魔法を消す。
変化する盾でクローディの拳を受け止めた。ロストの素早い連撃を大鎌で防ぎ、時には避ける。特に反撃はしていないので、クローディは元気に拳を振るう。そちらは盾を使って受け続ける。二人の攻撃とさらに蔦が襲い掛かる。しかし、彼の影がそれを許さない。
彼等は訓練中である。ロストとグリムは本気を出すと殺傷力があるので、どちらかというとリッスとクローディの訓練になる。
何時の間にか、辺りに黒いモヤがかかり始めた。グリムの闇の霧だ。視界が悪くなり、見失ったのでロストが距離を取る。クローディとの接触も恐れた。一方、彼女はお構いなしに拳を振り続ける。蔦も闇雲に伸ばして来た。
何時もより濃い霧で包み込む。グリム自身、周りが見えなくなるが、感知魔法で三人の居場所と蔦の位置を確認する。闇の霧が不自然に晴れた部分が存在していた。感知魔法に含まれる光属性が原因だ。
いつの間にかリッスの背後にいたグリムが、大鎌を喉に突き立てていた。
「ぅぅ……降参です」
グリムが高く跳ぶ。クローディがそれを警戒していると、恵みの雫で水滴を飛ばした。彼女は思わず目を閉じる。彼女を倒す好機。しかし、ロストが跳躍し剣を振るう。
それを受け止めると、お互いに弾いてそのまま地上に降りた。眼が復活したので接近して来た。
「この程度の攻撃!」
さらにそよ風で眼を狙い乾燥させる。
「ぎゃああああ!」
「《喪失の鎌炎》……ツヴァイ」
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大鎌に炎が纏わりつく。名前に一瞬気を取れたが、警戒して離れようとする。そこで気が付いた。足に凍って動けない。グリムは接近すると炎を纏った大鎌を振るう。それを剣で防ぐが、態勢が悪い。力を上手く入れれずに剣が弾かれてしまう。
「ぁっ! くぅ……ここまでじゃな」
「ははははは! 油断したな!」
またしても回復したクローディが飛び込んで来た。雷の欠片を周りに展開すると、そのまま突っ込んで来た彼女はそれに触れ、体が痺れる。
「あぎゃわわわわ!」
パタリと倒れたがタフさは中々あるようで、すぐに起き上る。
「いや、クローディ。終わりだ。視界奪われたら不味いって。竜の眼が台無しだろ? 避けてくれると助かる」
「え!! 私まだやられてないよ!」
「……死ぬまで続けそうじゃ」
「ここまで訓練が下手なのも珍しいですね」
遠くでミリウとアノが戦っていた。一時戦闘訓練を止めて、頷く。
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「んー。本末転倒ー。やめよー」
「……」
(見据えた行動をしていることが多い)
サリナは転がると地面に落ち、そのまま眠りについた。魔力と魔素は関係なかったようだ。隣でクローディが言う。
「取りあえず、後ろ取ったから私の勝ちで良い?」
「駄目」
クローディは、サリナやリーパーみたいに基本敵と戦わないか、見つからない様に立ち回る術を学んで欲しい。
それを言うと喧嘩というか、一方的にサリナに絡むので言わない。多分勇敢な私と、臆病なサリナ的な展開から始まる。そんな彼女だが、知識を活かした分析力は高いのが良い所だ。おかげでロスト暴走の封印魔法が完成出来そうだ。
それとサリナが背中を痛めた時はかなり動揺を見せていたので、嫌いとかではなく、ライバル意識だと思われる。
「そういえば、リーパーとは戦闘訓練しないのか」
「あんな弱そうな竜に負けると悔しいからやらない」
「そこは気にするんだ。ていうか竜判定で良いんだ」
「えー? どう見ても竜じゃん」
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(だがまあ、俺の見立ては正しかったと証明されたな)
「あ、そうだ。良いこと思いついた。訓練をさ、もっと本格的にしようよ!」
「……というと?」
「食事の時や寝ている時にも私が攻撃するの! それで一撃を与えたら私の勝ち!」
「それ、俺の強化訓練になってる」
「あれ? そうかな?」
こうして、グリム一行は二ヶ月後に向けて訓練をするのであった。
☆☆☆☆☆
何時もお読みいただきありがとうございます。
59話以降、本作は投稿ペースを週一に変更します。時間は引き続き、20:10となります。
終盤が近づき、ストーリーの構成を考えている時間が足りないのが理由です。
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