たとえ世界を敵に回したとしてもOREの病いは治らない

刀根光太郎

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56.記憶

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 魔法を生成しながらも、魔力と魔素を魔法操作の技術を向上させる。クローディが魔物が強く、魔素が濃い場所を知っていたので、そこで特訓をする。

 尋常のやり方では勝てない。身体や魔素を酷使し、体をぎりぎりまで追い詰めながら魔物を倒す。時には単体で、時には協力した。


 日が落ちれば、野営をする。クローディは割とすぐに馴染んだ。リッスとロストと特に仲が良い。サリナにはよく絡むが、嫌いとかではないようだ。

 アノは基本、皆と仲が良い。しかし、何か不安があるのか時々寂しげに感じる時がある。皆が寝静まった頃、起き上がる。

「すまない。起こしてしまったか……」

「いや、寝れなかっただけだ。アノ、最近はどうだ?」

「……悪く無い」


「そうか」


「……グリム。私は強いのだろうか?」

「強い。最初会った時よりも、ずっとだ」


「……やはり、か。何時からだ? お前は何時から……」

「……最初……魔法を当てた時に少し見えた」


「知っていて……意外だ。本当に意外だよ。もっと抜けているのかと思った……私の記憶は……」


 沈黙していた。どれだけ待っても彼女はそれ以上言葉を紡ぐ事は無かった。


「その定義を求めるのは不毛。アノはアノだ。アンノウン・グリモワール・J・アンゲルス。俺たちは知っている……だが、アノが望むのなら、その不毛に幾らでも付き合おう」

 アノは暫く考えていた。そして、柔らかい口調で言った。

「……ふふ、長い名前だな……」

「大丈夫そうか?」


「うん、十分だ。私の目的は六災害を倒す事。お前たちと一緒にな」

「頼りにしてる」


 そして、皆はそのまま目を閉じて寝た。



【翌日】


 目覚めると、クローディとサリナが木を切っていた。 輪切りでは無く、縦に切り、半円になっている部分をくり抜いていた。一見サリナも協力しているように見えたが、何もしてない。クローディが主に頑張っている。良い感じの言葉でそそのかした様だ。

 グリムとリーパーは何やってるんだ、と言った様子で見ていた。ロストはわくわくしながらそれを応援する。

 リッスの背中のサイズを測りだしたところを見ると、どうやら彼女に取り付けるベッドだろう。ミリウはその精密さに感心する。アノがリッスと木の間に挟む緩和剤になりそうな柔らかい布を、街に行って購入して来た。

(あれ……細くなってる部分折れないかな……)

「なぁクローディ」

「おっと! 全ては計算通りぃ! 問題はないよ!」

「なら大丈夫か」


 かなり重量が増すが、筋トレとかで、言いくるめられたのだろう。それにリッスが嬉しそうだ。それを見たらそれ以上は何も言えなかった。

 それは完成した。中々リッスの背中の形にフィットしていた。横幅が広くなった。かなり邪魔だが、縦にしたらシーが可哀そうだからこれできっと正解。そして、サリナは安定して寝るためのベッドを得た。

 グリムは木とリッスの接触部分を見てむずがゆくなり、無言で変化する盾セヘルスクード尋常な治癒エクスヒールを、定期的にかける様になった。


 機嫌が良いサリナに聞いて見た。空間にモノを収納魔法はどのくらいかかりそうかと。階級は超級魔法を生成出来るようになったくらい。と教えてくれた。先日の不可視の爆炎シュティルフラルゴは上級魔法だとも言っていた。もうじきだと考えるとついニヤリとしてしまう。



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