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52.どう動くか
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意識を取り戻した九重は痛みを感じた。これ以上体を動かそうとすると激痛が走る、予感がする。まるで自分の身体ではないみたいに重い。状況を理解しようと微かに目だけを開いた。
「む。気のせいか」
九重は既に目を閉じてた。目の前にゴツイ女とゴツイ鎧が座って居たからだ。その隣にはさらにデカイケンタウロスが座って居た。サリナが何故かフラフラとゾンビの如く周辺を徘徊しているのも見えた。
(まさか俺を食料に! 起きてるのがバレたら意識を刈り取られるッ!!)
そこで腹部に軽い重みを感じる。クローディが片足をそっと乗せたからだ。
「これが竜人と人族の差よ。竜族は全種族で最強の性能を誇ってる。覚えておいてね、ロスト」
怪我人に足を乗っけて勝ち誇ってる奴がいた。しかし、九重は冷静であり、決して怒らない。痛みは無かったし、怒って力を入れた方が痛いからだ。
「竜人の末裔で竜族に育てられただけはある。だが我も半人だ。グリムが半人は最強の力を秘めていると言っていたぞ」
(なに! グリムだと! だとしたらこいつらは……そうだ。思い出した。あの筋肉と鎧はっ)
知った人間の名前は出たが、肝心なそれの声が聞こえない。ジッと目を閉じて息を潜める。時間が経つ毎に起きるのが気まずくなってきたからだ。
暫くクローディとロストが九重を使って、決めポーズの練習をしていた時、グリムの声が聞こえた。リーパーも一緒だ。
「街と周辺を探索したけど、近くに追手とかは居ない」
「一番手っ取り早いのはそいつに話を聞く事だな」
九重が「ぅ……うん……」と若干わざとらしい声を出しながら目を開いた。
「こ、ここは……おれは……一体……」
目覚めてすぐじゃないが、すぐな雰囲気を出した。そこで、固まっているクローディと目が合った。彼女はスッと足を退け、ロストと共に、最初から何事も無かったかの様に離れた。
「ィッ……ッ」
彼は半身を起こしたが、激痛に襲われる。これは演技ではない。
「岸辺に打ち上げられてた。何があった九重?」
「……山田だ……あいつがッ……」
「山田が?」
「奴は王女を真珠に変えて国王を脅迫している」
「なッ……何故そんな事をっ。それに真珠に変えるって?」
「理由なんて知るかよっ。それよりもッ。絶対俺があいつをぶっ殺すッ」
「はぁー、お前ボロボロにされてんだろー。そのまま大人しく逃げてろよ」
「うるせぇなトカゲ!」
九重は何か焦っている様だった。
「ははぁーん。その焦り方。さては女か?」
「ハァッ! ちげっ。あいつはそんなんじゃねぇッ」
「あいつねぇ。まあまあ、そう隠すなよ」
リーパーが肩に乗って頬をペチペチと叩く。イラついて振り払おうとすると激痛が走る。
「話せよ。そうしないと治癒魔法かけてやんねぇぞ」
「チッ……このトカゲぇ……」
九重は思い出す。山田が言った死か服従か。一度冷静になり、話し始める。
「目的は分からねぇが、あの言葉、それに最初の公開時……山田はスキルを二つ持っている。一つは技術の模倣をするスキル。もう一つはスキルを真似るスキルだ」
「スキルを真似るってっ!」
「……正確には真珠になった奴から能力を引き出している様だ。スキル持ちを真珠に変え始めた。恐らく真珠にするトリガーは恐怖心か服従心だろうな。心が折れた時点で負けだ」
「ね……」
リーパーが何か言おうとすると九重に睨まれた。
「あのスキルの数。英雄候補もすでに何人か変えてやがるッ……早くぶっ殺さねぇと全員真珠に変えられちまう。その前に俺のスキルで暗殺する……ッ」
「良いのか~? そいつ死んだら真珠から戻んねぇかもよ?」
「なっ……」
九重がそれを聞いて固まった。明らかに計算外と言った表情をしていた。
「なるほど、厄介だな。無条件で戻る保証がないってだけで。殺されそうになったら、そう言えば。俺たちは信じるしかないしな」
「本当か嘘かはどうでも良い。交渉材料に使ってくるだろうな。最善は交渉が出来ないくらい圧倒的な力でねじ伏せ、相手に強いる事だな」
「……」
「どう倒すかはおいて、九重。大鳥たちは無事なのか?」
「……やつ等ならきっと大丈夫だ。相当の実力者になってる。そんなヘマはしねぇよ」
「お前がしたのにか? 本当に大丈夫かよー」
「……うぜぇトカゲだ」
「でもまあ、スキルはバレてるって考えた方がよさそうだな。一人は捕まってるだろうと考えたら」
リーパーがストレートに聞いた。
「お前はどうするんだ? 山田って奴を倒しに行くのか?」
「当たり前だ。傷が治り次第、奇襲をかける」
「俺たちも手を貸そうか?」
「はっ、断る。慣れ合うつもりはねぇよ。それにあれは俺の責任だ。俺がケリをつける」
「そうか……」
グリムはある事を思い出し、それを伝える。どんなに強制しても、彼は着いて来ない。ならばと一番力になりそうな彼女等の居場所。
「ここから南東の大陸。魔王領がある。八竜の山の北側だな。そこに近藤や暗夜たちがいた。数日前だけどな」
「奴等が……」
(いつの間にか体が少し回復して来たか? もう少し経てば……)
その時、九重はハッとした。癒しの風、以前にも。辺りを見渡すが誰かは分からない。恐らくは気品あふれる黒い鎧か大人しいケンタウロスだ。隣のオークもワンチャンある。
その頃、サリナが異様にゴロゴロと転がっていた。グリムに見せつけるかの如く。多分、お風呂に入りたいアピールだ。
それを余所にリーパーが悪い笑みを浮かべて黒いロングフードと仮面、僅かな路銀を渡して来た。
「なんだぁ? 俺はそんな厨二シリーズ付けねぇぞ。絶対にな」
リーパーは笑みを崩さずに紙を広げた。見事、九重が指名手配の仲間入りをしていた。
「……ッ。な、なにぃッ!」
「ククク、俺のとは少し違うが……それを付けた事で、俺は今まで無事に生きて来たッ」
「ぁ……が……ば……馬鹿、な……ッ」
「助けたい女のためにもー。掴まる訳にはいかないよなぁー……なぁー」
それに反応してロストが近寄って来た。
「えー、我のは?」
「……また今度な」
(ロスト用のサイズ探さないとな……金を稼いだ後で)
九重が苦い顔をして、「クソがッ」という言葉と同時に、それをパッと受け取った。これにはリーパーもニッコリしていた。
グリムも治癒の魔法を使う中。リーパーはお昼寝をしていた。「あいつさっき自分が治癒出来るみたく語ってなかったか」、という疑問を胸にしまい無言で治療を受ける九重。
その間、ミリウが食えと肉を差し出した。断ろうと思った矢先、取り返したいのだろう? と言われ、それを渋々口にする。
九重は仕方なしにそのままグリムたちと野営をする。彼は仲良くはしゃぐグリムたちを見て、大鳥たち思い出す。さらに現地人の女性を。そして、朝日が昇る前に彼は姿を消していた。
「む。気のせいか」
九重は既に目を閉じてた。目の前にゴツイ女とゴツイ鎧が座って居たからだ。その隣にはさらにデカイケンタウロスが座って居た。サリナが何故かフラフラとゾンビの如く周辺を徘徊しているのも見えた。
(まさか俺を食料に! 起きてるのがバレたら意識を刈り取られるッ!!)
そこで腹部に軽い重みを感じる。クローディが片足をそっと乗せたからだ。
「これが竜人と人族の差よ。竜族は全種族で最強の性能を誇ってる。覚えておいてね、ロスト」
怪我人に足を乗っけて勝ち誇ってる奴がいた。しかし、九重は冷静であり、決して怒らない。痛みは無かったし、怒って力を入れた方が痛いからだ。
「竜人の末裔で竜族に育てられただけはある。だが我も半人だ。グリムが半人は最強の力を秘めていると言っていたぞ」
(なに! グリムだと! だとしたらこいつらは……そうだ。思い出した。あの筋肉と鎧はっ)
知った人間の名前は出たが、肝心なそれの声が聞こえない。ジッと目を閉じて息を潜める。時間が経つ毎に起きるのが気まずくなってきたからだ。
暫くクローディとロストが九重を使って、決めポーズの練習をしていた時、グリムの声が聞こえた。リーパーも一緒だ。
「街と周辺を探索したけど、近くに追手とかは居ない」
「一番手っ取り早いのはそいつに話を聞く事だな」
九重が「ぅ……うん……」と若干わざとらしい声を出しながら目を開いた。
「こ、ここは……おれは……一体……」
目覚めてすぐじゃないが、すぐな雰囲気を出した。そこで、固まっているクローディと目が合った。彼女はスッと足を退け、ロストと共に、最初から何事も無かったかの様に離れた。
「ィッ……ッ」
彼は半身を起こしたが、激痛に襲われる。これは演技ではない。
「岸辺に打ち上げられてた。何があった九重?」
「……山田だ……あいつがッ……」
「山田が?」
「奴は王女を真珠に変えて国王を脅迫している」
「なッ……何故そんな事をっ。それに真珠に変えるって?」
「理由なんて知るかよっ。それよりもッ。絶対俺があいつをぶっ殺すッ」
「はぁー、お前ボロボロにされてんだろー。そのまま大人しく逃げてろよ」
「うるせぇなトカゲ!」
九重は何か焦っている様だった。
「ははぁーん。その焦り方。さては女か?」
「ハァッ! ちげっ。あいつはそんなんじゃねぇッ」
「あいつねぇ。まあまあ、そう隠すなよ」
リーパーが肩に乗って頬をペチペチと叩く。イラついて振り払おうとすると激痛が走る。
「話せよ。そうしないと治癒魔法かけてやんねぇぞ」
「チッ……このトカゲぇ……」
九重は思い出す。山田が言った死か服従か。一度冷静になり、話し始める。
「目的は分からねぇが、あの言葉、それに最初の公開時……山田はスキルを二つ持っている。一つは技術の模倣をするスキル。もう一つはスキルを真似るスキルだ」
「スキルを真似るってっ!」
「……正確には真珠になった奴から能力を引き出している様だ。スキル持ちを真珠に変え始めた。恐らく真珠にするトリガーは恐怖心か服従心だろうな。心が折れた時点で負けだ」
「ね……」
リーパーが何か言おうとすると九重に睨まれた。
「あのスキルの数。英雄候補もすでに何人か変えてやがるッ……早くぶっ殺さねぇと全員真珠に変えられちまう。その前に俺のスキルで暗殺する……ッ」
「良いのか~? そいつ死んだら真珠から戻んねぇかもよ?」
「なっ……」
九重がそれを聞いて固まった。明らかに計算外と言った表情をしていた。
「なるほど、厄介だな。無条件で戻る保証がないってだけで。殺されそうになったら、そう言えば。俺たちは信じるしかないしな」
「本当か嘘かはどうでも良い。交渉材料に使ってくるだろうな。最善は交渉が出来ないくらい圧倒的な力でねじ伏せ、相手に強いる事だな」
「……」
「どう倒すかはおいて、九重。大鳥たちは無事なのか?」
「……やつ等ならきっと大丈夫だ。相当の実力者になってる。そんなヘマはしねぇよ」
「お前がしたのにか? 本当に大丈夫かよー」
「……うぜぇトカゲだ」
「でもまあ、スキルはバレてるって考えた方がよさそうだな。一人は捕まってるだろうと考えたら」
リーパーがストレートに聞いた。
「お前はどうするんだ? 山田って奴を倒しに行くのか?」
「当たり前だ。傷が治り次第、奇襲をかける」
「俺たちも手を貸そうか?」
「はっ、断る。慣れ合うつもりはねぇよ。それにあれは俺の責任だ。俺がケリをつける」
「そうか……」
グリムはある事を思い出し、それを伝える。どんなに強制しても、彼は着いて来ない。ならばと一番力になりそうな彼女等の居場所。
「ここから南東の大陸。魔王領がある。八竜の山の北側だな。そこに近藤や暗夜たちがいた。数日前だけどな」
「奴等が……」
(いつの間にか体が少し回復して来たか? もう少し経てば……)
その時、九重はハッとした。癒しの風、以前にも。辺りを見渡すが誰かは分からない。恐らくは気品あふれる黒い鎧か大人しいケンタウロスだ。隣のオークもワンチャンある。
その頃、サリナが異様にゴロゴロと転がっていた。グリムに見せつけるかの如く。多分、お風呂に入りたいアピールだ。
それを余所にリーパーが悪い笑みを浮かべて黒いロングフードと仮面、僅かな路銀を渡して来た。
「なんだぁ? 俺はそんな厨二シリーズ付けねぇぞ。絶対にな」
リーパーは笑みを崩さずに紙を広げた。見事、九重が指名手配の仲間入りをしていた。
「……ッ。な、なにぃッ!」
「ククク、俺のとは少し違うが……それを付けた事で、俺は今まで無事に生きて来たッ」
「ぁ……が……ば……馬鹿、な……ッ」
「助けたい女のためにもー。掴まる訳にはいかないよなぁー……なぁー」
それに反応してロストが近寄って来た。
「えー、我のは?」
「……また今度な」
(ロスト用のサイズ探さないとな……金を稼いだ後で)
九重が苦い顔をして、「クソがッ」という言葉と同時に、それをパッと受け取った。これにはリーパーもニッコリしていた。
グリムも治癒の魔法を使う中。リーパーはお昼寝をしていた。「あいつさっき自分が治癒出来るみたく語ってなかったか」、という疑問を胸にしまい無言で治療を受ける九重。
その間、ミリウが食えと肉を差し出した。断ろうと思った矢先、取り返したいのだろう? と言われ、それを渋々口にする。
九重は仕方なしにそのままグリムたちと野営をする。彼は仲良くはしゃぐグリムたちを見て、大鳥たち思い出す。さらに現地人の女性を。そして、朝日が昇る前に彼は姿を消していた。
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