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51.海は広く大きい
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グリムたちは大海原を泳いでいた。リッスがイカダ作ったのでそれに無言で乗り込む。バランスを取りながら慎重に上に乗った。
そして、リッスはもう一隻に船を作る。割と大きい。ぜぇぜぇと息を切らしていた。かなり魔素を消費した様だ。そこに乗り込むと櫂で船をこぎ始める。
「ふぅー。ぎりぎり際どいところだったよな」
「いや、全然足りて無いんだよなー」
「おいおい正気か? 陸は見えてるだろ?」
「だめー遠いー」
「だめですね」
「だめじゃ」
「筋肉には丁度良い」
「眼鏡かけてないから……」
リーパーが陸から陸に飛べると自信満々に言ってたので、乗り込んだところ。魔素が切れて海に落ちたのであった。もちろん変化する盾はリーパーにかけてある。念のためだ。
「あ……」
「何だ? まさか、お前また」
「いや……気のせいだった。忘れてくれ」
「そういう時は絶対に凡ミスしてんだよな。ほら早く吐いて楽にー……」
その時、海からヘビヤタンが現れた。驚きの声を出しつつも総攻撃を仕掛ける。グリムは闇の魂を放ち。リーパーは魔素の回復中で休み。ミリウは海に飛び込み一瞬で接近して、拳のラッシュを繰り出す。
アノは赤い光で風穴を開け、リッスが木を棘状にして刺してそれを増やす。クローディは海水をかけ、サリナがくしゃみを浴びせた。ロストは血の刃を放ってそれが止めとなった。
ヘビヤタンはたまらず絶命した。リッスの蔦をヘビヤタンに括り付けて陸へと運ぶ。リーパーは言う。
「前にミリウが食べたいって言ってたからな。これを狙ってたんだ」
「おぉ。リーパーよ。感謝する」
「……」
皆は何か言いたそうだったが、そのまま流した。
海岸に着くとグリムがこの世のものとは思えぬ奇声を上げた。サリナが砂浜でゴロゴロと転がり出したからだ。現在、彼女はグリムの黒衣のローブを身に付けている。一張羅だ。慌てて抱きかかえてリッスに乗せる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「つい癖で。ごめんねー」
「い、いや……良いんだ。気を付けてくれればッ……」
一旦、体を温めるために浴場を作る。サリナがくしゃみしてたし。それに海水と砂まみれの服を洗って乾せる。中には簡易な洗濯機と乾燥機があるからだ。
サリナはスッと自然と立ち上がり、浴場に向かって行く。それに追従する形で皆向かった。アノも向かったのは驚いた。塩を水で洗い流すのだろうか。
獣の革を身に付けた原始の死神は、今のうちにヘビヤタンを調理する。
(街で服を買わないとだな)
食事が終わるとクローディが言う。
「ここから西は獣人がいるだろうから、王都は北西だよ」
「何で分かるんだ?」
「昔地図で見たし。後は、まだ魔王領だから気を付けないとだね」
リーパーが疑いの目を向ける。
「本当に覚えてんのか?」
「当たり前よ。そして竜の瞳! これがあれば色々と見えるの!」
「ほー。覗けるのか。いいなそれ」
「違う! そんなのに使わないの!」
皆は顔を見合わせる。言っている事は具体的だ。しかし、今までのクローディを見て来て印象と急に竜の瞳とか言い出した。グリムが言う。
「分かった。北西に行こう」
定期的にロストに上空を飛んでもらい、辺りを見ながらコンパスを片手に進んで行く。数日後に人族の街を見つけた。方角は合っている様だ。
(天才肌のサリナに、秀才のクローディってところか。頼もしい。後は仲良くしてくれれば完璧なんだが)
役に立った事でクローディがサリナを煽っていた。しかし、彼女は相手にせずにスヤスヤと寝ている。悔しそうな表情をするクローディ。
街に入ると早速、服と金属や魔石を補充した。それと予備にローブを三枚購入した。必要な物を揃えると、王都を目指し、さらに北西に向かう。川のせせらぎが心地よい道。サリナがリッスの背中の上で言った。
「んー。うーん……リッス」
「え? 何ですか?」
「臭いー?」
「ええ! 何処がですか! グ、グリムさん! お風呂を出してください!」
「さっき入ったばかりだろ?」
「お願いします」
「違うー。腐敗臭する?」
「……いえ? 特には」
ロストが遅れて気が付いた。川の岸を指さした。
「あ、この前の人族」
「んー? あれは確か……」
「こ、九重っ!?」
グリムが叫んだ。しかし、反応は無い。九重は川から這い上がる途中、うつ伏せの状態で倒れている。近くに駆け寄ると仰向けにする。意識が無い様だ。それよりも驚いたのは体中が傷だらけだった。
一度、感知魔法を発動させた後に近寄る。これは九重に透明になるスキルでやられた後に反省を活かし、隠れている者をあぶり出そうと考えて生成した。
尋常な治癒をかけながら、ミリウが心臓をリズムよく押す。口から水を吐く。呼吸と脈を確認して焚火をする。
「リーパーとリッスは他、周りに誰かいないかを見て来てくれ」
「分かりました!」
「ちっ、仕方ねーなー」
予定を変更し、九重が起きるまでここで野営をする事にした。
そして、リッスはもう一隻に船を作る。割と大きい。ぜぇぜぇと息を切らしていた。かなり魔素を消費した様だ。そこに乗り込むと櫂で船をこぎ始める。
「ふぅー。ぎりぎり際どいところだったよな」
「いや、全然足りて無いんだよなー」
「おいおい正気か? 陸は見えてるだろ?」
「だめー遠いー」
「だめですね」
「だめじゃ」
「筋肉には丁度良い」
「眼鏡かけてないから……」
リーパーが陸から陸に飛べると自信満々に言ってたので、乗り込んだところ。魔素が切れて海に落ちたのであった。もちろん変化する盾はリーパーにかけてある。念のためだ。
「あ……」
「何だ? まさか、お前また」
「いや……気のせいだった。忘れてくれ」
「そういう時は絶対に凡ミスしてんだよな。ほら早く吐いて楽にー……」
その時、海からヘビヤタンが現れた。驚きの声を出しつつも総攻撃を仕掛ける。グリムは闇の魂を放ち。リーパーは魔素の回復中で休み。ミリウは海に飛び込み一瞬で接近して、拳のラッシュを繰り出す。
アノは赤い光で風穴を開け、リッスが木を棘状にして刺してそれを増やす。クローディは海水をかけ、サリナがくしゃみを浴びせた。ロストは血の刃を放ってそれが止めとなった。
ヘビヤタンはたまらず絶命した。リッスの蔦をヘビヤタンに括り付けて陸へと運ぶ。リーパーは言う。
「前にミリウが食べたいって言ってたからな。これを狙ってたんだ」
「おぉ。リーパーよ。感謝する」
「……」
皆は何か言いたそうだったが、そのまま流した。
海岸に着くとグリムがこの世のものとは思えぬ奇声を上げた。サリナが砂浜でゴロゴロと転がり出したからだ。現在、彼女はグリムの黒衣のローブを身に付けている。一張羅だ。慌てて抱きかかえてリッスに乗せる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「つい癖で。ごめんねー」
「い、いや……良いんだ。気を付けてくれればッ……」
一旦、体を温めるために浴場を作る。サリナがくしゃみしてたし。それに海水と砂まみれの服を洗って乾せる。中には簡易な洗濯機と乾燥機があるからだ。
サリナはスッと自然と立ち上がり、浴場に向かって行く。それに追従する形で皆向かった。アノも向かったのは驚いた。塩を水で洗い流すのだろうか。
獣の革を身に付けた原始の死神は、今のうちにヘビヤタンを調理する。
(街で服を買わないとだな)
食事が終わるとクローディが言う。
「ここから西は獣人がいるだろうから、王都は北西だよ」
「何で分かるんだ?」
「昔地図で見たし。後は、まだ魔王領だから気を付けないとだね」
リーパーが疑いの目を向ける。
「本当に覚えてんのか?」
「当たり前よ。そして竜の瞳! これがあれば色々と見えるの!」
「ほー。覗けるのか。いいなそれ」
「違う! そんなのに使わないの!」
皆は顔を見合わせる。言っている事は具体的だ。しかし、今までのクローディを見て来て印象と急に竜の瞳とか言い出した。グリムが言う。
「分かった。北西に行こう」
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(天才肌のサリナに、秀才のクローディってところか。頼もしい。後は仲良くしてくれれば完璧なんだが)
役に立った事でクローディがサリナを煽っていた。しかし、彼女は相手にせずにスヤスヤと寝ている。悔しそうな表情をするクローディ。
街に入ると早速、服と金属や魔石を補充した。それと予備にローブを三枚購入した。必要な物を揃えると、王都を目指し、さらに北西に向かう。川のせせらぎが心地よい道。サリナがリッスの背中の上で言った。
「んー。うーん……リッス」
「え? 何ですか?」
「臭いー?」
「ええ! 何処がですか! グ、グリムさん! お風呂を出してください!」
「さっき入ったばかりだろ?」
「お願いします」
「違うー。腐敗臭する?」
「……いえ? 特には」
ロストが遅れて気が付いた。川の岸を指さした。
「あ、この前の人族」
「んー? あれは確か……」
「こ、九重っ!?」
グリムが叫んだ。しかし、反応は無い。九重は川から這い上がる途中、うつ伏せの状態で倒れている。近くに駆け寄ると仰向けにする。意識が無い様だ。それよりも驚いたのは体中が傷だらけだった。
一度、感知魔法を発動させた後に近寄る。これは九重に透明になるスキルでやられた後に反省を活かし、隠れている者をあぶり出そうと考えて生成した。
尋常な治癒をかけながら、ミリウが心臓をリズムよく押す。口から水を吐く。呼吸と脈を確認して焚火をする。
「リーパーとリッスは他、周りに誰かいないかを見て来てくれ」
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「ちっ、仕方ねーなー」
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