44 / 58
44.不気味な笑い
しおりを挟む
西古がゴーレム召喚に気を取られている最中、リーパーが背後から襲撃、そのまま馬乗りで連続ラッシュを繰り出しているのをコングに、それぞれの戦いも開始していた。
クローディが服を破いた本人に勝負を挑んだ。脱がされたのが、余程イラっと来たのだろう。今はグリムの《闇の霧》で、体を黒いもやで覆っている。
クローディの拳が放たれる。木村はそれを軽く避ける。彼は避ける事が異様に上手い。
「か、可愛い……」
木村は思わず口走る。150センチに満たない小柄。竜の角、翼、尻尾を持つ。栗色髪の女の子。蛇のような黄色の瞳。体の一部分は黒いもやで良く見えないが、きっとスタイルも良いだろう。
木村が避けるのが上手いのもあるが、何故かたまに転ぶ。眼鏡を拾うと、すぐに起き上り攻撃を闇雲に繰り返す。
(俺はこの世界に来た当初、自分のスキルの弱さに絶望していた。だが、今は違う。能力で相手の動きを鈍らせて、ひたすらに回避に専念する。そう、俺は近藤たちが倒し終えて来るのを待てばいい!)
「あ、黒いもやが消えかかってる」
「え!?」
思わず彼女は手で体を覆うが、黒いもやが消えていない。騙される姿も可愛らしい。
「くっ! この! 騙したな!」
「はっはっは!」
(せめて装飾品も壊せたらと考えた時期もあった。しかし、ある日、真実に気が付いた。だがそれがいい! 俺はひたすらに彼女等が健気に動く姿を堪能すれば良い!)
そんな時、足に木の根が絡みついた。
(なんでこんな所に剥き出しの根が!)
すると誰も居ないのに背後から透明な何かにドンと押された。そこにクローディの分回している。大振りな拳が噛み合い、顔面にめり込んだ。
「や! やった! 皆、悪を成敗したぞ! 私の手柄だ!」
クローディは歓喜の声を上げた。リッスとサリナが優しく微笑んだ。
しかし、彼女等はすぐに真剣な表情へ戻る。二人は暗夜と対峙していた。不気味だった。軽く風と植物の蔦を使い、避けきれずに掠る。
すると彼女は何事も無かったかのように笑っていた。それどころか何度も何度も無防備に近づいて来る。それを迎撃しているのだが、止まらない。
何よりも彼女は傷が完治していた。ロストと同等かそれ以上の再生速度だった。
そして、再び彼女が近づいて来た。二人は驚いた。先ほどよりも速い。陸上部もビックリの綺麗なフォームだ。
「加速系の魔法です!」
凄まじい速度でリッスに接近すると、彼女の体に触れた。サリナが風魔法で吹き飛ばす。地面に転がると、ゆっくりと笑いながら立ち上がった。口から軽く吐血していた。
「ぷぷぷ。もう逃げられない」
「なにー?」
サリナは隣を見て驚愕する。リッスが膝を付いていた。腹部に紋章が光っていた。
「ィッ……」
「痛覚……魂のリンク……呪いの魔法?」
「終わり、もう終わり。ぷぷぷ」
「サリナさんっ。遠慮せずにやってください!」
「分かったー。全力で全身を切り刻むー」
「ええ! やっぱり駄目です!」
「えー、どっちなのー?」
「ちょっと格好つけて見たかっただけですよ……何か方法はないんですか?」
「ないー」
「そんな!」
サリナは風と光を合わせた回復魔法をリッスにかけた。それを待つ気が無い暗夜は一直線にダッシュする。
風の魔法で直接触れない様にガードする。不気味に笑う女。二人は驚愕した。彼女の右手が爆発した。サリナたちは吹き飛ばされる。同時にリッスの腕に無数の切傷が現れ、出血する。
(んー。やっぱりそういう系統ー。本人のダメージの何割かを対象に与えてる。でも彼女……痛くないのかなー)
暗夜の腕は再生していく。その間も笑っていた。サリナは痛くないのだと解釈する。でも、理由はあるはず。それが可能な。
彼女の爆破圏内に入らない様に早めに風で優しく飛ばしながら、適当に観察する。リッスも痛みを堪え、拘束をメインに動く。しかし、下手に強力な拘束をすると自らを爆破するので注意がいる。蔦を引きちぎり、露骨に近寄って来る。
(魔素切れ狙いにする? んーでも、長期戦は面倒。考えられるのは痛覚の遮断……肩代わり……痛覚麻痺……戦闘しながらそれを……技術も魔素も足りなそう……それなら外部からー……)
サリナは全体を観察した。そこで一人、戦いをしながらもこちらを気にする者がいた。アノと対峙している佐藤だ。
(見つけたー……)
「アノ……その子を倒してー。こっちに関連してて、きついかもー」
「!?」
佐藤は動揺した。
「すまない。かなり強くて苦戦していた。だが、そういう事なら、承知した」
アノは空間を歪め、黒い大剣と大盾を取り出した。佐藤は無意識に体が震えていた。一目見ただけで分かるその変化。その禍々しい装備。
「な、なによそれ! 聞いてないよ!」
「いざ……尋常に勝負」
アノは落ち着いた口調でそう言い放った。
クローディが服を破いた本人に勝負を挑んだ。脱がされたのが、余程イラっと来たのだろう。今はグリムの《闇の霧》で、体を黒いもやで覆っている。
クローディの拳が放たれる。木村はそれを軽く避ける。彼は避ける事が異様に上手い。
「か、可愛い……」
木村は思わず口走る。150センチに満たない小柄。竜の角、翼、尻尾を持つ。栗色髪の女の子。蛇のような黄色の瞳。体の一部分は黒いもやで良く見えないが、きっとスタイルも良いだろう。
木村が避けるのが上手いのもあるが、何故かたまに転ぶ。眼鏡を拾うと、すぐに起き上り攻撃を闇雲に繰り返す。
(俺はこの世界に来た当初、自分のスキルの弱さに絶望していた。だが、今は違う。能力で相手の動きを鈍らせて、ひたすらに回避に専念する。そう、俺は近藤たちが倒し終えて来るのを待てばいい!)
「あ、黒いもやが消えかかってる」
「え!?」
思わず彼女は手で体を覆うが、黒いもやが消えていない。騙される姿も可愛らしい。
「くっ! この! 騙したな!」
「はっはっは!」
(せめて装飾品も壊せたらと考えた時期もあった。しかし、ある日、真実に気が付いた。だがそれがいい! 俺はひたすらに彼女等が健気に動く姿を堪能すれば良い!)
そんな時、足に木の根が絡みついた。
(なんでこんな所に剥き出しの根が!)
すると誰も居ないのに背後から透明な何かにドンと押された。そこにクローディの分回している。大振りな拳が噛み合い、顔面にめり込んだ。
「や! やった! 皆、悪を成敗したぞ! 私の手柄だ!」
クローディは歓喜の声を上げた。リッスとサリナが優しく微笑んだ。
しかし、彼女等はすぐに真剣な表情へ戻る。二人は暗夜と対峙していた。不気味だった。軽く風と植物の蔦を使い、避けきれずに掠る。
すると彼女は何事も無かったかのように笑っていた。それどころか何度も何度も無防備に近づいて来る。それを迎撃しているのだが、止まらない。
何よりも彼女は傷が完治していた。ロストと同等かそれ以上の再生速度だった。
そして、再び彼女が近づいて来た。二人は驚いた。先ほどよりも速い。陸上部もビックリの綺麗なフォームだ。
「加速系の魔法です!」
凄まじい速度でリッスに接近すると、彼女の体に触れた。サリナが風魔法で吹き飛ばす。地面に転がると、ゆっくりと笑いながら立ち上がった。口から軽く吐血していた。
「ぷぷぷ。もう逃げられない」
「なにー?」
サリナは隣を見て驚愕する。リッスが膝を付いていた。腹部に紋章が光っていた。
「ィッ……」
「痛覚……魂のリンク……呪いの魔法?」
「終わり、もう終わり。ぷぷぷ」
「サリナさんっ。遠慮せずにやってください!」
「分かったー。全力で全身を切り刻むー」
「ええ! やっぱり駄目です!」
「えー、どっちなのー?」
「ちょっと格好つけて見たかっただけですよ……何か方法はないんですか?」
「ないー」
「そんな!」
サリナは風と光を合わせた回復魔法をリッスにかけた。それを待つ気が無い暗夜は一直線にダッシュする。
風の魔法で直接触れない様にガードする。不気味に笑う女。二人は驚愕した。彼女の右手が爆発した。サリナたちは吹き飛ばされる。同時にリッスの腕に無数の切傷が現れ、出血する。
(んー。やっぱりそういう系統ー。本人のダメージの何割かを対象に与えてる。でも彼女……痛くないのかなー)
暗夜の腕は再生していく。その間も笑っていた。サリナは痛くないのだと解釈する。でも、理由はあるはず。それが可能な。
彼女の爆破圏内に入らない様に早めに風で優しく飛ばしながら、適当に観察する。リッスも痛みを堪え、拘束をメインに動く。しかし、下手に強力な拘束をすると自らを爆破するので注意がいる。蔦を引きちぎり、露骨に近寄って来る。
(魔素切れ狙いにする? んーでも、長期戦は面倒。考えられるのは痛覚の遮断……肩代わり……痛覚麻痺……戦闘しながらそれを……技術も魔素も足りなそう……それなら外部からー……)
サリナは全体を観察した。そこで一人、戦いをしながらもこちらを気にする者がいた。アノと対峙している佐藤だ。
(見つけたー……)
「アノ……その子を倒してー。こっちに関連してて、きついかもー」
「!?」
佐藤は動揺した。
「すまない。かなり強くて苦戦していた。だが、そういう事なら、承知した」
アノは空間を歪め、黒い大剣と大盾を取り出した。佐藤は無意識に体が震えていた。一目見ただけで分かるその変化。その禍々しい装備。
「な、なによそれ! 聞いてないよ!」
「いざ……尋常に勝負」
アノは落ち着いた口調でそう言い放った。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる