たとえ世界を敵に回したとしてもOREの病いは治らない

刀根光太郎

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37.竜人(1)

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 竜の血を飲み意識を失ったグリムは目を覚ました。そこは洞窟の中。湿気は思ったよりは無く、住みやすそうだ。リーパーたちは既に目覚めていた。


「寝坊助が目覚めたみたいだぞ」


 皆が顔を覗かせる。

「どのくらい寝てた?」

「十日だ。俺たちもさっき起きたばっかだ」


 グリムはおぼろげながら状況を思い出す。ふと石を発見した。それをおもむろに掴み、渾身の力を込めて握りしめる。手を開くとパラパラと粉が落ちていく。


 その石の正体はただの土の塊だった。


「何やってんだ? 堅い石と思ったのか?」

「……全然思ってないし」


 外に出ると竜たちは疲れきっていた。どうやら全力で看病してくれていたらしい。


「ぉおぉ!! 良くぞ目覚めた……英雄たち……ふぅー」

「ほんと大変だったなぁ……フゥー」

「ほんとじゃよ……ふぅー……ほんとじゃよ……ふぅー」


 赤竜、クローディ、特に一般老竜がネチネチと疲労アピールで刺して来る。一般老竜の記憶がフラッシュバックする。


「こんなに焦ったのはアトランティス大陸たいりくが一夜で滅んだ時以来じゃ」

「一夜というよりも一瞬。あれには驚いた……危うく巻き込まれて死んでいたかもしれんな。もう……2500年も前になるのか……」



「……ご迷惑をおかけしました……誠に申し訳ございません」


 お疲れモードを解除し、真剣な表情に戻る。

「さて……グリム。これからクローディも一緒に連れて行ってはくれぬか?」


「急に何を言ってるの! おじいちゃん!?」


「嫌がってます。俺はリーパーを除き、強制はしたくない」

「ひでぇ、なんてやつだ……」


「お主等ぬしらの体感で、先ほども言ったが我は寿命近い……このままクローディを置くと長を決める戦いに巻き込まれる……」


「私だって戦いにッ」


「クローディ……身の程をわきまえよ。お主は弱い」

「ッ……」


 赤竜はグリムが見ている事に気が付き、ハッとなり、急に饒舌になった。


「弱いというのは長候補おさこうほとして弱いと言った意味で、普通に弱い訳では無い。あ、竜族としては弱いが、それと比べると強い部類に入る。むしろ伸びしろのかたまりで」


「六災害と共に戦うかは置いて、一緒に来る分には強さは気にしてません」

「そ、そうか……」


 こうして、クローディが加わった。赤竜の提案で暫くここで訓練をしていく事となった。

 その間に六災害に会う方法などを聞いた。結果としては、自由に動いており、かなりの感知能力を持っているので遭遇は難しい。


 広範囲の探知魔法を持ち、古代の乗り物か、空間転移魔法で虚を突くいて、一気に近づくのが良いらしい。


 クローディの強さを確認をする。

「竜人って、ブレスを吐けるのか?」

「もちろん!」

「ほー。見てみたいな」

 彼女が勢いよく息を吸う。

「フゥー!? フゥー……」



 グリムたちは集まって円陣を組んだ。

「なぁ、ふざけてる感じか?」


「真面目っぽいぞ。俺は天然っぽくて良いと思う。可愛いし」

「我はサリナの様に隠してると思うぞ。サリナの様にっ」

「わー根に持たれてるー?」


「恐らく筋肉は無い」

「いやでも、リーパーの近い巨大化タイプかもな」

「ふむ……」


「サリナとリッスを足して三で割った感じだろう」

「どういう意味ですか?」


「場を和ますのが上手いというか……何と言うか……」

「えー、私そうなんですかー」

 リッスはまんざらでもない感じであった。


「でも、知識はあるって赤竜が……それに私みたいに剣や盾を切り札に隠し持っているかも」

「なさそう……」

「じゃあ、プラス竜族の知識か」


「どうした? か弱き種族たち」

 皆は察した。先ほどの失態を見せてその態度。間違いなくリッス側。


 それに気が付かないリッスが満面の笑みで言う。

「いえー、ようこそ。歓迎しますよ」

「私は風竜の末裔だとも噂されている強い竜人だ」


 この時、グリムは五重詠唱を覚えようと心に決めた。



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