たとえ世界を敵に回したとしてもOREの病いは治らない

刀根光太郎

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29.仲間

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 傷を治したグリムは深夜の丘の上で座って居た。目が充血していた。敗北を思い出すと再び拳を握りしめる。

「クソ!?」

 地面を思いっ切り殴った。血がにじむが、彼はそれを気にしなかった。負けた。絶対に負けてはいけなかったのに。それでも足りなかった。体中から湧きあがるそれ。

(悔しい……ッ)

 今までの努力を全て無駄にされた気分だった。

「結果だけが全て……か。俺は……なんて弱いんだッ!?」


 彼はずっとそこで悩んでいるようだった。心配したリッスが足音を隠さずにパカパカと歩いて来て隣に座る。

「元気だしてください……グリムさんがそうだと。私たちも辛いです」


「……ごめん」

 グリムはそれだけ言うと、また沈黙する。それを見てリッスは頬を膨らます。

「ふぅ……もー!? 何だって言うんですか!? 私なんて日頃からそんな気分ですよ! 皆さん強すぎです! 最弱だと思ってたサリナさんも強かったんですよ!」

 駄々っ子のように叫んだ。勢いが凄かったので反論が出来なかった。一変。落ち付いたリッスは言う。


「これからです。頑張りましょう」

「今までも頑張って来たさ……でも、俺は負けた。あの時に死んでいたんだ……ッ」

「今、生きてます」


「一対一の戦いで負けたんだっ」

「負けたのは悔しいですけど、グリムさんが死んじゃうのは悔しいとかじゃなくて、絶対に嫌ですからね」

「……」


「さあ、気が済んだら戻ってくださいね」


 そう言い残すと彼女はキャンプの場所へと戻って行った。暫く考え事をしているとロストが来た。

「ずっと戻って来ないから心配したぞ」

「悪かった」


「我はグリムが居ないと困るぞ。この鎖の整備はグリムしか出来ないんだからのぉ。最後まで責任はとってもらうぞ!」

「……ああ、改善していくよ」

「うむ!」


 機嫌が良くなり、キャンプ地に戻る。次に交代でアノが来た。

「あー、私は短い付き合いで分らないのだが、とりあえずサリナが行って来いと」

「それは災難だったな」

「不満があるようだった」


「風呂……だろ?」

「……さすが。よく分かってる」

「発動するための魔素が足りない、かなりマジで。アノにまで気を使わせて悪かった」

「私もパーティーの一員になった。気にするな。サリナには伝えておく」


 アノが戻ると、交代でサリナが転がりながら坂を上って来た。

「げ……」

「げ、ってなにー?」


「いや……なんでも。その動き、きつそうだな」

「敵に無視されそうな動き。日頃から練習しないと」

「はは……」


 暫く沈黙の時が流れる。するとサリナが先に喋り出した。

「グリムの魔法」

「え?」

「私はとても気に入ってるー」


「……そう、か」

「魔法って、気持ちが大事だからー」

「気持ちが?」


「魂が無い、側だけの魔法なんて。簡単に消せるー」

「そっか……」


「あー、それとー」

「魔素はマジでない。発動した瞬間、不発だし、たぶん死ぬ」


「じゃあ、ご飯食べて早く休んで~」

「ああ……もう少ししたら戻る」

 サリナはコロコロと転がりながら戻る。そこで、ちょろちょろと近づく影があった。

「なんだリーパー? らしくない」

「今まで見た事のないほどの落ち込みようだからな……この旅で俺が一番長く一緒に居るんだ、お前の気持ちは痛いほどよく分かる」

「……リー」


「なんて言うと思ったのか!? バーカがぁ!? ダッセ!? 負けてやんのー!?」


「てめ……ッ」

「日頃から効率良く魔法を作ってないからそうなんだよぉ! 間抜けが!?」


「なんだぁ? 煽りに来ただけか?」

「当たり前だろ? 俺は現実的に、お前は夢想を行くんだろ?」


「……」


「何時だってそうだった。それともお前は、あの村人やロストを助けたのが無駄だって思ってんのかぁ?」

「それは」


「あの魔法には意味がない。あの魔法のせいだってっ、下らない反省をすんのか? ハッハッハッ、それに反省したら合理的な魔法生成を目指すんだな!?」

 リーパーはそう言って去って行った。静かになった丘で一人呟く。


「ありがとよ。相棒リーパー

 グリムがゆっくりと立ち上がる。木の陰に居たミリウは一足先に戻るのであった。


 戻ると皆寝ていた。仮眠途中だったリッスがもう一度寝ていた。ミリウとアノだけが起きていた。


「おかえり」「おかえりなさい」

「ただいま」


「丁度肉を焼いている」

「ありがとう、ミリウ」

 焼いた魔物の肉を渡されると、それを頬張る。その他にも魔素が豊富な木の実などがあった。


「うぅ~ん、旨いっ」

「そうか。良かった……」


「私と彼との戦闘で疲れている。ゆっくり休んでくれ」

 アノ戦と途中で起こされた九重たちの戦闘で皆疲れて先に寝たのようだ。


「次は負けない。もっと強くなって、六災害を絶対に倒す」

 ミリウは少し微笑みながら言う。

「知っている」


「このパーティーに加わって間もない。生意気を言うようだが、貴方に着いて来たのが正しかったと、私にそう思わせてくれ」

「ああ、分かってる」


 その時、想像魔法が完成した。少し対人も意識した魔法も作っていかないとな。それと、魔素不足も解消したい。目が覚めたらサリナに聞いて見るか。時間が惜しいので、魔法を生成中にして眠りにつく。

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