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17.獣人
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【辺境の地】
目が覚めると、牢屋の中にいた。ミリウの低い声が響いた。
「目覚めたか」
向かい側にも同じく牢屋があり、鉄格子の中にロストとミリウが居た。しかし、ロストはまだ横になって気を失っている。
「……俺の力が覚醒して転移した、のか……」
「違う。私たちはオークに捕まった」
「!? 一体何が……ぅっ首が……」
「少し話しが長くなるが?」
「大丈夫だ、話してくれ」
そして、ミリウが語り出した。
数時間前、グリムとロストは息を切らしていた。ミリウは人族と獣人たちの追手が来てないか警戒していた。リーパーは鞄の中に居る。
「何とか巻けたようだな」
「まったく、至る所にいるな。英雄候補を呼び過ぎだってのっ」
「グリムよ。これからどうす、むん」
その時、ミリウが立っている場所が崩れた。崖に落ちていく。慌ててグリムが彼女の腕を掴むと、そのまま地の底へ引き釣り込まれた。
ロストもそれを追いかけて、グリムの腕を掴み、翼をばたつかせる。しかし、浮遊する気配は無く、そのまま勢いよく落下していった。
「うわぁぁぁあああ!?」
地面に着地すると彼女が腕に力を込め、二人を支える。地面が割れたが、彼等は無事だった。しかし、完全に衝撃は抑えきれず、ロストとグリムは意識を失っていた。
「すまぬ」
「おいおい、何がどうなったっ?」
「凄い段差だった。む……」
「なんだ、脅かすな。気を付けろよ、ドジっ子ども~」
リーパーが鞄の中から少し顔を出した時、ミリウが周りを見渡していた。兵に囲まれていた。彼は即鞄に隠れる。豚の様な姿、しかし二足歩行して武具を身に着けている。魔王領に暮らすオーク族だ。
オークは一連の様子を見ていたため、何か困惑していたが、やがて口を開いた。
「貴様っオークか!? あ、オークは俺たちか」
「そうだ、そうだ……てっきり」
「ぐっ……何という筋肉……貴様、何者ッ?」
「エルフ族。ミリウ・エルエル」
「おおぉ! エルフ! 素晴らしい。女、悪いが遠いご先祖様からの遺言でな。拘束させてもらう」
この数相手に意識の無い二人を守り切れないと判断し、大人しく捕まったのである。
【牢屋】
グリムはリーパーを探す。しかし、鞄には居なかった。ミリウに聞こうと思ったが、オークに聞かれる可能性があるので黙っていた。
どうやら魔法を構築できない。オークもかなりの魔法対策が出来るようだ。ミリウがいる場所の隣には獣人らしき女性も捕まっていた。
そんな時、遠くから声が聞こえる。
「ど、どうかっ。お助けてください!?」
「そう言われて助けるはずがないだろ。女はここで永遠に暮らしてもらう。これが一番発展が早のでなッ」
ドアが開くと彼女を凝視した。失礼だとは思ったが、それ以上に見た事が無い姿だったからだ。
一番近い表現はケンタウロス。腕は鳥の羽。尻尾は蛇。上半身が馬の耳を持つ獣人、下半身は馬。毛並みは滑らかで栗毛。言葉を話せ、最低限体を隠せる服を着ているので、そういう種族なのだろう、とグリムは考えた。
オークが牢屋に入れようとするが、二メートル半はありそうな巨体で扉を通せない。ここはオークを捕まえる牢では無いから入口が狭かった。
「痛い! 痛いです! 止めてください!」
「くっ、くそ! なんてことだ! この牢、設計ミスじゃないか!?」
そこでミリウが立ち上がると鉄格子を掴んだ。オークがうろたえる。
「な、なんだっ。大人しくしないと、ただじゃおかないぞ!」
「むん!」
そして、彼女が力を込めると鉄格子が曲がり、入り口が広くなった。尻尾の蛇がクルクルと丸くなる。
「彼女が痛がっている」
「あ、すみません」
そう言いながらオークがケンタウロスを収納すると、ミリウは鉄格子を元に戻す。そして、鍵をかけている時にオークは気が付いた。
「……え? お前……もしかして脱走出来るのか?」
「今の私では、一度しか使えぬ奥義」
「そうか。ならば大丈夫か」
オークが去って行くとグリムは言う。
「一度なのか?」
「先ほどの私では、な……筋肉は状況に応じ、常に進化する」
(凄いな筋肉って……)
ずっと泣いている者にグリムが訊ねた。
「貴方は獣人ですか?」
「わ、私は……」
隣の牢屋で捕まっている獣人が言う。
「はっ、そんな訳あるかい。そいつはねぇ、化け物だよ!」
それを聞いて、彼女は委縮する。グリムをそれに取り合わずに彼女と話す。
「名前は?」
「……リッス」
「はっ、化け物で十分だよぉ!」
「ご、ごめんなさい!」
そこでロストが目覚めた。状況を思い出しながらゆっくりと起き上がる。
「ぅ……ん……」
「目覚めたか?」
「え、我覚醒した?」
リッスを見て唖然とした様子で言う。
「……もしかして我が召喚したのか?」
「違うぞロスト。その方はリッスさんだ」
「仲間?」
「い、いえ! 違うますよッ!?」
隣の獣人が笑い出す。
「あはははは! その化け物と仲間だって!? 頭がおかしいんじゃないか!?」
ロストがリッスをジッと見つめる。暫く見ていると我慢できずに馬の方の背中を撫でた。すると蛇が腕に優しく触れて来た。そして、ロストは上半身、毛で覆われた背中を撫でる。
「ひやっん! あ、あの! くすぐったいです」
ミリウがロストを引き離した。
「すまぬな。リッスよ」
「い、いえっ……き、気にしてませんっ」
彼女は照れた様子だ。気持ちを落ち着かせるため、左右の指をくっ付けて、手で遊び出した。隣の獣人は、彼等の反応が気に食わないのか、さらに叫ぶ。
「はっ! 悪い事は言わない! そんな気味の悪い化け物に関わるの何て止めときな! 不幸になっちまうよぉ」
「白き竜が来る……」
「はぁ、なんだって? 白き? ……ん?」
獣人がふと目線を落とすと、リーパーが目の前に立っていた。そして間入れずに彼女の服に入り込んだ。
「ぎゃぁぁあああ! なんだこいつぅ!? やめて、やめて、やめろこの野郎! あひゃひゃひゃひゃ。くすぐったい! 離れろぉぉお!」
満足したのかリーパーが戻って来た。そして、鞄に入るとスヤスヤと寝た。丁度その頃、騒ぎを聞きつけたオークが獣人の前に来た。
「うるさいぞ!」
「今! 変なのがいた! 私の服に入って来て! とにかく変なのが居たんだよ! ここ、ここから出してくれ! 喰われるぅぅ! 食い殺されるぅぅうう」
彼女が息を切らしているが、特に何も変わった様子は無い。そんな変なのも見当たらなかった。
「……ぁ~……お、俺は下っ端だから……じゃ、じゃあな……俺が言うのもあれだが、お、お大事にな……あ、一応静かに頼む……」
「居たんだよ。本当に居たんだよぉ。信じてくれよぉ」
ここから脱出するための作戦。それはミリウだ。そこで考える。今よりもっと強くなれば自分でもここから出られるのだろうか?
魔法が使えない原理が分からない事には、それに対抗する魔法を生成できない。魔法の生成自体が出来るか試す、それも不可能の様だ。
対策をするなら外で予め作らなければならない。
(俺もまだまだ弱い。作るべき魔法はまだ沢山あるみたいだな……ククク、足りないからこそ俺は力を求め続けるッ)
【夜の帳】
空気が澄み、静寂が訪れた。外に繋がるドアからオークが入って来た。
「お前等が新入りか。うんうん、丁度良いサイズだな」
ミリウたちを一瞥すると動きが止まる。
「ん? まあ、裏技を使えば多少は大丈夫だろう」
「オークさん。俺たちの武器は何処にありますか?」
昼間のやり取りを見るに文明の割に、そこまで頭は良くなさそうだ。
「馬鹿か、そんな事言うはずないだろッ? それにお前のは確か、あの使えないダセェ大鎌だろ! はっはっはッ笑えるぜ!」
「はぁ?」
「ああ? 何だその眼は、文句あるのか?」
リーパーが痛みを与えてグリムを落ち着かせる。そして、彼に伝授された作戦を言う。
「オ、オークさん……もし武器を持ってくれたら……良い事を教えますよー」
「何? だから無理だと……」
「もし……あの大鎌と剣が美女になるとしたら?」
「なんだと!」
「ただ、方法が分かりにくい。もし、持って来てくれるなら……」
既にオークはその場に居なかった。リーパーが良い顔で言う。
「なっ?」
「嘘……だろ……マジでいけた」
オークがそれを持って来た。
「さあ、早く教えろ!」
「まあまあ焦らず……」
その時、背後でミリウが、予め壊していた鉄格子をゆっくりと開ける。
「まずは……脳を揺らします」
「? なに?」
ミリウがオークを殴ると倒れた。道は予めリーパーが探索していたので分かる。一番脱走が楽なのは牢の壁を壊す事。それを見た獣人たちは驚いた。獣人たちが助けてくれと声を上げる。
だが一人だけ目を地面を見ていた。昼間、散々嫌味を言ったからだ。
「ミリウ、派手に行くか?」
「ふむ。良かろう」
すると彼女は牢屋を全て破壊し始めた。一番驚いたのは悪態を着いた獣人だった。
「な、なんで……私までっ……」
「感情無き者の魂は不味いからな」
「……ど、どういう意味だ?」
「」
「おい、早く行くぞ!」
グリムたちと捕まった女性たちは外に出る。彼等が逃げるとオークたちが追って来た。グリムとリーパーが魔法を大量にばら撒きながら逃げる。
捕まった者たちは体力が落ちている。グリムの尋常な治癒エクスヒールで完全では無いが、彼女等を癒した。それを見たグリムは止まる。同時にリーパーが姿を現した。
「げっ! その白いのは!」
リーパーは幻影で彼女たちを隠す。彼は決め顔で言う。
「逃げるならあっちだ。俺たちはここで時間を稼ぐから行け」
獣人からは訳の分からない怒りが込み上がる。彼等の仲間は全員が異なっている。しかも、彼等は見知らぬ獣人も異形のリッスも全て助けた。そして今、こうして囮になろうとする。何為に?
「くそ! 何だ! 何なんだお前達は!? 何故助ける! 何故、貴様等は!?」
それを聞いてグリムとロストがポーズを決め始めた。
「ククク、我等は異端……闇が恐れ……」
「闇に愛され……」
「闇を統べし……」
「吸血鬼」「死神」「筋肉」「俺は関係ない」
「何なんだよぉ……分からない……っ」
困惑する獣人を気にせずにグリムは彼女の方を見た。
「さて……リッスはどうだ?」
「え……私……?」
「我等が怖いか?」
「あ、い、いえ……」
「フフフ、貴方には資格がある」
「しか、く?」
「ククク、我は汝のような者を待っていた……我等と共に行こう」
「……は、はい」
リッスには何が何だか分からなかった。しかし、誘われた事が嬉しかった。なので彼女は自身の心に従った。
グリムは他の獣人たちに告げた。
「さあ、早く行くが良い」
「れ、礼は言わないからなッ」
「もとより不要だ」
去り行く獣人たち。そこで、オークが追い付いて来た。
「くそ! 獣人たちを何処にやった!」
その時、彼等は既に逃げ出していた。その姿を見て血管が切れた。オークたちはグリムを追う。数が多すぎるのでまずは逃げながら様子を見ようと考えた。
しかし、そう上手くは行かなかった。他のオークよりも一回り巨漢オークと数人が逃げ道を塞いでいた。
「回り込まれたぞ!」
「突破するしかあるまい……」
「ククク、深淵を知るが良い。《色褪せぬ罪咎》」
「おぉ! 新しいのか!」
グリムは持続型の身体強化の魔法、森人の探求と。短時間だが、かなりの身体強化が出来る魔法、偽りの勇士を重ねて使用し、超加速する。
その大鎌を持って巨体オークに切りかかる。巨大な武器でそれを受け止めるがオークが力負けし、後方に押され地面に直線を描く。
「ぐぬぬぬ! これしきで!」
徐々に押し返すオーク。グリムは武器を弾いて距離を取ると戻って来た。ミリウは柔らかい表情で言う。
「《デリットリスィ》か。不覚。私が魔法に目を奪われるとは」
「おい、グリム。今のはどんな魔法なんだ?」
「……そ……り……だ」
「何だってッ?」
「だから、魔素が足りなかったようだ」
「……それは……魔素が足りなかったという事か?」
「ああ、魔素消費が凄まじい。最大威力を見たい、という願いの弊害だな。同時期に作成した《闇の魂》も同じ問題を抱えてるとみた」
「……事前に試したか?」
「元気な時にな」
「良し! 勝てば許そう!」
「……ふっ、当然だ」
彼等は走り出した。
「我は闇より出ずる深紅の災禍……業を背負いし愚者に災いを……」
背後でロストが深紅の剣と翼を出した。ダメージを負い、再生により魔素を奪われる前に、攻めて決める気だろう。
「死を畏れぬ生者に安息を。優しき眠りに誘え。《甘美なる誘惑》」
「自然に宿りし大いなる精霊たちよ……フォォォォ」
「どいつもこいつも決め台詞かよ!?」
そこでリーパーはリッスとふと目が合った。
「ぁ……私も、ですか?」
リーパーは優しい表情で首を横に振った。
巨漢オークは驚愕した。部下を無視して一直線に向かって来ていたからだ。
「なにぃぃ! 全員俺狙いか!? 望むところだ! 返り討ちにしてくれるわ!」
刹那。不意打ちで地面から発生した影の刃がオークを襲う。避けきれずに全てを受けてしまう。
「がッ……まだまだぁ……」
血と羽の大雨がさらに降りかかる。
「ぐあぁぁぁあああ!? これしきでぇ……」
最後に力強い走りで迫って来るミリウが走り抜けた。
「ぶはっ……ッ」
巨漢オークは大きく吹き飛ばされて意識を失った。彼等の部下が叫んだ。
「やったぞッ。我等のボスが勝ったぞぉぉぉお!? あ、負けたのか紛らわしい」
部下がボス治療しようと近寄る。その隙にグリムたちは去って行った。
【静かな場所】
オークを振り切ったグリムたちはリッスは野営をしていた。話を聞いていると、リッスは戦闘が得意では無い。
☆☆☆☆☆
リッス
レベル:6
スキル:
魔法:ナリッシュ、プラントグロース
属性:地属性、植物派生
☆☆☆☆☆
ミリウが真剣な表情で言う。
「私はリーパーと同意見だ。六災害との戦いは壮絶を極める……共に戦うのは厳しいだろう」
「言ってねぇ!? 良いだろ! リッスと旅をしようぜ!」
「む。其方、強さが必要だと……」
「違うんだよ……今回は例外何だよぉ。六災害と戦う所まで行かなくても一緒に居てもいいだろ!」
「わ、私は……」
グリムがそれを受けて言う。
「あの状況。かなり強引に誘ったからな……リッスさん、厳しい戦いになるのは本当だ。もう一度、答えを聞かせてくれないか?」
「……私は……ど、どうすれば……」
尻尾がクルクルと丸まる。不安を感じている様だ。
「これだけは自分で答えを出して欲しい。願うなら獣人の村に送り届けよう……」
「村に……ッ」
皆はそれ以上は何も言わない。目を瞑り、それ以上は彼女に訴えかけない。彼女の言葉を待っていた。
リッスは先ほどの事を思い出す。彼女からは三人は正常に見える。
「……貴方たちはどうのような存在なのですか?」
「俺は人族の期待を裏切った名もない死神」
「……」
「我は出来損ないの吸血鬼。同族の命を奪いし闇」
「私は魔法を捨てたエルフ」
「……何故……一緒にいるのですか?」
「死神の直観」「成り行き」「漆黒の夢」「筋肉の声」
皆は目を閉じたままそう言った。その可笑しな者たちを見て、リッスは少しだけ微笑んでいた。
「私は皆さんの事をもっと知りたい……きっと強くなります。だから一緒に行かせてください」
皆は目を開ける。グリムが悪い笑みを浮かべて言った。
「ククク、歓迎しよう。ようこそ、我々の世界へ」
目が覚めると、牢屋の中にいた。ミリウの低い声が響いた。
「目覚めたか」
向かい側にも同じく牢屋があり、鉄格子の中にロストとミリウが居た。しかし、ロストはまだ横になって気を失っている。
「……俺の力が覚醒して転移した、のか……」
「違う。私たちはオークに捕まった」
「!? 一体何が……ぅっ首が……」
「少し話しが長くなるが?」
「大丈夫だ、話してくれ」
そして、ミリウが語り出した。
数時間前、グリムとロストは息を切らしていた。ミリウは人族と獣人たちの追手が来てないか警戒していた。リーパーは鞄の中に居る。
「何とか巻けたようだな」
「まったく、至る所にいるな。英雄候補を呼び過ぎだってのっ」
「グリムよ。これからどうす、むん」
その時、ミリウが立っている場所が崩れた。崖に落ちていく。慌ててグリムが彼女の腕を掴むと、そのまま地の底へ引き釣り込まれた。
ロストもそれを追いかけて、グリムの腕を掴み、翼をばたつかせる。しかし、浮遊する気配は無く、そのまま勢いよく落下していった。
「うわぁぁぁあああ!?」
地面に着地すると彼女が腕に力を込め、二人を支える。地面が割れたが、彼等は無事だった。しかし、完全に衝撃は抑えきれず、ロストとグリムは意識を失っていた。
「すまぬ」
「おいおい、何がどうなったっ?」
「凄い段差だった。む……」
「なんだ、脅かすな。気を付けろよ、ドジっ子ども~」
リーパーが鞄の中から少し顔を出した時、ミリウが周りを見渡していた。兵に囲まれていた。彼は即鞄に隠れる。豚の様な姿、しかし二足歩行して武具を身に着けている。魔王領に暮らすオーク族だ。
オークは一連の様子を見ていたため、何か困惑していたが、やがて口を開いた。
「貴様っオークか!? あ、オークは俺たちか」
「そうだ、そうだ……てっきり」
「ぐっ……何という筋肉……貴様、何者ッ?」
「エルフ族。ミリウ・エルエル」
「おおぉ! エルフ! 素晴らしい。女、悪いが遠いご先祖様からの遺言でな。拘束させてもらう」
この数相手に意識の無い二人を守り切れないと判断し、大人しく捕まったのである。
【牢屋】
グリムはリーパーを探す。しかし、鞄には居なかった。ミリウに聞こうと思ったが、オークに聞かれる可能性があるので黙っていた。
どうやら魔法を構築できない。オークもかなりの魔法対策が出来るようだ。ミリウがいる場所の隣には獣人らしき女性も捕まっていた。
そんな時、遠くから声が聞こえる。
「ど、どうかっ。お助けてください!?」
「そう言われて助けるはずがないだろ。女はここで永遠に暮らしてもらう。これが一番発展が早のでなッ」
ドアが開くと彼女を凝視した。失礼だとは思ったが、それ以上に見た事が無い姿だったからだ。
一番近い表現はケンタウロス。腕は鳥の羽。尻尾は蛇。上半身が馬の耳を持つ獣人、下半身は馬。毛並みは滑らかで栗毛。言葉を話せ、最低限体を隠せる服を着ているので、そういう種族なのだろう、とグリムは考えた。
オークが牢屋に入れようとするが、二メートル半はありそうな巨体で扉を通せない。ここはオークを捕まえる牢では無いから入口が狭かった。
「痛い! 痛いです! 止めてください!」
「くっ、くそ! なんてことだ! この牢、設計ミスじゃないか!?」
そこでミリウが立ち上がると鉄格子を掴んだ。オークがうろたえる。
「な、なんだっ。大人しくしないと、ただじゃおかないぞ!」
「むん!」
そして、彼女が力を込めると鉄格子が曲がり、入り口が広くなった。尻尾の蛇がクルクルと丸くなる。
「彼女が痛がっている」
「あ、すみません」
そう言いながらオークがケンタウロスを収納すると、ミリウは鉄格子を元に戻す。そして、鍵をかけている時にオークは気が付いた。
「……え? お前……もしかして脱走出来るのか?」
「今の私では、一度しか使えぬ奥義」
「そうか。ならば大丈夫か」
オークが去って行くとグリムは言う。
「一度なのか?」
「先ほどの私では、な……筋肉は状況に応じ、常に進化する」
(凄いな筋肉って……)
ずっと泣いている者にグリムが訊ねた。
「貴方は獣人ですか?」
「わ、私は……」
隣の牢屋で捕まっている獣人が言う。
「はっ、そんな訳あるかい。そいつはねぇ、化け物だよ!」
それを聞いて、彼女は委縮する。グリムをそれに取り合わずに彼女と話す。
「名前は?」
「……リッス」
「はっ、化け物で十分だよぉ!」
「ご、ごめんなさい!」
そこでロストが目覚めた。状況を思い出しながらゆっくりと起き上がる。
「ぅ……ん……」
「目覚めたか?」
「え、我覚醒した?」
リッスを見て唖然とした様子で言う。
「……もしかして我が召喚したのか?」
「違うぞロスト。その方はリッスさんだ」
「仲間?」
「い、いえ! 違うますよッ!?」
隣の獣人が笑い出す。
「あはははは! その化け物と仲間だって!? 頭がおかしいんじゃないか!?」
ロストがリッスをジッと見つめる。暫く見ていると我慢できずに馬の方の背中を撫でた。すると蛇が腕に優しく触れて来た。そして、ロストは上半身、毛で覆われた背中を撫でる。
「ひやっん! あ、あの! くすぐったいです」
ミリウがロストを引き離した。
「すまぬな。リッスよ」
「い、いえっ……き、気にしてませんっ」
彼女は照れた様子だ。気持ちを落ち着かせるため、左右の指をくっ付けて、手で遊び出した。隣の獣人は、彼等の反応が気に食わないのか、さらに叫ぶ。
「はっ! 悪い事は言わない! そんな気味の悪い化け物に関わるの何て止めときな! 不幸になっちまうよぉ」
「白き竜が来る……」
「はぁ、なんだって? 白き? ……ん?」
獣人がふと目線を落とすと、リーパーが目の前に立っていた。そして間入れずに彼女の服に入り込んだ。
「ぎゃぁぁあああ! なんだこいつぅ!? やめて、やめて、やめろこの野郎! あひゃひゃひゃひゃ。くすぐったい! 離れろぉぉお!」
満足したのかリーパーが戻って来た。そして、鞄に入るとスヤスヤと寝た。丁度その頃、騒ぎを聞きつけたオークが獣人の前に来た。
「うるさいぞ!」
「今! 変なのがいた! 私の服に入って来て! とにかく変なのが居たんだよ! ここ、ここから出してくれ! 喰われるぅぅ! 食い殺されるぅぅうう」
彼女が息を切らしているが、特に何も変わった様子は無い。そんな変なのも見当たらなかった。
「……ぁ~……お、俺は下っ端だから……じゃ、じゃあな……俺が言うのもあれだが、お、お大事にな……あ、一応静かに頼む……」
「居たんだよ。本当に居たんだよぉ。信じてくれよぉ」
ここから脱出するための作戦。それはミリウだ。そこで考える。今よりもっと強くなれば自分でもここから出られるのだろうか?
魔法が使えない原理が分からない事には、それに対抗する魔法を生成できない。魔法の生成自体が出来るか試す、それも不可能の様だ。
対策をするなら外で予め作らなければならない。
(俺もまだまだ弱い。作るべき魔法はまだ沢山あるみたいだな……ククク、足りないからこそ俺は力を求め続けるッ)
【夜の帳】
空気が澄み、静寂が訪れた。外に繋がるドアからオークが入って来た。
「お前等が新入りか。うんうん、丁度良いサイズだな」
ミリウたちを一瞥すると動きが止まる。
「ん? まあ、裏技を使えば多少は大丈夫だろう」
「オークさん。俺たちの武器は何処にありますか?」
昼間のやり取りを見るに文明の割に、そこまで頭は良くなさそうだ。
「馬鹿か、そんな事言うはずないだろッ? それにお前のは確か、あの使えないダセェ大鎌だろ! はっはっはッ笑えるぜ!」
「はぁ?」
「ああ? 何だその眼は、文句あるのか?」
リーパーが痛みを与えてグリムを落ち着かせる。そして、彼に伝授された作戦を言う。
「オ、オークさん……もし武器を持ってくれたら……良い事を教えますよー」
「何? だから無理だと……」
「もし……あの大鎌と剣が美女になるとしたら?」
「なんだと!」
「ただ、方法が分かりにくい。もし、持って来てくれるなら……」
既にオークはその場に居なかった。リーパーが良い顔で言う。
「なっ?」
「嘘……だろ……マジでいけた」
オークがそれを持って来た。
「さあ、早く教えろ!」
「まあまあ焦らず……」
その時、背後でミリウが、予め壊していた鉄格子をゆっくりと開ける。
「まずは……脳を揺らします」
「? なに?」
ミリウがオークを殴ると倒れた。道は予めリーパーが探索していたので分かる。一番脱走が楽なのは牢の壁を壊す事。それを見た獣人たちは驚いた。獣人たちが助けてくれと声を上げる。
だが一人だけ目を地面を見ていた。昼間、散々嫌味を言ったからだ。
「ミリウ、派手に行くか?」
「ふむ。良かろう」
すると彼女は牢屋を全て破壊し始めた。一番驚いたのは悪態を着いた獣人だった。
「な、なんで……私までっ……」
「感情無き者の魂は不味いからな」
「……ど、どういう意味だ?」
「」
「おい、早く行くぞ!」
グリムたちと捕まった女性たちは外に出る。彼等が逃げるとオークたちが追って来た。グリムとリーパーが魔法を大量にばら撒きながら逃げる。
捕まった者たちは体力が落ちている。グリムの尋常な治癒エクスヒールで完全では無いが、彼女等を癒した。それを見たグリムは止まる。同時にリーパーが姿を現した。
「げっ! その白いのは!」
リーパーは幻影で彼女たちを隠す。彼は決め顔で言う。
「逃げるならあっちだ。俺たちはここで時間を稼ぐから行け」
獣人からは訳の分からない怒りが込み上がる。彼等の仲間は全員が異なっている。しかも、彼等は見知らぬ獣人も異形のリッスも全て助けた。そして今、こうして囮になろうとする。何為に?
「くそ! 何だ! 何なんだお前達は!? 何故助ける! 何故、貴様等は!?」
それを聞いてグリムとロストがポーズを決め始めた。
「ククク、我等は異端……闇が恐れ……」
「闇に愛され……」
「闇を統べし……」
「吸血鬼」「死神」「筋肉」「俺は関係ない」
「何なんだよぉ……分からない……っ」
困惑する獣人を気にせずにグリムは彼女の方を見た。
「さて……リッスはどうだ?」
「え……私……?」
「我等が怖いか?」
「あ、い、いえ……」
「フフフ、貴方には資格がある」
「しか、く?」
「ククク、我は汝のような者を待っていた……我等と共に行こう」
「……は、はい」
リッスには何が何だか分からなかった。しかし、誘われた事が嬉しかった。なので彼女は自身の心に従った。
グリムは他の獣人たちに告げた。
「さあ、早く行くが良い」
「れ、礼は言わないからなッ」
「もとより不要だ」
去り行く獣人たち。そこで、オークが追い付いて来た。
「くそ! 獣人たちを何処にやった!」
その時、彼等は既に逃げ出していた。その姿を見て血管が切れた。オークたちはグリムを追う。数が多すぎるのでまずは逃げながら様子を見ようと考えた。
しかし、そう上手くは行かなかった。他のオークよりも一回り巨漢オークと数人が逃げ道を塞いでいた。
「回り込まれたぞ!」
「突破するしかあるまい……」
「ククク、深淵を知るが良い。《色褪せぬ罪咎》」
「おぉ! 新しいのか!」
グリムは持続型の身体強化の魔法、森人の探求と。短時間だが、かなりの身体強化が出来る魔法、偽りの勇士を重ねて使用し、超加速する。
その大鎌を持って巨体オークに切りかかる。巨大な武器でそれを受け止めるがオークが力負けし、後方に押され地面に直線を描く。
「ぐぬぬぬ! これしきで!」
徐々に押し返すオーク。グリムは武器を弾いて距離を取ると戻って来た。ミリウは柔らかい表情で言う。
「《デリットリスィ》か。不覚。私が魔法に目を奪われるとは」
「おい、グリム。今のはどんな魔法なんだ?」
「……そ……り……だ」
「何だってッ?」
「だから、魔素が足りなかったようだ」
「……それは……魔素が足りなかったという事か?」
「ああ、魔素消費が凄まじい。最大威力を見たい、という願いの弊害だな。同時期に作成した《闇の魂》も同じ問題を抱えてるとみた」
「……事前に試したか?」
「元気な時にな」
「良し! 勝てば許そう!」
「……ふっ、当然だ」
彼等は走り出した。
「我は闇より出ずる深紅の災禍……業を背負いし愚者に災いを……」
背後でロストが深紅の剣と翼を出した。ダメージを負い、再生により魔素を奪われる前に、攻めて決める気だろう。
「死を畏れぬ生者に安息を。優しき眠りに誘え。《甘美なる誘惑》」
「自然に宿りし大いなる精霊たちよ……フォォォォ」
「どいつもこいつも決め台詞かよ!?」
そこでリーパーはリッスとふと目が合った。
「ぁ……私も、ですか?」
リーパーは優しい表情で首を横に振った。
巨漢オークは驚愕した。部下を無視して一直線に向かって来ていたからだ。
「なにぃぃ! 全員俺狙いか!? 望むところだ! 返り討ちにしてくれるわ!」
刹那。不意打ちで地面から発生した影の刃がオークを襲う。避けきれずに全てを受けてしまう。
「がッ……まだまだぁ……」
血と羽の大雨がさらに降りかかる。
「ぐあぁぁぁあああ!? これしきでぇ……」
最後に力強い走りで迫って来るミリウが走り抜けた。
「ぶはっ……ッ」
巨漢オークは大きく吹き飛ばされて意識を失った。彼等の部下が叫んだ。
「やったぞッ。我等のボスが勝ったぞぉぉぉお!? あ、負けたのか紛らわしい」
部下がボス治療しようと近寄る。その隙にグリムたちは去って行った。
【静かな場所】
オークを振り切ったグリムたちはリッスは野営をしていた。話を聞いていると、リッスは戦闘が得意では無い。
☆☆☆☆☆
リッス
レベル:6
スキル:
魔法:ナリッシュ、プラントグロース
属性:地属性、植物派生
☆☆☆☆☆
ミリウが真剣な表情で言う。
「私はリーパーと同意見だ。六災害との戦いは壮絶を極める……共に戦うのは厳しいだろう」
「言ってねぇ!? 良いだろ! リッスと旅をしようぜ!」
「む。其方、強さが必要だと……」
「違うんだよ……今回は例外何だよぉ。六災害と戦う所まで行かなくても一緒に居てもいいだろ!」
「わ、私は……」
グリムがそれを受けて言う。
「あの状況。かなり強引に誘ったからな……リッスさん、厳しい戦いになるのは本当だ。もう一度、答えを聞かせてくれないか?」
「……私は……ど、どうすれば……」
尻尾がクルクルと丸まる。不安を感じている様だ。
「これだけは自分で答えを出して欲しい。願うなら獣人の村に送り届けよう……」
「村に……ッ」
皆はそれ以上は何も言わない。目を瞑り、それ以上は彼女に訴えかけない。彼女の言葉を待っていた。
リッスは先ほどの事を思い出す。彼女からは三人は正常に見える。
「……貴方たちはどうのような存在なのですか?」
「俺は人族の期待を裏切った名もない死神」
「……」
「我は出来損ないの吸血鬼。同族の命を奪いし闇」
「私は魔法を捨てたエルフ」
「……何故……一緒にいるのですか?」
「死神の直観」「成り行き」「漆黒の夢」「筋肉の声」
皆は目を閉じたままそう言った。その可笑しな者たちを見て、リッスは少しだけ微笑んでいた。
「私は皆さんの事をもっと知りたい……きっと強くなります。だから一緒に行かせてください」
皆は目を開ける。グリムが悪い笑みを浮かべて言った。
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