たとえ世界を敵に回したとしてもOREの病いは治らない

刀根光太郎

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7.覗きは良くない

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【街:ゴルゴドン】


 リーパーはとある宿屋に居た。テーブルの上に乗って、グリムの帰りを待っている。扉が開くとなるべくドアに近づこうと、テーブルの端へ嬉しそうに移動した。

 しかし、グリムはドアの隙間から顔を覗かせるだけで、一向に部屋に入らない。リーパーが先に口を開く。


「殺すぞ?」

「まだ何も言ってねぇ……」


「何かやらかした、って表情をしてる」

「外れだ。やらかしては無い……だが、最善さいぜんでは無かったかもしれん」


「……言ってみろ」

 彼が部屋に入ると大鎌を持っていた。出かけた時には持って無かった武器だ。リーパーは自然に言葉を放つ。


「死ねよ」

「はぁ? 何言ってんだ! 格好いいだろ! 死神の必需品ひつじゅひんだぞ!」


「必需品とかカッコイイとか悪いとかはどうでも良いッ!! 飯はぁっ!?」

「……この鎌で金を生み出せば良いだろう?」


「おっけ、それ売りに行く」

「馬鹿かっ、ふざけんなよ! ついに狂ったか!?」


「それはこっちの台詞だボケが!」



 戦士ギルドにはリーパーだけが登録した。まだ依頼はこなしていない。お金が余っていたからだ。そして、その余っていたお金は、たった今、消えてなくなった。

 ずっと続ける気は無いが、当分は小金稼ぎに、ギルドにお世話になるだろう。


 そういう訳で俺たちはギルドで依頼を見ていた。俺は黒いフードに仮面を被っているクールな男だが、割と変なのが多いので余り目立って無い。良い依頼を見つけたので、早速リーパーに見せに行く。


「見ろよこれ。結構いいがくだぞ」

「却下。今のお前じゃ、そのサイズの竜にすら勝てねーよ」


「ふっ、俺一人ならな。だが一人じゃないとしたら? 例えば、今はリーパーが」

普通ふつう無理むり。よーし、ゴブリン退治だな。農作物のうさくもつを荒らすのが六匹出たとよ」


「……いや、せめてグリフォンとかに」

「ギルドに突き出すぞ」

「くっ……」

 仕方なく折れる事となる。街の外に出ると、リーパーは俺の鞄に潜り込む。


「サボりか?」

「腹が減って動けん。誰かさんのせいでな」

「野生歴が長いのに貧弱なやつ」

「食えそうな奴がいたら起こしてくれ」

 挑発を軽く受け流した。余程空腹だったのか。リーパーは大人しく眠りについた。

(とはいえ大鎌の分、しっかりと稼がないとな。それでこいつの好物を沢山買おう)


 俺は次の魔法生成の候補を考えながら歩く。


☆☆☆☆☆

①ファイアーランス級で別の属性の魔法
②大鎌やその他の荷物を収納できる空間魔法
③身体能力強化の持続版
④黒い炎
⑤大鎌に纏わせる、なんか闇のエフェクト

☆☆☆☆☆


 ②は現状では一番きつい。何故なら空間系の魔法は一筋縄ではいかない予感がする。否、確信と言っても良い。ということは、実用的な④と⑤あたりが良いか。

「いち……」

 突然鞄の中から声が聞こえた。急いで開けてみるとリーパーが寝ていた。

「ふぅ……びっくりした。ただの寝言ねごとか」


 鞄を閉じた時、俺は大鎌を構えた。一メートル半ほどある魔物。頭に角。そして、爬虫類のうろこの様な皮膚ひふを持つ狼に出くわしたからだ。それは一匹では無い。四匹だ。


「死神に出会うとは、運が無いやつらめ」


 一斉に襲い掛かって来る。俺は大鎌を振る。狼を吹き飛ばした。しかし、立ち上がる。


「……」


 そして、狼は再び襲い掛かる。力一杯ちからいっぱい、大鎌を振る。もう一度魔物を飛ばしたが、先ほどよりも飛んだ距離が短く、復帰も早かった。

 思ったより早くも適応してきた。それを見た俺は大鎌を地に置き、無言でけんいた。

 一斉に襲い掛かる狼の攻撃をかわしつつ、一匹の喉を突き刺し、仕留める事に成功した。それを見て他の狼は逃げ出す。


「これが、死神の力……」



 料理の時間だ。血抜きをして氷の粒ザミル恵みの雫ロゼの魔法で肉を冷やす。新しく短剣を買ったので、それを使い皮を取った後、肉を切り分ける。命を奪ったからには無駄には出来ない。

 長時間の調理でかなり疲れた。仕上げに魔物を焼いていると匂いに釣られて、リーパーが起きて来た。


「お、飯か!?」


「ああ、17匹は居たんだがな……この大鎌に敵はなし」

「それだけいて一匹しか狩れんのか……しょぼい武器だ」

「……ふっ、お前は何も分かって無いな」


「まあいいや。取り合えず飯だ。あと剣の手入れはしっかりとしておけよ」

「……かりは無い」


 ご飯を終えると食後の運動に大鎌を振る。どうやらこれを使うにはコツがいるらしい。練習が必要だ。素振りをしながら、ちょこんと岩に座っている満腹で機嫌良さげなリーパーに訊ねる。


よん、選ぶならどっちが良い?」

いち

「はぁ!? 何でぇ!?」

 思わず素振りを止めた。それは余りに予想外の答えだった。


「次の想像魔法そうぞうまほう生成の話だろ?」

「……そうとも言える」


「お前は馬鹿だが大馬鹿者じゃない。恐らく最初に考えたのは実用的な魔法。二番目に考えたのは実用的だが階級かいきゅうが高い魔法。で、さらに考えたのは現魔法の改善版か、または治癒の魔法」


「ぬ……」


「そして、理由を話さずに提示した四と五は、くそほど役に立たない馬鹿魔法。よっていちだ」

「役に立たないとは心外だな……」

「四と五の共通点を一言で言うなら?」


「ロマンだっ」


「はい、いちで決定」


(くっ。順番を変える事は出来ない。俺が決めた事だからな……今回はいちでいく。次はコソっと作ろう)


 問題は属性を何にするかだ。風、氷、雷が候補。幾つかある選択肢で一番好きな案は黒い炎の応用で、雷に見えるが実は風だとか視覚的に騙し、相手の判断を遅らせる、というもの。

 しかし、無理やりそれを再現しようとすると、何かしらのロスが生じる。

 例えば威力の割には使用魔素が多く、生成時間も長くなるだろう。今はまだ、単純かつ使いやすい魔法を作るべきだな。悔しいがリーパーが正しい。


(待てよ。リーパーの属性、電気、ナマズ……はッ。それを考えると雷は悪く無いな……雷の魔法を生成開始だ)


「決まったようだな?」

「おかげ様でな」


 目的地に着く。ゴブリンは居ないようなので暫く周辺を見て回る。

「見ろ。ゴブリンの足跡あしあとだ。ククク、この方向から来るようだ。馬鹿な奴め」

「それ鳥の足跡」


「……ゴブスの足跡だったか」

「そんな魔物は居ない。繰り返すが鳥だ。ゴブリンは関係ない。まったく馬鹿も休み休みいえ……」


「……隠れて待つか?」

「仕方ない、そうしよう」


「そうだ、満月まんげつだッ……満月の夜に黒衣を纏って奇襲きしゅうするかっ?」

「もっと休め馬鹿……」


 茂みに隠れてジッとゴブリンを待った。グリムが飽きて大鎌の練習をしようとしていたが、リーパーが止める。数時間後、その時がやって来た。鳴き声が聞こえた。


「鳥か?」

「あの鳴き声、ウイングルだな」


 鷹に近い獰猛な鳥の魔物が地上へと降りて来た。二人は驚愕した。そこにゴブリンが騎乗していたからだ。グリムが小さな声で呟く。

「やはりゴブトリスだったか……!?」

 リーパーはそれを無視した。調子に乗らせては駄目だからだ。


「俺は鳥をやる。グリムはゴブリンを頼む」

「クク、地底ちていひそみし妖精ようせいたちの断末魔だんまつまかなでようか……」


 リーパーがそれを無視して、スプラッシュで鳥を地上に縛りる。竜に変身すると間入れずに鳥の魔物をほふる。


 それに驚くゴブリンたちの隙を狙って、背後から大鎌で奇襲をかける。一気に二匹倒した後、こちらに気が付き反撃しようとした魔物をさらに一匹倒す。残りの三匹は一度距離を取って体勢を整える。

 ゴブリンが不利な状況を悟り、攻めるのを躊躇ためらう。それを見たグリムは大鎌を恰好よく振り回して相手を威嚇いかくする。


「お前たちは確かに強かった……だがッ」


 そこでリーパーがゴブリンの背後から近づき、一瞬にしてその鋭い爪で全滅させた。辺りを見渡し安全を確認すると元の姿に戻る。


「……」


「よし終わったな。帰るぞ~」

「お前さ? 地竜の時、もっとゆっくりしてたろ?」


「それはそうだろ。人族の多くは臆病だ。豊かな想像力で危険を回避しようとする。だからあのやり方が一番効くんだよ」

「ふっ、なるほどな」


「もちろん挑んで来ることもあるだろう。本当に強い奴か、馬鹿がな。実際に挑んで来たのは馬鹿一人。まれだ。だから意外に良い作戦だぞ」

「まあ、二人抜きは出来なかったみたいだな」


「勘違いしてるようだが、それをやり始めてからは、村人にしか会ってねぇし、村人にしか勝ったことねーよ。それよりも村で遺体の後処理を頼んで、さっさとギルドに報告しようぜ」


「トンチか?」

「違う。一回しか負けてねぇって事だ」



【グリムとリーパーは見た】

 俺たちは街ゴルゴドンへ帰還する。日が暮れそうなので、近道のために人通りの少ない林道を抜けることにした。

 そんな時、話し声が聞こえた。男性三人と女性一人。女性が男性に囲まれ、問い詰め寄られていた。本能的に良くない雰囲気を感じ取り、隠れて耳をませた。


「まさか、このままで終わり、だとは思ってないよな?」

「それに、何でもするって言ったよな?」

「でも、わ、私は領主の!」

「はっ、そんなのことに意味ないッ。重要なのはっ……」


「待てぇッい!?」


 俺は驚いた。鞄の中で休んでいたはずのリーパーが、いつの間にか人の姿になって乱入したからだ。四人の内、一人がリーパーに向かって叫んだ。

「な、なんだ貴様はっ」


「大丈夫かい? だがもう安心だ。おっと、止めときな野郎共。お前等は、俺には勝てない。さあ、今すぐその娘を解放するんだッ」


「何を訳の分からんことをぉ」


 その時、リーパーに近寄り声を張り上げる。

「くらえッ」

「なんで!?」


 初手は喉を狙った貫手だった。リーパーは何とか反応する。今度は拳を何度も放って来た。それをひたすらに避け続ける。彼女は格闘タイプの様だ。


(……まさか、俺たちは勘違いをしているのでは)

「なあ! 俺たちは偶然ここを通りかかっただけだ。その子が襲われていると勘違いしてっ。戦う意思は無い」

 グリムが木の陰から現れて、停戦を申し込むが彼等は聞く耳を持たない。


「知るか!?」


「聞き分けの無い奴等! だから間違えたって言ってんだろ!?」

 避け続けるのが難しいと判断したリーパーの怒りのスプラッシュで、四人を飲み込む。


「手加減はしておいた……ちょっと頭を冷やせ……」

 水で吹き飛んだ彼等を見て、俺たちは驚いた。彼等は緑や青い肌になっていたからだ。リーパーが呟く。


「魔族か……」

「ちっ……変装がバレた!」

 その時、男の一人が魔法で鳥のようなものを作り、空へと解き放った。俺はファイアーボールでそれを破壊した。それが他の魔族に連絡するための魔法に見えたからだ。魔族は苦い顔をして全てを悟る。


「なるほどな……流石に生かして帰す気はないか……」


「違うって、話し合おうと思っただけだって!? 小難しいこと言ってないで和平わへいでも結ぼうぜ! 皆仲良し! 楽しいなっ。てへ!」

 リーパーが人の姿で必死に可愛さを出すが、もはや話し合いと言う言葉は耳には入らないらしい。魔族の仲間たちも戦う方向で会話を続ける。


「気を付けろよ。この二人は強いぞ……恐らくは王国の刺客しかく。魔族を見つけては殺して回ると噂の……」

「へっ、どちらにせよ秘密の計画を聞かれたんだ。差し違えてでも殺さないとな」


 計画とか刺客とかの単語を聞いた瞬間、グリムの方にも何かスイッチが入った。

「お前たちの計画はすでに認知していた……だが、こちらも一方的な虐殺ぎゃくさつは好まない。今の通告が最後の良心だったのだがな……」


「英雄を召喚しておいて今更それを言うか人族!?」


「やれやれ、何も成していない英雄を畏れるとは……魔族はそのような存在か」

「黙れ!? すでに歴史が、これからどうなるかをしめしている!?」


「ふっ、まあいい……何を言おうが、すでにさいは投げられた。もう止まる事は無い。ならば我も役割やくわりたそう……」


「や、役割だと……貴様は何者だ!?」


「クク、冥府で再会する仲間に伝えるが良い。我が名は原罪げんざいのファフニール! さあ、ゆくぞっ。我が友よ!」


 しかし、隣を見るとリーパーが居なかった。すでに逃走していた。グリムは走って追いつくと、並走しながら言う。

「おい何逃げてんだ! 恰好悪すぎだろ!?」

「馬鹿か!? 魔族は英雄に任せとけよ! てかお前も日和ひよって、ファフニールの方を名乗ってたじゃねーか!?」


「黙るんだっ。それと言っとくけど、俺も英雄だからなっ?」

「黙れッ、指名手配犯が!」


「後な、あいつら倒さないとギルド用の顔、覚えられてるぞ。多分魔法での連携で情報伝達が早いから、すぐに追手も来そうだしな」

「なに! それを早く言え!?」

 リーパーは急に真逆へと走り出す。案の定、彼等が魔法を使おうとしていたので、少し遠かったが、珍しく必死になってスプラッシュを放ち、それを妨害する。魔族は驚く。


「くっ!? 何がしたいんだこいつら!?」


「なに……少し趣向を変えてみたまでよ、クククク」


「た、多分だけど、こいつ等、実は弱いんじゃ……」

「あり得るな……話を聞かれた事に動揺していたが……」

「冷静になろう。何時ものやつ行くぞ……」


「弱い? 戦場では判断を誤ったものから死んでいく……後悔と共に逝け」


 グリムは身体能力を強化して接近すると大鎌を振る。瞬く間に接近をした男に魔族は驚愕する。

「早い!?」

 凶悪な大鎌が大木を二本切り倒した。しかし、三本目の途中で止まったので、魔族には当たらなかった。


(あ……木が凄く邪魔……)


 魔族は驚きの余り数秒動きが止まった。そして、笑みをこぼし反撃と同時に叫ぶ。


「馬鹿め!? ド素人がぁ!?」

 しかし、魔族の渾身の一撃は当たらない。グリムの体をすり抜ける。


「なに!?」


 リーパーが予め幻影で認識をずらしておいたようだ。その隙にファイアーランスで魔族たちを狙う。彼等は反応が遅れ、それに当たる。しかし、かなり魔法に耐性があるようで、大きなダメージとまではいかなかった。


「クク、それは恐怖。無意識むいしきに死を感じた肉体が恐怖で硬直し、その影響で目測もくそくあやまった……」

「馬鹿のファフニール。このまま一気に行くぞ!」


 スプラッシュとファイアーランスでさらに彼等を追い詰める。徐々にダメージが蓄積する。魔族たちは終に肩で息を始めた。


(中々気を失ってくれない。新しい魔法が効果的だが……生成完了まであと数時間……)


 魔族は何かを決断したかの様な表情になった。

「……おい、あれをやるぞ」

「ああ、俺たち四人なら一人は道ずれに出来るはずだ……」

「全ては魔族のために……」


(あの表情……厄介だ。きっと死に物狂いで倒しに来るだろう……)


 作戦を考える時間など無く、三人の男が露骨ろこつに接近して来た。グリムは急いで剣を抜いた。牽制で繰り出した突きが腕を捉える。

 しかし、魔族は止まらずにさらに前へと出て来る。続けて振った一撃をかわし、腕を掴まれた。

 男は絶対に離さないとばかりに勇ましい顔つきで睨み付けて来た。グリムは左腕で拳を作り、殴りかかるがひじで骨を砕かれる。痛みを我慢するが声が漏れた。


(奴も負傷してるのに。何て執念……)


「ファフニール!」

 思わず叫ぶリーパー。しかし、気を取られたその隙に、今度は彼が重い攻撃をもらってしまう。そこで、一人待機していた魔族が、強力な風の魔法を完成させた。


「消し飛びなさい! 《エア・プレス》」


 凄まじい風の塊が二人を襲う。余りの威力に剣を手放す。地面を転がりながら吹き飛ばされ、血だらけになった。魔族たちは蓄積したダメージを忘れ、勝利を満喫する。


「ふぅー……」


「よくやった……」

「気を付けろよ。危うく俺たちまで巻き込まれるところだった」

「悪かったわよ。でも倒せたから良いじゃない」

「違いない」


「おい、最後まで気を抜くな。止めを刺しておくぞ」

 彼等は近づく。だがその時に違和感を覚える。無様に転がった彼等の服がみょうに綺麗だ。それに体に


「待て……最初に大鎌を持っていた奴、何故か位置がずれていた……」

「まさか、幻覚か……」

 その言葉にハッとし、彼等は辺りを警戒する。案の定彼等は真横に居て、既に魔法を放っていた。


 彼等も臨時態勢に入っていた。その御かげもあり、彼等は見事に魔法を全て回避した。ホッとしたのか笑みがこぼれる。そこで、ただ一人だけに気が付いた。

「……しまっ!?」

 完全に回避した瞬間に、重大なことに気が付く。その魔法は周囲の木に当たったが、焼け焦げた後も水滴も付かなかったからだ。


 グリムたちはに居た。正確にはボロボロになりながら、その場に立って、渾身の魔力を込めた魔法を準備していた。


「分身の背後にもう一つ、幻影の壁を作って隠れていたのか!?」


 そして、先ほどの緊急回避により、態勢が崩れたその時を狙った魔法が放たれる。三人が耐えきれず、そのまま倒れる。


 絡繰からくりに気が付いた最後の一人が、ボロボロになりながらも諦めずに接近してきた。狙うは武器を失ったグリムだ。せめて一人は殺そうと突っ込む。同じくボロボロの男グリムは。それに合わせて拳を振った。


「やはり甘いっ。カウンター狙いがバレバレだぞ!?」


 それを読んでいた魔族の男は急停止した。彼の拳は届かない。しかし、カウンターに失敗した男は動揺を感じさせなかった。手を広げながら、声を絞り出す様に魔法名を叫ぶ。

「《砂魔法サブルム》!」

 砂を少しだけ作り出す魔法だ。それを目潰しに使った。顔を勢いよく振って動かすが、片目にそれがかかった。だが、グリムにとってそれはどうでも良かった。すでに懐に入り、思いっきり振りかぶり、頭突きの態勢に移っていた。


 そして彼の頭へと、それを容赦なく振り下ろす。魔族の男は意識を失った。



 それを見てリーパーが言う。

「ご大層たいそうな台詞のわりにダセー勝ち方だなー」


「これしか手加減の方法を知らんのだ……それより、こいつらはどうする?」


「憲兵に突き出すのも良いが、疲れた。一番近いギルドで良いだろう」


「ぃッ……左腕を持って行かれた。運ぶのを頼む」


 表現は大袈裟おおげさだが折れているのには変わりない。


「ちぇ、今回は仕方ない。こいつらを放置すると俺が危ないしな」


 ギルドに事情を話すと、追加で報酬が出て、特別に無料で治療までしてくれた。完治には至らないが、回復が非常に早くなる。そして、治療中に雷魔法の生成も完了したのであった。


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