異世界オオカミさん~クラスメイトと地球へ帰ろう~

刀根光太郎

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初めからあったモノ

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 【32日目の夕暮れ】

 要の食欲は未だに無く。日にちだけが過ぎていった。必要な仕事を終わらせ、夕食を食べた後に集合がかかった。

 皆が集まると佐久間と田中さんが前に立っていた。同じ採取組でよく話したりはするが、この様な場で二人の組み合わせが珍しく皆は首を傾げていた。佐久間が話を切り出した。緊張した様子だった。愛丘や先生も緊張していたと思う。

「……皆に集まって貰ったのは聞いて欲しい事があるからだ」


 そう切り出すと田中さんが前に出て口を開いた。

「実は……私は《鑑定士》って職で、二つの能力をもってる」

 それに皆は驚くが、少しだけ慣れもあり冷静だった。鮫島が尋ねる。

「それは……鳳と同じく何かが分かるって事なのか?」

 彼女は力強く頷いた。

「私の場合は月に一度だけ能力を使えるの。一人を対象とし、真のステータスを鑑定し、知る事が出来る……その結果、鳳君の職はオラクルで、能力はかまいたちだったのを確認したよ」

 天羽がそれに対して素直に感想を言う。

「確かに凄いし、珍しいけどさ、それってステータスボード見れば分かるくない?」

 北川もわざわざ呼び出した割にそんな事か、とつまらなそうに言う。

「で、もう終わりで良いの? 早く休みたいんだけど?」


 皆がそれを聞いて様々な反応をしていると、鉄が少し低めの声で問う。

「何故そんな重要な事を今まで言わなかった……?」

「いっ、今その話をしようかとっ……私の職の能力はクールタイムが720時間あって、それが1秒以上の時、鑑定した者の情報が、如何なる方法だろうと、私から他人に伝わった時点で……私は死ぬらしいので……」

(そういう事か……酷過ぎる……)

 鉄は嘲笑するように言う。

「なるほど……結果的にはそこそこにフェアなスタートになったって訳だ」

 田村は怪訝な表情で言う。

「さっきから何だよお前? 文句言うなって、喋れなかったんだからしょうがないだろ?」


「全く……おめでたい奴等だ……」

 それを聞いた鉄は声を出して笑う。田村はそれが気に食わなかったのか怒っていた。

「はぁ? 何か知ってる事があるなら言えよ鉄!」

 場がシーンとなると、鉄が皆を一瞥した後、口を開いた。

「これはただのサバイバルじゃねぇ。あの女神は、俺たちに殺し合いをさせる気だ」

「……は、はぁ? 一体何言ってんだ……」  


 鉄は今一度、全員を一瞥すると堂々と言い放つ。

「俺たちの中に裏切者が居る……そうなんだろう、愛丘まなおか?」


「!?」


 田村は頭のおかしな奴を見る様な表情になっていた。

「な、何言ってんだよ……殺し合いとか裏切者とか……少しおかしいぞ、お前っ」


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