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崩れゆく偽りの
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拠点の近くの森に入ってすぐ。北川と水谷、そして大橋が居た。
「最近調子に乗りすぎなんだよッ……」
「ほんとそれ! 佐久間に色目使い過ぎだってのっ」
「ち、ちがっ、ぅぐっ」
うずくまっている大橋の腹部に怒りをぶつけるように蹴っていた。彼女は痛みに耐え、何時ものそれが終わるのをずっと待っていた。
気が済んだのか彼女等は何食わぬ顔で持ち場へと戻って行った。傷を隠しながらこっそりと川へ行き口をゆすぐ。彼女はそれに慣れていた。学校時代も似た事をされ、それがバレてしまうとさらに酷い事をされるので自然とこうなった。
「絶対に皆にばれちゃ駄目……耐えないと……」
彼女はその時ある人物を思い出す。
「城詰君……私は……」
その表情は、微笑んでいる様にも悲しんでいる様にも見えた。
【何時も通りの夕暮れ時】
辺りが真っ赤に染まる頃、皆が夕食の準備をしていた。今日は獣も魚も一杯取れ豊作。肉の方は葉で包むと地面の熱を利用して、オーブンの様に焼く方法を試した。一緒に入れた葉の良い香りが漂う。
「うわっ! 美味しそう~」
皆が夕食を食べ始める。そんな時、俺たちは愛丘と佐久間の所へと向かった。
「なぁ、佐久間。みーちゃん見なかった?」
「いや、見て無いが……まだ帰ってないのか?」
「ああ、流石に今日は遅すぎる気がする」
愛丘が周りを見渡す。
「不死原君も帰ってないか……確かに何時もより少し遅い……」
それに要が目を細めた。
「俺ちょっと見かけた奴が居ないか聞いて来る」
そう言いながら佐久間の顔つきが変わる。
「宮本、俺が行く。もしかしたら、森で迷ったのかもしれない。誰も知らなければ、食事を済ませた奴に捜索させよう」
愛丘が何時も通りの表情で言う。
「もしかしたら夜間の捜索になるかも。君たちも捜索に良く気なら、獣に遭遇しても戦えるように軽くご飯は口にしてくれ。そうじゃないと連れて行かない」
「え? あ、ああっ、すぐ食べるっ」
俺と要、和も急いで口に放り込む。急ぎながらもしっかりと食べ物に感謝をする。それは何時も通り美味しかった。どうやら知ってる人が居なかったので、食べ終わった人を数名と捜索に行く事となる。
「日もそろそろ完全に落ちる。とにかく急ごう!」
多少危険だが、少人数でバラバラに動く。そして、戦闘要員をグループに一人は必ず入れている。狩りや探索の場所は出発前に報告するので、位置を予測し、大まかな探索範囲を設定する。
俺は要と一緒に森に入った。名前を呼びながら森をかけるが一向に見つからない。
「最近調子に乗りすぎなんだよッ……」
「ほんとそれ! 佐久間に色目使い過ぎだってのっ」
「ち、ちがっ、ぅぐっ」
うずくまっている大橋の腹部に怒りをぶつけるように蹴っていた。彼女は痛みに耐え、何時ものそれが終わるのをずっと待っていた。
気が済んだのか彼女等は何食わぬ顔で持ち場へと戻って行った。傷を隠しながらこっそりと川へ行き口をゆすぐ。彼女はそれに慣れていた。学校時代も似た事をされ、それがバレてしまうとさらに酷い事をされるので自然とこうなった。
「絶対に皆にばれちゃ駄目……耐えないと……」
彼女はその時ある人物を思い出す。
「城詰君……私は……」
その表情は、微笑んでいる様にも悲しんでいる様にも見えた。
【何時も通りの夕暮れ時】
辺りが真っ赤に染まる頃、皆が夕食の準備をしていた。今日は獣も魚も一杯取れ豊作。肉の方は葉で包むと地面の熱を利用して、オーブンの様に焼く方法を試した。一緒に入れた葉の良い香りが漂う。
「うわっ! 美味しそう~」
皆が夕食を食べ始める。そんな時、俺たちは愛丘と佐久間の所へと向かった。
「なぁ、佐久間。みーちゃん見なかった?」
「いや、見て無いが……まだ帰ってないのか?」
「ああ、流石に今日は遅すぎる気がする」
愛丘が周りを見渡す。
「不死原君も帰ってないか……確かに何時もより少し遅い……」
それに要が目を細めた。
「俺ちょっと見かけた奴が居ないか聞いて来る」
そう言いながら佐久間の顔つきが変わる。
「宮本、俺が行く。もしかしたら、森で迷ったのかもしれない。誰も知らなければ、食事を済ませた奴に捜索させよう」
愛丘が何時も通りの表情で言う。
「もしかしたら夜間の捜索になるかも。君たちも捜索に良く気なら、獣に遭遇しても戦えるように軽くご飯は口にしてくれ。そうじゃないと連れて行かない」
「え? あ、ああっ、すぐ食べるっ」
俺と要、和も急いで口に放り込む。急ぎながらもしっかりと食べ物に感謝をする。それは何時も通り美味しかった。どうやら知ってる人が居なかったので、食べ終わった人を数名と捜索に行く事となる。
「日もそろそろ完全に落ちる。とにかく急ごう!」
多少危険だが、少人数でバラバラに動く。そして、戦闘要員をグループに一人は必ず入れている。狩りや探索の場所は出発前に報告するので、位置を予測し、大まかな探索範囲を設定する。
俺は要と一緒に森に入った。名前を呼びながら森をかけるが一向に見つからない。
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