上 下
53 / 70
楽園

53

しおりを挟む
【拠点・夕暮れ時】

 俺たちが戻ると日が暮れていた。愛丘を呼び出してその話をすると、女子達が同じ反応で大喜びをしていた。俺と愛丘は同時に言う。

「「そろそろ塩が欲しい」」

 俺たちはお互い顔を見合わせた。

「気が合うな」

「山塩がもしかしたら……一番は海があればいいんだけどね」

「あればいいな。でも先を考えると色々楽しみだ」

 一方で男子も半数が、ハイテンションかつ小声で喜んでいた。

「よっしゃー! 自然の温泉とか最高じゃん!」

「早速調査だぁぁああ!」

「明日からだけどね」


【時は流れ、16日の14時過ぎ】

 先日愛丘が太陽の動きから、大雑把にだが方角を勝手に決めた。現在もしっかりと影や太陽、星の位置など記録を取っている。川の方面が西、下流方面が北と言った具合だ。旧拠点はここから大よそ北東になる。

 狩猟や採取など生活に影響がない程度に終わった日を狙い、皆が集まる。調査の結果、大丈夫そうだと判断した。この時の為に、密かに服を洗ったりご飯も食べたりして準備万全である。佐久間が話し始めた。

「それじゃあ皆! 温泉に行こうか!」

 予め草を切ったり目印を置いたりして、道を作っておいたのでスムーズに目的地へと着いた。温泉を見た瞬間、誰もが感嘆の声を漏らした。

 早速準備をしている男子たちに対して後藤が言う。

「ちょっと待って男子!」

「何だよ委員長?」

「私たちが先に入りたいから、見張りお願いしたいんだけど?」

「えー、何でだよ~」

「こういう時くらい譲ってくれてもいいじゃない……」

 チラっと佐久間の方を見た。彼が口を開く前に不死原が言う。

「はぁ~、今日はそういうの無しでいいだろ~。取り合えず自由に楽しもうぜ~」

 鮫島も絶妙なタイミングで割り込んで来た。

「そうそう、根元の能力があるから見張りとか要らねって!」


「いやいやいや! 普通に無理でしょ! 常識で考えて!」

「いや、でもさー。そっちが先に入っても良い事ないけどな~」

「どういう事よ?」

「だってさ、後から男子が楽しんでる所をじっと待つの? 絶対に体が冷えるぞ? お前等は大事な仲間だし、風邪とか引いて欲しく無いんだよ。なぁ皆?」

 数人がまるで訓練されていたかの様に深く頷いた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

表現の自由 VS エルフ伝説の元になった古代民族

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

フラストレーションれっしゃ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

ある悪役令嬢の逆襲

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:43

Galaxy Day's

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

アストルムは旅をした

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

聖女は舞い戻る

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:5

殿下、私たちはもう終わったんですよ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:6,776

処理中です...