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【七日目の朝】

 朝日が昇り、皆が目を覚ます。体調も悪く無い。良い朝だ。

 要たちと少量のベリーを食べながら会話をする。活動する時間だ。それぞれ役割が違うので、挨拶をして別れる。ちょっとした家族の様だ。

 俺は採取組なので佐久間と合流する。彼は爽やかに挨拶をかわす。眩しい。そして、いざ出発が近づいた時、急に肩がズシリと重くなった。病気では無い。振り向くと根元が睨んでいた。

「あ、あの……これから採取なんですが?」

「お前……こうなる事、最初から分かってたのか?」

 振り返った際に離した手で再び肩を掴むと、低い声でそう尋ねて来た。

 予想通り彼女の能力は人気らしく、寝る際に安心を求めた人々が寄って来るらしい。何とかしろと言いたげな様子だった。しかし、そればかりはどうしようも無い。とりあえず俺は真実を告げる事にした。

「……ぜ、全然! び、びっくりした側だよぉ」

「おいおい、城詰君。そんなに動揺して、どうしたんだい?」

(痛い。肩がすごく痛い……こ、こうなれば……ッ)

「だ、大丈夫! 堅牢な柵とかっ。あと壁付きの家が出来るまでの辛抱だって、だから安心して!」

(痛い、もっと力緩めてッ……)

「ほう……それは本当だなぁ?」

(ははは、何時になるんだろうな、それ……三年以内で出来るといいな……)

 俺が連続で必死に頷くと、ようやく解放してくれた。そして、彼女はプリプリと怒った様子で去って行った。佐久間がそれを見て微笑む。

「大変だな、城詰は。その様子じゃ、相談が多いだろ」

(根元の大変役に立つ能力を皆に言ったのはお前だけどな……あれ、田村だったか? まあいいや)

「これで愛丘は急かされる事になりそうだな」

「それは災難だ」

 今度は二人で笑った。


 俺たちは七名で下流方面へと採取に向かう。基本は木の実、その他に食べられそうなものがあると試しに持って帰る。芋の様な炭水化物があれば良いんだが、分布傾向がまるで分からないから保留。

 薪や住居の骨組みとなる木材は拠点組が集めてくれているのでその辺はスルーだ。そして、俺の今一番の目的は粘土。そうそう見つかる物じゃないので気長に考えている。

 しばらく歩いていると蔦を見つけた。

「お、持って帰ろ」

「使えるのか?」

「色々とな。ワラみたいなのも欲しいな」

 そんな会話をしつつ、その辺りで採取していると天羽の息が切れ始める。それに反応して何故か佐久間が目配せをしてきた。これは。

「佐久間、少し休もう」

「そうだな」

「……私はまだ大丈夫だよ」

 天羽に気遣いがバレたようだ。疲れてる素振りを隠していたところを見ると、何かしら思う所があるのだろう。

「持って帰れる量にも限度がある、水は確保したし、急ぐ事じゃないよ」

「……そう言う事なら」

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