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新たなる一歩

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 佐久間が学校生活を思い出したのか、笑いながら止める。

「不死原は心配してるんだよ。言い方が悪かったのは勘弁してやってくれ」

「まあ、佐久間君がそう言うなら……」

(あ、何か佐久間に甘そう)

 田村がそこで自然に入って来た。

「不死原! もしかして松本の事好きなんじゃねっ」

 それを聞いて後藤は納得した。

「あ、なるほどぉ」

「は、はぁっ!? そんなんじゃねぇし!」

 話に入って来る気の無かった根本もこれには呆れながら返した。

「それは悪かったよ。今度からは気を付ける」

「お前等が変なこと言うから余計な誤解を! 俺が好きなのはッ……」

 田村がにやりとしながら聞き返す。

「好きなのは?」

「っと! あぶな! 誘導尋問怖っ」

「チッ」

 そこでみーちゃんが会話に参入して来た。この手の話は好きらしい。

「よ? C組の吉原じゃない?」

「何だよ他クラスか」

 そこで後藤が入って来る。

「さあさあ! 気になる娘を白状しなさいって! 減るもんじゃないんだし」

「はぁ! 違うし! 今のは言葉に詰まっただけだっての!」


(よ……よ……鎧塚よろいづか……? でもあいつ鉄と……って。そんな訳ねっか)


 根元が小さく阿保くさっと呟いた。そんな雑談をしながら前へと進んで行く。途中ベリーを保険で適度に摘む。帰りにたくさん摘んで行く。

 さらに進んで行くと、背後から低い声が聞こえた。

「ちょっと待って」

 俺は振り返る。

「どうした……?」

 根元が怖い顔で睨んでいた。怖かったので聞き返す。

「い、いかがなさいましたか?」

「ボケてる場合じゃない……多分獣が近くにいる。犬二匹だ」

「何?」

 それには佐久間も訝しげな表情をして辺りを見渡す。俺たちも警戒する。しばらくすると諦めたかのように、あの時合った狼風の獣が木陰からゆっくりと出て来た。前回とは違い、二十数メートルは距離があった。

 不意を突かれなかったのと、二体だった事もあり、簡単に対応出来た。正確にはこっちの迷いない動きにびっくりした獣が逃げて行った。仕留められなかったのは残念だが、今は体力を探索に割きたいのでこれはこれで好都合だ。

「根本、今のは能力か?」

「私も初めてやって見たけど、そうみたい。《センサー》だってよ」

 それを聞いた佐久間が尋ねる。

「初めて? この前の襲撃は分からなかったのか?」

「あー、あの時? あれは設定出来て無かったみたい」

(はー、そういうタイプもあるのか)

「……なるほど。だが今回、何でまた急に?」

「何? やっぱり邪魔だった?」

「いや、気分を悪くしたならすまない。そんなつもりじゃなかった。余り話した事が無くてちょっとな」

「私も昨日の夜に気が付いたばかりでさぁ。能力を試したかっただけだよ」

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