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奇跡

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 俺は尻もちを着いた。目の前の異様な光景と倒せた事に安心からだ。武田は申し訳なさそうに言う。

「加減が難しくてな。食べられなくなるから、出来るなら使いたくなかったんだけどな……」

「ははは、命の方が大事だ。一体でも十分。皆本当に助かったよ」

 要が石化した獣の首を破壊した。それはそうだ。もしも復活するなら困る。俺は手が少し痛む程度、要も腕にかすり傷を負っただけで済んだ。クタクタな体に鞭を打って大声で確認する。

「萩原はッ?」

 既に鮫島が倒れた彼の呼吸や脈を確かめていた。

「大丈夫、生きてる」

「そうかっ、良かった」

「萩原、毎回倒れてるのか?」

「さあ、能力使ったの初めて見た……てか一瞬で石化とかあぶねーやつ。どんな能力だよ……」

「使うと倒れるって話は知らなかったし。多分、過労だ」


「……今は戻るのが最善だと思うが……どうする、彰人?」

「そうだな。一旦戻ろう……鮫島、萩原を頼んで良いか?」

「任せろ。今のを見る限りじゃ俺が適任だな! はっはっは!」

(この中で手が塞がっても問題がないのは……俺だな)

「俺がその獣を運ぶから、皆は護衛を頼む」

「了解」

 俺と鮫島は息を切らしながらも何とか拠点に辿り着いた。先に佐久間たちは戻って来ていた。見た所、状況が芳しくない。何やら行ったり来たりで慌ただしい。

 俺は獣を置いて佐久間に状況を訊ねると回答があった。

「拠点が獣に襲われたんだ」

「はぁ!? 怪我人は!?」

「幸い重傷者は居ない。俺たちがまだ近くにいたから声を聞いて駆け付けた」

「ほっ……そうか……」

「その様子じゃ、お前達も襲われたようだな」

「こっちは軽傷だ……あー、でも萩原が能力を使った後に倒れた。呼吸や脈はある。顔色も普通。多分問題ないとは思う」

「分かった。後は俺が運んでおこう」

「サンキュー佐久間」

 俺は近くにいた和にこそっとMPを訪ねると、40程残っていた。かなり消費している。和に看病してもらった人に感想を聞いたが、どうやら痛みが和らぐ感じがするらしい。

 意味は分からないが、脱水症状にも多少効いているようだ。しかし、体調不良が続出しているので回復が間に合わない。

(今一番気掛かりなのは萩原か? なら優先は)

 その時、愛丘が佐久間の所に深刻な表情をして走って来た。そして、叫んだ。

「天羽君が!?」

 佐久間はそれを聞くなり、血相を抱え走って向かう。俺も後から追った。

 仰向けになっているに天羽に近づくと苦しそうに唸り声をあげていた。自分の腕の傷を抑えている。汗が凄い。佐久間が膝を付いた。

「天羽! どうした!?」

「……熱い……腕……頭も……ッ……苦しい。助けて……」

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