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彼はもう動かない

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 男子四人と女子三人のグループ。大竜たちが適度に距離を保ってくつろいでいた。獣の下処理を眺めているようだ。一人の男子が糸の様なモノで獣を切り裂き、桃地の水で洗い流すと同時に肉を冷やしている。

「他の連中の顔見たか? 傑作だったな!」

「特にくろがねのやつ。そうとうビビってたぜ!」

「もしかしたら追って来るかもね。無能な自分たちじゃ何も出来ません。どうか戻って来てくださいって!」

 彼等は可笑しそうに笑っていた。処理を終えると、糸で網を作りそれを持って軽い足取りで歩き出す。

 数時間後に昼食にしようという雰囲気になる。肉を下ろし、調理の準備に入る。

「そう言えば……火はどうする?」

「……大丈夫だ。木を擦り合わせれば火は出る」

「おっし。じゃあ適当に木を集めるぞ!」

 三十分ほどが過ぎた。地面に置いた木。もう一本の木の枝を手のひらで挟み、必死で回し擦っていた。しかし、幾ら待てども火はつかない。

「くそ! 何でだ! やり方は間違って無いはずだ!」

「理論上はこれで大丈夫なはずだが……勢いが足りないのか? おい、もっと早く出来ないか?」

「ふざけるなよ。こっちはずっとやってんだぞ。誰か変われよ」

「ねぇ……どうでも良いけど早くしてよ。お腹空いたんだけど?」

「……ちっ。こんなことなら円城寺を連れてくれば良かったぜ」


「そうだっ。大竜の雷を使えばいいんだよ!」

「……え? あ、ああ……やってみる」

「? 何だ? 何か気になる事でもあったのか?」

「いや、何でも無い。大丈夫だ」


 出力を調整して何度か試すと、煙が出て来た。さらに工夫を重ねること十分。焚火が出来たので肉を焼くことになった。

 お腹が空いていた事もあり、急いで肉を頬張る一同。そして、少し休憩を挟んだ後に再び歩き出す。しばらく歩いていると男子の刀野が悪びれずに言う。

「悪い。ちょっとトイレ」

 戻って来るとお腹を摩っていた。少し生焼けだったかと冗談交じりに彼は話す。

「おいおい。先はまだまだ長いぞ」

「分かってるって。大丈夫だよ」

 木が生い茂っているせいか、同じように見える森をずっと突き進んでいく。皆は大量に汗をかいていた。女子は若干顔色が悪くなっている。何度も水を補給している。しかし、足取りが重くなっていく。

「獣がいないな」

「確かに……そろそろ夕飯を確保したい。休む前に探すか」

「はぁー。先に休もうぜー」

 その時、桃地が足を踏み外した。彼女は無意識に隣に居た女子の腕を掴む。一瞬踏みとどまれたおかげで男子が落ちそうな女子、丹生にぶの腕を掴んだ。しかし、二人分の力で崖の下に引っ張られる。桃地と丹生は宙ぶらりんになっていた。

「丹生! 上がって来い……ッ」

 よく見るとそこはかなり高めな崖になっていた。数人が協力して踏みとどまる。しかし、かなり脆いらしく、足元がまた崩れた。支えきれなくなったために危険を感じた刀野とうのが腕を放す。同時に四人が叫び声を上げながら崖の下に転がり落ちる。

「ッてっ……」

「大竜ー! 桃地ー! 大丈夫かぁ!」

 崖の上で三人が呼びかける。痛みでそれに答えるどころでは無く、四人はしばらく横になってもがいていた。

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