21 / 70
彼はもう動かない
21
しおりを挟む
男子四人と女子三人のグループ。大竜たちが適度に距離を保ってくつろいでいた。獣の下処理を眺めているようだ。一人の男子が糸の様なモノで獣を切り裂き、桃地の水で洗い流すと同時に肉を冷やしている。
「他の連中の顔見たか? 傑作だったな!」
「特に鉄のやつ。そうとうビビってたぜ!」
「もしかしたら追って来るかもね。無能な自分たちじゃ何も出来ません。どうか戻って来てくださいって!」
彼等は可笑しそうに笑っていた。処理を終えると、糸で網を作りそれを持って軽い足取りで歩き出す。
数時間後に昼食にしようという雰囲気になる。肉を下ろし、調理の準備に入る。
「そう言えば……火はどうする?」
「……大丈夫だ。木を擦り合わせれば火は出る」
「おっし。じゃあ適当に木を集めるぞ!」
三十分ほどが過ぎた。地面に置いた木。もう一本の木の枝を手のひらで挟み、必死で回し擦っていた。しかし、幾ら待てども火はつかない。
「くそ! 何でだ! やり方は間違って無いはずだ!」
「理論上はこれで大丈夫なはずだが……勢いが足りないのか? おい、もっと早く出来ないか?」
「ふざけるなよ。こっちはずっとやってんだぞ。誰か変われよ」
「ねぇ……どうでも良いけど早くしてよ。お腹空いたんだけど?」
「……ちっ。こんなことなら円城寺を連れてくれば良かったぜ」
「そうだっ。大竜の雷を使えばいいんだよ!」
「……え? あ、ああ……やってみる」
「? 何だ? 何か気になる事でもあったのか?」
「いや、何でも無い。大丈夫だ」
出力を調整して何度か試すと、煙が出て来た。さらに工夫を重ねること十分。焚火が出来たので肉を焼くことになった。
お腹が空いていた事もあり、急いで肉を頬張る一同。そして、少し休憩を挟んだ後に再び歩き出す。しばらく歩いていると男子の刀野が悪びれずに言う。
「悪い。ちょっとトイレ」
戻って来るとお腹を摩っていた。少し生焼けだったかと冗談交じりに彼は話す。
「おいおい。先はまだまだ長いぞ」
「分かってるって。大丈夫だよ」
木が生い茂っているせいか、同じように見える森をずっと突き進んでいく。皆は大量に汗をかいていた。女子は若干顔色が悪くなっている。何度も水を補給している。しかし、足取りが重くなっていく。
「獣がいないな」
「確かに……そろそろ夕飯を確保したい。休む前に探すか」
「はぁー。先に休もうぜー」
その時、桃地が足を踏み外した。彼女は無意識に隣に居た女子の腕を掴む。一瞬踏みとどまれたおかげで男子が落ちそうな女子、丹生の腕を掴んだ。しかし、二人分の力で崖の下に引っ張られる。桃地と丹生は宙ぶらりんになっていた。
「丹生! 上がって来い……ッ」
よく見るとそこはかなり高めな崖になっていた。数人が協力して踏みとどまる。しかし、かなり脆いらしく、足元がまた崩れた。支えきれなくなったために危険を感じた刀野が腕を放す。同時に四人が叫び声を上げながら崖の下に転がり落ちる。
「ッてっ……」
「大竜ー! 桃地ー! 大丈夫かぁ!」
崖の上で三人が呼びかける。痛みでそれに答えるどころでは無く、四人はしばらく横になってもがいていた。
「他の連中の顔見たか? 傑作だったな!」
「特に鉄のやつ。そうとうビビってたぜ!」
「もしかしたら追って来るかもね。無能な自分たちじゃ何も出来ません。どうか戻って来てくださいって!」
彼等は可笑しそうに笑っていた。処理を終えると、糸で網を作りそれを持って軽い足取りで歩き出す。
数時間後に昼食にしようという雰囲気になる。肉を下ろし、調理の準備に入る。
「そう言えば……火はどうする?」
「……大丈夫だ。木を擦り合わせれば火は出る」
「おっし。じゃあ適当に木を集めるぞ!」
三十分ほどが過ぎた。地面に置いた木。もう一本の木の枝を手のひらで挟み、必死で回し擦っていた。しかし、幾ら待てども火はつかない。
「くそ! 何でだ! やり方は間違って無いはずだ!」
「理論上はこれで大丈夫なはずだが……勢いが足りないのか? おい、もっと早く出来ないか?」
「ふざけるなよ。こっちはずっとやってんだぞ。誰か変われよ」
「ねぇ……どうでも良いけど早くしてよ。お腹空いたんだけど?」
「……ちっ。こんなことなら円城寺を連れてくれば良かったぜ」
「そうだっ。大竜の雷を使えばいいんだよ!」
「……え? あ、ああ……やってみる」
「? 何だ? 何か気になる事でもあったのか?」
「いや、何でも無い。大丈夫だ」
出力を調整して何度か試すと、煙が出て来た。さらに工夫を重ねること十分。焚火が出来たので肉を焼くことになった。
お腹が空いていた事もあり、急いで肉を頬張る一同。そして、少し休憩を挟んだ後に再び歩き出す。しばらく歩いていると男子の刀野が悪びれずに言う。
「悪い。ちょっとトイレ」
戻って来るとお腹を摩っていた。少し生焼けだったかと冗談交じりに彼は話す。
「おいおい。先はまだまだ長いぞ」
「分かってるって。大丈夫だよ」
木が生い茂っているせいか、同じように見える森をずっと突き進んでいく。皆は大量に汗をかいていた。女子は若干顔色が悪くなっている。何度も水を補給している。しかし、足取りが重くなっていく。
「獣がいないな」
「確かに……そろそろ夕飯を確保したい。休む前に探すか」
「はぁー。先に休もうぜー」
その時、桃地が足を踏み外した。彼女は無意識に隣に居た女子の腕を掴む。一瞬踏みとどまれたおかげで男子が落ちそうな女子、丹生の腕を掴んだ。しかし、二人分の力で崖の下に引っ張られる。桃地と丹生は宙ぶらりんになっていた。
「丹生! 上がって来い……ッ」
よく見るとそこはかなり高めな崖になっていた。数人が協力して踏みとどまる。しかし、かなり脆いらしく、足元がまた崩れた。支えきれなくなったために危険を感じた刀野が腕を放す。同時に四人が叫び声を上げながら崖の下に転がり落ちる。
「ッてっ……」
「大竜ー! 桃地ー! 大丈夫かぁ!」
崖の上で三人が呼びかける。痛みでそれに答えるどころでは無く、四人はしばらく横になってもがいていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる