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彼はもう動かない
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【離反者】
早朝、騒がしい声で目が覚めた。細身だが筋肉質な男子、大竜をリーダーとした七名のグループと愛丘、佐久間たちが言い争っていた。
彼等の言い分は、こんな獣や虫の多いところで何日も過ごせるか、というものだ。人里を探しに行くと言っていた。死人を出してしまった事で焦燥感を与え、結束力が弱まってしまったようだ。
愛丘たちが危険だと必死で止めている。闇雲に進む事の危険さや、獣の種類やその対処法も分かっていないのだと、何度も訴える。
そんな時、大竜が能力を見せつけるように使った。雷を右手に纏う。自身の強さを確信した不遜な態度で俺たちを見ていた。
「お前等と雑魚共と一緒にするな。俺は選ばれたんだよッ……女神にな」
佐久間が「しかし」、と反論しようとしたところで女子の桃地が手の平を前に出す。次の瞬間、手のひらから水があふれ出し、それはやがて球体になる。それを見た佐久間が思わず叫んだ。
「なっ! 水を操れるのか!! なんで黙ってた!」
その表情を見て愉悦の笑みを浮かべながら彼女は言う。
「私に逆らうなら水は飲めないって思った方がいいよ?」
「ッ……」
「それに……」
彼女の水が刃へと形を変える。そして、腕を振ってそれを飛ばすと木が切れて倒れた。彼女は自信満々に力を誇示する。
「私が何で無能の命令を聞かないといけないの? おバカさんの指示で鳳みたいに死ぬのは真っ平よ」
「……僕たちが命じた訳じゃない。鳳君は」
「あーもう、うるさいわね。どっちだっていいの。とにかく私たちは勝手にやらせてもらう」
愛丘は水の能力が彼女にあるのを悲しんでいた。逆らうと水は飲めないと脅してきたが、そもそもこの場所に戻って来るのかも怪しい。
戻って来る意思があったとしても、状況によって拠点の場所を変えるかもしれない。再会できる可能性は低いだろう。その一言からも、それが合理的な判断とは思えなかった。
それを聞いていた鉄が会話に加わる。
「馬鹿と鋏は使いよう。好きにやらせればいい。まあ、遠征ってやつだ」
嘲笑を含むその言葉を発した彼に視線が集まった。七名が引きつった表情をした。特に顕著だったのは、大竜だ。一瞬だが歯を力強く噛みしめ、険しい表情を見せた。
「く、鉄ッ……何時もなら暴れるのにやけに大人しいな。はっ、さては、大した能力じゃなかったんだろ? 俺は最強の能力を手に入れたんだ! どうだ、別れの挨拶にやり合うか!? ボコボコにしてやるよ!」
鉄はより一層彼等を嘲笑った。その態度にムッとした様子を見せる。
「お前は高価な道具を買いそろえただけでオリンピックで優勝出来るのか? そう思ってんのなら……浅い男だ」
「っ……鉄ぇ貴様ぁ……」
「ふん。探索前に無駄な体力を使いたいならとっとと来い」
黒鉄の余裕表情、そして鋭い眼光。その異様な雰囲気に彼等は無意識に後退りをしていた。大竜の隣にいる男が慌てて言う。
「だ、大竜。こんなところで体力を使うのはもったいないって!」
「そ、そうだな。こんな雑魚に構ってる暇はねぇ……行くぞお前等ッ!」
こうして大竜率いるグループは去って行った。しかし、それを嘆いてはいられない。今日こそ水源を見つけなけらば。昨日と同じく四方八方を探索する予定だ。
愛丘は皆に最初から状況を説明し、混乱が起こらないようにフォローを入れた。探索人数を若干調整して、大竜を追うグループを作る。
水を出せるも桃地のグループを失うのは痛手だ。出来るなら戻って来て欲しい。
それを察したのか、女子の後藤と松本がそれに志願する。二人は桃地たちと何度か話した事があるようだ。
説得を任せる事にした。ただし優先順位は後藤たちが無事に戻って来る事で、無理はしないように。安全第一と愛丘は言葉を添えた。後は戦える男子。不死原と田村、宝剣を同行させた。
早朝、騒がしい声で目が覚めた。細身だが筋肉質な男子、大竜をリーダーとした七名のグループと愛丘、佐久間たちが言い争っていた。
彼等の言い分は、こんな獣や虫の多いところで何日も過ごせるか、というものだ。人里を探しに行くと言っていた。死人を出してしまった事で焦燥感を与え、結束力が弱まってしまったようだ。
愛丘たちが危険だと必死で止めている。闇雲に進む事の危険さや、獣の種類やその対処法も分かっていないのだと、何度も訴える。
そんな時、大竜が能力を見せつけるように使った。雷を右手に纏う。自身の強さを確信した不遜な態度で俺たちを見ていた。
「お前等と雑魚共と一緒にするな。俺は選ばれたんだよッ……女神にな」
佐久間が「しかし」、と反論しようとしたところで女子の桃地が手の平を前に出す。次の瞬間、手のひらから水があふれ出し、それはやがて球体になる。それを見た佐久間が思わず叫んだ。
「なっ! 水を操れるのか!! なんで黙ってた!」
その表情を見て愉悦の笑みを浮かべながら彼女は言う。
「私に逆らうなら水は飲めないって思った方がいいよ?」
「ッ……」
「それに……」
彼女の水が刃へと形を変える。そして、腕を振ってそれを飛ばすと木が切れて倒れた。彼女は自信満々に力を誇示する。
「私が何で無能の命令を聞かないといけないの? おバカさんの指示で鳳みたいに死ぬのは真っ平よ」
「……僕たちが命じた訳じゃない。鳳君は」
「あーもう、うるさいわね。どっちだっていいの。とにかく私たちは勝手にやらせてもらう」
愛丘は水の能力が彼女にあるのを悲しんでいた。逆らうと水は飲めないと脅してきたが、そもそもこの場所に戻って来るのかも怪しい。
戻って来る意思があったとしても、状況によって拠点の場所を変えるかもしれない。再会できる可能性は低いだろう。その一言からも、それが合理的な判断とは思えなかった。
それを聞いていた鉄が会話に加わる。
「馬鹿と鋏は使いよう。好きにやらせればいい。まあ、遠征ってやつだ」
嘲笑を含むその言葉を発した彼に視線が集まった。七名が引きつった表情をした。特に顕著だったのは、大竜だ。一瞬だが歯を力強く噛みしめ、険しい表情を見せた。
「く、鉄ッ……何時もなら暴れるのにやけに大人しいな。はっ、さては、大した能力じゃなかったんだろ? 俺は最強の能力を手に入れたんだ! どうだ、別れの挨拶にやり合うか!? ボコボコにしてやるよ!」
鉄はより一層彼等を嘲笑った。その態度にムッとした様子を見せる。
「お前は高価な道具を買いそろえただけでオリンピックで優勝出来るのか? そう思ってんのなら……浅い男だ」
「っ……鉄ぇ貴様ぁ……」
「ふん。探索前に無駄な体力を使いたいならとっとと来い」
黒鉄の余裕表情、そして鋭い眼光。その異様な雰囲気に彼等は無意識に後退りをしていた。大竜の隣にいる男が慌てて言う。
「だ、大竜。こんなところで体力を使うのはもったいないって!」
「そ、そうだな。こんな雑魚に構ってる暇はねぇ……行くぞお前等ッ!」
こうして大竜率いるグループは去って行った。しかし、それを嘆いてはいられない。今日こそ水源を見つけなけらば。昨日と同じく四方八方を探索する予定だ。
愛丘は皆に最初から状況を説明し、混乱が起こらないようにフォローを入れた。探索人数を若干調整して、大竜を追うグループを作る。
水を出せるも桃地のグループを失うのは痛手だ。出来るなら戻って来て欲しい。
それを察したのか、女子の後藤と松本がそれに志願する。二人は桃地たちと何度か話した事があるようだ。
説得を任せる事にした。ただし優先順位は後藤たちが無事に戻って来る事で、無理はしないように。安全第一と愛丘は言葉を添えた。後は戦える男子。不死原と田村、宝剣を同行させた。
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