異世界オオカミさん~クラスメイトと地球へ帰ろう~

刀根光太郎

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彼はもう動かない

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 時間はかかったが、人数分に切ったのを枝でくし刺しにして焼きあがるのを待つ。男女関係なく一部の者が顔をしかめていた。野外でまな板や水等が無いさばいているのを見ていたし、無理やり引きちぎったかのようなこの雑な見栄え。大きな獣をさばいた事が無いので無理もない。

「うぇ……本当にそれ食べるの?」

「今は我慢してくれ。もっと上手く出来るように練習するから」

「でもな~」

「一応食べ物には昆虫も視野に入れてるけど、どっちが良い?」

「は、ははは……これで……良いよ……うんっ」

 それを見ていたみーちゃんがこそっと褒めてくれた。

「やるぅ。比較対象を出して納得させるなんて」


 愛丘がそれを聞いて名案だと言わんばかりに頷いた。

「昆虫……なるほど、その手があったか」


 それを少し遠くで聞いていたみーちゃんは呟く。

「……冗談よね?」

「……まあ、違和感があるのは最初だけだろ。きっと……」

「狩猟部隊の結成を考えよ……」

「後々にな」

 そんなやり取りがあったが、何とか焼くことが出来た。佐久間たちも帰って来たので食事にする事にした。帰って来たばかりの武田の第一声が嬉しかった。

「うお! 何だよそれ、美味しそう!」

「うん、良い匂いだ。まあ、見た目はアレだが」

「いやいや、大したものだろ。流石、彰人だな」

 それを聞いても、一部の者はまだ顔を引きつらせていた。かんなぎが毒見をしようと腹を括る。

「わ、私が!」


 そんな状況を横目に、一番最初に肉にかぶりついたのは巫では無く、根本ねもとという女子だった。人と余り慣れ合わない性格で逆に浮いている感じだ。

「旨い。やるじゃん、城詰」

「あ、ありがと……」

 余り感情がこもって無い淡白な言い方だったが、喜んでもらえて何よりだ。それを機にお腹を空かせた皆が一斉にかぶりついた。すると以外にも好評でバクバクと食べ始める。先生も褒めてくれた。

 皆がそれを喜んでくれたのが嬉しかった。ベリーも添えて、それをほおばった。そして、特に肝臓は皆に無理やり分配して食わせた。


【お腹が膨れて眠くなる】

 昨日より見張りを強化し、眠りにつく。俺は目がさえて眠れなかった。横になったまま、焚火をしている要に話しかけた。

「鳳……本当に居なくなったんだな……まだ、信じられないよ」

「ああ……」

「俺のせいかもな……」

「はぁ? 何でそうなるんだよ」

「俺が自然の怖さとかをもっと警告していれば……」

「それは違う。彰人のせいじゃない。悪いのはあの悪魔だ。こんな所に放り込んだアレのせいなんだよッ」

「……」

「彰人、もう寝ろよ。明日はもっと大変だ。薄々気が付いているんだろ?」

「何人かはもう既に疲れ切っているのが目に見えてる……水を……早く水を見つけないと……」

 今は目的に集中しなければ。要と話したおかげで少し安心する。


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