上 下
11 / 70
そんな事もある

11

しおりを挟む
 彼女がステータスボードを操作しながら見せる。確かに書いてある。続けてお互いに詳細を見せ合う。

「ていうか、彰人の能力。名称からは分かりにくいな」

「やっぱり? 俺も思った。要のはそのまんまだもんな」

(んー。これの表記通りなら恐らく時間停止も俺には効かないはずだけど……能力を使いすぎても大丈夫なのが分かったら試して見るか)

「清水の《ヒーリング》ってのは?」

「……治癒能力? みたいな?」

 詳細を見ると、他人に触れる事で、その者の自然治癒能力を高める。と書いてあった。

「どう?」

「彰人。これは判断に困るな」

「多分、触れてると怪我や病気の治りが早くなるって事だろう」

「ああ……ファンタジーの魔法の様に、大怪我が一瞬で治るって事ではなさそうだな」

「えー、私のは外れか……」

「いやいや。派手さはないけど、かなり重要な能力だと思うな。医者も薬もないからな。この状況では一番欲しい能力の一つだな」

「そ、そうかな?」

 和は嬉しそうな表情になった。みーちゃんが自分のボードを見ながら何気ない様子で言う。

「でもさー。何で私たち何だろ? 何をさせたいのかなー」

 要は少し疲れた感じで言う。

「分からん。あんな怪しい奴の事なんか分かるかよ」


「それに民ってなんだろ?」

「ん~、ゲーム。RPGじゃ、職をマスターしたり、変更して強くなっていく、って言うのが定番かな。ただオラクルは民としてカウントされる。この意味はよく分からない。それと、もしかしたら転職みたいなのがあるのかもな」

「ははは。彰人、そう言うの好きだよな」


「まあな……でも、暇つぶし、か……本当に何がしたいのか……」

「さあな」

「あ、そういえば要。さっき何処に行ってたんだ?」

「ん? ああ。色々話を聞いて回ってた。疲れてるのか、皆余り話してくれなかったけどな……」

「それもそうだろ。こんな状況だからな……」

 ふと辺りを見渡すとボチボチ寝ている人も増えていた。皆疲れているだろう。

「まっ、こんな短時間で考え過ぎても答えは出ないだろうし、俺たちもそろそろ寝るか?」

 要がいたずらっ子の様な顔をした。

「そうだな。おっと、トイレは今のうちに済ませとけよ。この不気味な森は何が出るか分からない。怖いぞ~」

「わ、分かってるわよ! あんまり怖がらせないでよ~」

 みーちゃんが怪談系が苦手なのを知っているので、皆でそれを笑っていた。獣がいるから素で怖いのだが、今は嘘でも良いから笑っていたい。皆もそれを察している様だった。


しおりを挟む

処理中です...