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知らない場所での生活

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 こっそりと燃え移った火に手を近づけたら熱かった。消える様子はない。俺の能力は発動しなかったのだ。彼女の手を離れたくらいで性質が変わるのかもしれない。

 円城寺がその横顔を見つめながら問う。

「これは良い能力なの?」

「汎用性が高いし、かっこいい!」

「ふふふ、何よそれ」

「クールタイムとかないのか?」

「クールタイム?」

「多分ステータスボードに表記されてると思うんだけど。あの女神の事だ。恐らく連続、あるいは無限に使用できない様、何かしら制限をすると思うんだ」

「ええっと……クールタイムは無いみたい……でも、MPって言うのがあるね」

「減ってるか?」

「うん、100だったのに今は91になってる」

「なるほど……その数値が戻らないかもしれないからポンポン使わない方が良いかもな」

「えっ?」

「あ、大丈夫だ。俺もいちから火を起こせるように練習する。木と木を擦る原始的なやつ」

「そっか……そうなったら私は要らなくなっちゃうね」

「そうはならないよ。慣れたら火の起こし方をそっちにも教える。それに、生活基準を上げようと思ったら、もっとやる事は増えるから、今よりずっと忙しくなるって……」

 それを聞いて彼女は僅かに微笑んだ。

「じゃあ頑張らないとだねっ」

「だな! あ、そうだ。MPってのが0に近づくほど体調が悪くなるとかもあるかもしれない。何かあったら先生でも佐久間でも俺でも。誰でも良いから、とにかく無理せずに気軽に言ってくれ」

「分かった」

 話を訊きながら彼女は髪を少しいじっていた。

「城詰君てさぁ。や、優しいね。それに見た目より、しっかりしてる」

「ははは、要にもよく近い事言われるよ。やっぱり頼りないように見えるんだなー」

「そ、そうじゃなくて……ぅー、まあいいや」

「何がだよ」

「早く清水さんの所に行ってあげなよ」

「え?」

「こっち見てるよ。何か用事があるんじゃない?」

 確かにジッと見ていた。少し機嫌が悪そうにも見える。それもそうか。こんな未開の地に送り込まれたんだ。そして、水源の探索に要たちは行っている。不安でないはずがないのだ。

「ごめん、ちょっと行って来る」

「うん……ごゆっくり」

 俺はそのまま、和の方に向かった。





☆☆☆☆☆☆


・今回の登場人物(喋ってた人たち)

佐久間さくま 冬也とうや 
愛丘まなおか ゆき 
内藤ないとう 結芽ゆめ
一条いちじょう 大和やまと
円城寺えんじょうじ かなえ

・先生
古川

-------

水源探索組 志願者十名

おおとり 将史まさし   
清時きよとき 由来ゆら  
鮫島さめじま まこと   
武田たけだ 右京うきょう  
田村たむら 恭介きょうすけ  
萩原はぎわら 哲平てっぺい  
不死原ふしはら 風我ふうが 
宮本みやもと かなめ   
五鬼継ごきつぐ 未来みく 
松本まつもと みさき   


☆☆☆☆☆☆


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