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知らない場所での生活

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 俺はホッとした。何故なら火を起こすのは大変だ。恐らく運が良くても数日、下手をすれば数週間はかかると予想していたからだ。

「城詰君。い、今出したほうが良い?」

「好きな時に、ずっと継続して出せそう?」

「わ、分からない」

「じゃあ拠点を決めて、作り始めてからの方が良い」

(能力の火力、クールタイムも分からない。それなりに準備してからの方が良いだろう)

 しかし、水の方は誰も手を挙げる事は無かった。佐久間が質問をしてきた。

「それじゃあ今日は水源を見つける事が目標か。どう探すのが良いかとかはあるか?」

「うーん。正直分からない。そう簡単に見つかるなら水確保を第一にあげないしな」

「ふむ、皆それぞれ散りながら探そうか」

「ここにはどんな生き物がいるか分からない。効率は落ちるけど、一緒に動いた方が良いと思う。糞とかは動物の距離の目安になるから気にかけながら、慎重に動こう。ついでに木の実とか、食べれそうな物にも意識を向けて貰えると助かるよ」

「だ、そうだ。自分の能力が戦闘向きだと思う人は積極的に水源の探索に行って欲しい」

、ね……)

 生徒は40名。先生を含めて41名。全員で動くと目が届きにくいのもあるので、良くないと判断した。体調に気を付けながら動かないと。余計な疲労や怪我は極力避けたい。

 休むのに良さげな場所を見つけると、数人が腰を下ろす。取り合えず今日はここで一夜を過ごす事になるだろう。水源の探索に志願したのは10名。要と五鬼継も一緒に探索に向かった。


【分業】

 拠点にも動物と戦える者が何人か残った。探索組を見送った後、佐久間と愛丘まなおかが近づいて来た。

「城詰は凄いな。おかげで助かった」

「何だよ急に」

「……不思議だな。こういう状況にならなかったら、お前と話す事は無かったかもな」

「ははは、確かにな……」

「……大人が居るのは幸運だった」

 思ったよりも冷静に事を運べた。それを聞いた愛丘も少し作った様な笑顔になる。

「僕たちは一人じゃない。協力して乗り切ろう」

「ああ……そうだな」

「さて、探索組にばかり負担をかける訳には行かない。早速質問だ。ここに残った者達は何をすればいい?」

「薪集めだな。暗くなる前に火を起こしたい」

「そうだった。ここにも明かりがないのか」

「火のある無しは精神面に大きくかかわる。後は雨。最高の恵みでありながら、体温を奪う悪魔にもなる。薪はもちろん、いずれは体も濡らさないような対策をしないとな」

「なるほど、確かに今風邪でもひいたら最悪だな」

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