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四月篇
第6話 このクラスに四姉弟がいる
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入学式もホームルームも終えた新入生は、午後から放課後扱いとなっている。
ほとんどの新入生は、下校準備を始めていた。廊下では、新入生を待っている保護者がいる。
敦也もまた、下校準備を始めていた。
ホームルームで配られたプリントを整理して、ファイルに入れると、リュックの中に入れ、誰にも気づかれないように帰ろうとした。
「ちょっと待った!」
と、敦也は教室を出ようとした時、制服の襟を捕まえられて、歩くのを止められる。
後ろを振り返ると、里菜が、ニコニコと笑っていた。
「あ、あの……里菜姉。何か?」
苦笑いをする敦也。
「何、一人で帰ろうとしているの?」
「いや~、だって、ほら、俺、電車で来ているから、今、帰らないと乗り遅れるし……」
「大丈夫。駐輪場まで、自転車を運んだら、私達と車で一緒に帰ることになっているから時間なんて気にしなくてもいいわ」
と、敦也の逃げ道をなくそうとする。
「あ、そうだ。昼飯、昼飯をどこかで食べないといけないから、ほら、姉ちゃん達もそっちの都合で動いた方がいいんじゃないかなぁ?」
「あら、そんなに気を使わなくてもいいですよ。私達は、あっちゃんに合わせますから」
と、唯が里菜の後ろから姿を現した。
「あ、そうなんですか……」
もう、使えそうな手持ちのカードがないと、悟った敦也は、抵抗するのも諦めた。
そこに咲弥も加わり、これでようやく有村家四姉弟が揃う。
四人揃うと、なぜか注目を浴びるらしく、周りに生徒が集まってくる。
「ねぇ、有村さん。四人って、姉弟って本当?」
「なんで、四人は、この学校を選んだの?」
と、特に女子からの質問攻めを受ける四姉弟というよりも、三姉妹。
唯たちは、困り顔を見せながら対応するものの、敦也には、誰も注目しない。
里菜からようやく話されると、敦也は、そっと教室を出た。
教室に出ると、両親が出迎えてくれている。
「や、やぁ、敦也。入学おめでとう」
と、苦笑いする父親。
それを見た敦也は、ジトー、と父親を見る。
「父さん……」
「ん? 何かな?」
「これは……?」
説明を求める敦也に父親は、やっぱりか、と落ち込んだ様子。
「一応、三人には黙っておこうと思っていたんだが、無理でした。ごめんなさい!」
と、謝られた。
おそらく、可愛い娘達に弱みでも握られただろう父親は、何も対策できなかったと、考えるのが普通である。
敦也は、チラッと後ろを振り向き、教室の方を見た後、
「はぁ……」
深いため息をついた。
ほとんどの新入生は、下校準備を始めていた。廊下では、新入生を待っている保護者がいる。
敦也もまた、下校準備を始めていた。
ホームルームで配られたプリントを整理して、ファイルに入れると、リュックの中に入れ、誰にも気づかれないように帰ろうとした。
「ちょっと待った!」
と、敦也は教室を出ようとした時、制服の襟を捕まえられて、歩くのを止められる。
後ろを振り返ると、里菜が、ニコニコと笑っていた。
「あ、あの……里菜姉。何か?」
苦笑いをする敦也。
「何、一人で帰ろうとしているの?」
「いや~、だって、ほら、俺、電車で来ているから、今、帰らないと乗り遅れるし……」
「大丈夫。駐輪場まで、自転車を運んだら、私達と車で一緒に帰ることになっているから時間なんて気にしなくてもいいわ」
と、敦也の逃げ道をなくそうとする。
「あ、そうだ。昼飯、昼飯をどこかで食べないといけないから、ほら、姉ちゃん達もそっちの都合で動いた方がいいんじゃないかなぁ?」
「あら、そんなに気を使わなくてもいいですよ。私達は、あっちゃんに合わせますから」
と、唯が里菜の後ろから姿を現した。
「あ、そうなんですか……」
もう、使えそうな手持ちのカードがないと、悟った敦也は、抵抗するのも諦めた。
そこに咲弥も加わり、これでようやく有村家四姉弟が揃う。
四人揃うと、なぜか注目を浴びるらしく、周りに生徒が集まってくる。
「ねぇ、有村さん。四人って、姉弟って本当?」
「なんで、四人は、この学校を選んだの?」
と、特に女子からの質問攻めを受ける四姉弟というよりも、三姉妹。
唯たちは、困り顔を見せながら対応するものの、敦也には、誰も注目しない。
里菜からようやく話されると、敦也は、そっと教室を出た。
教室に出ると、両親が出迎えてくれている。
「や、やぁ、敦也。入学おめでとう」
と、苦笑いする父親。
それを見た敦也は、ジトー、と父親を見る。
「父さん……」
「ん? 何かな?」
「これは……?」
説明を求める敦也に父親は、やっぱりか、と落ち込んだ様子。
「一応、三人には黙っておこうと思っていたんだが、無理でした。ごめんなさい!」
と、謝られた。
おそらく、可愛い娘達に弱みでも握られただろう父親は、何も対策できなかったと、考えるのが普通である。
敦也は、チラッと後ろを振り向き、教室の方を見た後、
「はぁ……」
深いため息をついた。
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