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第35話
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台の上に立ったエスクワイア夫人を囲うように品評会の参加者たちが円を作った。
いよいよMVP発表の時。
自分の心拍数が上がっていくのを感じる。
私の横に立つアレン様とルークさんも緊張した面持ちだ。
少し離れたところにはレベッカ・シエンタとラルフが並んでいて、レベッカ・シエンタの方はこちらに向けて自信満々な笑みを投げかけてきている。
相当な自信があるらしい。
「皆さん、本日もお集まりいただきありがとうございました。名残惜しいですが、終了の時が来ました。最後にMVPの発表をもって今夜の品評会の締めとしたいと思います」
フローラ商会か、シエンタ家か――結果が決まる。
「MVPは・・・フローラ商会のアレン・ヴェルファイアさんといたします!」
一瞬自分の耳を疑った。
周囲を見渡してアレン様とルークさんが表情を緩め、レベッカ・シエンタが愕然とした顔をしているのを確認してようやく勝利を実感した。
「やりましたねアレン様・・・!」
「ああ、やったよ、エミリー・・・」
小声でささやくとアレン様は喜びを噛みしめるような声をだして、そっと手を私の腰に回した。
「ちょっと待ってください、エスクワイア夫人! どうしてシエンタ家の美しい宝飾品がフローラ商会の貧相な品よりも劣るっていうんですか!?」
そこでレベッカ・シエンタが声をあげた。
ズカズカ勢いよくエスクワイア夫人の足元に進み出る。
そんな彼女をエスクワイア夫人は穏やかな目で見つめていた。
「そうねレベッカ・シエンタさん。確かにシエンタ家の品は素晴らしい宝石で作られていたわ・・・でも、これは『宝石』ではなくて『宝飾品』の品評会なのよ。使われた宝石の質ではなく、最終的な製品の質で判断すればフローラ商会さんの品の方がまさるということなのよ」
「い、良いものを作っても、その人間性に問題がありますわ!以前も言いましたが、そこにいるアレン・ヴェルファイアは貴族の地位を金で買い叩いた平民崩れですよ! そんな奴がMVPにふさわしいはずがありませんわ!」
「必ずしも平民に生まれたものが貴族を名乗れないわけではないわよレベッカさん。例えば、わがエスクワイア家ももとをたどれば大昔の戦争で手柄を挙げて貴族の位を授けられた平民出身の雑兵ですわよ?」
「それとこれとは話が別ですわ! 貴族の位を買い叩く男に、どんな事情があれど売り払ってしまう女! どうせ愛も何もないに決まってますわ! そしてそんな夫婦がつくる宝飾品になど価値は無いわ!」
思わず私は大きく1歩踏み出した。
カツンッ!とハイヒールの鋭い音が鳴る。
「レベッカさんのおっしゃるとおりです。アレン様と私は金銭的な利益により結ばれました・・・それが何だというのです?」
自分でも驚くほどに低く堂々とした声が喉から出ていた。
いよいよMVP発表の時。
自分の心拍数が上がっていくのを感じる。
私の横に立つアレン様とルークさんも緊張した面持ちだ。
少し離れたところにはレベッカ・シエンタとラルフが並んでいて、レベッカ・シエンタの方はこちらに向けて自信満々な笑みを投げかけてきている。
相当な自信があるらしい。
「皆さん、本日もお集まりいただきありがとうございました。名残惜しいですが、終了の時が来ました。最後にMVPの発表をもって今夜の品評会の締めとしたいと思います」
フローラ商会か、シエンタ家か――結果が決まる。
「MVPは・・・フローラ商会のアレン・ヴェルファイアさんといたします!」
一瞬自分の耳を疑った。
周囲を見渡してアレン様とルークさんが表情を緩め、レベッカ・シエンタが愕然とした顔をしているのを確認してようやく勝利を実感した。
「やりましたねアレン様・・・!」
「ああ、やったよ、エミリー・・・」
小声でささやくとアレン様は喜びを噛みしめるような声をだして、そっと手を私の腰に回した。
「ちょっと待ってください、エスクワイア夫人! どうしてシエンタ家の美しい宝飾品がフローラ商会の貧相な品よりも劣るっていうんですか!?」
そこでレベッカ・シエンタが声をあげた。
ズカズカ勢いよくエスクワイア夫人の足元に進み出る。
そんな彼女をエスクワイア夫人は穏やかな目で見つめていた。
「そうねレベッカ・シエンタさん。確かにシエンタ家の品は素晴らしい宝石で作られていたわ・・・でも、これは『宝石』ではなくて『宝飾品』の品評会なのよ。使われた宝石の質ではなく、最終的な製品の質で判断すればフローラ商会さんの品の方がまさるということなのよ」
「い、良いものを作っても、その人間性に問題がありますわ!以前も言いましたが、そこにいるアレン・ヴェルファイアは貴族の地位を金で買い叩いた平民崩れですよ! そんな奴がMVPにふさわしいはずがありませんわ!」
「必ずしも平民に生まれたものが貴族を名乗れないわけではないわよレベッカさん。例えば、わがエスクワイア家ももとをたどれば大昔の戦争で手柄を挙げて貴族の位を授けられた平民出身の雑兵ですわよ?」
「それとこれとは話が別ですわ! 貴族の位を買い叩く男に、どんな事情があれど売り払ってしまう女! どうせ愛も何もないに決まってますわ! そしてそんな夫婦がつくる宝飾品になど価値は無いわ!」
思わず私は大きく1歩踏み出した。
カツンッ!とハイヒールの鋭い音が鳴る。
「レベッカさんのおっしゃるとおりです。アレン様と私は金銭的な利益により結ばれました・・・それが何だというのです?」
自分でも驚くほどに低く堂々とした声が喉から出ていた。
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