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幕間3:アレンと女性
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さかのぼること1日前――
フローラ商会の社長アレン・ヴェルファイアは娼館にいた。
VIP専用の個室で上質なソファに腰かけ、隣にはグラマラスな美女を侍らせている。
長い金髪に青い瞳。
街を歩けば男たちが振り返ること間違いなしの美貌だ。
「ユリア、君のためにサファイアの首飾りを作ってきたんだ。着けて見せてくれないかな?」
「もちろんよ、アレン様。・・・どう、似合うかしら?」
ユリアと呼ばれた美女は優雅な仕草でアレンから渡された品を首にかけた。
その瞳と同じ青い宝石を身に着け、ユリアの美しさを更に引き立てる。
首飾りだけではない。
両手の指にはめた指輪、ドレスの所々に縫い留められた宝石、金髪を彩る髪飾り。
全て、これまでアレンが足しげく娼館に通いながら与えてきたものだ。
「うれしいけど申し訳ないわ・・・こんな上等なものをもらってばかりで・・・」
「遠慮なんかしなくていいんだよユリア。美しい女性が美しいものを身に着けるのは当然だからね」
「まあアレン様ったら・・・お上手だこと」
ユリアがアレンの体によりかかる。
「そういえば・・例の『品評会』が間もなく開かれるんと聞きましたわ」
「ああ、2か月後だそうだ。その時は頼むよ・・ユリア」
「まだ少し先ですのね。なら今日は・・たっぷりサービスさせていただきます」
そう言うとユリアは艶やかな唇をアレンに寄せていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アレンさま、本当にあのユリアさまでいくんですか?」
屋敷への帰途の途中、馬車の御者台からルークがアレンに問いかけた。
「ああ。美貌、知性、振る舞い――金で買える女としてはまあ及第点といったところだろう。多少不安はあるが彼女でいくよ」
「一応、正式な妻であるエミリーさまと参加しないと色々言われるんじゃないですか?」
「エミリーとはビジネス的な繋がりしかないない。品評会にまで連れ出すのは、少し求めすぎだろう?」
「・・・エミリーさまはアレンさまのことは悪しからず思っているように見えますけどね」
「ん?何か言ったかい?」
「いーえ、なんでも」
ルークの小さなつぶやきはアレンの耳に入ることはなかった。
「そういえばルーク。この間エミリーが作った料理を食べていたよね、どう思った?」
「ええ・・似てるっつーか、同じ味ですよね。フローラさまの作ってくれたものと」
「君もそう思うか・・・全く不思議だよね」
アレンとルークの間にしばしの沈黙が生じた。
「アレンさま、言い忘れてたんですが襟元のユリアさまのキスマークがついてますよ」
「えっ、本当かい?」
「はい。屋敷に帰ったらすぐに着替えてくださいね。エミリーさまが驚いてしまうでしょうから」
「ああ、わかったよ」
しかし、帰宅後に夜通し作業をしたアレンは着替えることを忘れてしまいキスマークをつけられたままにしてしまうのだった。
フローラ商会の社長アレン・ヴェルファイアは娼館にいた。
VIP専用の個室で上質なソファに腰かけ、隣にはグラマラスな美女を侍らせている。
長い金髪に青い瞳。
街を歩けば男たちが振り返ること間違いなしの美貌だ。
「ユリア、君のためにサファイアの首飾りを作ってきたんだ。着けて見せてくれないかな?」
「もちろんよ、アレン様。・・・どう、似合うかしら?」
ユリアと呼ばれた美女は優雅な仕草でアレンから渡された品を首にかけた。
その瞳と同じ青い宝石を身に着け、ユリアの美しさを更に引き立てる。
首飾りだけではない。
両手の指にはめた指輪、ドレスの所々に縫い留められた宝石、金髪を彩る髪飾り。
全て、これまでアレンが足しげく娼館に通いながら与えてきたものだ。
「うれしいけど申し訳ないわ・・・こんな上等なものをもらってばかりで・・・」
「遠慮なんかしなくていいんだよユリア。美しい女性が美しいものを身に着けるのは当然だからね」
「まあアレン様ったら・・・お上手だこと」
ユリアがアレンの体によりかかる。
「そういえば・・例の『品評会』が間もなく開かれるんと聞きましたわ」
「ああ、2か月後だそうだ。その時は頼むよ・・ユリア」
「まだ少し先ですのね。なら今日は・・たっぷりサービスさせていただきます」
そう言うとユリアは艶やかな唇をアレンに寄せていった。
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「アレンさま、本当にあのユリアさまでいくんですか?」
屋敷への帰途の途中、馬車の御者台からルークがアレンに問いかけた。
「ああ。美貌、知性、振る舞い――金で買える女としてはまあ及第点といったところだろう。多少不安はあるが彼女でいくよ」
「一応、正式な妻であるエミリーさまと参加しないと色々言われるんじゃないですか?」
「エミリーとはビジネス的な繋がりしかないない。品評会にまで連れ出すのは、少し求めすぎだろう?」
「・・・エミリーさまはアレンさまのことは悪しからず思っているように見えますけどね」
「ん?何か言ったかい?」
「いーえ、なんでも」
ルークの小さなつぶやきはアレンの耳に入ることはなかった。
「そういえばルーク。この間エミリーが作った料理を食べていたよね、どう思った?」
「ええ・・似てるっつーか、同じ味ですよね。フローラさまの作ってくれたものと」
「君もそう思うか・・・全く不思議だよね」
アレンとルークの間にしばしの沈黙が生じた。
「アレンさま、言い忘れてたんですが襟元のユリアさまのキスマークがついてますよ」
「えっ、本当かい?」
「はい。屋敷に帰ったらすぐに着替えてくださいね。エミリーさまが驚いてしまうでしょうから」
「ああ、わかったよ」
しかし、帰宅後に夜通し作業をしたアレンは着替えることを忘れてしまいキスマークをつけられたままにしてしまうのだった。
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