27 / 27
閑話:『雷と追跡』領域の魔法研究
『雷と追跡』領域の魔法研究
しおりを挟む
吾輩はワールド・トラベル出版社、略してWT社の第5分室に所属するミゲーレ・ナザリアスである。ライフワークとして世界の理についての調査研究を行っている。嘆かわしくも第5分室における吾輩の担当コーナーは『おもしろドッキリ★世界の魔法珍百景』という誠に残念なタイトルを冠されている。
しかし領域独自の魔法の発動についての研究及びその実地でのフィールドワークこそが吾輩にとって必要なものであるからして、これに対して資金提供を頂いている奇特なWT社には一定の感謝とともに、『珍百景』の掲載にあたってはくれぐれもペンネームでの掲載をお願いしている次第である。
さて、話は大分横道にそれているが、本日は吾輩の研究内容を紹介させて頂こう。
当然ながら、この世界には魔力がある。
そしてその魔力を操る魔法が存在する。
魔法行使の方法はその土地土地によって異なる。例えば紙に呪符を書き込みその内容を発動する領域。地面に文様を刻みつけそれを世界に浸透させることによって世界を改変する領域、体に紋様を描いて自らの身体を魔力に浸して接触した魔力を自在に操る領域。様々だ。
そして領域を超えれば、それぞれの方法で行使する魔法の威力が低減する。ここまでは共通認識且つ事実である。
ではその原因は何なのであろうか。
それが吾輩の興味関心であり、研究対象である。
この世界では領域ごとに魔女様が魔力を管理なされている。魔女様といっても必ずしも女性というわけでも人形というわけであられないのだが。魔女様は各領域で信仰されている場合もあるが、俯瞰的に見れば魔女様は人とは異なる思考で世界を運行する、いわばシステムといったものに近い。世界を旅する中で多くの異世界人と会合したが、その一部の者の話すオペレーティング・システムというものに近いのではないかと思う。
つまり入力デヴァイスと出力デヴァイスはその魔女様の構築する独自のOS上に構築された形式の違うプログラムに基づいて発動するものだという考えだ。であるからして、似たようなシステムが構築された領域では互いの魔法の効力が発動しやすく、全く異なるシステムが構築された領域においては魔法の効力は発動しづらい。
まぁ、これはあくまでも検証途中であり、学会では異端扱いされていることは認識している。
そこで本題だ。
今回訪れたのは『雷と追跡』の領域、魔女シーリィ様の領域だ。件の異世界人、『地球』世界育ちと言っていたが、この領域では比較的『地球』世界と似たシステムが構築されていると述べていた。
だが吾輩の知る限りにおいてこの世界には多くの異世界人が落っこちてくるが、『地球』世界には魔法というものが存在しないはずなのだ。多くの文献もそう示しているし、これまで吾輩が出会った『地球』世界の異世界人は異口同音に魔法はないと述べる。
一体これはどういうことだろう。
その異世界人も『地球』世界には魔法がないと言っていたのに。
『雷と追跡』領域の魔法は口頭呪文によるものである。長年体系化された呪文を口頭発音することによって魔法を発動する領域である。魔術行使方式としては比較的ありふれた方法である。
まず最初にシーリィ様に祈りを捧げ、発動したい効果を具現化する呪文を唱える。例えばこうだ。
『魔女シーリィ様に奏上仕る。我はこの領域の力をお借りし、あまねく世界の根源たる光で暗黒を払い給え』
予想通り、吾輩の目の前で光の精霊が現れ、夜を明るく照らした。光の精霊はお帰り頂く呪文を唱えるまでは居続け、その間、魔法行使者の魔力を消費し続ける。
とはいえこの魔法はとても重宝する。ダンジョンなどに潜っているときでも任意の場所で周辺を照らせるのだから。だがこのような魔法効果自体はよくあるもので、他の領域でも様々な方法で光を現出させることができるのだ。
この領域の特色としてはむしろその魔法行使の容易性である。魔力を持つものであれば、また、魔石等によって魔力を維持できる限り、呪文を唱えれば誰でも魔法が行使できる点である。何の修行も要さずして。
であるからして、吾輩が以前この領域を訪れた際には領域内各地に伝わる魔法や伝承をかき集め、一冊の小冊子にして販売し、小金を稼がせてもらった。
さて、今回『雷と追跡』を訪れたのは件の異世界人の言の検証である。異世界人は信じがたいことを述べていた。新たな魔法の可能性だ。吾輩としては、このような呪文の発動は不敬ではないかとひどく躊躇われるものである。
しかし論理的に考えれば、それは吾輩が魔女様を何らかの人格を有する者と捉えていることによるからだ。おおよその魔女様は多少は人格を有するが、全てがそうではないことは既に述べたとおりである。
転生者は、シーリィ様にはほぼ人格がなく、世界を運行するシステムそのものではないかと述べていた。転生者が何故そのような確信を得たのかは何度聞いても理解をし得なかった。しかしともあれその転生者から聞いた呪文を試してみることにしよう。
だが。
これまで散々不敬と呼ばれることは行ってきたが、流石に魔女様を呼び捨てにしたことはない。畏怖感と忌避感がまぜこぜになった奇妙な心持ちであるが、吾輩は研究の徒である。目の前に未知の研究材料がある。そうであれば試みざれば沽券に関わる。
こほん、と息を整えびくびくしながら呪文を唱える。
「シーリィ、ライト」
その瞬間、心臓が握りつぶされでもしないかと思ったが特に何もなく、固く瞑った目を開けるとそこには従来の呪文の発動効果と同じ、光の精霊がホワリと宙に浮いていた。
マジか。
ひどく動揺した。魔法の効果が発動するということは、今の呪文がこの領域で正しく認識され、魔女様の管理のもとでその効果が及ぼされたということだ。
……マジか。
呪文の短縮は口頭呪文を用いる領域の悲願である。これほどの短縮でこの効果。やりようによっては莫大な富が得られるのでは……。喉がじゅるりと鳴る。
吾輩は改めて転生者から聞いた未知の呪文を唱える。
「シーリィ、現在地」
すると、頭の中にこのあたりの地図が思い浮かんだ。なんということだ。頭の中の地図を見渡せば近くの町がどのくらいの位置や距離にあるかまでわかる。吾輩の体は驚愕に硬直した。けれども他にも試さなければならぬ呪文がある。
「シーリィ、明日の天気」
すると、頭の中に先程の地図が晴れ渡る映像が浮かんだ。本当に、明日の天気が……? そんな未来予知のようなことが可能なのか? まさか。いや、その効果はまた明日検証するとして。額にかいていた汗が脂汗に変わってきた。もしこの新しい便利すぎる呪文が知れ渡ってはこの領域は大きく変わるだろう。
大きな変革は時には甚大な悲劇をもたらすのは世の常である……。
……秘したほうがよいような。
いや、でも吾輩は学問の徒で……。
保留だ。とりあえず保留にしよう。件の転生者はこの領域の呪文は『拡張性が高い』と言っていた。その意味は未だによくわからない部分もあるが、彼が語っていたことを検証することが先決だ。
吾輩は数日間に渡ってありとあらゆる呪文の可能性を検討し、そしてこの研究を発表しないことに決めた。
ー付記。
お読みいただきありがとうございます。
現在この話は、次世代ファンタジーカップに参加中です。
次の話は『涼風と白き太陽』の領域にあるサリエラ王国で行われる『第8回サリエラ王国 夏だ!海だ!甘味まつりコンテスト』の取材をしに、異世界転生した女の子と金平糖を作る話を書き途中のまま放置しています。
リクエストなどありましたら続きを書こうかなと思っていますが、とりあえず保留にしてここで完結にします。再開するときはしれっと再開しますので、よろしくお願いいたします。
しかし領域独自の魔法の発動についての研究及びその実地でのフィールドワークこそが吾輩にとって必要なものであるからして、これに対して資金提供を頂いている奇特なWT社には一定の感謝とともに、『珍百景』の掲載にあたってはくれぐれもペンネームでの掲載をお願いしている次第である。
さて、話は大分横道にそれているが、本日は吾輩の研究内容を紹介させて頂こう。
当然ながら、この世界には魔力がある。
そしてその魔力を操る魔法が存在する。
魔法行使の方法はその土地土地によって異なる。例えば紙に呪符を書き込みその内容を発動する領域。地面に文様を刻みつけそれを世界に浸透させることによって世界を改変する領域、体に紋様を描いて自らの身体を魔力に浸して接触した魔力を自在に操る領域。様々だ。
そして領域を超えれば、それぞれの方法で行使する魔法の威力が低減する。ここまでは共通認識且つ事実である。
ではその原因は何なのであろうか。
それが吾輩の興味関心であり、研究対象である。
この世界では領域ごとに魔女様が魔力を管理なされている。魔女様といっても必ずしも女性というわけでも人形というわけであられないのだが。魔女様は各領域で信仰されている場合もあるが、俯瞰的に見れば魔女様は人とは異なる思考で世界を運行する、いわばシステムといったものに近い。世界を旅する中で多くの異世界人と会合したが、その一部の者の話すオペレーティング・システムというものに近いのではないかと思う。
つまり入力デヴァイスと出力デヴァイスはその魔女様の構築する独自のOS上に構築された形式の違うプログラムに基づいて発動するものだという考えだ。であるからして、似たようなシステムが構築された領域では互いの魔法の効力が発動しやすく、全く異なるシステムが構築された領域においては魔法の効力は発動しづらい。
まぁ、これはあくまでも検証途中であり、学会では異端扱いされていることは認識している。
そこで本題だ。
今回訪れたのは『雷と追跡』の領域、魔女シーリィ様の領域だ。件の異世界人、『地球』世界育ちと言っていたが、この領域では比較的『地球』世界と似たシステムが構築されていると述べていた。
だが吾輩の知る限りにおいてこの世界には多くの異世界人が落っこちてくるが、『地球』世界には魔法というものが存在しないはずなのだ。多くの文献もそう示しているし、これまで吾輩が出会った『地球』世界の異世界人は異口同音に魔法はないと述べる。
一体これはどういうことだろう。
その異世界人も『地球』世界には魔法がないと言っていたのに。
『雷と追跡』領域の魔法は口頭呪文によるものである。長年体系化された呪文を口頭発音することによって魔法を発動する領域である。魔術行使方式としては比較的ありふれた方法である。
まず最初にシーリィ様に祈りを捧げ、発動したい効果を具現化する呪文を唱える。例えばこうだ。
『魔女シーリィ様に奏上仕る。我はこの領域の力をお借りし、あまねく世界の根源たる光で暗黒を払い給え』
予想通り、吾輩の目の前で光の精霊が現れ、夜を明るく照らした。光の精霊はお帰り頂く呪文を唱えるまでは居続け、その間、魔法行使者の魔力を消費し続ける。
とはいえこの魔法はとても重宝する。ダンジョンなどに潜っているときでも任意の場所で周辺を照らせるのだから。だがこのような魔法効果自体はよくあるもので、他の領域でも様々な方法で光を現出させることができるのだ。
この領域の特色としてはむしろその魔法行使の容易性である。魔力を持つものであれば、また、魔石等によって魔力を維持できる限り、呪文を唱えれば誰でも魔法が行使できる点である。何の修行も要さずして。
であるからして、吾輩が以前この領域を訪れた際には領域内各地に伝わる魔法や伝承をかき集め、一冊の小冊子にして販売し、小金を稼がせてもらった。
さて、今回『雷と追跡』を訪れたのは件の異世界人の言の検証である。異世界人は信じがたいことを述べていた。新たな魔法の可能性だ。吾輩としては、このような呪文の発動は不敬ではないかとひどく躊躇われるものである。
しかし論理的に考えれば、それは吾輩が魔女様を何らかの人格を有する者と捉えていることによるからだ。おおよその魔女様は多少は人格を有するが、全てがそうではないことは既に述べたとおりである。
転生者は、シーリィ様にはほぼ人格がなく、世界を運行するシステムそのものではないかと述べていた。転生者が何故そのような確信を得たのかは何度聞いても理解をし得なかった。しかしともあれその転生者から聞いた呪文を試してみることにしよう。
だが。
これまで散々不敬と呼ばれることは行ってきたが、流石に魔女様を呼び捨てにしたことはない。畏怖感と忌避感がまぜこぜになった奇妙な心持ちであるが、吾輩は研究の徒である。目の前に未知の研究材料がある。そうであれば試みざれば沽券に関わる。
こほん、と息を整えびくびくしながら呪文を唱える。
「シーリィ、ライト」
その瞬間、心臓が握りつぶされでもしないかと思ったが特に何もなく、固く瞑った目を開けるとそこには従来の呪文の発動効果と同じ、光の精霊がホワリと宙に浮いていた。
マジか。
ひどく動揺した。魔法の効果が発動するということは、今の呪文がこの領域で正しく認識され、魔女様の管理のもとでその効果が及ぼされたということだ。
……マジか。
呪文の短縮は口頭呪文を用いる領域の悲願である。これほどの短縮でこの効果。やりようによっては莫大な富が得られるのでは……。喉がじゅるりと鳴る。
吾輩は改めて転生者から聞いた未知の呪文を唱える。
「シーリィ、現在地」
すると、頭の中にこのあたりの地図が思い浮かんだ。なんということだ。頭の中の地図を見渡せば近くの町がどのくらいの位置や距離にあるかまでわかる。吾輩の体は驚愕に硬直した。けれども他にも試さなければならぬ呪文がある。
「シーリィ、明日の天気」
すると、頭の中に先程の地図が晴れ渡る映像が浮かんだ。本当に、明日の天気が……? そんな未来予知のようなことが可能なのか? まさか。いや、その効果はまた明日検証するとして。額にかいていた汗が脂汗に変わってきた。もしこの新しい便利すぎる呪文が知れ渡ってはこの領域は大きく変わるだろう。
大きな変革は時には甚大な悲劇をもたらすのは世の常である……。
……秘したほうがよいような。
いや、でも吾輩は学問の徒で……。
保留だ。とりあえず保留にしよう。件の転生者はこの領域の呪文は『拡張性が高い』と言っていた。その意味は未だによくわからない部分もあるが、彼が語っていたことを検証することが先決だ。
吾輩は数日間に渡ってありとあらゆる呪文の可能性を検討し、そしてこの研究を発表しないことに決めた。
ー付記。
お読みいただきありがとうございます。
現在この話は、次世代ファンタジーカップに参加中です。
次の話は『涼風と白き太陽』の領域にあるサリエラ王国で行われる『第8回サリエラ王国 夏だ!海だ!甘味まつりコンテスト』の取材をしに、異世界転生した女の子と金平糖を作る話を書き途中のまま放置しています。
リクエストなどありましたら続きを書こうかなと思っていますが、とりあえず保留にしてここで完結にします。再開するときはしれっと再開しますので、よろしくお願いいたします。
10
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔法少女の食道楽
石田空
大衆娯楽
実家の事情で一番食欲旺盛だった頃、まともに食道楽を楽しめなかった過去を持つ一ノ瀬奈々。過労で食が細くなりがち。
そんな中、突然妖精のリリパスに魔法少女に選ばれてしまう。
「そんな、アラサーが魔法少女なんて……あれ、若返ってる。もしかして、今だったら若い頃食べられなかったようなご飯が食べられる?」
かくして昼は会社で働き、夜は魔法少女として闇妖精討伐をしながら帰りにご飯を食べる。
若い頃には食べられなかったあれやこれを食べるぞと張り切る奈々の、遅れてやってきた食道楽。
サイトより転載になります。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる