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1章 光仁天皇の二つの家族
白壁王の子どもたち
しおりを挟む「白壁様、本日はよく晴れましたねぇ。少し先のあぜに野の花が咲き誇っておりますよ」
「ああ、いいね新笠。後ほど散歩にでもいこうか」
「ええ。せっかくのお越しですもの。地の者が鮒を持ってまいりました。煮付けにさせます。夕が楽しみですね」
「ああ、そうだ、ひちらを土産に持って帰ったよ。後で食べような」
「まあ、素敵ですこと」
これが本来の私の、山野での新笠との会話だ。
「白壁様。本日はお酒を召されませんよう。大事な客人が参られますかね」
「わかった」
「本日の召し物は私の次女に命じましたので四つには必ずこの室にいらしてくださいね。迎えをよこしますから」
「わかった」
これが新しい私の、都での井上との会話だ。
井上との婚儀によって私の世界は2つに別れた。
宮中と山野の暮らし。
都の世界では私の主人は井上である。つまり私は井上の夫ではなく、井上の添え物となったのだ。だから井上は宮中でも私の主人として振る舞っている。
そして井上はまるで山部と新笠など存在しないかのように私と話す。
それが妙に恐ろしい。私の生活にとって井上こそが突然現れた異物なのにもかかわらず、それこそが正しき真実であるかのように。そうすると、新笠と私の子らこそが、この都の世界では異物なのだろう。
その頃から私の脳裏に浮かぶのは、私に万一があれば愛する新笠と子らはどうなってしまうのだということだ。昔父上が身罷られた時に感じた以上の足元の不安定さ。私には幼少の時より守るべきものが増えていた。
そして初めて父上の苦悩を実感した。
父上はきっと、私に類が及ばないよう、誰も宮中で私のことを知る者がないよう計らって頂いていたのだ。
けれども父上は想像だにしていなかったのだろう。天武様の多くのお子や孫が殺し合いの果に絶え、私にお鉢が回ってくるなど。
だが井上に子ができなければ何ら問題はない。そう、強く思い直す。
都ではあいもかわらず皇族同士が血まみれの争いを繰り広げていた。それは本流ではなく枝葉にも及んでいる。少しでも天武様の血を引いていれば殺し殺される。
けれどもそれは子がいるからこそ、天皇位が見えるからからこそ起きる争いなのだ。だから子ができなければこの争いに巻き込まれることはない。
けれども。
よく考えれば井上はすでに30だ、だから子はできないだろうと思っていた。その事実に私は酷く安心していた。
それに私の大切なものは奪われはしなかった。都にとって価値のない、取るに足らないものだったからだ。だから新笠といるとき、私は穏やかでいられた。泡沫のような穏やかな暮らしだった。いつ壊れるかよくわからないという不安は心のうちにそっと仕舞い、新笠といる時は他のことは忘れるようにした。
そう過ごすうちに、新笠との間に早良という子もできた。やはり井上との間に子はできなかった。私が愛しているのは新笠なのだからそれで問題はなかったのだ。
新笠と子らと一緒にいると時間はゆったりとすぎ、小さな庭を眺めればそこはかとない幸せを感じることができた。私は元来こういう場所で生まれ育ってきたのだ。綺羅びやかで忙しい宮はやはり妙に性に合わなかった。
次の転機。
私が45歳、井上が38歳の時に酒人内親王が生まれた。井上の懐妊を知って私は真っ青になった。胃の腑が潰れるかと思った。けれども内親王であることに大きく安堵した。やはり男子は生まれない。
なぜこんなに年をとったのに子ができたのだろう。私は政争などに関与せず、父のように自然を眺めて過ごしたかった。
雅に。
けれども酒人の出生とともに私の周りは少しずつ変わっていった。
「白壁様、おめでとうございます」
「雄田麻呂殿も叙爵おめでとうございます」
「いえ、私は未だ従五位下に過ぎません。天と地ほどの差がございます。私もそのうち追いつけるよう精進いたしましょう」
「雄田麻呂殿は未だ御年27ではありませんか。私が初めて叙爵されたのは29ですよ」
私はなぜだか突然昇進し始め、50の時に従三位となった。異例のスピードだ。長年そんな兆しはなかったのに。朗らかに祝辞を述べる雄田麻呂の言葉がなにやら薄ら寒く感じるほど。
出世というのは本来喜ばしい出来事。けれども私にとっては何やら得体のしれない未来へ続く道がごとりごとりと敷かれたがごとき気持ち悪さ。その道の先には暗闇がまっているよう、な。
その後も色々なことがあった。
聖武様が亡くなられ、井上の異母姉である阿倍様が孝謙天皇として即位された。すると、井上の存在感が家の中でどんどん増していく。私の立場はどんどん弱まり、部屋のすみに押し込まれていった。
その間にも乱が起き、粛清の嵐が吹き荒れた。宮中は争いに満ちていて、私はやはり、酒を飲んでやり過ごすしかできなかった。
女性皇太子という存在自体が皇嗣不存在を示し、乱の火種になるのだ。
だから孝謙様は譲位されて上皇となり、天武様の孫である淳仁天皇が即位された。
私の心に激震が走った。
淳仁様の母君は私の母上と同じ地方豪族の出なのである。本来は天皇にはなれないお血筋。その時、ひょっとしたらは天皇位に近しいところにいるのではないか、つまり私と私の家族が殺し合いに巻き込まれるかもしれないという恐怖がチラリと浮かんだのだ。
それはこの都の住まう魑魅に足首を掴まれたような、背筋の凍るような感触。
本来母君が皇族でなければ天皇になることはできないはずである。それでも淳仁様が天皇となられたのは、それは聖武様の血筋は安積様で既に絶え、それ以外の貴族や豪族の側室から生まれたお子や孫もこの淳仁様以外は全て死に絶えてしまったということだ。
淳仁様は天武様直系の最後のお血筋であらせられる。
けれども私などより現在の天武様直系であられる淳仁様が天皇となるのが筋だ。大丈夫、大丈夫。
淳仁様のお子が次の天皇となる。御年25歳とお若いから、他の皇族との間のお子も十分見込めるご年齢。
なに、私など井上と結婚したのは37の時分だった。そして私は十分、年を取っている。なにせ50だ。十分老齢だ。
「大丈夫だ」
そう言って飛び起きたことさえある。
何度もそう心に擦り込んだ。私が疑われるわけにはいかない。私は心の底から天皇の位を求めていない。だから万一にも疑われないよう、ますます酒に溺れた。
「私は関係がない! 皇位なぞ!」
何度そう叫んで飛び起きただろう。
1人で眠る室は暗く、すぐそばの闇に私を食い尽くそうと魑魅の類が待ち構えているとしか思えなかった。ゴォという風が吹けばびくりと心臓が波打ち、ガタリと何かが揺れれば血の気が失せて目の前が真っ暗になる。そういうときに雄田麻呂が持ち込んだ護符を握りしめ、独り夜を耐え、震えながら朝を待った。
何度も心に擦り込んで、そして心底ようやく落ち着けたのはどのくらい後だったのだろう。
政争などかかわりたくもない。皇家を継ぐのは現在の天皇により近い方から。それが道理だ。そのように悩む姿を井上に見られ、井上はしばらく不機嫌だった。
そのころには息子の山部は貴族としてではなくただの官吏として働くようになっていた。大学寮の官吏や侍従として任官していた。
井上ならともかく私に用意できる仕事はそのくらいであったのだ。井上に頼めば目をつけられる。だから憚られる。それに第一、貴族などになればろくな未来は見えぬ。
「山部、すまないな。官吏の仕事は辛くはないか」
「いいえ父上。これはこれでやりがいのあるものですよ。知己も新たに得ることができました。雄田麻呂様にも良くして頂いています」
「そ、そうか。すまぬな、頼りない父で」
山部は侍従であるから稀に宮内で出会う。けれどもそれは貴族と官吏としてだ。見かける頻度は山野にいるころよりは多くなったが、その関係はかえって微妙なものとなった。
私には井上とその子がいる。新笠との子である山部と宮中で親しくすることは、余計な争いを生みかねない。これまで井上は山部を無視していたが、山部が宮中に上がってからは疎ましいと思っていることは肌で感じていた。
けれども山部は宮中の仕事が性に合ったのか、真面目に働いているようだ。
改めて考えれば位階などを得ずただの官吏として暮らすのも悪くないと思うんだ。貴族でなければそもそも権力争いなどには巻き込まれない。殺し合うこともない。
平穏に暮らすことこそ、重要なのだ。
この宮中の血で血を洗うような兄弟親族間の殺し合い。もはや皇家と貴族のお家芸だ。少し前にも天武様のお孫の道祖王が孝謙様の皇太子としてたてられたが、孝謙様の廃位を企てた橘奈良麻呂の乱に巻き込まれた。道祖王のみならず関係者の多くが拷問によって獄死された。
けれども天武様のお血筋がご存命の限りは私は巻き込まれないだろう。そう、強く念じる。
朝毎に淳仁様のご健勝を願う。健やかであられよ。
そうでなければ……そうでないことを考えれば足元が震えてしまう。
権力争いはこりごりだ。
だから、井上との間の天武様のお血筋の子は、もうけたくない。
それだけだった。
新笠と静かに暮らしたい。あの新笠の家で。
それだけだった。
山の端が青々として雲がゆるやかに流れ、澄んだ湖面で魚が跳ねる。季節の移り変わりとともに様々な花が咲き、実をつける。そんな山野に思いを馳せる。
身分が上がるごとにその機会も減っていき、酒を飲みながら新笠との暮らしを思い過ごす日々が増えた。季節の移り変わりとともに人が死に、怨嗟の声が聞こえるこの宮中の音からは耳を塞いで。
山部はそんな私をどう思っていたのだろう。
「ああ、いいね新笠。後ほど散歩にでもいこうか」
「ええ。せっかくのお越しですもの。地の者が鮒を持ってまいりました。煮付けにさせます。夕が楽しみですね」
「ああ、そうだ、ひちらを土産に持って帰ったよ。後で食べような」
「まあ、素敵ですこと」
これが本来の私の、山野での新笠との会話だ。
「白壁様。本日はお酒を召されませんよう。大事な客人が参られますかね」
「わかった」
「本日の召し物は私の次女に命じましたので四つには必ずこの室にいらしてくださいね。迎えをよこしますから」
「わかった」
これが新しい私の、都での井上との会話だ。
井上との婚儀によって私の世界は2つに別れた。
宮中と山野の暮らし。
都の世界では私の主人は井上である。つまり私は井上の夫ではなく、井上の添え物となったのだ。だから井上は宮中でも私の主人として振る舞っている。
そして井上はまるで山部と新笠など存在しないかのように私と話す。
それが妙に恐ろしい。私の生活にとって井上こそが突然現れた異物なのにもかかわらず、それこそが正しき真実であるかのように。そうすると、新笠と私の子らこそが、この都の世界では異物なのだろう。
その頃から私の脳裏に浮かぶのは、私に万一があれば愛する新笠と子らはどうなってしまうのだということだ。昔父上が身罷られた時に感じた以上の足元の不安定さ。私には幼少の時より守るべきものが増えていた。
そして初めて父上の苦悩を実感した。
父上はきっと、私に類が及ばないよう、誰も宮中で私のことを知る者がないよう計らって頂いていたのだ。
けれども父上は想像だにしていなかったのだろう。天武様の多くのお子や孫が殺し合いの果に絶え、私にお鉢が回ってくるなど。
だが井上に子ができなければ何ら問題はない。そう、強く思い直す。
都ではあいもかわらず皇族同士が血まみれの争いを繰り広げていた。それは本流ではなく枝葉にも及んでいる。少しでも天武様の血を引いていれば殺し殺される。
けれどもそれは子がいるからこそ、天皇位が見えるからからこそ起きる争いなのだ。だから子ができなければこの争いに巻き込まれることはない。
けれども。
よく考えれば井上はすでに30だ、だから子はできないだろうと思っていた。その事実に私は酷く安心していた。
それに私の大切なものは奪われはしなかった。都にとって価値のない、取るに足らないものだったからだ。だから新笠といるとき、私は穏やかでいられた。泡沫のような穏やかな暮らしだった。いつ壊れるかよくわからないという不安は心のうちにそっと仕舞い、新笠といる時は他のことは忘れるようにした。
そう過ごすうちに、新笠との間に早良という子もできた。やはり井上との間に子はできなかった。私が愛しているのは新笠なのだからそれで問題はなかったのだ。
新笠と子らと一緒にいると時間はゆったりとすぎ、小さな庭を眺めればそこはかとない幸せを感じることができた。私は元来こういう場所で生まれ育ってきたのだ。綺羅びやかで忙しい宮はやはり妙に性に合わなかった。
次の転機。
私が45歳、井上が38歳の時に酒人内親王が生まれた。井上の懐妊を知って私は真っ青になった。胃の腑が潰れるかと思った。けれども内親王であることに大きく安堵した。やはり男子は生まれない。
なぜこんなに年をとったのに子ができたのだろう。私は政争などに関与せず、父のように自然を眺めて過ごしたかった。
雅に。
けれども酒人の出生とともに私の周りは少しずつ変わっていった。
「白壁様、おめでとうございます」
「雄田麻呂殿も叙爵おめでとうございます」
「いえ、私は未だ従五位下に過ぎません。天と地ほどの差がございます。私もそのうち追いつけるよう精進いたしましょう」
「雄田麻呂殿は未だ御年27ではありませんか。私が初めて叙爵されたのは29ですよ」
私はなぜだか突然昇進し始め、50の時に従三位となった。異例のスピードだ。長年そんな兆しはなかったのに。朗らかに祝辞を述べる雄田麻呂の言葉がなにやら薄ら寒く感じるほど。
出世というのは本来喜ばしい出来事。けれども私にとっては何やら得体のしれない未来へ続く道がごとりごとりと敷かれたがごとき気持ち悪さ。その道の先には暗闇がまっているよう、な。
その後も色々なことがあった。
聖武様が亡くなられ、井上の異母姉である阿倍様が孝謙天皇として即位された。すると、井上の存在感が家の中でどんどん増していく。私の立場はどんどん弱まり、部屋のすみに押し込まれていった。
その間にも乱が起き、粛清の嵐が吹き荒れた。宮中は争いに満ちていて、私はやはり、酒を飲んでやり過ごすしかできなかった。
女性皇太子という存在自体が皇嗣不存在を示し、乱の火種になるのだ。
だから孝謙様は譲位されて上皇となり、天武様の孫である淳仁天皇が即位された。
私の心に激震が走った。
淳仁様の母君は私の母上と同じ地方豪族の出なのである。本来は天皇にはなれないお血筋。その時、ひょっとしたらは天皇位に近しいところにいるのではないか、つまり私と私の家族が殺し合いに巻き込まれるかもしれないという恐怖がチラリと浮かんだのだ。
それはこの都の住まう魑魅に足首を掴まれたような、背筋の凍るような感触。
本来母君が皇族でなければ天皇になることはできないはずである。それでも淳仁様が天皇となられたのは、それは聖武様の血筋は安積様で既に絶え、それ以外の貴族や豪族の側室から生まれたお子や孫もこの淳仁様以外は全て死に絶えてしまったということだ。
淳仁様は天武様直系の最後のお血筋であらせられる。
けれども私などより現在の天武様直系であられる淳仁様が天皇となるのが筋だ。大丈夫、大丈夫。
淳仁様のお子が次の天皇となる。御年25歳とお若いから、他の皇族との間のお子も十分見込めるご年齢。
なに、私など井上と結婚したのは37の時分だった。そして私は十分、年を取っている。なにせ50だ。十分老齢だ。
「大丈夫だ」
そう言って飛び起きたことさえある。
何度もそう心に擦り込んだ。私が疑われるわけにはいかない。私は心の底から天皇の位を求めていない。だから万一にも疑われないよう、ますます酒に溺れた。
「私は関係がない! 皇位なぞ!」
何度そう叫んで飛び起きただろう。
1人で眠る室は暗く、すぐそばの闇に私を食い尽くそうと魑魅の類が待ち構えているとしか思えなかった。ゴォという風が吹けばびくりと心臓が波打ち、ガタリと何かが揺れれば血の気が失せて目の前が真っ暗になる。そういうときに雄田麻呂が持ち込んだ護符を握りしめ、独り夜を耐え、震えながら朝を待った。
何度も心に擦り込んで、そして心底ようやく落ち着けたのはどのくらい後だったのだろう。
政争などかかわりたくもない。皇家を継ぐのは現在の天皇により近い方から。それが道理だ。そのように悩む姿を井上に見られ、井上はしばらく不機嫌だった。
そのころには息子の山部は貴族としてではなくただの官吏として働くようになっていた。大学寮の官吏や侍従として任官していた。
井上ならともかく私に用意できる仕事はそのくらいであったのだ。井上に頼めば目をつけられる。だから憚られる。それに第一、貴族などになればろくな未来は見えぬ。
「山部、すまないな。官吏の仕事は辛くはないか」
「いいえ父上。これはこれでやりがいのあるものですよ。知己も新たに得ることができました。雄田麻呂様にも良くして頂いています」
「そ、そうか。すまぬな、頼りない父で」
山部は侍従であるから稀に宮内で出会う。けれどもそれは貴族と官吏としてだ。見かける頻度は山野にいるころよりは多くなったが、その関係はかえって微妙なものとなった。
私には井上とその子がいる。新笠との子である山部と宮中で親しくすることは、余計な争いを生みかねない。これまで井上は山部を無視していたが、山部が宮中に上がってからは疎ましいと思っていることは肌で感じていた。
けれども山部は宮中の仕事が性に合ったのか、真面目に働いているようだ。
改めて考えれば位階などを得ずただの官吏として暮らすのも悪くないと思うんだ。貴族でなければそもそも権力争いなどには巻き込まれない。殺し合うこともない。
平穏に暮らすことこそ、重要なのだ。
この宮中の血で血を洗うような兄弟親族間の殺し合い。もはや皇家と貴族のお家芸だ。少し前にも天武様のお孫の道祖王が孝謙様の皇太子としてたてられたが、孝謙様の廃位を企てた橘奈良麻呂の乱に巻き込まれた。道祖王のみならず関係者の多くが拷問によって獄死された。
けれども天武様のお血筋がご存命の限りは私は巻き込まれないだろう。そう、強く念じる。
朝毎に淳仁様のご健勝を願う。健やかであられよ。
そうでなければ……そうでないことを考えれば足元が震えてしまう。
権力争いはこりごりだ。
だから、井上との間の天武様のお血筋の子は、もうけたくない。
それだけだった。
新笠と静かに暮らしたい。あの新笠の家で。
それだけだった。
山の端が青々として雲がゆるやかに流れ、澄んだ湖面で魚が跳ねる。季節の移り変わりとともに様々な花が咲き、実をつける。そんな山野に思いを馳せる。
身分が上がるごとにその機会も減っていき、酒を飲みながら新笠との暮らしを思い過ごす日々が増えた。季節の移り変わりとともに人が死に、怨嗟の声が聞こえるこの宮中の音からは耳を塞いで。
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