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4.体を重ねるほど、遠く感じるのは何故だろう。
行為というのは好きの最後にあるんじゃないのかな。 E
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ん、ふ、ぅ、あっ、く、ぁふ、んん、ああ゛っ
俺の中で片桐さんが動くたびに俺の口から勝手に音が漏れる。片桐さんはそんな俺を満足そうに眺めている。腰骨に片桐さんの指が引っ掛けられていて、俺の意思では体はほとんど動かない。その指は華奢な見た目に反して結構力強く俺の腰を掴んで引き寄せて打ち付ける。じわじわと確かめるように、くっついては離れるたびに中が擦れてねたねたくちくちと液体の混ざる音がする。
気持ちいいところに当たって俺の口から一際大きい音が漏れて、それを確かめるようにまたさらに突き上げられる。もう頭は全然働かない。
「啓介、気持ちよさそうですね」
「ん、あアぅ、き、もち、んん、い、ぅ」
意識を保とうと噛み締めた俺の唇のはしからふっふっと連続的に滲み出る息の合間に何とか返事をするとさらに抽挿の速さが増して思わず我慢していた唇が大きく開いて漏れる息が増える。俺の中、中を、は、ぁ、んぅ。好き。片桐さん、好き、で、す。頭がクラクラする。全身に腰を中心にふわふわと快感が広がり、止まらない。
「啓介、たくさんイって下さいね」
「ん、も、はっ、だ、め、ぁ」
「ふふ、かわいい。私の啓介」
だめ、このイき方は。
また何がなんだかわからなくなってしまう。逃れようと、体を動かそうとしたけど薬で体がうまく動かない。拒否できない。熱が、逃げない。体にこもる。その熱を解消させるのは片桐さんの先端だけ。欲しい。もっと。奥を、突いて。
ハ、ぁ、うふ、んぁ、っく、イっ
駄目、だ、また頭がおかしくなる。片桐さんの指が俺の体に触れる。俺の中の何かのスイッチを押すように首筋、鎖骨、胸骨、臍、脇腹、触れられたところが熱くなって波紋のように気持ち良さが身体中に広がっていってその波紋は俺の体の中でぶつかって泡のように弾けて、そこからまた新しい気持ち良さが溢れて、気持ち良すぎて、俺が俺でなくなるようで。
ふ、ぅん、ぁ
「すごく気持ちよさそう。よかった。かわいい」
そう言葉が重なるほどに体は無意識にびくりと震え、その度になんだか気持ちよさが溢れて。視界がにじむ。
ぐちゃぐちゃに絡みあった、中に、片桐さん、が、ぅぁ。でも、片桐さんは、どこ。頬に片桐さんの右手が添えられる。唯一動く頭を手のひらに擦り付けてその指に舌を必死に這わせると、俺の中を突き上げる片桐さんがまた少し大きくなる。片桐さん助けて。苦しい。
もっと。怖い。でももっと欲しい。不安定に怖がる頭と違うところで沸き起こる片桐さんの体を求めるどこか動物的な本能との板挟みで頭がぐらぐらする。でも、これが終わらないのも知っている。いつも怖い。このまま長い時間を責められて、気がついたら気絶してて、朝起きる。それが最近の毎日の繰り返し。
プライベートは、なかった。
ふ、ぅ、あっア゛、ィ、ふ、んん
口の中にそっと細長い指が入ってきて舌を押さえる。ふ、ん。少しの息苦しさと圧迫感。指の腹で舌は動かないけど、なんとか舌先でその指を舐める。片、桐、さ、ん。好、き。好き。片桐さん、に、伝わる?
声にならない嬌声の中に微かに淡く意味を混ぜる。普通は聞き取れるレベルじゃないほど微かな。
「私も大好きです、啓介。嬉しい」
でも片桐さんはそれはちゃんと聞き取ってくれる。それは何だか嬉しい。好き。でも、舌先で感じる愛しい片桐さんと体を突き上げる快楽が頭の中でなんだかうまく繋がらなくなってきた。
体と、心が、ばらばら。好きと、気持ちいい、は、違う。
「もっと、気持ちよくなって」
その言葉とともに再び指は離れて腰を掴んで力強くより奥深くに押し込まれ、その振動で一瞬息が詰まって、そのあと俺の中を快感がまたぐるぐると掻き回す。
ひぁっ
だぁ、ぃ、す……も、ち、ぃ。気持ちいいが俺の心を消していく。好き、という、気持ちが、どこかに、いかないで。
もう、頭も、体のどこにも力なんて入らない。深い海の底にゆっくり引きずり込まれるような気持ちよさに意識がばらばらになっていく。何も考えられなくて、そろそろ好きという言葉の意味もよくわからなくなってきて、意識自体が空気に溶けて拡散して、吐息の間にぱくぱく声にならないつぶやきを上げながら俺の中で暴れるひどい快感に流され酔いしれる。びくびくと振動しつづける身体。
「啓介? 気持ちいい? そろそろ聞こえない? 本当にかわいい。まだ私のもの」
ん、ぅぁ か、た、、り……さ、ん
◇◇◇
「あの、薬飲まないと駄目ですか?」
明るいカフェのテラス席で尋ねるには不適切な話題だと思う。
でも、他に聞くタイミングがない。
ベッドの中で聞くのはもう無理だ。体はもう片桐さんに抵抗できない。キスだけで、なんだか頭がぼんやりしてきてしまうから。気持ちよさに期待して。
プラトニックが欲しい。切実に。心が、心の居場所がない。体が動かないと好きにされてしまう。せめて薬を飲まなければ俺も何かできるかも。もっと俺から抱きしめたり、せめてそのくらい、したい。駄目かな。片桐さんを好きという気持ちを手放したくない。
青々しく光る観葉植物とその向こうの歩道の雑踏を少し遠くに感じる。カフェテラスの空間は、なんだか光で区切りとられた個室のようだ。無意識にプライベートでプラトニックな繋がりを求めている、気がする。2人で話をしたりする時間。片桐さんと触れ合いたい、心が。体じゃなくて。
駄目、なのかな。そういうのは求められてはいないんだろうか。そう思うとなんだか急に居心地が悪くなって、少し残ったサンドウィッチとセットのコーヒーに目をやった。
「嫌ですか?」
「嫌、というわけではないのですが、もう少し話をする時間が欲しいんです」
「どんな?」
どんな。何か理由がないと、だめかな。
「その、お互いの、……ことじゃなくても何か、何か間に欲しいというか」
お互い、という単語に片桐さんの指先がピクリと震えた。片桐さんはなんとなく自分の話をしたがらないのは感じている。片桐さんのことは気にはなるけど、嫌なら無理に聞こうとは思わない。それより現在を積み重ねたい。体じゃなくて心を。
「何か、ですか」
「その、体の関係だけじゃなくて、好きなものとか教えて欲しいんです」
「……好きなのは啓介だけです」
片桐さんの指先が何故だか不安そうに俺の指先に触れる。少しだけ小さく。
好きと言われるのはとても嬉しいんだけど、今はそういう意味ではなくて。
もっと、普通の。普通に片桐さんのことが知りたい。
何か、取っ掛かりが。心が引っかかることができるような。
この片桐さんの指先に触れているように。
「好きな食べ物とか、好きな動物とか」
片桐さんは困惑の表情を浮かべる。
「駄目ですか? 教えたくないのなら無理に聞こうとは思わないのですが」
「駄目といいますか、これといって特には」
何か、片桐さんと俺の間にものすごく分厚い壁を感じる。
この壁はなんだ。
「片桐さんが大好きなので、ただ2人で色々話をしたり恋人みたいな、そういうことをしたいんです」
「そうですか。恋人みたいなこと。では少し調べてみますね」
違う。
片桐さんは優しく微笑むけど、調べるとかそういうことではなくて。それからこれは俺からのお願いというわけではなくて。ただ、普通に話をして、触れて、くっついていたいだけなのだけど。どうしたら伝わるんだろう。それとも俺がおかしいのかな。
「いえ、大丈夫です。少なくとも、調べて欲しくはないですから。調べないでください。『お願い』します」
「そうですか?」
そう、調べて、そういうものだとか、形が決められたものに押し込んで、何かの作業にしたくはない。
心が行ったり来たり出来る場所がほしい。
「うん、あの、では、今晩は片桐さんに薬を飲んでもらってもいいですか?」
「私が?」
「そう。あの、服を脱がしたりはしませんから。挿れたりも」
「それは……構わないですが。どうしたらいいのでしょう?」
困った声。
どうもしなくていい。
何もしない時間を、俺にください。
片桐さんの時間を。
お願い。
俺の中で片桐さんが動くたびに俺の口から勝手に音が漏れる。片桐さんはそんな俺を満足そうに眺めている。腰骨に片桐さんの指が引っ掛けられていて、俺の意思では体はほとんど動かない。その指は華奢な見た目に反して結構力強く俺の腰を掴んで引き寄せて打ち付ける。じわじわと確かめるように、くっついては離れるたびに中が擦れてねたねたくちくちと液体の混ざる音がする。
気持ちいいところに当たって俺の口から一際大きい音が漏れて、それを確かめるようにまたさらに突き上げられる。もう頭は全然働かない。
「啓介、気持ちよさそうですね」
「ん、あアぅ、き、もち、んん、い、ぅ」
意識を保とうと噛み締めた俺の唇のはしからふっふっと連続的に滲み出る息の合間に何とか返事をするとさらに抽挿の速さが増して思わず我慢していた唇が大きく開いて漏れる息が増える。俺の中、中を、は、ぁ、んぅ。好き。片桐さん、好き、で、す。頭がクラクラする。全身に腰を中心にふわふわと快感が広がり、止まらない。
「啓介、たくさんイって下さいね」
「ん、も、はっ、だ、め、ぁ」
「ふふ、かわいい。私の啓介」
だめ、このイき方は。
また何がなんだかわからなくなってしまう。逃れようと、体を動かそうとしたけど薬で体がうまく動かない。拒否できない。熱が、逃げない。体にこもる。その熱を解消させるのは片桐さんの先端だけ。欲しい。もっと。奥を、突いて。
ハ、ぁ、うふ、んぁ、っく、イっ
駄目、だ、また頭がおかしくなる。片桐さんの指が俺の体に触れる。俺の中の何かのスイッチを押すように首筋、鎖骨、胸骨、臍、脇腹、触れられたところが熱くなって波紋のように気持ち良さが身体中に広がっていってその波紋は俺の体の中でぶつかって泡のように弾けて、そこからまた新しい気持ち良さが溢れて、気持ち良すぎて、俺が俺でなくなるようで。
ふ、ぅん、ぁ
「すごく気持ちよさそう。よかった。かわいい」
そう言葉が重なるほどに体は無意識にびくりと震え、その度になんだか気持ちよさが溢れて。視界がにじむ。
ぐちゃぐちゃに絡みあった、中に、片桐さん、が、ぅぁ。でも、片桐さんは、どこ。頬に片桐さんの右手が添えられる。唯一動く頭を手のひらに擦り付けてその指に舌を必死に這わせると、俺の中を突き上げる片桐さんがまた少し大きくなる。片桐さん助けて。苦しい。
もっと。怖い。でももっと欲しい。不安定に怖がる頭と違うところで沸き起こる片桐さんの体を求めるどこか動物的な本能との板挟みで頭がぐらぐらする。でも、これが終わらないのも知っている。いつも怖い。このまま長い時間を責められて、気がついたら気絶してて、朝起きる。それが最近の毎日の繰り返し。
プライベートは、なかった。
ふ、ぅ、あっア゛、ィ、ふ、んん
口の中にそっと細長い指が入ってきて舌を押さえる。ふ、ん。少しの息苦しさと圧迫感。指の腹で舌は動かないけど、なんとか舌先でその指を舐める。片、桐、さ、ん。好、き。好き。片桐さん、に、伝わる?
声にならない嬌声の中に微かに淡く意味を混ぜる。普通は聞き取れるレベルじゃないほど微かな。
「私も大好きです、啓介。嬉しい」
でも片桐さんはそれはちゃんと聞き取ってくれる。それは何だか嬉しい。好き。でも、舌先で感じる愛しい片桐さんと体を突き上げる快楽が頭の中でなんだかうまく繋がらなくなってきた。
体と、心が、ばらばら。好きと、気持ちいい、は、違う。
「もっと、気持ちよくなって」
その言葉とともに再び指は離れて腰を掴んで力強くより奥深くに押し込まれ、その振動で一瞬息が詰まって、そのあと俺の中を快感がまたぐるぐると掻き回す。
ひぁっ
だぁ、ぃ、す……も、ち、ぃ。気持ちいいが俺の心を消していく。好き、という、気持ちが、どこかに、いかないで。
もう、頭も、体のどこにも力なんて入らない。深い海の底にゆっくり引きずり込まれるような気持ちよさに意識がばらばらになっていく。何も考えられなくて、そろそろ好きという言葉の意味もよくわからなくなってきて、意識自体が空気に溶けて拡散して、吐息の間にぱくぱく声にならないつぶやきを上げながら俺の中で暴れるひどい快感に流され酔いしれる。びくびくと振動しつづける身体。
「啓介? 気持ちいい? そろそろ聞こえない? 本当にかわいい。まだ私のもの」
ん、ぅぁ か、た、、り……さ、ん
◇◇◇
「あの、薬飲まないと駄目ですか?」
明るいカフェのテラス席で尋ねるには不適切な話題だと思う。
でも、他に聞くタイミングがない。
ベッドの中で聞くのはもう無理だ。体はもう片桐さんに抵抗できない。キスだけで、なんだか頭がぼんやりしてきてしまうから。気持ちよさに期待して。
プラトニックが欲しい。切実に。心が、心の居場所がない。体が動かないと好きにされてしまう。せめて薬を飲まなければ俺も何かできるかも。もっと俺から抱きしめたり、せめてそのくらい、したい。駄目かな。片桐さんを好きという気持ちを手放したくない。
青々しく光る観葉植物とその向こうの歩道の雑踏を少し遠くに感じる。カフェテラスの空間は、なんだか光で区切りとられた個室のようだ。無意識にプライベートでプラトニックな繋がりを求めている、気がする。2人で話をしたりする時間。片桐さんと触れ合いたい、心が。体じゃなくて。
駄目、なのかな。そういうのは求められてはいないんだろうか。そう思うとなんだか急に居心地が悪くなって、少し残ったサンドウィッチとセットのコーヒーに目をやった。
「嫌ですか?」
「嫌、というわけではないのですが、もう少し話をする時間が欲しいんです」
「どんな?」
どんな。何か理由がないと、だめかな。
「その、お互いの、……ことじゃなくても何か、何か間に欲しいというか」
お互い、という単語に片桐さんの指先がピクリと震えた。片桐さんはなんとなく自分の話をしたがらないのは感じている。片桐さんのことは気にはなるけど、嫌なら無理に聞こうとは思わない。それより現在を積み重ねたい。体じゃなくて心を。
「何か、ですか」
「その、体の関係だけじゃなくて、好きなものとか教えて欲しいんです」
「……好きなのは啓介だけです」
片桐さんの指先が何故だか不安そうに俺の指先に触れる。少しだけ小さく。
好きと言われるのはとても嬉しいんだけど、今はそういう意味ではなくて。
もっと、普通の。普通に片桐さんのことが知りたい。
何か、取っ掛かりが。心が引っかかることができるような。
この片桐さんの指先に触れているように。
「好きな食べ物とか、好きな動物とか」
片桐さんは困惑の表情を浮かべる。
「駄目ですか? 教えたくないのなら無理に聞こうとは思わないのですが」
「駄目といいますか、これといって特には」
何か、片桐さんと俺の間にものすごく分厚い壁を感じる。
この壁はなんだ。
「片桐さんが大好きなので、ただ2人で色々話をしたり恋人みたいな、そういうことをしたいんです」
「そうですか。恋人みたいなこと。では少し調べてみますね」
違う。
片桐さんは優しく微笑むけど、調べるとかそういうことではなくて。それからこれは俺からのお願いというわけではなくて。ただ、普通に話をして、触れて、くっついていたいだけなのだけど。どうしたら伝わるんだろう。それとも俺がおかしいのかな。
「いえ、大丈夫です。少なくとも、調べて欲しくはないですから。調べないでください。『お願い』します」
「そうですか?」
そう、調べて、そういうものだとか、形が決められたものに押し込んで、何かの作業にしたくはない。
心が行ったり来たり出来る場所がほしい。
「うん、あの、では、今晩は片桐さんに薬を飲んでもらってもいいですか?」
「私が?」
「そう。あの、服を脱がしたりはしませんから。挿れたりも」
「それは……構わないですが。どうしたらいいのでしょう?」
困った声。
どうもしなくていい。
何もしない時間を、俺にください。
片桐さんの時間を。
お願い。
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