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後日談 すばる視点
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清が傍らにいる。
以前と変わりなく。
その事実に実感が湧かなくて、俺は幾度も清を見つめ、触れ、確認する。
「なんだよ? すばる。そんな顔して」
「ヘ? そんなって、どんな?」
俺はリビングのソファに座り、傍らで新聞に目を通していた清を見返す。
今日は土曜日。清も休みで、俺も休み。
というか俺の方はコウに無理を言って、同じ日を休みにしてもらっているのだ。
そう。俺は今、コウの経営するカフェの手伝いをしている。コーヒーが美味しいという評判の店だ。
そこには時々、マナやアキも遊びに来て。清もそこへ顔を出せば、一気に以前の活気に満ち溢れ。楽しい時間が過ぎていく。
そんな日々を送っていた。
後は写真を時々、撮っていて。
撮るのは身近な風景ばかりで、今の所、趣味の範囲だ。でも、撮っていてとても楽しい。
俺だけが見た風景が、そこに切り取られているのだから。
撮った中でイチオシは清だけれど、これは誰にも見せるつもりはない。
俺だけの、宝物。
清は本を読むときだけかけるメガネを外しながら、苦笑した。
「豆鉄砲食らったハトみたい…」
肩を揺らして笑い出す。俺もつられて笑いだした。
「だって仕方無いだろ? 清が隣にいるって実感が湧かなくてさ」
すると、清はひとしきり笑い終えたあと、俺の頬へ手を添え。
「実感なら、幾らだって湧かさせてあげるけど?」
「…んだよ。それ」
意図を知って頬が熱くなる。
「もういいって言っても止めない奴をね…」
言い終わらないうちに、唇にキスが落とされる。それはチュっと音を立て、離れて行った。
「うわ…、すばる、凄いエッチな顔してるって」
「はぁ? なに、言って──」
「かわいい…。っとに、すばる。それって自業自得だからな?」
「わけわかんね」
清のすらりとした長い腕が、俺の肩から背へと回される。
歳を重ねた分、清の容姿は更に艶を増した。迫力があると言ってもいい。
そんな清に迫られて、否と言える者がいるだろうか。
清は俺のことをかわいいと言うけれど、それは恋人の欲目で。
清のことは誰が見ても、その優れた容姿を文句なしで認めるだろう。動く絵画だと思っている。
「あ~、まだ朝だってのに」
言いながら抱きしめていた俺の身体をソファへと押し倒す。
「今日、出掛けるんじゃないのか?」
「う~ん。だったけど、急ぎじゃ無いし、明日でもいいし…」
言いながら、来ていたスウェットを煽る様にして脱ぎ捨て、俺のシャツのボタンも外しにかかる。
出掛ける予定で整えたはずの髪が乱れてしまっていた。
「清、ぐだぐだ」
笑うと、清はムッとした表情になり。
「全部、すばるのせいだからな?」
「って、なに──」
ガブリと噛みつくようにキスしてくる。
あ、これって本気のヤツだ。
ざわりと肌が粟立つ。
今日はもう、このままここで過ごすのだろう。
キスの合間、清の頬に指先を滑らせながら。
「俺…、ぐだぐだの清も嫌いじゃない」
「……っとに」
クシャリと、前髪をかき上げたあと、
「自業自得、だからな? ちゃんと実感させてやるから…」
ソファの上で、清は再度そう宣言すると、俺にじっくり触れてった。
今日も清で満たされる。そんな一日の始まりだった。
―了―
以前と変わりなく。
その事実に実感が湧かなくて、俺は幾度も清を見つめ、触れ、確認する。
「なんだよ? すばる。そんな顔して」
「ヘ? そんなって、どんな?」
俺はリビングのソファに座り、傍らで新聞に目を通していた清を見返す。
今日は土曜日。清も休みで、俺も休み。
というか俺の方はコウに無理を言って、同じ日を休みにしてもらっているのだ。
そう。俺は今、コウの経営するカフェの手伝いをしている。コーヒーが美味しいという評判の店だ。
そこには時々、マナやアキも遊びに来て。清もそこへ顔を出せば、一気に以前の活気に満ち溢れ。楽しい時間が過ぎていく。
そんな日々を送っていた。
後は写真を時々、撮っていて。
撮るのは身近な風景ばかりで、今の所、趣味の範囲だ。でも、撮っていてとても楽しい。
俺だけが見た風景が、そこに切り取られているのだから。
撮った中でイチオシは清だけれど、これは誰にも見せるつもりはない。
俺だけの、宝物。
清は本を読むときだけかけるメガネを外しながら、苦笑した。
「豆鉄砲食らったハトみたい…」
肩を揺らして笑い出す。俺もつられて笑いだした。
「だって仕方無いだろ? 清が隣にいるって実感が湧かなくてさ」
すると、清はひとしきり笑い終えたあと、俺の頬へ手を添え。
「実感なら、幾らだって湧かさせてあげるけど?」
「…んだよ。それ」
意図を知って頬が熱くなる。
「もういいって言っても止めない奴をね…」
言い終わらないうちに、唇にキスが落とされる。それはチュっと音を立て、離れて行った。
「うわ…、すばる、凄いエッチな顔してるって」
「はぁ? なに、言って──」
「かわいい…。っとに、すばる。それって自業自得だからな?」
「わけわかんね」
清のすらりとした長い腕が、俺の肩から背へと回される。
歳を重ねた分、清の容姿は更に艶を増した。迫力があると言ってもいい。
そんな清に迫られて、否と言える者がいるだろうか。
清は俺のことをかわいいと言うけれど、それは恋人の欲目で。
清のことは誰が見ても、その優れた容姿を文句なしで認めるだろう。動く絵画だと思っている。
「あ~、まだ朝だってのに」
言いながら抱きしめていた俺の身体をソファへと押し倒す。
「今日、出掛けるんじゃないのか?」
「う~ん。だったけど、急ぎじゃ無いし、明日でもいいし…」
言いながら、来ていたスウェットを煽る様にして脱ぎ捨て、俺のシャツのボタンも外しにかかる。
出掛ける予定で整えたはずの髪が乱れてしまっていた。
「清、ぐだぐだ」
笑うと、清はムッとした表情になり。
「全部、すばるのせいだからな?」
「って、なに──」
ガブリと噛みつくようにキスしてくる。
あ、これって本気のヤツだ。
ざわりと肌が粟立つ。
今日はもう、このままここで過ごすのだろう。
キスの合間、清の頬に指先を滑らせながら。
「俺…、ぐだぐだの清も嫌いじゃない」
「……っとに」
クシャリと、前髪をかき上げたあと、
「自業自得、だからな? ちゃんと実感させてやるから…」
ソファの上で、清は再度そう宣言すると、俺にじっくり触れてった。
今日も清で満たされる。そんな一日の始まりだった。
―了―
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