空のむこう

マン太

文字の大きさ
上 下
11 / 13

後日談 その後

しおりを挟む
 すばるはその後、両親とも涙の再開を果たした。
 俺はコウのあの家を正式に買い取って、すばると二人の生活を始め。
 何もかもが新鮮で、光に満ちていて。
 この手にすばるが帰って来た事が、今だに信じられずにいた。
 それをそのまま、すばるに伝える。
「だって、死んだって思ってたんだから」
「それは…ごめん」
 すばるはベッドの上、俺の腕の中で小さく縮こまる様にして見せた。
 細く引き締まった身体は、すっかり日焼けしている。すばるを助けた『じいちゃん』を手伝って、ずっと漁船で海に出ていたと言う。
「すばる。潮の香りがする…」
 くんと鼻先をその首筋へ埋め、匂いを吸い込む。
「くすぐったいっ。なんか、犬みたいだって」
「いいだろ? 全部、ちゃんと覚えとかないと…」
「それに、俺シャワー浴びてるから潮の香りなんて──」
「するんだ。海、抱いてるみたい…」
「んだよ。それ」
 照れたすばるの声。ぎゅっと抱きしめ、キスを落とした。
 耳や耳の後ろ、首筋に鎖骨。
 順々に辿って行く。既に一度ならず事は済んでいたのだが、一旦、始まると止められなくなる。
 紅い痕が散るそこかしこに、当分水着だけにはなれないだろうな? と思った。
「な。もう、一回。…いい?」
「いいよ。何度だって」
 照れ臭そうに笑うすばるに、ドキンと胸が高鳴る。
 因みにまだ朝の十時過ぎ。
 朝食だって食べてない。今日はもう、このまま、ダラダラとすばるとベッドで過ごすのだと思う。
 
 なんて、幸せな時間だろう。

 すばるの了解を得た俺は、またその身体に、熱に溺れて行く。
 一つ、一つ。その反応を確かめながら、胸に刻んで行った。

 俺だけの、すばる。
 

 ―了―
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

キミの次に愛してる

Motoki
BL
社会人×高校生。 たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。 裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。 姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

太陽を追いかける月のように

あらんすみし
BL
僕は、ある匿名SNSでフォロワーのFの死を知る。 僕がそのSNSを始めたとき、Fは職場の後輩との恋について幸せな投稿を綴っていて、僕はそれを楽しみに、羨ましく思っていた。 だが、そんな2人にも別れが訪れて、次第にFの投稿はたまに辛い心情を綴ったものばかりになる。 そして、その年の春の訪れと共にFの投稿は途絶えた。 日々の忙しなさに忙殺されていた僕が、Fの死を知ったのは夏も終わりに近づいたある日の別のフォロワーの投稿だった。 Fと親しくしていたそのフォロワーの報告で、Fのあとを追うように後輩君も亡くなったという。 2人に何が起きたのか、僕はその軌跡を辿ってみることにする。

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

チョコは告白じゃありませんでした

佐倉真稀
BL
俺は片桐哲哉。大学生で20歳の恋人いない歴が年齢の男だ。寂しくバレンタインデ―にチョコの販売をしていた俺は売れ残りのチョコを買った。たまたま知り合ったイケメンにそのチョコをプレゼントして…。 残念美人と残念イケメンの恋の話。 他サイトにも掲載。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

処理中です...