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第3章 仲間
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しおりを挟むアレクがスカウト。
それはそうだろう。
二年もの間、音信不通だったものをずっと待つはずがない。
今も数人はいるのだ。他にも有能な能力者はいたはず。声をかけていてもなんら不思議はなかった。
胸元のネックレスがその存在を伝えてきたが、今はそれを無視した。石を託されたからと言って、自分だけが特別ではないのだ。
初めてアレクに触れられたあの日。返すと言うと固辞された。君が持っているから意味がある、と。貴重な石を自分に託すのは、好いているからなのだと言外に語っていた。
しかし、今。
やはりアレクのその思いを素直に受け取れない自分がいる。アレクの言葉に偽りはないのだと思う。けれど、『好き』には『君の能力が』と付け加えられる。
能力がなければ、ただのその辺の子どもと一緒。
きっと、俺がいなくなればまた──。
次を見つけるのだろう。
それでも、俺はアレクの為に命を張れる。
アレクこそが特別なのだから。
自室でスーツを脱ぎ、シャワーを浴びる。
流石にアレクと同室ではと、ユラナスがすぐに隊員用の部屋を一室あてがってくれた。
と、言うより、アレクと同室で過ごさせるなど許せなかったのだろう。
寝るだけとあって決して広くはないが、連合時と同等か、もう少しいい環境で。過ごすには十分だった。
小さなキッチンもある。冷蔵設備も備え付けられていた。簡単なものなら作ることもできる。何にしても辺境の星のボロ小屋で過ごした日々を思えば、贅沢だと思えた。
スーツの耐熱耐寒は言うまでもなく、通気性や速乾性に優れていたが、やはり一戦終えれば着心地は悪くなる。
汗を含んだスーツは指定の場所へ出しておけば、綺麗にクリーニングされ部屋に送り届けられた。
その白いスーツの側面には赤いラインとシルバーのラインが入っている。他の隊員はダークグレーに赤と白のライン。
なぜ、自分だけ白なのかと思ったが、どうやらすぐにサイズの間に合うのがそれだったというだけらしい。
シルバーはアレクの標。他の隊員にそれはなかった。そこにアレクの特別な思いが読み取れる。
戦闘用のスーツに籠められた思い。それを見ただけでも、アレクが自分に求めるのはこの能力なのだと思い知らされた。自分の前にいたと言う能力者。
彼も今の自分の様に重用されていたのだろうか。
好きだと言ったアレクの声音が蘇る。その告白も抱いたのも、自分を引き止める為の行為。そう考えるのがやはり妥当だ。
真に受けるなんて、どうかしている。
ラスターの言う通り、代わりはいくらでもいるのだ。アレクとの出会いはまるでシンデレラストーリー。幼い頃、読んだ絵本の寓話のひとつ。日の差さない場所から、一気に光の当たる場所へと導いてくれた。
例えこの能力だけを求められているのだとしても、そんなアレクを拒むことはできない。今のソルには彼だけが自分の中心で。
あの時。敵に襲われそうだったアレク。彼を失いたくはない。その一心で敵機を撃ち落とした。
ソルにとってアレクは光そのものだ。初めて見た時から、ずっと惹かれていたのだと思う。
キスもそれ以上の行為も。
いくら痛みを伴ったとしても嫌ではなかった。彼が与えるものなら全て受け入れる。その覚悟がある。たとえ誰かの代わりだったとしても、役にたてると言うなら本望だった。
俺は──アレクを、好いているのだから。
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