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異世界転生して♡
しおりを挟む「異世界転生して♡」
「は?」
転生した。
死んで気がついたら目の前に薄青い透明な板があり、パソコンで入力するように文字が表示された。
それが上記の一文であり、気がついたら転生していた。
詳細に語ってみよう。
俺は志貴黒右之助。17歳。
その日は学校サボって街中をあてもなく彷徨っていた。
そして突然に街中で不良共に襲われた。これはいい。よくある。
だが突然に対峙してる最中に頭へ衝撃が走った。不意打ち食らったと思ったが違った。
倒れて動かぬ体。横にゴロリと転がる血塗れのタマネギ。
視界で光る大量のナニカ。
空を眼球移動のみで見上げれば、流星群の如く光の尾を引いて降ってくる大量のタマネギ。
俺は避けることも出来ず、死んだ。
良くない。これは良くない。
そして次も良くなかった。
死んだと認識した後に僅かにいたあの空間は、目に見える範囲全てが白い空間だった。
そして目の前で文字が浮かび、次瞬で見知らぬ土地に俺は立っていた。
白い空間から見知らぬ土地まで、僅か三秒程の出来事だった。
ちょっと意味が分からない。
詳細を語ってみたが意味が分からない。
なんで死んだ後の重要そうな部分が全体の三分の一以下なんだ。
つーか死因がタマネギってなに?
タマネギ降ってくる普通?
なんかさぁ、かっこ良く不良共と対峙してたんだよ本当はさぁ。
いやさ自分で言うのも可笑しいけど、心の中だけでも語っちゃうような雰囲気だったのよー。
「今日こそはブッコロしてやるぜ志貴ぃ」
「何度も同じ冗句披露して楽しいか村雨ぇ」
みたいな? みたいな?
それが謎の砲弾(タマネギ)開幕ブッパで?
俺が謎の砲弾(タマネギ)に殺されて?
謎の空間行けば三秒で異世界転生して?
ふざけろォ!!
いややっぱ今のなし。
ふざけた結果が今だからね、駄目だね。これ以上ふざけたらね。
よし……。
ふざけるなッ!!
タマネギ? この俺がッ! タマネギで死亡だとッ!? 何処の誰だか知らねぇが舐めた真似しやがって!
その上なんだ! あの白い空間! 明らかに重要な転換点だったろうが!
今から日常とはお別れです。非日常が始まるのです。的な!!?
異世界転生って今はもう流行り過ぎて飽きられたけど皆まだ読んでる系のアレだろ!
俺にもちょっとくらい主人公っぽいことやらせろぉ!
巨乳美人な女神、出てこーい!
威厳ある老人の神、出てこーい!
そして俺の願いを一つ叶えて異世界送りってとこまでがテンプレの筈だろ!?
神様ぁ! 俺にギャルのパンティおくれーっ!
いや違うそうじゃない。
危ねぇぜ。思わず意識が飛んでたな。
まぁ精神平常に戻ったし結果オーライ。
俺はやっと現実に戻った。
そして辺りを見渡せば、平原とその奥に森。
平原には城郭都市が見える。城壁で囲った街だ。どうやら森の手前にある。
ここからなら早歩きで数十分くらいか。
そして最後に、視界の端にずっとあった白い何かへ視線を向ける。
なんか嫌な予感がすんだよなぁ。
視界の端。俺の足元に置かれているのは白い箱だった。
くじ引きと同じ、手を突っ込めるが中は見えない作り。
箱には一枚でかでかと紙が貼り付けてある。
何か書かれているようだ。
気乗りしないが見なきゃならねぇか……。
そして俺は、紙を手に取った。
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