推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね

文字の大きさ
234 / 263
温泉と故郷と泣き叫ぶ豆

あなたをさがして 1

しおりを挟む
 ちょっと準備があるというロブさんに先に家を出ることを告げて外に出てきました。
 外は当たり前のように真っ暗なので魔法の明かりを用意します。あーちゃんも微発光してますが、足元までは確認できるほどではありません。
 念のため、家の周りに変なものがないかは確認しておきます。マルティナさんが外出しているとは考えにくいですが、子供が変なところに行くことはありますからね。
 そうやって動いているあたしの後ろをふよふよとあーちゃんはついてきているわけですが、急に目の前にやってきました。

「置いていかないの?」

「ロブさんですか? 変な死亡フラグ立ちそうなので連れていきますよ」

 あーちゃんは何か言いたげでしたけど、ここで単独行動とられるのも困りますし。なにかあったときに色々面倒そうなんですよ。

「周囲に異変はなさげですね。やっぱりマルティナさんとお子様一名もなんかあった系ですか」

「巻き込まれたのか当事者かわかんないね」

「そうですね……。さて、どっちにいますかね?」

 気を取り直して、エリックがいそうな場所を確認しておきます。
 ちゃんと機能しているようで、反応がありました。おそらく町のほうでしょう。

「あっちですね。微妙に動いているみたいなので、どこかに放棄されたってこともなさそうです」

「よかったけど、GPS付ける奥さんとかどうなの」

「あたしもついてますが」

「どっちもおかしいからいいのかしら」

 その暴言、否定しにくいんですよね……。用意してきたのエリックですし。しかも、上手くできたらしくご機嫌でした。
 軽くスルーすることにして、扉を見ていたらすぐにロブさんが出てきました。なぜかぎょっとしたように半歩下がられましたけど。

「行きますよ。時間の勝負とまではいきませんけど、時間経過で悪化する可能性があります」

「わかった」

 ロブさんが短く答えてついてきてくれるのは、軍人だからですかね。面倒な説明がなくて結構なことですが、ある程度の説明はこちらから振らねばないという問題が。
 正直、あたしも事態を把握してないですし、どこから言ったものか……。
 そんなことを考えながら歩いていたら。

「置いていくと言われるかと思った」

 ぼそりとロブさんに呟かれてしまいました。

「騒がれると面倒ですし、子供とマルティナさんを確保したあとの安全を守っていただきたいのですよ」

「それは確保するが、なにがどうなってるんだ?」

「よくわからないのについてくるっていいましたね」

 しかもロブさんもがっちり武装しております。荒事になるの確実と予想してないとしませんよ。それにしても長剣二本持ちですか、中々多才のようでとうっかり観察してしまいました。

「マルティナもいないし、魔導師もいない、そのうえ、来訪者がこそこそ出かけていくなんて不審の極みだろ」

 あたしはその指摘に肩をすくめました。もっともな話です。あたしとしては寝起きでそこまで冷静に確認できるというのが羨ましいですね。
 あたしなんて寝起きで、うーん? ん-? なんか変な気がする? と無駄な時間を多少費やしてしまいました。

「それで結局、どこに行くんだ」

「あっちのほう」

 あたしは先ほど確認した方向をさしました。暗くてよく見えませんが、長く住んでいるロブさんにはわかるでしょう。たぶん。

「町、でいいのか?」

「多分そっちだと思いますけど。潜入方法はご存じありませんか?」

「抜け道はあるが、俺がいなかったらどうするつもりだったんだ?」

「魔導師の魔導師らしいところが本領発揮ですね」

 あたしの前に立ちふさがったことを後悔するがいいというやつですね! 壁でも塀でもぶち破ってやりますよ。
 まあ、それは最終手段で穏当にするつもりはあるんですよ。でもあまり期待しないでほしいってやつでもあってですね。こういう言い方に。

「……俺が道案内する」

 おやおや、呆れられてしまいましたね。なお、あーちゃんも同じ顔をしています。

「気をつけて。普通のふりしてるけど、お姉ちゃん、ブチ切れてるから」

「そうか」

 こそこそと二人でやってますが、気にしません。事実です。でも、なんかもやっとしたので、もっとやる気を出してもらうエサを用意しますよっ!

「どうでもいいので、きりきり働いてください。場合により特別報酬はずみます」
 
 どこかに定住するなら金銭で買えない信用とか必要な場合もありますから、この場合保証人的ななんかをすることになりそうですけど。
 で、ロブさんがそれに返答する前に、背後がガサガサっと音がしました。風の音とかではないですね。
 え? なぜ?

「なに!?」

「ほんとか?」

 はい?
 さらに背後から声が聞こえてきたんですけど。

「どーゆーことですか?」

「黙って静かに遠くからついてこいとはいったんだが」

 頭が痛そうにロブさんが言ってますが、そういう問題じゃありませんからね!
 気が進まないままに声のしたほうを見れば下っ端さんが五人ほどいらっしゃいました。ええ、こちらも武装済み。

「あーちゃん、気がついていた?」

「あれ? お姉ちゃん気がついてなかった?」

 顔を見合わせてしまいましたね。
 認識の齟齬がありました。おお、思ったよりもずっと周りが見えてませんね。すーはー深呼吸をして落ち着きを……むりですね。
 理性が焦りとかそういうのを全力で抑えてるので、その他がおろそかになっております。

「今から帰れとはいいませんが、危ないことになっても助けませんよ。もう後で覚えてなさいねっ!」

 最後はロブさんに向けて言いましたよ。恩着せがましく恩を押し付けてやりますよ。
 結局、団体様で町まで向かいました。にぎやかなことで。

「困ったときに伝令役とかいるだろ」

「別に、怒ってはいません」

 ロブさんは後方にいた五人についてそう言いわけしてきました。すこしばかりきまり悪そうですが怒ってはいないんですよ。
 手があるに越したことはない、という考えは間違っていないでしょう。相手が魔導師でなければ。

「ただ、本当に、危なかったらさっさと逃げてくださいね。手助けは期待しないでください。
 想定外の怪我とか責任もてません」

 遠足くらいの軽さでついてきている五名様に釘を刺しておきます。ロブさんもなんでこんな人たちを連れてきたのか問いただしたいですよ……。
 案の定、ん? みたいな表情で見返されました。

「そこは報酬に上積み」

「優秀な技師に義足とかでもいいぞ」

「墓には勇敢に戦ったとのこしてくれ」

 ……。
 いや、ほんとに、割りきりが良いというべきなんでしょうか。死線を超えてきた兵たちはちょっと箍が外れているんですかね……。ロブさんはふざけているなと釘差ししていますけど。

「悲壮感はないわね」

 あーちゃんは呆れたように言っていますけど、同意です。気がまぎれるのは良いというべきでしょうか。
 一人で黙っているとこう色々考え出してしまってですね……。

 帰りたいと言われたときに、手を引いておけばよかったと思いますね。あ、甘えられるイベント!? と真っ白になっている場合ではありませんでした。思い出すたびにフリーズするので丁重に記憶の底にしまったのも間違いですね……。
 判断を盛大に間違いました。

 無理をさせるようなことをしたのです。いっそ、死亡フラグの話をしておけばと後悔の海に浸っていたいのですが、現状それは許されないんですよね。

「重いため息」

「こうなったら、元凶をさっさとぶっ飛ばしてですね、新婚旅行の続きを楽しむんです」

 あーちゃんははいはいと軽い全く心のこもってない合いの手を入れてくれました。大事ですよ。
 ……まあ、この次に行くところはもう領地なのですが。領地行ってそれから魔導協会の本拠地に行く予定。
 予定が未定になりかねない現状を早く何とかしないと。

 そんなこんなで町の門の前までやってきました。ほどほどに背のある柵が町の周囲を覆っています。みっしりとしたものではなく、牧場とかで見そうな隙間の空いた感じのやつですね。
 簡単に超えられそうですが、正攻法でないと警報が鳴る仕組みになっているそうです。夜間の出入りは基本的に禁止です。
 昼間は切ってるので入り放題らしいので、それもどうなんだろうと思いますけど。

 門をちょっといじると切れるってのもどうなのかと……。

「どうなんです。それ」

「マルティナから教えてもらった。なんでもシスターに伝わる秘伝」

 信頼関係があるのか、それとも口が軽いのか、警戒していたのか、わかりませんね。警報を切って、別の場所から潜入することになりました。
 よいしょっと乗り越えるのを潜入といいたくないのですが……。墓地の裏に出ましたよ。え、幽霊とか出る? むしろ、あーちゃんが幽霊?

 そう思いつつ教会に近づいていくと変な音が聞こえてきました。小さい、けれど、耳につく音。近寄りたくなくて思わずあたしは立ち止まってしまいます。
 それに気がついたあーちゃんが振り返りました。

「なに?」

「その、変な音聞こえません?」

「あ、確かに」

 耳鳴りのようなノイズキャンセラーのような微妙に耳に刺さる音。
 あーちゃんも顔をしかめますが、ロブさん以下5人は首をかしげています。つまりは、これはあたしたちにしか聞こえないということで。

 ふっと魔法の明かりが消えました。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

処理中です...