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冬の間
準備をします
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異世界生活96日目な今日。
今日も今日とて外装を強化しております。お肌のお手入れやお風呂などは良かったんですけどね。それ以外がちょっとたいへんでした。
あたしのドレスは雪の白と呼ばれる新雪が降り積もった時の淡い青のドレスです。なお、これが眠り姫由来の色だったりします。ヒロインの目覚めが雪のころだったんですって!
……うん。あれだ。この先の人生もこれが付きまとうんだなと諦念を覚えましたね。
上半身は体にぴったりな感じで、スカートの部分はふんわりしています。見た目もラインも可愛い。
しかし、着こなすのは容易ではありませんでした……。
コルセットぎゅうぎゅう。死ぬ、中身出ると訴えてようやくこのくらいにしてやらぁという感じです。その成果でドレスが綺麗に着れるんですけどね。体に合わせたドレスじゃなくて、ドレスに体を合わせる感じが何とも言えません。
そこからのアクセサリー合わせやら髪型やらを小一時間です。そんな衣装合わせからの簡単なダンスレッスンと死ぬかと思いました。なお靴のヒールは8センチ!
これで通常の夜会の準備相当というのですから貴族のお嬢様を尊敬します。あたしには無理。
「むり」
「うん。むり」
「逃げよう」
そんなことをこそこそ言い合うあたしたちにリリーさんは呆れてましたね。
リリーさんは妖艶な美女に化けてますけど、仁王立ちしてます。なんだかとても強そう。
「相手の衣装選び、これからするけどどうする?」
「よろこんで!」
あたしの豹変にあっけにとられるのはカリナさんだけで、ローゼは俄然やる気をだしてます。この点はとても同類のような気がしますね。
「え、私どうでもいい」
カリナさんは至極あっさりと言ってました。というか相手って? と首をかしげるくらいです。
本命、王子、対抗、リューさん、大穴ゼータさん、ですかね?
「ちょっとあなたたち別な意味で心配になってきたわ」
リリーさんだけが頭痛そうですね。
「じゃあ、行かない……」
「ということにはならないわよ。猫を10匹ぐらいかぶっていきなさいね?」
「えー」
「いいわね?」
……迫力に負けて我々は大人しく頷いたのでした。
さて、大人の女性(貴族仕様)を求められて日数が消費されました。
そして今日は98日目。朝から磨かれて、振る舞いの復習をして夜会が始まる前から疲れそうです。
今は王城での最終支度部屋で絶賛お茶会中です。支度が終わると場合により水も飲めないということで、その前に栄養補給が必須。
「……私は巻き添え」
そんなことを言っているのは、昨日、来ていたフラウです。ローゼが悪戦苦闘しているのをせせら笑っていた結果、リリーさんに捕まりました。
ざまあみろとローゼが楽し気でしたね。
うん、ここは画面の向こう側です。あたしも楽しく観賞してましたよ。潤い。大事です。
「それを言うなら私も」
カリナさんも同調してます。意外とこの二人、仲良くやってるようです。魔導師の知り合いが多いのか扱い方を知っている感じですね。
おそらく頑張っても逃げられない、ローゼとあたしは聞こえなかったふりをしています。ここで彼女たちに結託されて逃げられたくはありません。
「……ところで聞き忘れていた」
お茶、おいしーと現実逃避していれば急にフラウに声をかけられました。
非常にまじめな表情をしていますが、なんでしょうか?
そういえば査定するとか以前言っていたような……?
「ディレイのどこが良かったの?」
……。
もはや聞きなれた質問ですね。なんですか。そんなに不思議なんですか!? それとも聞くように言われてでもいるんですか!?
「かっこいいですし、可愛いところもありますし、わかりにくいですけど、優しいところとか。可愛いって言ってくれるし、甘えてくれるところもよいですねっ!」
もう、なにを言ってるんでしょうね!
顔が赤くなりながらも言いましたよっ! 近頃、可愛い増量中です。なんとなく甘えられてる気もします。先日は食べたいものを言われて張り切っちゃいましたね。
……。
おや? なぜ、沈黙が?
「どうしよう。どこもわからない」
フラウが呆然としたような表情ですよ。
「いや、でも、かっこいい? うん? 仕事中はそうかも?
可愛い。嘘だ。
特定の相手のみに甘いのは優しいとか言わない」
「あたしにとってはそうだから、別に同意はいりませんよ」
聞いておいてのこの反応ってのもどうなんでしょう。人の好みはそれぞれなのでほっといてほしいですよ。
ふてくされた気分で、ざくっとフォークをケーキに刺します。
本日のスイーツはとても数が多いのです。これには理由がありまして。
王城ではスポンジケーキブームが発生しており、その厨房から採点してほしいとやってきたものです。本当は、先日行く予定があったのですが無くなってしまいましてその結果だとはおもうのですけど。
ショートケーキもどきとか、ロールケーキがやってくるのはすごいなぁと思いますね。あたし用は小さくカットされて、全種類です。もはやお仕事では。
採点表片手に味わうので妙な顔されるのは仕方ないでしょうか。
「チョコレートケーキは極上の味わいですね。このキラキラした砂糖が綺麗」
ぎゅぎゅっとした生地のケーキは好みではないですが、これは重たいほうが好き。でも、濃厚なので一口で十分。
そんな感じで、ちまちまと評価をしていきます。
カリナさんもローゼにもおいしいのはどれかと聞き取りしておきましょうか。フラウはまだ思い悩んでいるみたいですね……。そんなにわからなかったんでしょうか?
「……わかんないけど、わかった。
経過観察する」
半分くらい済んだ後にフラウが言いだしました。経過観察って……。却下とも邪魔するともいわれないだけましと思えばいいでしょうか。
というか、今、どうおもってるんでしょうね?
「ディレイが、嬉しそうで、楽しそうだから、我慢する。でも、嫌がったら、そのときは、なし」
フラウにふいっと顔を背けられてしまいました。
「その時はぜひともよろしく。あたしも未練がましいので、物理的にどうかよろしくお願いします」
「へんなの」
ぼそっと言われてしまいましたけど、結構、深刻な問題を秘めてましてね。まあ、あたしがヤンデレ化するかどうかっていう……。
どこをどう歪むかもわからないので予防は必要だと思います。
それからほどなくして、仕上げの時間がやってまいりました。
言うべきことは、コルセット反対! ってことです。
今日も今日とて外装を強化しております。お肌のお手入れやお風呂などは良かったんですけどね。それ以外がちょっとたいへんでした。
あたしのドレスは雪の白と呼ばれる新雪が降り積もった時の淡い青のドレスです。なお、これが眠り姫由来の色だったりします。ヒロインの目覚めが雪のころだったんですって!
……うん。あれだ。この先の人生もこれが付きまとうんだなと諦念を覚えましたね。
上半身は体にぴったりな感じで、スカートの部分はふんわりしています。見た目もラインも可愛い。
しかし、着こなすのは容易ではありませんでした……。
コルセットぎゅうぎゅう。死ぬ、中身出ると訴えてようやくこのくらいにしてやらぁという感じです。その成果でドレスが綺麗に着れるんですけどね。体に合わせたドレスじゃなくて、ドレスに体を合わせる感じが何とも言えません。
そこからのアクセサリー合わせやら髪型やらを小一時間です。そんな衣装合わせからの簡単なダンスレッスンと死ぬかと思いました。なお靴のヒールは8センチ!
これで通常の夜会の準備相当というのですから貴族のお嬢様を尊敬します。あたしには無理。
「むり」
「うん。むり」
「逃げよう」
そんなことをこそこそ言い合うあたしたちにリリーさんは呆れてましたね。
リリーさんは妖艶な美女に化けてますけど、仁王立ちしてます。なんだかとても強そう。
「相手の衣装選び、これからするけどどうする?」
「よろこんで!」
あたしの豹変にあっけにとられるのはカリナさんだけで、ローゼは俄然やる気をだしてます。この点はとても同類のような気がしますね。
「え、私どうでもいい」
カリナさんは至極あっさりと言ってました。というか相手って? と首をかしげるくらいです。
本命、王子、対抗、リューさん、大穴ゼータさん、ですかね?
「ちょっとあなたたち別な意味で心配になってきたわ」
リリーさんだけが頭痛そうですね。
「じゃあ、行かない……」
「ということにはならないわよ。猫を10匹ぐらいかぶっていきなさいね?」
「えー」
「いいわね?」
……迫力に負けて我々は大人しく頷いたのでした。
さて、大人の女性(貴族仕様)を求められて日数が消費されました。
そして今日は98日目。朝から磨かれて、振る舞いの復習をして夜会が始まる前から疲れそうです。
今は王城での最終支度部屋で絶賛お茶会中です。支度が終わると場合により水も飲めないということで、その前に栄養補給が必須。
「……私は巻き添え」
そんなことを言っているのは、昨日、来ていたフラウです。ローゼが悪戦苦闘しているのをせせら笑っていた結果、リリーさんに捕まりました。
ざまあみろとローゼが楽し気でしたね。
うん、ここは画面の向こう側です。あたしも楽しく観賞してましたよ。潤い。大事です。
「それを言うなら私も」
カリナさんも同調してます。意外とこの二人、仲良くやってるようです。魔導師の知り合いが多いのか扱い方を知っている感じですね。
おそらく頑張っても逃げられない、ローゼとあたしは聞こえなかったふりをしています。ここで彼女たちに結託されて逃げられたくはありません。
「……ところで聞き忘れていた」
お茶、おいしーと現実逃避していれば急にフラウに声をかけられました。
非常にまじめな表情をしていますが、なんでしょうか?
そういえば査定するとか以前言っていたような……?
「ディレイのどこが良かったの?」
……。
もはや聞きなれた質問ですね。なんですか。そんなに不思議なんですか!? それとも聞くように言われてでもいるんですか!?
「かっこいいですし、可愛いところもありますし、わかりにくいですけど、優しいところとか。可愛いって言ってくれるし、甘えてくれるところもよいですねっ!」
もう、なにを言ってるんでしょうね!
顔が赤くなりながらも言いましたよっ! 近頃、可愛い増量中です。なんとなく甘えられてる気もします。先日は食べたいものを言われて張り切っちゃいましたね。
……。
おや? なぜ、沈黙が?
「どうしよう。どこもわからない」
フラウが呆然としたような表情ですよ。
「いや、でも、かっこいい? うん? 仕事中はそうかも?
可愛い。嘘だ。
特定の相手のみに甘いのは優しいとか言わない」
「あたしにとってはそうだから、別に同意はいりませんよ」
聞いておいてのこの反応ってのもどうなんでしょう。人の好みはそれぞれなのでほっといてほしいですよ。
ふてくされた気分で、ざくっとフォークをケーキに刺します。
本日のスイーツはとても数が多いのです。これには理由がありまして。
王城ではスポンジケーキブームが発生しており、その厨房から採点してほしいとやってきたものです。本当は、先日行く予定があったのですが無くなってしまいましてその結果だとはおもうのですけど。
ショートケーキもどきとか、ロールケーキがやってくるのはすごいなぁと思いますね。あたし用は小さくカットされて、全種類です。もはやお仕事では。
採点表片手に味わうので妙な顔されるのは仕方ないでしょうか。
「チョコレートケーキは極上の味わいですね。このキラキラした砂糖が綺麗」
ぎゅぎゅっとした生地のケーキは好みではないですが、これは重たいほうが好き。でも、濃厚なので一口で十分。
そんな感じで、ちまちまと評価をしていきます。
カリナさんもローゼにもおいしいのはどれかと聞き取りしておきましょうか。フラウはまだ思い悩んでいるみたいですね……。そんなにわからなかったんでしょうか?
「……わかんないけど、わかった。
経過観察する」
半分くらい済んだ後にフラウが言いだしました。経過観察って……。却下とも邪魔するともいわれないだけましと思えばいいでしょうか。
というか、今、どうおもってるんでしょうね?
「ディレイが、嬉しそうで、楽しそうだから、我慢する。でも、嫌がったら、そのときは、なし」
フラウにふいっと顔を背けられてしまいました。
「その時はぜひともよろしく。あたしも未練がましいので、物理的にどうかよろしくお願いします」
「へんなの」
ぼそっと言われてしまいましたけど、結構、深刻な問題を秘めてましてね。まあ、あたしがヤンデレ化するかどうかっていう……。
どこをどう歪むかもわからないので予防は必要だと思います。
それからほどなくして、仕上げの時間がやってまいりました。
言うべきことは、コルセット反対! ってことです。
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