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眠り姫
幽霊になりました4
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フェザーの町の領主の滞在先というのは小さなお屋敷でした。ギュンターさんがお迎えしてくれましたが。眉間に刻まれたしわが深いです。
エリックは礼儀としてお茶を誘われていましたが、さすがに受けてほしくないと副音声がついているようなことは受けませんよね。
エリックは苦笑しながらお断りしてましたね。荷造り途中なんだそうですよ。遊んでてよかったんでしょうか? 一緒にお片付けのほうがよかったような?
それも今更ですし、普通にお別れしましょう。
「気を付けて」
「そちらも喧嘩とかしないでくださいね」
返答せずに肩をすくめられましたけど。物騒なじゃれあい程度で治めていただきたいものです。
じっと見上げていたら頭撫でられまして。額に落とされた口づけはやっぱりちょっと冷たい触感でした。
なにか胸の奥がぎゅってしますね。
言ってはいけないことを言いそうになるので、無理にでも笑ってましょう。
「早く戻りますね」
それに返答はありませんでした。別のことに気を取られているようで視線が下のほうを向いて……。
なにかあたしの右手が悪さしてましたよ。無意識怖い。服をつかむなんて色々駄々洩れじゃないですか。
エリックはあたしの右手をとると少し考え込んでいるようです。なぜでしょう。嫌な予感がします。
「そろそろ間に合わなくなるのでおかえりください」
あたしが何か言いだす前にギュンターさんから強制終了がかかりました。
そうです。いたんです。ずっと。
……恥ずかしさで死にそうなのですけど。
悶絶しているうちに、はいはい終了、と言いたげに手も離されて速やかに屋敷の奥に案内されました。
手際がたいへんよろしいようで。
エリックは大変不満そうな表情でしたけど、止めなかったんですよね。
「……あれは連れて逃げようかとか真剣に検討してましたよ?」
「や、やっぱり……」
それは避けたいんですよね。被害が甚大すぎます。現時点では友好的に終了する可能性の方が高いですし。
それに相手がやらかしてから徹底的につぶしたほうが……。
「さて、時間がないのは本当です。こちらが紹介状です。人手が足りないと聞いた旦那様が気を使って人員を貸したという話にしてあります。リューはこき使うなり、入れ替わりを楽しむなり存分に利用してください」
利用って。ふふふと笑うギュンターさんが怖いのですけど。
これは相当お怒りですね。本物は迫力が違います。やっぱりムチとか使うんでしょうか。怖くて聞けませんけど。
休む間もなく、そのまま馬車で滞在先に送り返されました。
戻った屋敷は特に変わりもありませんでした。あたしの代役であるリューさんはうまくやったのでしょうね。
まず、リリーさんのところに通されましたのですました顔で紹介状を渡しました。なにか笑いをこらえられているのが不本意です。
その後、来訪者、つまりあたしに挨拶するように言われます。あたしがあたしに挨拶するって謎な状況ですね。とりあえず部屋に戻りますけど。
部屋に戻ればリューさんにほっとしたような顔をされました。
「おかえり。楽しんだ?」
「ありがとうございます。不審がられませんでした?」
「ああ、昼食のときにちょっと困ったかな。魔道具のほうを触ってて続きはメイドさんたちにお任せしたよ。料理は管轄外」
「あ、忘れてました。すみません」
「いいって。じゃあ、戻していいかしら」
再び化粧を直されます。着替えもさくっと終了し、リューさんは部屋を出ていきました。最後に戻ってきてよかったとかいわれたんですけど……。
周りから見てると相当やばそうに見えたんでしょうね。警戒されていたのはエリックのほうでしょうけど。
まあ、何事もなくその日は暮れていったのです。
あれ? ということが起こってきたのは78日目でした。
エリックがいないという状況にちょっと腑抜けて二日ほどすごしていたのは良くなかったんでしょうね。
元気がないからお茶会しない? という話がやってきました。なぜ元気がないのがばれてるかというとティルスかシュリーが報告をあげているせいでしょうね。
王家からのお誘いではなかったのでお断りしました。
しかし、同じようなお誘いが追加で五通くらいきました……。気晴らしにといろんな場所を提案されているのですが。
「これはデートのお誘いというやつでは?」
珍しい動物がいるとか、うちの庭園は珍しい植物があるとか、芝居小屋に行きませんか?とか。
リリーさんも困った顔ですね。手紙のついでに贈り物もついてきてるんですよ。
突っ返すと相手のメンツが立たないとかなんとか。デートはお断り、贈り物も今回は受け取るけど、次はお断りねと婉曲に伝える手紙を書く羽目になりました。
それが翌79日目にはそれが十通になったんです。
は? と思いますよね。しかも、好条件な適齢期男性がいる家から。前日に断った家からも来ているので、TOP10制覇しました。
うれしくない。
「王城にいるうちは王家相手に遠慮していたけど、城下町にいるなら接触しやすいと思われたんだわ。仲たがいじゃないけど、それほどべったりというわけでもないとも思ってそうね」
リリーさんがうんざり顔になるのも仕方ないでしょうか。カリナさんは他人事ですごいねと呆れたように言ってます。ローゼは同情したようにユウリもそれやられたと言ってます……。
なお、ティルスとシュリーの実家からも手紙はやってきています。おそらく当人抜きで書かれたんでしょうね。
聞けば二人とも慌ててましたから。付属の贈り物についてはお礼を言っておきましたが、シュリーは自分で選んでないと正直に申告していました。ティルスは俺、こんな悪趣味じゃないと主張していたのでやはり選んでないのでしょうね。
家同士の争奪戦な様相を呈してきました。本人の気持ちは置き去りです。
そんなに良いものなんでしょうか。首をかしげてしまいますね。
エリックは礼儀としてお茶を誘われていましたが、さすがに受けてほしくないと副音声がついているようなことは受けませんよね。
エリックは苦笑しながらお断りしてましたね。荷造り途中なんだそうですよ。遊んでてよかったんでしょうか? 一緒にお片付けのほうがよかったような?
それも今更ですし、普通にお別れしましょう。
「気を付けて」
「そちらも喧嘩とかしないでくださいね」
返答せずに肩をすくめられましたけど。物騒なじゃれあい程度で治めていただきたいものです。
じっと見上げていたら頭撫でられまして。額に落とされた口づけはやっぱりちょっと冷たい触感でした。
なにか胸の奥がぎゅってしますね。
言ってはいけないことを言いそうになるので、無理にでも笑ってましょう。
「早く戻りますね」
それに返答はありませんでした。別のことに気を取られているようで視線が下のほうを向いて……。
なにかあたしの右手が悪さしてましたよ。無意識怖い。服をつかむなんて色々駄々洩れじゃないですか。
エリックはあたしの右手をとると少し考え込んでいるようです。なぜでしょう。嫌な予感がします。
「そろそろ間に合わなくなるのでおかえりください」
あたしが何か言いだす前にギュンターさんから強制終了がかかりました。
そうです。いたんです。ずっと。
……恥ずかしさで死にそうなのですけど。
悶絶しているうちに、はいはい終了、と言いたげに手も離されて速やかに屋敷の奥に案内されました。
手際がたいへんよろしいようで。
エリックは大変不満そうな表情でしたけど、止めなかったんですよね。
「……あれは連れて逃げようかとか真剣に検討してましたよ?」
「や、やっぱり……」
それは避けたいんですよね。被害が甚大すぎます。現時点では友好的に終了する可能性の方が高いですし。
それに相手がやらかしてから徹底的につぶしたほうが……。
「さて、時間がないのは本当です。こちらが紹介状です。人手が足りないと聞いた旦那様が気を使って人員を貸したという話にしてあります。リューはこき使うなり、入れ替わりを楽しむなり存分に利用してください」
利用って。ふふふと笑うギュンターさんが怖いのですけど。
これは相当お怒りですね。本物は迫力が違います。やっぱりムチとか使うんでしょうか。怖くて聞けませんけど。
休む間もなく、そのまま馬車で滞在先に送り返されました。
戻った屋敷は特に変わりもありませんでした。あたしの代役であるリューさんはうまくやったのでしょうね。
まず、リリーさんのところに通されましたのですました顔で紹介状を渡しました。なにか笑いをこらえられているのが不本意です。
その後、来訪者、つまりあたしに挨拶するように言われます。あたしがあたしに挨拶するって謎な状況ですね。とりあえず部屋に戻りますけど。
部屋に戻ればリューさんにほっとしたような顔をされました。
「おかえり。楽しんだ?」
「ありがとうございます。不審がられませんでした?」
「ああ、昼食のときにちょっと困ったかな。魔道具のほうを触ってて続きはメイドさんたちにお任せしたよ。料理は管轄外」
「あ、忘れてました。すみません」
「いいって。じゃあ、戻していいかしら」
再び化粧を直されます。着替えもさくっと終了し、リューさんは部屋を出ていきました。最後に戻ってきてよかったとかいわれたんですけど……。
周りから見てると相当やばそうに見えたんでしょうね。警戒されていたのはエリックのほうでしょうけど。
まあ、何事もなくその日は暮れていったのです。
あれ? ということが起こってきたのは78日目でした。
エリックがいないという状況にちょっと腑抜けて二日ほどすごしていたのは良くなかったんでしょうね。
元気がないからお茶会しない? という話がやってきました。なぜ元気がないのがばれてるかというとティルスかシュリーが報告をあげているせいでしょうね。
王家からのお誘いではなかったのでお断りしました。
しかし、同じようなお誘いが追加で五通くらいきました……。気晴らしにといろんな場所を提案されているのですが。
「これはデートのお誘いというやつでは?」
珍しい動物がいるとか、うちの庭園は珍しい植物があるとか、芝居小屋に行きませんか?とか。
リリーさんも困った顔ですね。手紙のついでに贈り物もついてきてるんですよ。
突っ返すと相手のメンツが立たないとかなんとか。デートはお断り、贈り物も今回は受け取るけど、次はお断りねと婉曲に伝える手紙を書く羽目になりました。
それが翌79日目にはそれが十通になったんです。
は? と思いますよね。しかも、好条件な適齢期男性がいる家から。前日に断った家からも来ているので、TOP10制覇しました。
うれしくない。
「王城にいるうちは王家相手に遠慮していたけど、城下町にいるなら接触しやすいと思われたんだわ。仲たがいじゃないけど、それほどべったりというわけでもないとも思ってそうね」
リリーさんがうんざり顔になるのも仕方ないでしょうか。カリナさんは他人事ですごいねと呆れたように言ってます。ローゼは同情したようにユウリもそれやられたと言ってます……。
なお、ティルスとシュリーの実家からも手紙はやってきています。おそらく当人抜きで書かれたんでしょうね。
聞けば二人とも慌ててましたから。付属の贈り物についてはお礼を言っておきましたが、シュリーは自分で選んでないと正直に申告していました。ティルスは俺、こんな悪趣味じゃないと主張していたのでやはり選んでないのでしょうね。
家同士の争奪戦な様相を呈してきました。本人の気持ちは置き去りです。
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