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来訪者とは1
しおりを挟む某執務室にて
「聞いていたとおり変な娘だな」
「そうでございますか」
「うむ。若い娘はあれだろ。いけめーんとか好きなんだろう? この語感、儂は好きじゃないが」
「ただし、イケメンに限る、なんて娘も言いますのでそうなのでございましょう。え、なにその玉の輿、羨ましすぎると言っておりましたので、羨望の的ではないでしょうか」
「むしろ、儂の方に興味がある気がしたぞ。息子たちそれなりに顔が良いと評判のはずだが」
「そうですね。私もきらっきらの目で見上げられました。一応、私も独身で」
「おまえはバツイチ。論外。娘ほどの年の女に手出ししたら、近衛の権威が傷つく。団長がなにを画策してる」
「おっさんが、まいあがってんじゃないですよ」
「……ひどい」
「それはほっときましょう。やはり、リリー嬢の進言が正しいのではないでしょうか」
「うむ。他国の動向は」
「失敗待ちです。手ぐすね引いて待っていますね」
「介入をされるよりはましか。しかし、失敗、な」
「妃殿下たちはどう思われたんでしょうか」
「脈無し、押すべからず。嫌がれる。だそうだ。時間をかけて絆したほうが、まだまし。親切にされると無碍に出来ずに譲歩しがち。子供に弱い」
「普通の善良な娘さんのようですな」
「あ、復活しましたね。というわけで、若い男近づけるのやめてくださいませんか。心証が悪くなります」
「悪いと思うのですが、私の家格が低すぎて舐められてるというところがありまして」
「チラ見するな。儂からも借りが多くて言えないのをしっているだろうがっ!」
「喧嘩別れしたくないのに喧嘩別れのフラグが立ってますね……」
近衛、控え室にて
「か、かわいかった。あの上目遣いとか、やばい。顔赤かったけど、なんだろ、ま、まさか俺にひとめぼれっ!」
「……なんだ。あれ」
「ほら、深夜から朝方まで、護衛ついてただろ。そんで、声かけたらしいんだよな。至近距離というだけで妬ましいのに、声聞くとかなんだよ。と思ったから、団長に告げ口しといた」
「うわ。団長もなんか、くらっときてたみたいだからしごかれるな」
「団長も? ティルス先輩もなんか興味もってるみたいだし、なにか魅了でも使ってんじゃない?」
「ああ、なんか、わかる。背後に結婚の文字がないから素直にかわいいとか言ってられる。かわいいとか好ましいとか言えば、縁談がやってくる悪夢がない」
「そんなもんかね。モテない男にゃわからん話だな」
「ふぅん? そんな、モテないかね? 鈍感なだけじゃね?」
「シュリーは?」
「あ? おお、新入り。おまえも興味あんの? 擦れてなさそうな素直そうだもんな。あれ? なんで、変な顔したわけ?」
「別に」
「シュリー先輩も興味あるみたいだよな。家のために嫌々って感じでも、ティルス先輩の監視って感じでもないんだよなぁ。
謎の生物を見た、って興味はどーかと思うけど。まあ、王城にはいない、下町にはいっぱいそうな感じって思わない?」
「……かわいいとは思う」
「あ、うん。なにが理由かわかんないけど、お披露目のとき一瞬、笑ったんだよな。
あれは、かわいかった。なんか、嬉しいって感じがしてさ」
「そうそう。なんか、あれは特別な感じしたなぁ。見間違いかって思ったけど、おまえも見たんだ」
「え、俺、見てない。見逃したっ!」
「ま、護衛あたってたら、そのうち見るかもな。ただし、相手は俺じゃねぇ……。なんか、おっさん相手のほうが、愛想良かった。ほら、ジーン先輩さ、ひげ面強面じゃん? びびられるかと思ったら、きらっきらした目で、かっこいいですねっ! って、言われたってあのおっさん、真っ赤になってたぞ」
「……そっちの心配はしたことがなかったな」
「ん? どーした?」
「なんでもない。若いのが好みってわけでもなかった」
「どこの誰が落とすか楽しみだ」
「そーいや、誰か賭けやってんの?」
「なんか女の子ってわかってから早速やってたぞ。胴元はウィラーと聞いたけど」
「グランは?」
「ほら、ユウリ様の胴元やってるのがばれて、お仕置き中だ。よい笑顔でこき使われてる、と思う。な、新入り」
「……ああ。休みがあると思うなよ、とか言ってたな」
「売り上げ取り上げられなくてお優しいとは思うけど、いつまで働かされんだろうな」
「さあ?」
魔導協会 王都支部にて
「聞いたかしら、かしら」
「んー。来訪者の子のこと?」
「そうそう。そうそう。あの子、特別のお気に入りなのね」
「へ? なんだ、それ」
「だってだって、あのケープって指揮者(コンダクター)共通のはずが、ステラ師が虹色(プリズム)に特注して個人用にカスタマイズ済みの一品なんだもの! 虹色(うち)では、その話題で持ちきりよっ!」
「は? なんつー金のかけ方してる。お嬢様は違うね」
「うちの師匠があれの持ち主が誰かぽろってこぼしちゃって、もう、大変、大変」
「リリーさんとこの旦那さんは除外な、フェーヴもまあ年代があわない。あとあの地方に誰かいたっけ?」
「あ」
「んー?」
「ディレイ」
「は? 確かにフェザーの町いるとか噂で聞いたような? あのあたり現れたとか聞いたような? え? まじ?」
「マジマジ。来たくもない王都に来るくらいだから、それなりに本気」
「え? あいついんの?」
「いる。どちらかというと英雄殿に引きづり出されたっぽいな。あいつもほっとくと、なにするかわかんないタイプだから一人にしておくよりいいけど。
そういや、一時期、めっちゃ気落ちしてたけど、あれなんだったんだろーなー」
「知らん。というか、英雄殿のお守りとか、よくやるわーと思う。金積まれても俺、やだ。めんどくさい」
「確かに、めんどくさい。本人は悪くないけど、周りが良くない。大義名分もって撃退する楽しいお仕置きも数が増えるとめんどくさい」
「やり過ぎるとうるさい。そこらの石じゃねぇんだから、叩かれたら叩き返すだろうが。という当たり前のことさえ理解できないとか同じ生物とは思えん」
「身分なんざ価値がないと思っている我々もそう思われてるよ。必要以外関わらん方が良い。俺も来訪者がいなくなったら出てこうと思う」
「あ、おまえも? うちもうちの師匠がやり過ぎないよう監視しに行くわ」
「そっちもか。テンション上がりすぎてついてけねぇ。長年の研究成果がっ! と興奮してぶっ倒れないか心配になるくらい」
「んー? うちは、魔導具コンテストになりそう。今までにない新発想、期待期待」
「……なんか、期待が重くて潰れないといいな」
「そこら辺は保護者が、なんとかするだろ。ステラ師とガチで喧嘩するバカは……いたわ。うちの師匠」
「そ、そーだった。うちも、わははは、と言いながら乱闘しそう」
「胃が痛くなってくる……」
「それより前に他国に逃げられないように、もし逃げるときにはサポートしとかないとまずいというプレッシャーを感じている……」
「うっ。下手するとクルス一門で囲い込むかなかな」
「まあ、変な手出ししないように周知させておくくらいしかやれることないよな……。王都にいるの変なのしかいないから別な意味で心配」
「おまえもな」
「棚上げする気はないよ。ゼータには特に注意しとけって言っておく。王城に出入り簡単にすんのあいつくらいだろ」
「あー、でも、あの魔動車バカはそこまで気が回るか?」
「そこはそれ、異界の魔動車について聞けるかもとか吹き込めばその気になるかもかも?」
「なぜだろうか。ダメなほうに爆走してきそうだ」
「そーだな。……っておまえ、なにメモってんの?」
「ん? ほら、魔導師かつ医者というレア職だから、面識もてるかなぁって。くすり、くすりっ!」
「……ダメだ。やばい薬、作り出しそうだ……」
「おまえも、話のネタとか書いてあんだけど?」
「ほら、執事探偵売れたし、他のネタを集めて書いてもらう」
「絶望するほど文才ないもんな」
「ほっとけ」
「経営手腕おかしいのにのに」
「うるせーっ!」
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