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嵐の前の静けさ(かもしれない)
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王都、某所にて 1
「噂聞いた?」
「あ? なんか、新しい来訪者が来るとかいうヤツか? 興味ねぇな」
「ふぅん? 憶えてるだけで十分興味あるように思うけどね。ま、うちがもらうから静観してくれるなら重畳」
「なんだその自信」
「平凡な娘なんてちょろいちょろい」
「自信過剰。そーゆー男は嫌いかもな。なにせ、顔の良い男は性格が悪い」
「おー、言うねぇ。ま、筋肉好きとも限らないよね。縁談を組むなら、うちか、きみのところか王子の誰かが本命ってところかな。共有なんて、趣味じゃないから最初から断っておくよ」
「王子様に憧れるような娘だったらどうすんだ?」
「え。そこらの王子より王子らしい僕が負けるわけないじゃん」
「……魔導師らしいが、いいのか?」
「前代未聞とかなんとか言ってたけど、いいんじゃない? 特別な選ばれた血が残る」
「ほんとに、自信過剰だな」
「そんな事言って、うっかり恋に落ちたりするんだよ。君はね」
「そーかもな。まあ、がんばれ」
「……張り合いのない。僕の一人勝ちかな」
王都某所にて 2
「あらあらあら」
「……ローゼ、怒ってる。超怒ってる」
「フラウ、怒ってないと思っている方が間違いだ」
「え?」
「ずっと怒ってたぞ。あれは。限界を超えて表に出てきただけだ」
「うるさいわね。眼鏡」
「眼鏡……。ぷっ」
「誰を迎えにやればいいの? わたしが行くわね。そうよね。その権利あるわよね。殴ってきていいわよね。なんなの、頑張って隠蔽したのに問い合わせされるって」
「いや、困るから。ディレイがいるって言うんだから引きずってでも連れてくるだろ。めんどくさいとか巻き込むなとかそんな事思いながらさ」
「うん? 私がいくっ!」
「あ」
「この眼鏡、余計な事を!」
「フラウもお留守番」
「じゃあ、フィラセントが行ってきなさいな」
「え」
ある町の(いるだけ)領主
「え、英雄に会うんですか? 僕が? 本気? ヤツは僕を殺しに来るんですか?」
「旦那様、さすがに布団を頭から被るのはやめた方が良いかと」
「嫌だ。代わりにあって。僕は出ません。絶対嫌です。しかも、なんて言いましたか魔導師もいるんでしょう? あいつ、僕を切り刻みましたよ。いったい何の恨みがと思いましたけど」
「以前もそう言って青ざめて逃げたではないですか。今のところ問題あるような行動は一度もとってませんよ?」
「目の色が違ったので、違う気もしますが、それでも震えます」
「……仕方ありませんね」
「いーやーっ! それは諦めるところーっ!」
「不甲斐ない主がいるとたいへんですね」
「ひきずらないでーっ!」
「出ますか? ヒヨコちゃん連れてもいですよ」
「うっ。わかりました。わかりましたよっ! ほんと、どっちが主人なんだか」
「なにか仰いましたか?」
「いいえ、なにもっ!」
教会にて
「なんてもん、寄越しやがる」
「いや、あそこまでのは想定してなかったんだわ。用紙だけ渡そうかなと思ってたが上層部も相当きてるね」
「そんなひどかったわけ?」
「らしいね。うちも何人も戻って来なかったし。少ない人数で回してるってのに助手も辞めそうで辛い」
「ああ、どこかの貴族の末っ子だっけ?」
「兄が亡くなったそうだ。そんで政略結婚が出来なくなりそうなので代わりに娘でどうよという話、らしい」
「女が余るとかいう話は聞くんだがな」
「身寄りがない子供の方が先に溢れそうな気がする。うちは増えてないけど、王都の孤児院は無理とか言ってた。あちこちに回そうにも野盗とか出そうとか言われると連れてくのもな」
「どこも落ち着かないな。じゃ、あれは魔導協会と結託してるわけ?」
「いや、うちの教会長が良い笑顔で独断でやったことだ」
「……俺は、何も知らなかった。どうせ本名で書くなら誰もわからん」
「ま、俺も知らんぷりして保管庫につっこむだけの簡単な仕事だ。結局使うかどうかは本人次第だ」
「焦ってしくじるよりは時間をかける方だから、しばらくはそのままじゃないか?」
「そうしている間に持ってかれないといいけどな」
「……そういう間の悪さはある。どちらにせよ結果は知りたくないので、教えてくるなよ」
「やだな、親友。秘密は共有しようぜ」
「断るっ!」
「噂聞いた?」
「あ? なんか、新しい来訪者が来るとかいうヤツか? 興味ねぇな」
「ふぅん? 憶えてるだけで十分興味あるように思うけどね。ま、うちがもらうから静観してくれるなら重畳」
「なんだその自信」
「平凡な娘なんてちょろいちょろい」
「自信過剰。そーゆー男は嫌いかもな。なにせ、顔の良い男は性格が悪い」
「おー、言うねぇ。ま、筋肉好きとも限らないよね。縁談を組むなら、うちか、きみのところか王子の誰かが本命ってところかな。共有なんて、趣味じゃないから最初から断っておくよ」
「王子様に憧れるような娘だったらどうすんだ?」
「え。そこらの王子より王子らしい僕が負けるわけないじゃん」
「……魔導師らしいが、いいのか?」
「前代未聞とかなんとか言ってたけど、いいんじゃない? 特別な選ばれた血が残る」
「ほんとに、自信過剰だな」
「そんな事言って、うっかり恋に落ちたりするんだよ。君はね」
「そーかもな。まあ、がんばれ」
「……張り合いのない。僕の一人勝ちかな」
王都某所にて 2
「あらあらあら」
「……ローゼ、怒ってる。超怒ってる」
「フラウ、怒ってないと思っている方が間違いだ」
「え?」
「ずっと怒ってたぞ。あれは。限界を超えて表に出てきただけだ」
「うるさいわね。眼鏡」
「眼鏡……。ぷっ」
「誰を迎えにやればいいの? わたしが行くわね。そうよね。その権利あるわよね。殴ってきていいわよね。なんなの、頑張って隠蔽したのに問い合わせされるって」
「いや、困るから。ディレイがいるって言うんだから引きずってでも連れてくるだろ。めんどくさいとか巻き込むなとかそんな事思いながらさ」
「うん? 私がいくっ!」
「あ」
「この眼鏡、余計な事を!」
「フラウもお留守番」
「じゃあ、フィラセントが行ってきなさいな」
「え」
ある町の(いるだけ)領主
「え、英雄に会うんですか? 僕が? 本気? ヤツは僕を殺しに来るんですか?」
「旦那様、さすがに布団を頭から被るのはやめた方が良いかと」
「嫌だ。代わりにあって。僕は出ません。絶対嫌です。しかも、なんて言いましたか魔導師もいるんでしょう? あいつ、僕を切り刻みましたよ。いったい何の恨みがと思いましたけど」
「以前もそう言って青ざめて逃げたではないですか。今のところ問題あるような行動は一度もとってませんよ?」
「目の色が違ったので、違う気もしますが、それでも震えます」
「……仕方ありませんね」
「いーやーっ! それは諦めるところーっ!」
「不甲斐ない主がいるとたいへんですね」
「ひきずらないでーっ!」
「出ますか? ヒヨコちゃん連れてもいですよ」
「うっ。わかりました。わかりましたよっ! ほんと、どっちが主人なんだか」
「なにか仰いましたか?」
「いいえ、なにもっ!」
教会にて
「なんてもん、寄越しやがる」
「いや、あそこまでのは想定してなかったんだわ。用紙だけ渡そうかなと思ってたが上層部も相当きてるね」
「そんなひどかったわけ?」
「らしいね。うちも何人も戻って来なかったし。少ない人数で回してるってのに助手も辞めそうで辛い」
「ああ、どこかの貴族の末っ子だっけ?」
「兄が亡くなったそうだ。そんで政略結婚が出来なくなりそうなので代わりに娘でどうよという話、らしい」
「女が余るとかいう話は聞くんだがな」
「身寄りがない子供の方が先に溢れそうな気がする。うちは増えてないけど、王都の孤児院は無理とか言ってた。あちこちに回そうにも野盗とか出そうとか言われると連れてくのもな」
「どこも落ち着かないな。じゃ、あれは魔導協会と結託してるわけ?」
「いや、うちの教会長が良い笑顔で独断でやったことだ」
「……俺は、何も知らなかった。どうせ本名で書くなら誰もわからん」
「ま、俺も知らんぷりして保管庫につっこむだけの簡単な仕事だ。結局使うかどうかは本人次第だ」
「焦ってしくじるよりは時間をかける方だから、しばらくはそのままじゃないか?」
「そうしている間に持ってかれないといいけどな」
「……そういう間の悪さはある。どちらにせよ結果は知りたくないので、教えてくるなよ」
「やだな、親友。秘密は共有しようぜ」
「断るっ!」
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