上 下
60 / 263

国内は少し混乱中です

しおりを挟む
警備兵詰め所にて

「え、いやだな、見間違い、ですよ。見間違い」

「そ、そーです。そんな人、きてませんって」

「……あれで何人目よ?」

「さあ。みんな暇だよね。暇。あー、副隊長もどこか呼び出されたし、俺たちに出来る事ってなにもない」

「……でも、そういえば、俺、黒い目見たことあるんだよな」

「は? どこで?」

「結構前に門番してたときにあのかわいい……」

「そうだっけ? 俺も遠くからしか見たことないし。最近全く見ない。いいけど、良くない」

「え、口説く気あんの?」

「フェイちゃんにもイザベラちゃんにも振られたから、こう癒し? なんか困った顔しても挨拶くらいはしてくれそうじゃん?」

「イザベラちゃんは副隊長一筋だし、フェイちゃんはお見合い決まったって噂。婿に行くってとっとと言えばよかったんじゃね?」

「いや、うちもねーちゃんしかいない。でもな、うーん。どこかに良い婿は落ちてないかな。ねーちゃんが気に入るようなの」

「あぶれた男は一杯いるんだけどな。あんまりおすすめできそうなのはいない」

「お、そういえば、おまえ独身かつ、恋人もいなかったな」

「は? やだよ。おまえんちのねーちゃん、ものすっごく気が強いし」

「一回くらいデートしてみない? うん、話通しとくからさ」

「は?」

「なんですか、ご婦人。黒髪の格好いい兄ちゃんがいるかと? いませんよ。やだなぁ。見間違いでしょう」

「イケメンなら副隊長だけで十分なので」

「……ほんと、なんだろうなぁ。変な情報網でもあんのかな?」


王宮にて

「ユウリが見つからない。どこに行ったんだか」

「ん。ローゼがきちんと見張ってないから」

「は? なによ、同室は不可とかなんとか無理にユウリに同意させた人たちの言いぐさとは思えないわね」

「いえ、私は式前になにかあっては、ちょぉっと困るのではないかと愚考したまでです」

「……ほんと、迷惑。ユウリ連れて故郷に引きこもるわよ。面倒ごとばっかりで良い事なんてこれっぽっちもないのに、付け込んでやらせてるんだから」

「それは独占欲。よくない。あと、別にもうユウリはいい」

「フラウ?」

「よく考えれば、浮気しない男の方が良いし、優しい方がいい」

「……別にユウリ浮気しないし。誰彼構わず優しいだけ。男も突っかかって来るの本気で勘弁して欲しいだけど。何が似合わないだ、ふざけるなと言いたいわ」

「まあ、そんな迷惑も受けない相手を思い出した。うん、わたしは好きだからきっと大丈夫」

「誰よ」

「フィラセントはディレイがどこに行ったか、しってる?」

「ユウリに聞いたらいい。それは極秘ってことになってるから」

「そのユウリがいないから困ってる」

「なんでそんな自信たっぷりなのよ?」

「魔導師は打算ない好意にものすごく、弱い。ただし、落としたあとがとてもめんどくさいし、心変わりを許さないから誰も積極的に選ばないだけ」

「そのあなたも魔導師よね?」

「だからわかり合える。リリーもがんばったらいけたと言っていたし、きっといける」

「……ダメな気がするわよ。たぶん、もう興味ないんじゃないかしら?」

「ん? ずっと優しかったよ?」

「そーね」

「じゃあ、他をあたってくる」

「あまり頑張らないでほしいものです」

「そうね。許さないのよね。次なんて、基本的にない。でもあれはなんでかしら?」

「半分人ではないからなどと言われてますが、どうなんでしょうね。欠けたものを求めるように、などとは言われますが」

「育ちによっても強弱変わる程度なんだから、やっぱり特性なんでしょうね」

「まあ、なんにせよ。ユウリを探さねばなりませんね」

「……そのうち帰ってくるとおもうのだけど」

「ほっといても良いですが、ローゼが矢面に立たされますよ?」

「わかりました。あとで、埋め合わせさせてやる」


某魔導協会にて

「お祖母さまっ! ようやく見つけましたよっ」

「おやおや、慌ててどうしたんだい?」

「お手紙、見たんですよね?」

「見たよ。ユウリからも探されていたし、急用だと思ってね。戻ってきたんだ」

「……そのわりに遊ばれてきたようですね」

「あちこちで、老人だと思ってからかってやろうという小僧が多くてね。ついね、遊んできてしまったよ」

「まあ、あちこちの町から感謝されてましたけどね。ちょっと損害与えすぎです。燃やしすぎです。というか火事になってないだけありがたいと思えとか暴言はいけないと思います」

「この老人を叱るためによんだのかい?」

「いえ、来訪者が見つかったので後ろ盾になっていただきたいのと魔導協会との仲介と国との折衝をお願いしたいのです」

「……本人を見て決めることにするよ」

「は? いい子でしたよ。魔導師の資質があるようなので、お祖母さまに見ていただいた方がいいと思いますけど」

「良くない知らせも受け取ったからね。ディレイにも会わないといけないから」

「そうですか。では、お任せしますが、ゆっくり遊んで行かないでくださいね? 魔導協会が色々うるさいんですよ」

「奴らの仕事は魔導師を働かせることだから、口うるさいだろうさ。ひとつ小言でもいってくるかい? かわいい孫娘の頼みなら叶えるのもやぶさかではないよ」

「やめてくださいね? その分の苦情もやってきますから。お年なんですからというのは嫌なのですが、十分に気をつけてください」

「わかったよ」

「あ、それから食料庫。封印して、忘れてたって聞いたんですけど、大丈夫なんですか?」

「……そ、それはどうかね……。なにか沸いていないといいね」

「いっそ、先送りにします?」

「それも別の所からなにか出てきそうで怖いものだね」

「お祖母さまも怖いものあるんですね……」

「焼き払って真っ黒にして、旦那様に怒られたね」

「ああ、だからあの家、虫除けが強固にしてあるんですね……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

処理中です...