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知っていること
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「大したことは知りませんよ。どうして、そう思われたんですか?」
「んー、色々伝承とかあって、知っているものらしいとは認識していた。
有名ではないが、文献に当たればすぐにでてくるような話だし、先のことを知っていて面倒が起こるなんてのはあったようだ」
知っていて、その上で聞かなかった、ということでしょうか。
では、調べたと言っていたリリーさんもその話は知っていたということになりそうですね。
……なんでしょう。このもっと早く言ってよという気持ち。突然、聞かれて取り乱して色々ぽろぽろこぼれてしまうような状況よりはマシですけど。
……というか、この流れで言えば、クルス様も知ってそうなんですけど。妙なことを言われたことがあったような気もしますが……。
小さく頭を振ってその考えを追い出します。なんだか、クルス様本人を問いただしたい気持ちになってきますから……。
このタイミングって絶対失言します。
「あたしがいた場所ではここの世界のことは物語、つまりは本でした。
某英雄が主人公のお話でこの二年か三年くらいのエピソードをつないだ感じでしょうか」
言っていいと思うことを吟味しながら口にします。
ものすごいざっくりですが、詳細を語っていったら一日くらいかかりそうなきがします。
しかも熱が入りすぎて引かれるでしょうね。お話自体はとても好きだったのです。主人公に何でそこだけダメなんだとツッコミながら読んでました。
ゲイルさんは淡々と話しをしたあたしにちょっとびっくりしたみたいですね。
わたわたしたほうが良かったですかね?
「この先も知ってるってわけ?」
「いえ、全然。ええと昨年の11月か12月くらいのことまでですね。戦争の結果も実は知りません」
こんなに時期がずれたのは、最近、クルス様が暇だから故郷に帰ろうかな、とかおもったのではないかと。その後の予定とやらを聞いて考えた結果なんですけど。
もし、死亡フラグがと願っていたら、戦争中にぶん投げられた気がします。自分でなんとかしなよと笑いながら。
「一応、休戦ってことになってるな。今は戦後処理中で、徴兵された者や志願兵なんかが、故郷に戻りつつある。ただ、帰れない者たちが王都周辺から近くの町に流れている感じだな」
なるほど。この森は王都の守りの一部を担っているので王都からは近いはずです。
前回門番の人が言ってたのはこのことだったのでしょう。戦争帰りが増えていると。でも、なんでクルス様が心配されたのかはわからないままですけど。
あたしの知らないところでなにかあったのでしょうか。そのあたりの話は全くしてくれないので、不明のままです。
「春先までは治安は悪化するだろうし、過ぎてもなかなか回復はしないだろう。冬だからって町に住むのはやめたほうがいいってのはこれが主な理由だ」
「そうですか。ここって安全なんですか?」
「家自体が恐ろしく強固な結界張ってるから家の敷地内は安全だろう。作ったヤツがなに考えていたのか全くわからん。
しかし、この先のことは知らないというのは良い事だな。知ってたらどこに監禁されるかわかったもんじゃない」
……この世界、微妙に物騒ですよね。リリーさんには自由とかいわれてましたけど、やっぱりそれなりに実力がないと消費されてしまうのでしょうね。
「いや、そうじゃなくて、だな。ディレイのこと知ってるだろ?」
ああ、やっぱり、その話必要でしたか。知らないというのも不自然でしょうね。
「ええ、まあ、登場人物的には知ってますよ」
疑いの視線が痛いです。嘘ではないですよね。推しとか言わないだけで。
言えば引かれます。絶対です。
そもそもこの世界に来た理由として考えると重すぎて秘匿したいわけです。本当になんてことをしてくれたのだという気持ちがありますね。覚悟も定まらないうちに勝手にするなと言いたいのですけど。
……人外なんて、こんなものかもしれませんが。むしろ、いいことしたとでも思ってそうです。なにが不満なのとか言い出してましたし。
「それだけ?」
「お気に入り、というところはありますけど。
あのですね、頼るところもないのに、世話焼かれたり、優しくされたらくらっときません?」
「わからんでもないが、ちょっと違うように思える。最初から、かなり意識しているように見えた」
隠すような余裕なんてなかったので、駄々漏れでしたね。
今も余裕はないので、隠せている気もしませんし。無駄な努力でしたか。
「一番の、とつければいいですか。恥ずかしいので、追及しないでいただけると」
「どこが良かったんだ?」
……なぜにリリーさんと同じ事を聞いてきますかね。ついでに追及するなって言ったのに無視されましたよ。
「……全体的に。一目惚れはそんなに間違いじゃないですよ。格好いいじゃないですか」
もにょもにょと下を向きながら答えてます。拒否しても良いのですけど、後々まで聞いてきそうなのですよね。
以前、ゲイルさんとお話しした時のことを思い出しました。あれもこれもと延々と話しましたからね。好奇心を満たすまで質問するような人です。
「魔導師やってるときはそれなりに見えるな。確かに。
普通のときはそうでもないような気がするんだが」
「……どこがいいか、本当に、聞きたいんですか?」
面白がるように言われたので、顔を上げ白い目で見てやりました。
ゲイルさんは少したじろいだようですね。ふふふ、リリーさんに言いつけてやりますよ。
「いや、いい。真面目に答えられると困る」
「それなら聞かないでください」
「純粋に不思議だったからだよ。
こう、落差があるだろ」
「そういう隙が可愛い気がするんですけどね」
まじまじと見られて、肩が揺れてるなと思ったら爆笑されるってなんですかね……。そんな変な事いいましたっけ?
「わかった。そこは疑わない。なにかあったら、相談してくれ」
よくわからないのですが、納得されたようで。
……あたしは納得がいかないのですけど。なんですか、聞いておきながら笑うって。
気を取り直して、相談していいなら今のこれらをどう伝えるべきか聞いてみましょう。
「これらの話はどうすればいいんですか?」
「ディレイから言われない限り黙ってたらいい。自分で言わないヤツが悪い」
それもどうなんですかね……。リリーさんにも相談しときましょう。微妙にあてにならなそうなんですよね。ゲイルさんって。
好奇心とか楽しそう、優先そうで。
ゲイルさんに急に頭を撫でられました。どちらかと言えば、がしがしとかき混ぜられたに近いです。
これこそ子供にするみたいなやつです。
やめなさいと言わずにぺしぺしと手を叩きました。
クルス様の触り方は優しかったのですね……。
「失敗して、追い出されたらうちに来ればいい」
「いいんですか?」
「うちにも娘がいてな。路頭に困った娘さんを放り投げたら絶縁される」
……どこの父親というのも娘には弱いんですかね。
どこまであてになるかはわかりませんけど、逃亡先があるというのは安心します。行くかどうかはさておいて、ですが。
「んー、色々伝承とかあって、知っているものらしいとは認識していた。
有名ではないが、文献に当たればすぐにでてくるような話だし、先のことを知っていて面倒が起こるなんてのはあったようだ」
知っていて、その上で聞かなかった、ということでしょうか。
では、調べたと言っていたリリーさんもその話は知っていたということになりそうですね。
……なんでしょう。このもっと早く言ってよという気持ち。突然、聞かれて取り乱して色々ぽろぽろこぼれてしまうような状況よりはマシですけど。
……というか、この流れで言えば、クルス様も知ってそうなんですけど。妙なことを言われたことがあったような気もしますが……。
小さく頭を振ってその考えを追い出します。なんだか、クルス様本人を問いただしたい気持ちになってきますから……。
このタイミングって絶対失言します。
「あたしがいた場所ではここの世界のことは物語、つまりは本でした。
某英雄が主人公のお話でこの二年か三年くらいのエピソードをつないだ感じでしょうか」
言っていいと思うことを吟味しながら口にします。
ものすごいざっくりですが、詳細を語っていったら一日くらいかかりそうなきがします。
しかも熱が入りすぎて引かれるでしょうね。お話自体はとても好きだったのです。主人公に何でそこだけダメなんだとツッコミながら読んでました。
ゲイルさんは淡々と話しをしたあたしにちょっとびっくりしたみたいですね。
わたわたしたほうが良かったですかね?
「この先も知ってるってわけ?」
「いえ、全然。ええと昨年の11月か12月くらいのことまでですね。戦争の結果も実は知りません」
こんなに時期がずれたのは、最近、クルス様が暇だから故郷に帰ろうかな、とかおもったのではないかと。その後の予定とやらを聞いて考えた結果なんですけど。
もし、死亡フラグがと願っていたら、戦争中にぶん投げられた気がします。自分でなんとかしなよと笑いながら。
「一応、休戦ってことになってるな。今は戦後処理中で、徴兵された者や志願兵なんかが、故郷に戻りつつある。ただ、帰れない者たちが王都周辺から近くの町に流れている感じだな」
なるほど。この森は王都の守りの一部を担っているので王都からは近いはずです。
前回門番の人が言ってたのはこのことだったのでしょう。戦争帰りが増えていると。でも、なんでクルス様が心配されたのかはわからないままですけど。
あたしの知らないところでなにかあったのでしょうか。そのあたりの話は全くしてくれないので、不明のままです。
「春先までは治安は悪化するだろうし、過ぎてもなかなか回復はしないだろう。冬だからって町に住むのはやめたほうがいいってのはこれが主な理由だ」
「そうですか。ここって安全なんですか?」
「家自体が恐ろしく強固な結界張ってるから家の敷地内は安全だろう。作ったヤツがなに考えていたのか全くわからん。
しかし、この先のことは知らないというのは良い事だな。知ってたらどこに監禁されるかわかったもんじゃない」
……この世界、微妙に物騒ですよね。リリーさんには自由とかいわれてましたけど、やっぱりそれなりに実力がないと消費されてしまうのでしょうね。
「いや、そうじゃなくて、だな。ディレイのこと知ってるだろ?」
ああ、やっぱり、その話必要でしたか。知らないというのも不自然でしょうね。
「ええ、まあ、登場人物的には知ってますよ」
疑いの視線が痛いです。嘘ではないですよね。推しとか言わないだけで。
言えば引かれます。絶対です。
そもそもこの世界に来た理由として考えると重すぎて秘匿したいわけです。本当になんてことをしてくれたのだという気持ちがありますね。覚悟も定まらないうちに勝手にするなと言いたいのですけど。
……人外なんて、こんなものかもしれませんが。むしろ、いいことしたとでも思ってそうです。なにが不満なのとか言い出してましたし。
「それだけ?」
「お気に入り、というところはありますけど。
あのですね、頼るところもないのに、世話焼かれたり、優しくされたらくらっときません?」
「わからんでもないが、ちょっと違うように思える。最初から、かなり意識しているように見えた」
隠すような余裕なんてなかったので、駄々漏れでしたね。
今も余裕はないので、隠せている気もしませんし。無駄な努力でしたか。
「一番の、とつければいいですか。恥ずかしいので、追及しないでいただけると」
「どこが良かったんだ?」
……なぜにリリーさんと同じ事を聞いてきますかね。ついでに追及するなって言ったのに無視されましたよ。
「……全体的に。一目惚れはそんなに間違いじゃないですよ。格好いいじゃないですか」
もにょもにょと下を向きながら答えてます。拒否しても良いのですけど、後々まで聞いてきそうなのですよね。
以前、ゲイルさんとお話しした時のことを思い出しました。あれもこれもと延々と話しましたからね。好奇心を満たすまで質問するような人です。
「魔導師やってるときはそれなりに見えるな。確かに。
普通のときはそうでもないような気がするんだが」
「……どこがいいか、本当に、聞きたいんですか?」
面白がるように言われたので、顔を上げ白い目で見てやりました。
ゲイルさんは少したじろいだようですね。ふふふ、リリーさんに言いつけてやりますよ。
「いや、いい。真面目に答えられると困る」
「それなら聞かないでください」
「純粋に不思議だったからだよ。
こう、落差があるだろ」
「そういう隙が可愛い気がするんですけどね」
まじまじと見られて、肩が揺れてるなと思ったら爆笑されるってなんですかね……。そんな変な事いいましたっけ?
「わかった。そこは疑わない。なにかあったら、相談してくれ」
よくわからないのですが、納得されたようで。
……あたしは納得がいかないのですけど。なんですか、聞いておきながら笑うって。
気を取り直して、相談していいなら今のこれらをどう伝えるべきか聞いてみましょう。
「これらの話はどうすればいいんですか?」
「ディレイから言われない限り黙ってたらいい。自分で言わないヤツが悪い」
それもどうなんですかね……。リリーさんにも相談しときましょう。微妙にあてにならなそうなんですよね。ゲイルさんって。
好奇心とか楽しそう、優先そうで。
ゲイルさんに急に頭を撫でられました。どちらかと言えば、がしがしとかき混ぜられたに近いです。
これこそ子供にするみたいなやつです。
やめなさいと言わずにぺしぺしと手を叩きました。
クルス様の触り方は優しかったのですね……。
「失敗して、追い出されたらうちに来ればいい」
「いいんですか?」
「うちにも娘がいてな。路頭に困った娘さんを放り投げたら絶縁される」
……どこの父親というのも娘には弱いんですかね。
どこまであてになるかはわかりませんけど、逃亡先があるというのは安心します。行くかどうかはさておいて、ですが。
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